体験消費時代のマーケティングヒント
みなさんこんにちは。和田康彦です。
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下CCC)が、京阪電車「枚方市」駅前に、2016年5月16日にオープンした「枚方T-SITE」に行ってきました。
CCCといえば「TSUTAYA」。実は蔦屋書店は今から33年前の1983年に枚方市で創業したんですね。
創業の地に感謝を込めて開業したという枚方T-SITEは、2011年にオープンした代官山、湘南に次ぐ3店舗目。その規模はTSUTAYA・蔦屋書店・T-SITE史上、過去最大で「上質な日常を届けるライフスタイルデパートメント」をコンセプトに、食、キッズ、美容など、三世代で楽しめる9フロア(B1Fは夏オープン予定)を展開しています。
TSUTAYAと蔦屋書店を中核として43の個性的なライフスタイルショップが大集合し、朝7時から深夜25時まで利用できる便利さ、1Fから5Fに設置した300席の椅子でコーヒー片手にゆったりと読書できるBOOK&CAFÉの快適さ、スマホで、簡単にレストラン予約ができてエンタメ情報も得られる楽しさを提供する画期的なデパートでした。
☛私が訪れたのは土曜日の午後。若い女性連れやカップルで店内は賑わっていました。コーヒーを片手にお気に入りの本を楽しむ風景はとても心豊かなライフスタイルを感じます。1階から8階まで宝探し感覚で顧客の発見する喜びをプロデュースする枚方T-SITE。特にマルシェ感覚でお気に入りの雑貨や本、化粧品から洋服まで探せる4階フロアは、女性客の好奇心を刺激してワクワクドキドキさせる編集になっていました。心豊かで幸せを感じさせる空間と時間の提供、そして好奇心を刺激する生活編集など、これからの女性客に選ばれるためのヒントが満載でした。
■1階は焼き立てパン屋さんやオープンなカフェなど、パリにいるような気分を味わえます。
1階にはパンケーキ店「gram」や自家製ワインが飲める「フジマル食堂」などが集結。東京で話題のアイスキャンディー「PALETAS」、京都の人気茶寮の「錦一 葉かふぇ」のスイーツなど、人気店の味を一度に楽しめます。「THE GROUNDS BAKER」では朝7時から焼きたてパンで食べることができ、まるでパリの街角にいるような気分にさせてくれます。
また食にまつわる本・雑誌、花屋やデジタルプリント、スターバックスのテイクアウト専門カウンターがある点も見逃せません。駅直結なので、出かける前、帰宅前にサッと立ち寄るのにも便利です。枚方に引っ越したいなーって思いました。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
行動分析サービスを提供するニールセン株式会社は、スマートフォン視聴率情報Nielsen Mobile NetView(ニールセン・モバイル・ネットビュー)の2016年4月データをもとに、スマートフォンアプリの利用状況を分析し5月31日に結果を発表しました。
2016年4月時点でスマートフォンの利用者数は5,496万人となり、1人あたり1日の平均利用時間は、2時間11分。スマートフォンの利用時間全体のうち、アプリからの利用とWEBブラウザからの利用の内訳をみると、アプリからの利用時間は全体の80%を占めていています。(図表1)。
アプリの利用者数TOP10をみると、利用者数1位は「LINE」で、4,305万人が利用。TOP10アプリの利用者数を昨年と比較すると「Yahoo! Japan」の増加率が最も高く42%増加。また、エンターテイメントアプリである「YouTube」や「Apple Music」、コミュニケーション/SNSアプリである「Twitter」や「LINE」も増加率が高くなっています。「LINE」や「Twitter」は、増加人数も多く、昨年と比べて500万人以上利用者数が増加。SNSアプリでは「Instagram」の増加率が高く、昨年から500万人利用者数が増え、初めて利用者数が1,000万人を突破しました。
利用者数が大きく増加している「Twitter」と「Instagram」に注目し、性年代別の利用者数を昨年と比較すると、「Twitter」は、35歳以上の増加率が高く、特に35-49歳女性と50歳以上の男性利用者が増加したことが、全体の利用者数増加に寄与。一方「Instagram」は、もともと利用者数の多かった34歳以下の女性に加えて、35~49歳女性の利用者も増加。また、Twitter同様、50歳以上の男性利用者も大きく増加していました。「Instagram」の利用者は、女性が661万人、男性が430万人。約6割が女性ユーザーで、特に若い女性に圧倒的に支持されているSNSということがわかります。(図表3)。
☛スマートフォンが生活に浸透するにつれ、生活者をとりまく情報やコミュニケーション環境は大きく変化しています。「LINE」や「Twitter」「Instagram」といった誰もが気軽に利用できるSNSが支持される中、お客様とのコミュニケーションのあり方も変化させていくことが大切です。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
ニトリホールディングスの2016年2月期の業績は、29期連続で過去最高益を更新し、前の期比10.2%増の730億円強を確保しました。売上高は9.8%増の4581億4000万円と従来予想を100億円上回ります。国内外で50店を新規に出店。昨年4月には「プランタン銀座」(東京・中央)にも出店するなど、従来よりも都心出店を増やしたことで若い女性やシニア層など、顧客の裾野も広がりました。
また、ここ3~4年は5万~10万円のソファなど高機能・高品質な「ちょっといい物」の品ぞろえを強化し、いいモノ志向の顧客を獲得。客層を多様化して客数を伸ばし、増収増益につなげた格好です。
ところで皆さんは、「ニトスキ」ってご存知ですか。実はこの「ニトスキ」とは、ニトリで販売されているスキレット(鉄製の鍋)のこと。何と30万個以上売れる大ヒット商品になり、今期の増収増益に貢献した商品のひとつなんですね。保温性が高く冷めにくい、使い勝手の良いフライパンで、そのままテーブルへ置いて食器の代わりにもなるし、オーブン調理だってお手の物。さらに、驚きなのはその価格。このフライパン、お値段なんと476円!さすが、「お、ねだん以上ニトリ」さんです。一つ500円程度で購入できるスキレットは、家族全員分を揃えられる手軽さ、サイズも2種類から選べるとあり、インスタグラムなどのSNSから再燃し、全国的に品薄になるほどの人気になりました。
☛モノ余りの時代、売れない時代と言われる中でも、30万個も売れる「ニトスキ」を生み出したニトリの商品開発力。そこからは生活者のインサイトを掴み潜在ニーズを発掘すればまだまだ売れるモノは作れるという可能性を感じます。また「ニトスキ」は、インスタグラムという女性に人気のSNSを味方につけたヒット商品といえます。、これからの時代、女性に選ばれるためには単に商品がよいだけではなく、SNSや口コミで話題になることが重要なポイントになります。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
スマートフォンが急激に拡大する中で、スマホアプリで1点モノの手作りアクセサリーや洋服などを販売できるハンドメイドマーケットプレイスが今大人気です。創作活動に取り組む全国のクリエイターと生活者が、オンライン上で直接オリジナル作品を売買できる手軽さが受けて、前年比2倍以上の勢いで拡大。今回は、主に女性作家が牽引して急成長を続けるハンドメイドC2C市場の実態をみていきます。
●国内最大級サイト「minne(ミンネ)」の登録会員数は20万人超。
国内最大のハンドメイドマーケットプレイスといえば、GMOペパボ㈱が運営する「minne(ミンネ)」です。2012年1月にサービスを開始し、10月にはスマホアプリをリリース。その後多様な決済方法の提供やテレビCMによって利用者や認知度は一気に広がり、2015年3月には登録会員数10万人、今年3月には20万人を突破。1年間で2倍以上の登録作家数の拡大を達成しました。また2016年2月にはスマホアプリのダウンロード数が500万件を突破するなど成長の勢いはとまりません。
●「minne(ミンネ)」の後を追う、「creema(クリーマ)」「iichi(イイチ)」。
minneのスタートより2年早い2010年にサービスを開始した「creema(クリーマ)」は登録会員数は約6万人、2011年にスタートした「iichi(イイチ)」は登録会員数約2万人で、会員数ではminneが2位以下を大きく突き放してトップを走っています。ただ、出品数ではminneの約250万点に対して、creemaは246万点とほぼ同じ規模で肩を並べており(iichiは約42万点)、今後は両社の競争が激しくなることが予想されます。
●リアルイベントにも注力、交流・体験の場を提供。
ネット上のマーケットプレイス以外で力を入れているのが、クリエイターと手作りファンが一堂に会するリアルイベントです。minneは今年の4月、東京ビッグサイトで「minneハンドメイドマーケット」を開催、約3000ブースに1400名以上の作家が参加して行われました。またcreemaも2016年7月23~24日の2日間、同じく東京ビッグサイトにて「ハンドメイドジャパンフェスティバル」を開催。全国で活躍する5000名以上のつくり手が集まる予定で、昨年は53000人の来場者がありました 。
●作家の支援活動を通して人気作家を育てる。
また出展作家の支援活動にも注力。minneは全国各地の大型商業施設での対面イベントを通して作家の活躍の場を増やしています。2016年は1年を通じて、東京・広島・北海道・宮城・福岡の全国5か所の「PARCO」を巡る対面販売イベント「ミンネとパルコのミエルツアー」を開催。イベント限定販売の作品など、会場でしか出会えないハンドメイド作品に触れ、作家と直接話しができる機会を設けることで、人気作家の創出に取組んでいます。
●「minneハンドメイド大賞」の開催で作家の創作意欲を後押し。
また、2015年度からは「minneハンドメイド大賞」を創設。創意・工夫を凝らした作品を発掘・表彰することで作家の活躍の場を広げています。2016年度の募集には2万300点以上の応募があり、ハンドメイド市場の裾野の広がりを示しています。
その他、東京・世田谷と神戸市に「minenのアトリエ」を設け、作家向けの勉強会や作家同士の交流の場としてワークショップの開催にも力を入れています。
●ハンドメイド作家という新しい働き方に注目が集まる。
ハンドメイドC2C市場の拡大に伴って、ハンドメイド作家を新しい働き方のひとつとして選択する女性が増えてきました。通常minneでは、作品が売れた場合、販売手数料として10%をGMOペパボ側に支払う仕組みで、出店料は無料。2016年3月時点で月10万円以上を売上げる作家は1227名と2年前の15倍以上に増えているそうです。ワークシェアリングやクラウドソーシングといったインターネットを活用した新しい働き方が注目を集める中、ハンドメイドC2C市場で活躍するクリエイターは今後もますます増えていくことが予測されます。
☛「生産者志向」と「自己実現の欲求」の高まり。ハンドメイドC2C市場が急成長している2つの理由。
2008年に起きたリーマンショック以降、日本女性のライフスタイルにいくつかの大きな変化が起きています。そのひとつが、単に消費するだけでなく、自ら何かを生み出していくという「生産者志向」の高まりです。例えば、家庭菜園やベランダで野菜を手作りする、梅干しや漬物など保存食を作る。家具も自分で組み立ててしまう。ちょっとした修繕はDIYで自分で直すといった生産者志向は生活のあらゆる面に及び、自ら作家として作品を作り、その売買で収入を得ることができるハンドメイドC2C市場はその代表例といえます。またポイントを増やす達人が生まれたり、モニターや懸賞公募に参加して報酬を得る人も増えてきています。最近ではクラウドソーシングを利用して収入を得る人も増えてきているほか、「メルカリ」や「フリル」などのフリマアプリで収入を得る人も一般的になってきました。実質賃金が増えず節約生活が当たり前となった現在、自ら収入を生み出して少しでも家計の足しにしたいという女性心理は今後も衰えることはないでしょう。
ハンドメイドC2C市場が急成長しているもう一つの理由が「自己実現の欲求」の高まりです。アメリカの心理学者アブラハム・マズローは、人間の欲求には5つの階層があり、ある階層の欲求を満たすと一段階上の欲求に駆られるという「5段階欲求説」を唱えています。それは①食欲・睡眠欲など生きる上で不可欠な「生理的欲求」②危機管理や健康維持などの不安から身を守りたいという「安全に対する欲求」③人から良く思われたい、嫌われたくないという「親和の欲求」④社会的ステイタスを築きたい、人から認められたいという「自我の欲求」⑤自分の能力や可能性を発揮していたいという「自己実現の欲求」の5つです。あらゆるものが満たされた現在、人々の欲求は「自己実現の欲求」を満たす方向に進んでいます。ハンドメイド作家という立場で自分の能力や可能性を発揮できるminne のようなハンドメイドマーケットプレイスは、まさに自己実現を求める現代女性の心理を上手く捉えたニュービジネスといえるのではないでしょうか。