体験消費時代のマーケティングヒント
みなさんこんにちは。和田康彦です。
花王は、第32回日経企業イメージ調査の「扱っている製品・サービスが良い」という項目で、一般個人の評価で1位を獲得しました。前回の7位から一気に上昇。心を込めた「よきモノづくり」を通して、人びとの豊かな生活文化実現に貢献することを理念とし、高い技術力と発想力に基づき、多種多様な製品を送り出しています。
2019年には衣料用洗剤「アタック」ブランドから、洗浄力を高めた「アタックZERO」を新発売。新開発の洗浄基剤を主成分として落ちにくい汚れゼロ、生乾き臭ゼロ、洗剤残りゼロ、という3つのゼロを実現しています。
また、掃除用品の「クイックル」シリーズから発売された「クイックルJoan」も好評。天然成分由来の「発酵乳酸」を配合し、除菌・抗菌性能と、肌が敏感な人など安心感を両立しました。
一方で、企業理念をベースとしたESG活動「Kirei Action」を推進。ESGをコストでなく投資と捉え、2018年に社長直轄のESG部門を新設。同年にプラスチック包装容器宣言、翌年にはESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を発表し、ESG経営に大きく舵を切っています。
例えば、イノベーションで生まれたプラスチックは、今はプラスチックごみと言うマイナス面での問題が表面化していますが、同社ではいち早くこの問題に取り組み、プラボトルレス化を加速しています。
そして「社会が変化し、人の思考が変わる現代は企業自らも変わらなければ取り残される」との考え方のもと、商品設計の段階からESG視点を取り入れて、製品の廃棄まで責任を持つことにもチャレンジしています。
花王の澤田社長は、「経営のやり方を抜本的に変えて、新たな視点で突き抜けるような覚悟が必要」「ESG本質研究に基づ『「Kireiイノベーション」を起こし、人、社会、地球に大きなインパクトを与えていく。」
「ESGの取り組みは、最終的には利益に結びつけ循環型にしないと持続しない」「花王はこれまで以上に企業価値を重視する会社に大転換した生きたい」と語っています。
企業が長く事業活動を続けるには、消費者はもちろん地球環境との良好な関係構築を目指した経営が不可欠になってきました。サスティナブル先進企業「花王」から学べる点は多くあります。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
オーストラリアでは、「女性専用のシェアサービスが広がりつつある」と、今日の日本経済新聞が報じていました。
運転手も利用者も女性に限定するライドシェア「シバー」は深夜の帰宅や子どもの送迎などの需要を取り込み、急成長。また子どもを持つ母親らを対象にした女性向けシェアオフィスもシドニーで開業を控えています。消費者としてだけでなく、働き手として女性が安心できる仕組みをつくることで、新たな経済圏が生まれつつあるようです。
現在、ライドシェアの「シバー」には約2千人の女性運転手が登録。創業者で最高経営責任者(CEO)も女性であり、「柔軟な働き方を望む女性は多いが、ライドシェアの運転手は9割が男性」。そんな気付きが起業につながったそうです。また、多くの友人が『娘が夜、電車やバスに乗るのを怖がって習い事をやめた』と話してくれたことも成功への確信につながりました。自宅を売却して資金を集め、専用アプリを開発。2017年にスタートしたビジネスは豪州全土に広がり、今や利用者は約19万人にも上るそうです。
一方、シドニーでは「女性による女性のため」のシェアオフィス「フランクリー・コー」の準備が進んでいます。ターゲットは、フリーランスや会社以外の場所で働く女性。カフェや託児所、ジムも併設することで、女性が「働いて、運動して、くつろげる場所」を目指しています。
こうしたサービスは、働き手としても利用者としても女性が支えています。豪統計局によると、20年1月時点で女性の就業者は約616万人と、10年前から24%増加。育児などでフルタイムで働けなくても、限られた時間を有効に活用し、快適に働きたい。そんな女性たちのニーズが新たなビジネスを生み出しているようです。
日本でも女性(15~64歳)の就業率はここ9年間上昇し続けています。2018年は69.6%と09年(59.8%)に比べ9.8ポイント上昇。19年6月には女性の就業者数が初めて3000万人を超えました。出産・子育て期の30代でも就業率は上がっており、安心して利用できる女性向けシェアサービスを求める潜在ニーズは大きいのではないかと思います。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
スターバックスコーヒーは今年で日本進出から25年になります。ここ数年は100店ペースの大量出店を続け、19年末までに国内店舗数は1500店を突破しました。すかいらーくの「ガスト」を超え、単一ブランドの飲食店では「マクドナルド」、牛丼店「すき家」に次ぐ国内3番手。2019年9月期の売上高は前の期比1割増の2011億円と好調ぶりを見せています。
多くの女性ファンに支えられているスターバックスですが、「あなたはなぜスターバックスを選ぶのですか?」と質問をしたら、どんな答えが返ってくるでしょうか。
「コーヒーが美味しいから」
「メニューが多彩だから」
「季節限定のメニューがあるから」
「さまざまなカスタマイズに応えてくれるから」
「完全に禁煙だから」
「インテリアが落ち着くから」
「時間を気にせずに過ごせるから」
「お店の店員さんの笑顔がすてきだから」
「お店全体の雰囲気がおしゃれだから」・・・・
他にもいろいろな答えが返ってきそうですが、いずれにしてもリピーターの心の底には「スターバックスが大好き」という感情が形成されていることは間違いなさそうです。
ではなぜスターバックスが、多くの女性から愛されるすてきなコーヒーショップであり続けられるのでしょうか。同社のHPには以下のような文章が掲載されています。
「人々の心を豊かで活力あるものにするために—
ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」
それが私たち、スターバックスのミッションです。
1996年8月 東京 銀座に日本1号店をオープンしてから今日まで、スターバックスは我々のミッションを大切に、一杯のコーヒーを通じて目の前にいるお客様と誠実に向き合い、言葉と心を交わしてきました。ペーパーカップやタンブラーを手に街を歩くスタイルや、家でも職場でもない「サードプレイス」の提案など、時代ごとの空気をつぶさに感じ取りながら、新たな価値を生み出し、文化を育んできました。
これからも、お客様一人ひとりの暮らしに溶け込んだ、心あたたまるひとときをお届けすると共に、コミュニティ(地域社会)へポジティブな影響を与え、人間らしさを大切にしながら更なる挑戦を続けてまいります。
つまり、スターバックスは、人びとの心を豊かで活力のあるものにするためにコーヒーを売っているのであって、決してお金儲けのために売っているのではない、ということだと思います。
すてきなミッションが従業員に浸透し、それによって店内の心地よい雰囲気や美味しいコーヒーが生まれ、スターバックスらしさが形成されているのですね。
ブランドが持つ○○らしさとは、すてきな理念や志があって初めて生まれます。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
ファッション業界においても、環境問題やサステイナビリティへの意識が高まる中、フランスでは、売れ残り商品の廃棄を禁止する新たな法律 “Projet de loi relatif à la lutte contre le gaspillage et à l’économie circulaire(廃棄物と循環型経済への戦いに関する法案)”が2020年2月10日に施行されました。
内容は、製造業者、輸入業者、代理店、「Amazon(アマゾン)」を含むeコマースサイトに対し、売れ残りの洋服や非飲食品の廃棄を禁止し、チャリティーなどへの寄付を推進していくというもの。また、この法令に違反した場合、15,000ユーロ(約178万円)という多額な罰金が課せられます。
フランスでは年間10億ユーロ(約1180億円)相当の商品が廃棄されています。日本でも、アパレル業界から廃棄される衣類の量が年間で100万トンに及ぶとされています。その中には、新品のまま焼却処分される衣類もあります。現在消費されている衣服はおよそ13億点なのに対し、供給されている衣服は27億点近く。つまり、売れ残る余剰在庫は14億点にも上っていることが予測されます。
フランスでは今回の法案以外にも、マイクロプラスチックごみが川から海に直接流れ込むのを食い止めるため、洗濯機にフィルターを付けることを義務付けることを推進。また、フランスで販売される全ての衣料に、環境や社会的な問題への影響に関する情報が含まれているタグを付けるよう、現在急ピッチで開発を進めているようです。
ファッション先進国フランスの取り組みは、日本のファッション業界にも大いに参考になりそうです。人びとに夢を売るファッション産業だからこそ、持続可能な社会を目指して、消費者にワクワク・ドキドキを永遠に届けられる仕組みを作らなければいけません。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
株式会社ファーストリテイリング傘下のユニクロとジーユーは4月1日(水)から、国内全店舗でショッピングバッグを有料化し、1枚一律10円(税抜)で販売することを発表しました。
同社は、環境負荷を低減し、お客様に安心して購入していただける製品とサービスの提供に向けた取り組みを推進。プラスチックごみによる環境汚染への懸念が世界的に増大する中、2019年7月には、お客様の手に渡る使い捨てプラスチックを2020年中にグループ全体で2018年実績から85%(約7,800トン)削減する目標を設定しています。
この取り組みの一環として2019年9月から、プラスチック製ショッピングバッグを順次、FSC認証(森林認証)を受けた紙または再生紙を使用した環境配慮型の紙製へと切り替えを進めてきました。
同時に、ユニクロ、ジーユーの全店舗でオリジナルのエコバッグを販売し、マイバッグとして持参を呼びかけています。今回ユニクロとジーユーの国内全店舗に紙製ショッピングバッグが導入されるのに合わせ、ショッピングバッグの有料販売を開始し、さらにマイバッグの利用促進と、ショッピングバッグ全体の使用量削減に努めていく計画です。
同時に商品パッケージについても、プラスチック製パッケージの撤廃およびFSC認証(森林認証)を受けた紙などを使った代替パッケージへの切り替えを順次推進。
2019年秋冬シーズンから、ユニクロのルームシューズでプラスチック製パッケージを廃止したほか、2020年春夏シーズンのエアリズム一部商品などでも、紙製ヘッダータイプのパッケージを導入しています。2020年秋冬シーズンからは、ユニクロのヒートテックや、ジーユーの一部インナー商品でも順次代替素材パッケージへの切り替えを進めていく予定です。
ファーストリテイリングは、「環境への配慮」をサステナビリティ活動における重点領域のひとつに掲げ、あらゆる無駄をなくし地球環境への影響を最小限にする事業の構築を推進。 今後も、サプライチェーン全体で使い捨てプラスチックなど廃棄物の削減と、リサイクル素材などの活用による資源の循環利用に向けた取り組みを進めていきます。
また「無印良品」を手掛ける良品計画も、20年3月以降順次プラスチック製ショッピングバッグの廃止を進め、6月末までに国内全店で紙製ショッピングバッグに切り替えると発表。商品の陳列用パッケージも、19年春夏物から一部で再生紙を使用した紙製を導入、20年2月から、カフェ業態で提供するストローも現状の紙製から竹繊維を使用したものへと順次変更していく計画です。
プラスチック製のショッピングバッグから紙製バッグへ切り替え、有料化する動きは18年12月からH&Mジャパン(1枚20円で販売)、19年5月からストライプインターナショナル(1枚20円で販売)も推進しています。
サスティナブルな取り組みは今や当たり前。消費者の意識もどんどん変化しています。この大きな時流に取り残されないよう、どんな些細なことでも良いので、できることから実行していきましょう。