体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは、和田康彦です。
女性消費者は、今や消費の8割の主導権を握っていると言われています。
彼女たちは、ふだんは節約しながらも、自分たちが感じる楽しさや豊かさを享受できるものには積極的にお金を使う、メリハリ消費が得意です。単に安いだけでは買ってくれません。女性の好奇心を刺激して「ワクワク・ドキドキ」してもらうことこそが、女性客を増やしていくための鉄則です。
②「発見」の場を提供して、ワクワク体験を楽しんでもらおう。
●女性はショッピングのプロセスを楽しむことが上手!
女性と一緒に買い物に出かけると、あっちをウロウロ、こっちをウロウロ。買う目的もないのに、コスメショップを覗いたり、雑貨のお店を物色したり、100円ショップを隅々まで偵察したり、ウインドウディスプレイに目を奪われて試着したりと、本来の目的の売り場にはなかなかたどりつきません。
一方男性の多くは、買いたいものが決まっていればすぐに売り場に直行して、できるだけ時間をかけずに目的のものを手に入れたいと考える人が多いようです。
つまり女性の方が、ショッピングの楽しみ方が上手であり、ショッピングのプロセスを楽しみたいと考える人が多いといえます。つまり女性にとってのショッピングはレジャーのひとつなんですね。
海外旅行に行っても、近くでマルシェが開催されていると聞けばすぐに直行。時間を忘れて、ご当地で栽培された果物や野菜に見入ったり、新鮮な魚介類にワクワクしたり、美味しそうなクロワッサンとカフェラテを片手に、現地の人とコミュニケーションしたりと、ショッピングを楽しんでいる女性たちの光景を良く目にします。
●女性は直感的に面白いものを見つけることが上手!
女性の多くが雑貨屋さんが大好きなのも、商店街をぶらぶら歩くのが好きなのも、裏町の古い喫茶店を探すのが好きなのも、そこには「雑」な魅力があるからです。
雑は言葉を換えれば「異質なギャザリングス」であり、だから雑は面白くて楽しいのだと思います。雑の中からいろいろな気づきや発見があり、その瞬間瞬間が、とても楽しくてワクワクする時間に生まれ変わるのです。
●いつも新たな発見がある売り場づくりで、女性客にワクワク体験を楽しんでもらおう!
いつ行っても品ぞろえに変化がなく、驚きや感動の無いお店はお客様に飽きられてしまいます。一方で、いつ行っても、新しい発見や感動や驚きがあるお店には、たくさんの女性客が訪れて好業績をキープしているところが目立ちます。
●独自の品揃えと活気あるお店の雰囲気が女性客に人気「カルディコーヒーファーム」
「コーヒー豆や世界各国の珍しい食材、日本の隠れた名品などを所狭しと品揃えしている「カルディコーヒーファーム」。
MD NEXTが2022年に行った調査で、直近半年以内にカルディで買い物経験がある1419人に「カルディの好きなところ」を尋ねると、「独自商品が多い」(67.9%)がどの年代も最も多く、「買い物が楽しい」(63.6%)がそれに続き、「色々な国のお菓子や食品が売っていて見ているだけで楽しい。値段が高いので、少し贅沢をしたい時に購入している(40代女性)」「スーパーだと必要な物を買うが、カルディならあまり使わなそうだけど面白い、珍しいと感じたら買ってしまう。余計な買い物が楽しみ(30代女性)」といった、独自性がある商品や、活気があふれるお店の雰囲気が、女性の支持を集めていることが明らかになっています。
このように「カルディ」は、独自性やトレンドを押さえた商品を取り扱い、他のスーパーでは手に入らない、輸入食材やお菓子などが手軽に手に入るお店として、多くの女性に広く認知され支持されています。
また、味に対する評価はもちろん、店内で買い物をする楽しさや、驚きや発見をもたらし、「カルディに行くと面白い商品に出会える」と、期待しながら買い物をしている人が多く、独自のポジションを確立して、女性客の心をぎゅっとつかんでいることが見えてきます。
●五感を刺激するアミューズメント売り場で女性客を惹きつける「ドン・キホーテ」
一方で、日用品から高級ブランドまで顧客の要望に応えた豊富な品ぞろえと安さを武器に圧倒陳列という独自の手法で提案する「ドン・キホーテ」
同社が発行する独自の電子マネー「majica」のアプリ会員数は1100万人を超え、全体で客の39%が、クレジットカードや「PayPay」などのコード決済ではなく、majicaで支払っています。
そのうち6割以上を女性客が占めており、女性に支持されていることがよくわかります。
ドン・キホーテを運営する、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは、1989年のドン・キホーテ1号店(府中店)出店以来、34期連続の増収営業増益を達成。ドン・キホーテが目指すのは、ワクワク・ドキドキしながら買い物を楽しむ「非日常的エンターテインメント型店舗」です。
そのビジョンを実現するために、
① 日用品や食品、家電製品から高級ブランド品まで扱う豊富な品揃えと、多様な立地での店舗展開・長時間営業という「コンビニエンス(便利さ)」、
② 近隣他店に対して競争優位性が高い価格設定を行い、お客さまが思わず笑顔になる「驚きの価格」を実現する「ディスカウント(安さ)、
③ 圧縮陳列や手描きPOPなど、五感が刺激されるような空間演出で「お買い物の楽しさ」を提供する「アミューズメント(面白さ)の
3つのコンセプトに取り組んでいます。
ドン・キホーテと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、ジャングルのような非効率な売り場づくりではないでしょうか。メーカーから廃番品などを安く仕入れた“訳あり品”を店頭に並べ、掘り出し物や新しい発見がある「宝探し」感を演出。安さを強調した手書きの「POP洪水」で衝動買いも促しています。また天井に届きそうな位置まで商品を陳列する「圧縮陳列」もワクワク感を醸成しています。
また経営破綻した長崎屋を2007年に買収したことが転機となり、精肉や鮮魚の販売ノウハウを吸収。雑貨や日用品に加えて生鮮食品も扱う「MEGAドン・キホーテ」の展開をスタートすることで、家族連れなどの顧客がしだいに増加。かつては男性客が6割を占めていましたが、今は7割が女性客と男女比率が逆転しています。
また、最近の好調な業績を支える屋台骨として欠かせない存在になりつつあるのが、「ド」という大きなロゴを冠したプライベートブランド(PB)「情熱価格」の商品群です。
誕生したのは09年ですが、21年2月に全面刷新を敢行。単にコストパフォーマンスの高さを売りにするのではなく、手に取った瞬間にワクワクしたりドキドキしたり、驚きを感じるブランドとしての位置づけを強めました。
PBを、顧客と一緒に創り上げるピープルブランドとして再定義して、独創的な商品だけを世に送り出す開発体制へと改めた結果、ラインアップは、乾電池といった小さいものから、電動自転車のような大型なものまで実に200近いジャンルに及びます。1年間で店頭に投下する商品数は、食品だけで300アイテム以上もあるというから驚きです。
リニューアル後の情熱価格が女性客の心をわしづかみしている背景には、常識破りの商品パッケージデザインがあります。どの商品にも特徴を説明する印象的な長文コピーがあしらわれていて、読んでいるだけでもワクワクする気持ちにさせてくれます。
例えば、22年の年間売り上げトップの「素煎り ミックスナッツDX(デラックス)」の場合、半分近いスペースを割いて「ナッツを愛しすぎた担当者が独断と偏見で決めたアーモンド・カシューナッツ・くるみの黄金の究極比率 食塩・油を使わないこだわり」とでかでかと書かれています。
このように商品知識がなくても、ぱっと見た瞬間に心に刺さるようなメッセージをあしらい、通常なら大きく配置する商品名を脇役にしてしまうのがドンキ流なんですね。
ドン・キホーテが情熱価格で次々にヒットを生み出している背景には、その商品は何が売りなのかを『What3カ条』で、そしてどう顧客に伝えるのかを『How3カ条』で開発関係者と共有していることがあります。
具体的にはWhat3カ条は、(1)しっかりターゲットを見定められているか、(2)顧客のメリットに還元されているか、(3)世の中の当たり前ではなく独自性があるかどうか。
そしてHow3カ条は(1)顧客のメリットを表現できているか、(2)アイキャッチ力があるか、(3)ストーリーに納得感があるか──。これらの6カ条こそが、PBでヒットを生み出す源泉になっているのです。
また開発担当者は、きっとなにか面白い商品に出合えるに違いないと考え、驚きを求めてドンキに来店してくれる客にさえ受ければ良いと割り切っています。必ずしも万人受けする必要はなく、とがる、刺さる、突き抜けるの3拍子がそろった商品をひねり出すことを常に考えているそうです。
まさに、いつも新たな発見がある売り場づくりで、女性客にワクワク体験を楽しんでもらおう!という姿勢が、34期連続増収営業増益を達成する源泉となっているといえます。
マンネリこそ、お店を衰退させる大きな要因です。あなたのお店でも、常に新しい発見がある売り場づくりに取り組みましょう。

みなさんこんにちは、和田康彦です。
女性消費者は、今や消費の8割の主導権を握っていると言われています。
彼女たちは、ふだんは節約しながらも、自分たちが感じる楽しさや豊かさを享受できるものには積極的にお金を使う、メリハリ消費が得意です。単に安いだけでは買ってくれません。女性の好奇心を刺激して「ワクワク・ドキドキ」してもらうことこそが、女性客を増やしていくための鉄則です。
1.「お試し」体験で、購入前の不安を取り除こう。
●ひとは「得」よりも「損」を大きく感じる
みなさんは、「損失回避の心理」ということばを聞いたことがありますか。
損失回避の心理というのは、人間は損と得を同じ天秤にかけるのではなく、同じ金額なら利得よりも損失を大きく感じてしまうという現代消費者の心の傾向を表したことばです。
例えば同じ1万円でも、1万円をもらったときの喜びや満足感よりも、1万円を失ったときの苦痛や不満足のほうを大きく感じてしまう、という心理傾向のことをいいます。
そこで、人間は損失を回避しようと考え、行動するようになる。これを行動経済学では損失回避性と呼んでいます。
先行きが不透明で不確実な時代には、これまで以上にお客様は「今もっているものを失いたくない」「損をしたくない」という損失回避の心理が広がっていくのではないでしょうか。
●女性は特に「買い物で失敗したくない」という思いが強い
古くから家計を預かっている女性にとって、「買い物で失敗して家計に損失を与える」ことは直接自分の身に振りかかかってくることから、買い物にはとても慎重です。「ムダなお金を使ったらどうしよう」「良くない商品だったらどうしよう」「美味しくなかったらどうしよう」…このような「買い物では決して失敗したくない」という女性の気持ちは、バブル崩壊以降、給料が増えない失われた30年の間にますます強まっているといえます。
そのため、スマートフォンが普及した昨今では、レビューやクチコミを頼りに商品やサービスの評判を確認しながら最終決断を下すことが当たり前の購買行動として定着してきました。
つまり、女性客の心を動かすためには、購入時の不安を解消してあげることがとても重要になります。
●「試食」「試着」といった「お試し体験」が女性客の心を動かす
一方で、女性は攻撃的に売り込まれることをとても警戒しています。営業や接客販売でも、いきなり売り込まれると一気に引いてしまいます。
つまり、女性のお客様にはどんな時も「安心感」を与えることがとても重要です。
例えば、デパートやスーパーでの試食や試飲は、女性客の好奇心をちょっと刺激して安心して買ってもらうための入り口になります。お客様との会話が生まれ、商品の感想を聞くこともできます。
また女性は、試食や試飲をすると「買わないと何となく気が引ける」という気持ちになる傾向があり、結果としてついつい買っていただけることにつながります。
決して新しい手法ではありませんが、試食や試飲サービスであなたの商品にまず興味を持ってもらいましょう。お客様の舌で美味しさを確認してもらうことができれば、女性客は安心して財布のひもを緩めてくれるでしょう。
その他にも、たとえばブティックなどでは試着をしやすくしてあげるとか、試着室を広く、居心地がいいようにすると売上も増える傾向があります。
あなたのお店でも「お試し」サービスを上手に取り入れて、女性客に安心して買ってもらえる仕組みをつくっていきましょう。
●「無料お試しセット」の草分け、ドモホルンリンクルの93%はリピート客
毎日のように見聞きする再春館製薬のドモホルンリンクルのCM、あなたもきっと見たことがあると思います。今では、健康食品や化粧品通販では「無料お試しセット」や「送料無料」等は新規顧客開拓のための常套手段となっていますが、再春館製薬所のドモホルンリンクルは「無料お試しセット」の草分け的存在といえます。
このサービスは、ドモホルンリンクル全8点を3日間分たっぷり使用することができて、自分自身の肌で実感してから購入できるという内容で、通信販売が抱える新規購入の不安リスクを払拭。今では93%の顧客が3回以上のリピート客になっています。
売上も順調で2023年3月期は272億円。熊本県に本社を置く再春館製薬所は、県内の優良企業として就活生にも人気が高く、女性社員が8割を占めています。まさに、女性従業員自らが、一人一人の女性顧客の気持ちに寄り添い、満足と感動を届けながら、末永いお付き合いをしている企業の代表例です。
●化粧品やグルメを無料体験できる専門店が人気
2022年11月、東京原宿に体験型美容テーマパーク「Tierland」がオープンしました。このお店は、10代後半から20代のZ世代が対象。韓国・台湾・中国の約30社・100種類の商品の中から好みの商品を体験することができ、アンケート回答やSNSに商品レビューを書き込むと、無料でネイルやセルフエステ、肌診断などが受けられるというものです。
消費者にとっては最新の商品をお試しできる場として、企業は顧客のリアルな声を収集してマーケティングにつなげる場として活用しており、2023年6月には大宮にも2号店がオープンしています。
一方、全国の食品メーカー約100種類の商品を無料で味わえるのは、東京目黒区に2023年2月にオープンした試食の専門店「試食屋」です。
味やこだわりで勝負する全国の食品・飲料の小売り業者による消費者体験型ショップで、販売する場所ではなく「体験する場所」をコンセプトにした、インターネット時代の新たな取り組みとして注目を集めています。
● あなたのお店でもお客様が気軽にお試し体験出来る企画を考えてみよう!
全国の20-30代の働く独身女性に聞いた「商品のお試しに関する調査/eBayJapan合同会社調べ」では、お試しのメリットとして「納得して購入できる」をあげた人が7割以上、またお試しがきっかけで「購入するつもりはなかったが購入した経験がある人」も7割を超える結果となりました。
あなたのお店でも、新メニューが出来たら事前に試食してもらいお客様の意見を聞いてみる、新商品発売時には小分けした商品を試してもらう、気軽にお試し出来るテスターを商品の傍に置いておく、お得にお試し出来る特別セットを提供する、お試しクーポンをプレゼントする等々、購入前にお客様に安心していただけるお試し体験企画を考えてみてください。新規顧客の開拓に役立ち、お客様とのコミュニケーションも深まっていくでしょう。

みなさんこんにちは、和田康彦です。
以前にもお伝えしましたが、http://womanmarketing.net/info/5361994ライザップが運営する会員制フィットネスクラブ「chokoZAP(チョコザップ)」の勢いが止まりません。2022年7月の一号店オープンからわずか1年強で1000店舗を突破、会員数はすでに100万人を超えています。同社は26年までに2000店舗を目指し、引き続き店舗拡大を加速していくようです。
一方で、2005年に日本で1号店が生まれた女性専用の30分フィットネス「カーブス」も、2023年8月期の売上が前年比9.1%増の300億円、営業利益は前年比40.4%増の38億円とコロナ前を超えて過去最高を達成しています。会員数も80.9万人、店舗数も1971店(2023年11月末)と前年と比較しても順調に伸ばしています。
▪ターゲット層の明確化が成功のポイント
カーブスがここまで成長してきた要因で最も重要なことは、日本の高齢化社会の到来を先読みして、ターゲットを60歳以上のシニア女性層に絞り込んだことです。
ターゲットを絞り込むことで、潜在顧客のニーズが見えやすくなります。
シニア女性は、健康に対する不安や心配が年々高まり、運動の必要性は感じているものの、実際には運動していない人が大半です。
▪60歳以上の女性がフィットネスジムに求めていることをカタチに
そこでカーブスは、60歳以上のシニア女性専用のフィットネスジムをコンセプトにすることで、出店するのは女性たちが徒歩や自転車で通える生活圏内に限定しています。また利用者は女性だけ、スタッフも女性だけなので、男性の目を気にすることなく、メイクもせずに通えます。つまり「気軽に通いやすいフィットネスジム」を求めていた、シニア女性の潜在ニーズを満たすことに成功したわけです。
そして、ハードなトレーニングではなく、負荷の少ない30分限定サーキットトレーニングを採用することで、汗もさほどかくことなく「気軽に続けやすい」というベネフィットを提供しています。また、ジムにはミラーはなく、自分の体形を気にすることなく運動に集中できるのも、シニア女性に対する気の利いた配慮です。
カーブスでは、女性のコーチが常駐して継続して続けられるよう会員をサポートしているので、入会後は安心して続けることができます。また月に1回は体脂肪率などを計測して継続の効果を見える化して、会員のモチベーションを高めています。
さらに、コーチは会員を下の名前で呼んでくれるので、大切にされているという自己重要感も味わうことができます。
そのうえ、1週間行かないとコーチから電話がかかってきて、背中を押してくれるという温かいコミュニケーション術も会員にはうれしい限りです。
このようにカーブスでは、シニア女性がうれしいと思うコンテンツやサービスを次々に提供することで、今では、シニア女性が活き活きと生きていくためのコミュニティの場に進化しています。
カーブス入会へ入会した人の半数以上が紹介やクチコミがきっかけとなっており、顧客満足度の高さを物語っています。
「フィットネスジム=運動してダイエットする、健康づくりをする」という機能的ベネフィットを満たすだけでなく、シニア女性がフィットネスジムに求めていた潜在ニーズを読み解いて、情緒的ベネフィットを一つ一つカタチにしていったことが、カーブス成功の要因です。