体験消費時代のマーケティングヒント
みなさんこんにちは。和田康彦です。
資生堂のグローバルブランド「SHISEIDO」は、ミニサイズのメイクアップシリーズ「ピコ」の新色を3月1日に日本限定発売します。2020年春夏のトレンド“ニュアンスカラー”“透明感”を反映した口紅とネイル(2種18品目、1000~1800円)を、百貨店を中心とする約290店、資生堂の総合美容サイト「ワタシプラス」などで販売します。
2018年2月にデビューした「ピコ」は、若年層に向けてミニサイズで価格も抑えて提案するシリーズ。既存のネイルや口紅の半分サイズで売り出したら大ヒットしました。第1弾は“和菓子”、第2弾は“縁結び”をテーマとして毎年限定色を発売してきましたが、第3弾は“Tokyo 24h”をコンセプトに、朝、昼、夜でさまざまな表情を見せる東京の一日にインスパイアされた口紅とネイルをそろえます。
口紅とネイルは朝、昼、夜に各3色ずつグループ分けされ、パッケージには一日の流れが分かる時計が描かれてます。「路地裏に猫」「本屋の出会い」「三時の純喫茶」「夜の名画座で」など、時間と共に変化する光や風景を表現したカラーネームにも注目ですね。
気軽に楽しめるミニサイズ、毎年発売する限定色とロマンチックなテーマ設定、印象に残るネーミングなど、「SHISEIDO ピコ」には、女性のこころを動かす「ワク♡ドキ」の素が詰まっています。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
作業服販売大手のワークマンは2月4日、2020年3月期の業績予想を上方修正しました。修正後はチェーン全店売上高が1200億円(修正前は1035億円)、営業総収入が905億円(同733億円)と、2割以上も上振れします。新業態「ワークマンプラス」の積極的な出店に加えて、日常着として着用できるプライベートブランドがけん引して、19年4月〜20年1月までの既存店売上高は前年の同じ期間に比べて26.3%増加。10月以降も多くのアパレルが消費増税や暖冬の影響で低迷する中、既存店売上高は2割以上伸ばしています。
好調な売上をけん引しているワークマンプラスは「高機能と低価格のアウトドア・スポーツ・レインウェアの専門店」と銘打った業態。プロ向け仕様の高機能・高コストパフォーマンスを売りにしたPB商品を、一般の人でも入りやすいような店舗で買えるようにしました。この結果、今までワークマンに行ったことがなかった客が足を運んでいることがヒットの要因です。また、メディアでの露出やインフルエンサーを起用したマーケティング戦略が奏功し、女性顧客の獲得に成功したことが好調を支えています。
秋冬商戦でも高機能・低価格を売りにした防寒アウターや防寒パンツが活発に動きました。中でも驚くほどの防水防寒機能があるプライベートブランド(PB=自主企画)衣料や同社の商品情報を紹介している人気ブロガーと共同開発したパーカーの販売も伸びました。
19年4~12月にはワークマンプラスを新たに23店開き、既存店119店を転換。ワークマンプラスは1月末時点で157店になり、3月末までに175店まで増やす計画です。
ワークマンの強みは、プロが購入するような高品質な商品を低価格で提供することです。一般的なアパレル企業の場合、商品の原価率は2~3割程度。できるだけ安く作り、宣伝をして高く販売。在庫が出ればセールを行い、それでもだめなら廃棄するというビジネスモデルが一般的です。一方ワークマンの原価率は65%程度といわれており、アパレル業界の平均値よりずっと高く設定。自ずと高コストパフォーマンスが実現できるのです。
ワークマンのMDが何よりこだわるのは値付けです。市場調査を徹底した結果、設定した売価を“絶対基準”とし、その売価を超えるものは作りません。その結果、これまで経験したことのないような高い機能性と驚きの低価格が女性客のこころを動かして、一気にワークマンファンの輪を広げています。
驚きの機能と驚きの対価格。女性のこころを動かしたのは、ワクワク・ドキドキさせるモノづくりです。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
総務省の家計調査によると、1世帯あたりのパンの年間支出額は14~18年まで5年連続で米を上回っています。18年のパンの支出額は3万554円と、12年に比べ8%増加。主食の座が米からパンに交代したことがわかります。
そんな中、2013年頃から高級食パンブームが始まりました。今や全国各地に店舗を構える大阪発祥の「乃が美」や東京・銀座に本店を構える「セントル・ザ・ベーカリー」などが人気に火をつけ、一大市場を築き上げたのです。私もたまに「乃が美」の食パンを購入しますが、レギュラーサイズ(2芹)864円(税込)は決してお安くありません。普段は5枚切り158円の「超熟」が定番ですが、外出したついでについつい買ってしまいます。高級食パンならではの、柔らかくて甘い食感はまさに私にとってのちょっとした「幸せ」な瞬間です。
高級食パンブームは今のところ衰えることもなく、最近はさらに進化を遂げた商品が続々と登場し、主婦や若い女性らを虜(とりこ)にしています。生地に多彩なフレーバーを練り込んだり、子どもの嗜好を徹底的に追求したり――。キーワードは「変わり種」。高級食パンの文化に新たな潮流が生まれており、ブームを超えて日本の食卓に根付きつつあります。
とはいえ、毎日高級食パンを味わっているご家庭はそれほど多くないと思います。ふだんはスーパーやコンビニの食パンを定番にしながらも、週に1度や月に何回かはちょっと贅沢な高級食パンを味わう。まさにケの日ハレの日消費のわかりやすい事例ですね。
ふだんは節約しながらも、たまには自分へのご褒美も兼ねてちょっとだけ贅沢してみる。そんなケの日ハレの日消費の潮流をしっかり押さえておきましょう。
以前のブログ記事です。こちらもご覧ください。
高級食パンブームに見る日常のしあわせ志向。
http://www.happymk.net/entry/2018/06/25/112435
みなさんこんにちは。和田康彦です。
阪急うめだ本店(大阪市北区角田町)では、今年も1月22日から「バレンタインチョコレート博覧会2020」が開催されています。私も先日会場を訪れましたが、還暦を越えたおじさんも心もワクワクドキドキ。女性のこころを動かす秘訣をたくさん学んできました。
■ワクワクドキドキポイント①圧倒されるスケール観
今年は「もっと広がるチョコレートの楽しみ方」をテーマに、約300ブランド、約3000種類のバレンタイン向け商品を、同店9階全フロア(約1000坪)と地下1・2階の食品売り場で展開しています。
昨年は過去最高額となる約24億円を売り上げたそうですが、今年の売上目標はさらに1億円多い25億円。9階フロア全てがバレンタイン売場になっており、会場からは、阪急うめだ店の熱い想いや情熱がひしひしと伝わってきました。
■ワクワクドキドキポイント②選ぶ楽しみ、探す楽しみ、迷う楽しみ。
9階会場は、独創的な6人の日本人ショコラティエをクローズアップした「ジャパンクリエーションチョコ」、カカオ豆やその生産国に焦点を当てたチョコを集めた「カカオワールド」、チョコの断面図を紹介し、多様なフィリングのボンボンショコラを楽しむ「ボンボンショコラを解き明かす ワールドチョコレートライブラリー」、ハーブや花などの植物由来のフレーバーを使ったチョコや花の形のチョコを集めた「ハーブ&フラワー ボタニカルチョコ」など8つのコーナーを展開しています。どのコーナーも個性豊かなバラエティに富んだ商品がずらりと並び、カワイイパッケージを見ているだけでも時間が経つのを忘れてしまします。
■ワクワクドキドキポイント③初出店や限定商品など話題性がいっぱい。
また、米サンフランシスコ発のカカオ豆からチョコレートを作る「ビーン トゥ バー」のチョコレート店「ダンデライオン・チョコレート」は、同店限定で発売する初の「生チョコレート」(9個入り、1,728円)、兵庫県養父市で自家農園の蜂蜜を使い、「ショコラティエだけじゃなく、農家的な目線」でチョコレートを作る「ル・フルーヴ」の「ガナッシュ・パリ」(6個入り、2,529円)など、初登場店も多く出店。これまで出会ったことのない商品に出会えることでワクワクドキドキ度はさらに高まります。
■ワクワクドキドキポイント④イートインコーナーで美味しいを気軽に体験。
9階にある4店のカフェでは、ショコラティエやパティシエが監修した限定メニューを提供する「カフェコラボレーション」やソフトクリームやクレープなどのチョコレートスイーツを会場で楽しむ「チョコフードホール」など、イートインメニューも豊富にそろっています。カフェ店「ア・ル・ロイック」では、コロンビアでチョコレート選別から製造を行う「カカオハンターズ」の小方真弓さんと開発した「恋する乙女のストロベリーローズ」(1,080円)が楽しめます。阪急うめだ店のイベントでは、このところイートインコーナーを充実させていますが、気軽に美味しいを体験できることで、女性のワクワクドキドキ度は最高潮に達します。
■ワクワクドキドキポイント⑤色々な味を楽しめる試食サービス
また、地下1・2階会場「チョコスイーツパーク」では、昨年初登場し人気を集めた「TOKYOチューリップローズ」がバレンタイン限定商品「ボンボンショコラ」(6個入り、2,376円)などを用意。男性へのプレゼント用として購入される、日本酒や焼酎などの酒や日本茶を使ったチョコレートは、9階会場まで上がらず手軽に買えるように地下2階へ移動しました。
お店によっては、試食サービスを行っているところも多くあり、色々な味を食べ比べることができる点も女性のこころを動かすおもてなしになっています。
■ワクワクドキドキポイント⑥255ページにも及ぶガイドブック
配布はすべて完了したようですが、今年も超豪華な「バレンタイン博覧会2020」の公式ガイドブックが作成されています。2年前の私のブログでも紹介しましたが、
まさにチョコレートのバイブルといっても過言ではない素晴らしいガイドブックです。チョコレートというアイテムで、これだけの品揃えができるということを教えてくれるマーチャンダイジングの教則本といってもよいと思います。編集内容やビジュアル面も素晴らしく、書店で販売しても十分に売れる内容になっています。見ているだけで幸せになる一冊。こんな価値のあるものが無料で配布されているのですから、まさに阪急うめだ店のバレンタインに対する思いが伝わってきますね。
女性のこころを動かすには「ワクワク・ドキドキ」してもらうことがポイントです。阪急うめだ店の「バレンタインチョコレート博覧会2020」を見て、ワクワクドキドキの素をたくさん吸収してください。特に男性マーケターの方必見ですよ。
営業時間は10時~20時(金曜・土曜・2月9日~13日は21時まで、最終日は19時まで)。2月14日まで。
こちらの記事もご覧ください。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
ディスカウント店「ドン・キホーテ」などを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は2月1日、宮崎県で百貨店などを運営する橘ホールディングス(HD、宮崎市)を同日付で買収したことを明らかにしました。
PPIHの2019年6月期の売上高は1兆3288億7400万円。2019年1月に、ユニー(株)及びその子会社が連結子会社となったことで、前年同期比41.1%増と、大きく伸長。営業利益は631億1000万円(22.4%増)、経常利益682億4000万円(19.3%増)、純利益482億5300万円(32.5%増)。同グループは2020年を達成年度とした「ビジョン2020:売上高1兆円、店舗数500店、ROE(株主資本利益率)15%」を目標としていますが、すべての項目を前倒しで達成と、この小売不況の中にあって絶好調を維持しています。
ドン・キホーテに行ったことのある方なら誰もが、あの宝探しをするようなワクワク・ドキドキするを時間を体験していると思います。雑然とした店内は、どこに何が置いてあるのかわかりにくい。手を伸ばしても届かないような棚の上にまで陳列されていたり、足元の段ボール箱にはお買い得品が山盛りになっていたり、手書きのPOPがあらゆるところに貼られていたりと、マーケティングのセオリーからすると、とんでもない雑然とした売り場になっています。
米国の年経済研究家のジェイン・ジェイコブズ氏は、整然と区画整理されてどこに何があるのかわかるような街は魅力がない。狭い曲がりくねった道で、その先にどんな店が見えてくるのか予想できないような街こそ魅力がある。曲がりくねった路地の先に何があるのか、歩くだけで楽しい気分になる。と魅力ある街について論じています。
店づくりにも同じことが言えそうですね。まさにドン・キホーテは、雑然とした通路の先に何があるのか、ワクワク・ドキドキしながら買物できることが大きな魅力です。いつ行っても、何か掘り出し物に出会えるのではないかという期待感に心が動きます。
女性は、買いやすさや価格、丁寧なサービス、品質に対する安心感など色々なことに期待して消費しますが、変化のない店には心は動きません。新商品の打ち出しや季節ごとの提案、売り場づくりのリニューアルなど、ワクワク・ドキドキさせる変化を感じてもらいましょう。