世代別消費行動の特徴

 

“生活者の気分”から未来を読み解くマーケティングカンパニー「伊藤忠ファッションシステム株式会社」では、高校卒業前後から20代前半にかけての「消費自己裁量獲得時期」に経験したファッションやカルチャーが、生活者の消費志向に大きな影響を及ぼすと捉え、20歳から84歳までの生活者を11に区分。Ifsオリジナル世代区分という名前で世代別に価値観や消費行動の特徴を整理しています。 

 

今回取り上げる世代とは「 同時代に生まれ、共通した考え方と感じ方をもつ人々。ある年代層。ジェネレーション。」のことで「若い世代」「世代間の意識のずれ」といった使われ方をする世代です。 

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ご覧のように、キネマ世代、団塊(だんかい)世代、DC洗礼世代、ハナコ世代、バナナ世代、団塊ジュニア世代、プリクラ上世代、プリクラ下世代、ハナコジュニア世代、ライン上世代、ライン下世代という11の区分でその世代の価値観やファッションの特徴を解説しています。 

 

●バブル景気の経験の有無が、生活者の価値観を大きく二分

 

消費自己裁量権獲得のタイミングがバブル景気崩壊の前か後かによって、生活者の価値観は大きく異なり、11世代は、バブル崩壊前に社会に出た世代=プレバブル世代(キネマ世代~バナナ世代)と、バブル崩壊後に社会に出た世代(団塊ジュニア世代~LINE下世代)に二分されます。 

 

前者は右肩上がりの経済成長期の経験から、今もなお経済的な豊かさや社会的な成功を求め、生活をランクアップしていこうという志向を持っています。対して後者は先行き不透明な社会が前提となっており、これ以上の経済生活は困難と捉え、個々の現状に最適化していく志向を持っているといえます。  

 

それでは、それぞれの時代の特徴を見ていきましょう。 

 

●キネマ世代(TPOを守るのがおしゃれ)

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193645年生 7584歳 約1433万人(男性658万人、女性775万人) 

 

キネマ世代は、第二次世界大戦を経験した最後の世代。昔ながらの「世間体」意識が残っており、自己中心的な行動よりも、世の中のために行動をしたいという意識を持つ人が多いのが特徴です。 

 

モノのない時代の経験から「倹約は美徳」の精神を持ち、消費することは贅沢と捉えています。また「世間並み」「人並み」のモノを選び、手に入れたものは大切に使い続ける「もったいない精神」が宿っています。 

 

おしゃれはお出かけのためにするものであり、TPOに照らし、世間的に恥ずかしくない装いを心掛けており、馴染みの店のアドバイスをもとに購入。 

 

●団塊(だんかい)世代 (スタイルがあることがおしゃれ)

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194651年生 6974歳 約1162万人(男性564万人、女性598万人) 

 

団塊世代は、戦後第一世代、ベビーブーマーであり、高度経済成長を牽引。男女平等教育を受けた最初の世代です。人口が多いため、横並び意識があり、同世代や時代に遅れたくないというライバル意識が強いのが特徴です。消費は美徳、新しさを善と捉え、消費によって暮らしを進化させてきました。 

 

ファッションはアメリカンカジュアルの影響を受け、日常的におしゃれをする意識を持ち始めた最初の世代でもあります。マスメディアが発信する情報を参考に服を購入する人が多い世代です。 

 

DC洗礼世代 (マニアックがおしゃれ)

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195258年生 6268歳 約1108万人(男性548万人、女性560万人) 

 

DC洗礼世代は、人口の多い団塊世代を斜めに見る「シラケ世代」。横並び意識の強い団塊世代へのアンチとして、個性を持つことに重きを置き、自分の好きなものに傾倒してきました。 

 

群れることを嫌い、個人行動も多い。人と違うことを善と捉え、マスマーケットの商品とは距離を置き、知る人ぞ知るものや、ひねりの効いたニッチなものを積極的に取り入れて来た世代です。 

 

バブルを経験。ファッションはDCブランドブームの影響から、マイスタイルにこだわり、マニアックなおしゃれを楽しむ人が多いのが特徴です。デザイナーが発信する情報に影響を受けた世代です。 

 

●ハナコ世代 (キメつくすのがおしゃれ)

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195964年生 5661歳 約923万人(男性463万人、女性460万人) 

 

ハナコ世代は、バブル景気(華やかで勢いのある時代)の申し子であり、男女雇用機会均等法第一世代。上昇志向が強く、これまでの世代とは異なるライフスタイルを切り開いてきたという自負を持っています。 

 

消費は自分を高める手段。年齢とともにモノ・コトをランクアップしていく感覚を持っており、ミーハー志向も強く、ステイタスや話題性も重視します。 

 

ファッションは20代当時流行していたヨーロピアンエレガンスの影響から、ドレスアップしてキメつくす感覚を持っており、今が端的にわかる情報を求めてきました。 

 

●バナナ世代 (気負わないのがおしゃれ)

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196570年生 5055歳 約1108万人(男性522万人、女性511万人) 

 

バナナ世代は20代でバブル景気とその崩壊を経験し、現実を直視。無理しない、気負わないことをモットーとし、地に足がついた暮らしを志向する最初の世代です。 

 

時代に踊らされることを嫌い、身の丈志向の堅実なもの選び。自分らしいモノ・コトを選ぶことをよしとする特徴があります。 

 

ファッションの多様化が始まり、自分らしいライフスタイルを意識し、肩ひじ張らない等身大のファッションを選ぶようになった最初の世代です。ライフスタイル誌が発信する情報を好んできました。 

 

●団塊ジュニア世代 (ベーシックがおしゃれ)

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197176年生 4449歳 約1142万人(男性580万人、女性562万人) 

 

団塊ジュニア世代は、中学生で「いじめ」が問題に。その後、受験戦争を勝ち進んできたにもかかわらずバブル崩壊により就職困難に陥ったことが経験則となり、強い現実志向と自己防衛意識を持っています。 

 

世間的な評価の中で、平均点より上を無理することなく維持することが大切と考え、失敗しないように、お墨付きのあるモノやリスクヘッジされたものを選ぶ堅実志向、等身大重視がこの世代の特徴です。 

 

ファッションも自己主張せず、自然体で楽しめること。「人並みレベル」を重視するという共通項があり、セレクトショップの店員のようなプロがセレクトした情報を重視してきました。 

 

●プリクラ上世代 (自分らしいのがおしゃれ)

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197781年生 3943歳 約787万人(男性396万人、女性385万人) 

 

プリクラ上世代は、2000年代初頭の就職氷河期に社会に放り出され、既存のルールへの不信感と「頼れるものは自分だけ」という危機意識を持ち、やむを得ず自ら進む道を切り開いてきました。 

 

その時々の“自分の好き”を基準に主観的なモノ選び。自分の持ち物で「自分はこんなモノを選ぶ人」と主張することで志向を同じくする仲間とつながる感覚を持っています。 

 

ファッションは「自分らしさ」を表現する主要なツール。自分基準でリミックスする感覚を持っており、ファッション誌が発信する情報を頼りにしてきました。 

 

●プリクラ下世代 (モテるのがおしゃれ)

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198286年生 3438歳 約699万人(男性356万人、女性343万人) 

 

プリクラ下世代は、2000年代半ばの就職緩和期でさして苦労せず社会人に。プリクラ上世代の苦労の姿から学び、自ら動くよりも、環境に適応し、お膳立てされたプランに乗ることに注力する世代といえます。 

 

情報が溢れる中、客観的な視点で間違いのないものを選ぶ。選び取るモノは、他者から受ける評価を先読みし、その時の状況次第でガラッと変える。“ハズさない”が基準です。 

 

モテ意識の高まりにより、ファッションは「モテる自分」を「演出する」ツールに。相手によって見せたい自分像を変える感覚を持っており、ファッションアイコンが発信する情報を参考にしてきました。 

 

●ハナコジュニア世代 (ちゃんとしているのがおしゃれ)

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198791年生 2933歳 約615万人(男性315万人、女性300万人) 

 

ハナコジュニア世代は、不況がデフォルトする社会で冷静に現状を分析、自ら実現可能な目標を設定し、努力することで最適化を図り、安定を確実に得ようとする特徴があります。 

 

そのモノが今の自分にふさわしく、周囲からちゃんとして見てもらえるかという年相応意識でモノを選ぶ傾向が強く、ファッションでは、編集感覚が希薄になり、コスプレ感覚がアップ。シチュエーションに応じてコーディネートを選択し、その場で「ちゃんとして見られるキャラ」になりきる感覚を持っています。世間のお墨付き情報を参考に服選びをしてきました。 

 

LINE上世代 (やり過ぎないのがおしゃれ)

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199296年生 2428歳 約599万人(男性308万人、女性291万人) 

 

LINE上世代は、徐々に停滞する社会で「今が一番幸せ」と受容。自己の進む道はあらかじめ決められたガイドラインや先行事例をトレースする傾向が強いのが特徴です。 

 

デジタル化・ソーシャル化の進行により、他人の眼を意識する人が多く、周囲の評価を参考に、相手が思いえがく自分のイメージを崩さず、どんな相手にも受け入れられるよう最大公約数的なモノを選び取るという特徴があります。 

 

ファッションでは、人と同じ過ぎも違い過ぎもNG。その場の最大公約数状態になれるよう調整する感覚を持っており、身近な人が発信する情報を重視しています。 

 

LINE下世代(同じすぎないのがおしゃれ)

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19972000年生 2023歳 約471万人(男性241万人、女性230万人) 

 

LINE下世代は、幼少期に米国同時多発テロ、小中学校で東日本大震災、近年ではトランプショックなど、経済的にも社会的にも目まぐるしく変化する中で育ったこともあり、己の立ち位置を客観視する傾向が強い世代です。 

 

物心ついた頃にはSNSが浸透。ネット上に細分化されたロールモデルが多数存在すること、多様化する教育環境の影響もあり、各人の違いを認め合う意識を持っています。 

 

同調化=無理を強いるファッションからは距離を置き、様々なテイストをフラットにミックスして楽しむ傾向が強く、一般人、モデルなどおしゃれな人が発信する情報を重視しています。

 

 

 

以上、高校卒業前後から20代前半にかけての「消費自己裁量獲得時期」に経験したファッションやカルチャーが、生活者の消費志向に大きな影響を及ぼしていることが理解できたでしょうか。 

 

ターゲットとしている世代の価値観や特徴をよく理解して、商品やサービスを開発していくことが顧客満足度を高めるポイントになります。