体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。和田康彦です。
「ボタニスト(BOTANIST)」や「サロニア(SALONIA)」などで知られる株式会社I-neが2020年9月25日、東証マザーズへ上場します。
I-neは2007年に美容関連商品の企画、販売を目的として設立。12年にヘアアイロンなどの美容家電ブランドの「サロニア」を、15年にはヘアケアブランド「ボタニスト」をスタート。翌16年にリラクゼーションドリンク「チルアウト(CHILL OUT)」を発売するなどで健康飲料事業にも参入し、19年には日本コカ・コーラと合弁会社を設立しています。
同社の過去2年の業績は18年12月期の売上高が205億円、経常利益が2億7000万円、19年12月期の売上高が212億円、経常利益6億4000万円と増収増益で順調です。
同社の主力ブランド「ボタニスト」は、2015年に誕生。P&G、ユニリーバ、花王といった競合がひしめく中、小さな会社ながら尖がりを出すことで成功したブランドです。
「ボタニスト」は、2015年のノンシリコンシャンプーブームの一巡後、ボタニカル(植物由来の)をコンセプトに、従来のシャンプーと比べると高価格、サロンのシャンプーと比較すると低価格に位置する1500円前後の価格帯で勝負しました。
また、店頭で目立つカラフルなデザインボトルではなく、白と黒を基調にした文字だけというシンプルなボトル容器にすることで独自性を出し、他社製品との差別化を図りました。
ブランド誕生当初は広告宣伝予算も少なく、ECのみで販売するDtoCブランドの位置付けでしたが、楽天での売り上げ1位を獲得し続け認知度を拡大させました。その後は、人気に押されるようにドラッグストアなど小売店でも取り扱われるようになり売り上げが一気に拡大します。
プロモーションでも、同社の強みを活かしたSNSを駆使。特に発売当時若い女性に人気が出かけていたインスタグラムを積極的に活用。スタイリストなど影響力を持つインフルエンサーを味方にしたマーケティングにより、ボタニストの魅力は一気に拡散していきます。
現在はブランドをキャンドルやデフューザーなどのライフスタイル領域まで広げ、東京と大阪で旗艦店も運営。東京の店舗ではビーガンメニューをそろえたカフェも展開するなど、同社の看板ブランドとなっています。
2015年の発売からわずか5年で、ヘアケアブランドの主力ブランドに躍り出た「(BOTANIST)ボタニスト」からは、小さな会社がブランディングで成功するためのノウハウがたくさん学べます。
次回以降で、もう少し深堀していきたいと思います。お楽しみに。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
日本全国で多い日には一日何と80,000万本以上売れている高級「生」食パン専門店「乃が美」。2013年10月に大阪で創業し、わずか6年8ヶ月で目標だった全国47都道府県に出店、2020年9月現在189店舗を展開するほどの成長ぶりを見せています。
今回は、今や高級「生」食パンの代名詞にもなっている「乃が美」躍進の背景について、ブランディングという観点から分析していきたいと思います。
◆どうせなら多くの人に愛されて、歴史に残る日本一のものをつくりたい。
お父さんの事業の失敗から、幼いころ食べる事にも苦労していたという創業者の阪上雄司社長は、「おいしいものをお腹いっぱい食べてもらえる場所をつくろう」という想いから、飲食店経営の道に進みます。その後20年以上に亘って飲食店経営に携わってきましたが、流行や世情に左右される飲食店業界は粗利も低く、「どうせなら多くの人に愛されて、歴史に残る日本一のものをつくりたい」という想いが日に日に強くなっていったそうです。
◆ふわふわの柔らかい食パンをつくろう。
「長く愛されるものって何だろう?」阪上社長は来る日も来る日も考え続けました。そんな時、大阪プロレス協会の会長として慰問していた老人ホームのおじいちゃんやおばあちゃんからこんな声を聞きます。「食べている時がいちばんしあわせ。でも朝食に出てくるパンは耳が固くて食べられへん」。また、卵アレルギーの自分の子供が毎日「パサパサの食パン」を食べていることも気になっていました。
「そうだ!耳までおいしい、ふわふわの柔らかい食パンをつくろう!」阪上社長の心に芽生えたそんな熱い想いが、乃が美を生み出す原点になったといいます。この信念の裏には、長年の飲食店経営から学んだ「柔らかくて甘いものは流行の定番」という同氏ならではの勘や信念もあったようです。
◆こだわりこだわり抜いて、完成まで2年。
パン作りは全くの素人でしたが、「卵を一切使わないのに、ちぎってそのまま食べられるほど柔らかくてほんのり甘い食パン」を目指して開発はスタート。粉の種類、材料の配合、ミキシングのタイミング、焼く温度と時間など何度も何度も試行錯誤し、ようやく2年後「やわらかさ」「きめ細かさ」「甘み」「香り」すべてにおいて納得のいく食パンが完成しました。
ミキシングされた生地はトロトロになったお餅のようなテクスチャー、焼き上がりは「腰折れ」に近いぎりぎりの柔らかさで、これまでのパン作りの常識では考えられない状態だったといいます。
◆徹底した素材への吟味から、乃が美の高級「生」食パンは生まれる。
◆通常の倍の価格でも、少しずつ想いが伝わって行列のできる店へ。
乃が美の高級「生」食パンは、高級という名前が示す通り、1芹432円(税込)、2芹864円(税込)と通常の食パン価格の倍以上のお値段です。当初は「そんな高いパン、売れるわけがない」と周りの人からも非難され、その言葉通り売れ残りの山だったといいます。しかしながら、地道に試食してもらうことで徐々に、乃が美のこだわりの美味しさが伝わっていきます。「うちの子はアレルギーなんで、乃が美さんのパンじゃないと食べさせられない」というお母さんや、「うちのおじいちゃん、このパンでないと食べないのよ」という娘さんなど、乃が美ファンはどんどん増えて、大阪の裏路地にある乃が美の店の前には毎日長い行列ができました。
◆マスコミの力で知名度が一気にアップ。
パンブームの兆しがあった当時、行列ができる店をマスコミが放っておくわけがありません。大阪の情報番組ではこぞって乃が美のこだわりや愛用者の声を取り上げました。その結果、消費者の心の中には、「一度は食べてみたい高級「生」食パン乃が美」というイメージが醸成されます。そういう私も、テレビで紹介されてすぐに、大阪上本町にある総本店を訪れたことを思い出します。ただ、その日はあいにく売れ切れで悔しい思いをして帰ってきました。その後、2017年から2019年まで3年連続で、「Yahoo!検索大賞 食品部門賞」を受賞。また、マガジンハウスの「&premium」という雑誌で『日本の食パン、名品10本。』に取り上げられるなど、全国区に押し上げられます。さらにSNSの普及も手伝い、パンマニアのブログや芸能人にも取り上げられるようになり、乃が美の魅力は一気に拡散していきます。
◆乃が美のブランディングから学ぶ
ここまで見てきたように、「歴史に残る日本一の食パンブランド」を目指している乃が美には、小さなお店や会社が学べるブランディングの本質が詰まっています。
① 揺るぎない信念とビジョン、理念
「ブランドは強い想いから生まれる」ということが、乃が美の成功ストーリーからよく伝わってきます。「どうせなら多くの人に愛されて、歴史に残る日本一のものをつくりたい」という熱い想いが、「ふわふわのおいしいパンをつくろう」という具体的なビジョンにつながり、その結果として、誰もがおいしいと納得する商品が誕生しました。まさに、「たくさんの人を幸せにしたい」という強い想いが乃が美のブランド力の基盤になっているわけです。
② 圧倒的な商品力で惹きつける。
お客様がお金を出してくれるのは、あくまでも商品に対してです。「ふわふわのおいしいパンをつくろう」という想いから挑戦して2年。徹底した素材へのこだわりと妥協しないモノづくりがこれまでの食パンの概念を超えた新しい価値を生み出しました。通常の食パンの倍以上の価格でも、提供する価値がそのお値段以上であるとお客様が納得してくれれば、お客様は喜んで買ってくれます。そして常連さんになり、やがてはファンになってくれます。強いブランドの核は、あくまでも強い商品力であることを乃が美は教えてくれています。
③ ネーミングに込められた願い。
乃が美という名前にも、創業者の熱い想いが込められています。「乃」には「すなわち、まさしく」という意味があり、「美」には「姿、色が美しい。感動、美味い」という意味があるそうです。
ここから、「すなわち、日本一美味しい食パンをお届けする」「まさしく、食パンを通して日本一の感動をお届けする」という揺るぎない信念を込めた「乃が美」というネーミングが生まれました。
熱い想いを込めたネーミングは、多くの人に感動を与えることにつながります。
④ 老舗のような雰囲気を醸し出す
阪上社長は長い飲食店経営から「長く愛されるのは、老舗で強い一品のあるところ」という本質を学んだといいます。そこで、老舗和菓子店をイメージした、伝統を感じる筆文字のロゴを制作。またおみやげや差し入れにも喜ばれる白い紙袋にもこだわりました。私の場合、街で乃が美の紙袋を持っている人を見かけると、思わず柔らかでもちもちした食感が頭の中に浮かび、また買いに行こうという気持ちになるから不思議です。中身はもちろんですが、ロゴや紙袋もブランドイメージを想起させるためには重要な要素になります。
⑤ 本当に美味いものがある老舗には立地が悪くても人は集まる。
大阪上本町にある創業の店、乃が美総本店は、駅から歩いて約5分。大きな通りからちょっと奥に入ったひっそりした裏路地に店舗を構えています。私が訪れた時も、グーグルマップを見ながら結構迷いながら店にたどり着いたことを覚えています。このように、乃が美の店の大半はひっそりした路地裏に位置していますが、ふわふわの柔らかいパンを求めて、立地には関係なく毎日多くの人が訪れています。ブランド力が強ければ、その魅力に人は自然に惹きつけられます。
⑥ 地域に愛される「地元のパン屋さん」を目指す。
今や、47都道府県に189店舗を展開する乃が美ですが、目指しているのはナショナルブランドではなく、地域の人たちに愛される「地元のパン屋さん」です。大量生産は絶対にしないことを約束し、今後も「パン工場」を併設した店舗の展開を目指していきます。どの店にもひとつひとつ手作りで焼き上げた食パンを並べることをミッションにしている乃が美。いつまでも創業の気持ちを持ち続けることが、強いブランドづくりの基本となります。
⑦ 評判を信頼につなげる。
乃が美の店内には、2017年から2019年まで3年連続で、「Yahoo!検索大賞 食品部門賞」を受賞したことや雑誌で『日本の食パン、名品10本。』に取り上げられたことを伝えるポスターが貼られています。お客様からのよい評判を武器に安心や信頼を深めていくことは、強いブランドを育てていく上でとても重要な取り組みになります。
以上、高級「生」食パン専門店『乃が美』から学ぶ小さな会社のブランディングについて解説してきました。どんな会社やお店も最初はゼロからのスタートです。ただ、スタート地点で、「世の中をよくしたい、多くの人を幸せにしたい」という強い想いがあるかどうかが、ブランディングが成功するための肝といえます。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
今日2020年9月9日の日本経済新聞朝刊に、「日本の主要企業で事業セグメント別の営業利益を10年前と比較したところ、2割の企業で「稼ぎ頭」が交代した。」という記事が掲載されていました。
日経500種平均株価の採用企業のうち事業セグメント別の営業利益を継続比較できるなどの一定条件を満たす約300社を対象に、日本経済新聞が2019年度と10年前の09年度を比較したところ、稼ぎ頭が交代したのは70社だったそうです。
例えばイオンは、本業の総合小売からクレジットカードなどを扱う「総合金融」に代わりました。顧客情報の活用や運営の一元化のため、グループの金融事業を13年に立ち上げたイオンフィナンシャルサービスに統合。電子マネー「WAON」でのポイント加算を集客力につなげる好循環も生み出し、連結営業利益(20年2月期)の3割超を稼ぐまでに成長しています。
また、小所帯家族の増加による「個食」の浸透などを追い風に、冷凍食品などを強化してきたニチレイでは「加工食品」が稼ぎ頭になりました。同事業の営業利益は10年前に比べ6.4倍に拡大。10年前の稼ぎ頭は旧社名の「日本冷蔵」が示す通り冷蔵倉庫での保管・配送を手掛ける「低温物流事業」でしたが、好調な加工食品が16年度から上回ッテいます。
おかずが中心だった冷食は、時代とともにチャーハンなど主食でも競争が激化。ニチレイは商品改良と販促で加工食品事業を強化してき増した。新型コロナウイルス下でも冷食需要は根強く、21年3月期の連結営業利益は過去最高の315億円を見込見ます。同社は今後も、中長期な視点で新市場への展開を迅速に進めていく計画です。
他には、TDKはスマートフォンなどに使うリチウムイオン電池を伸ばしてきた結果、稼ぎ頭が「エナジー応用製品」になりました。サッポロホールディングスはビール以外の柱として東京・恵比寿を軸とする不動産事業を育ててきました。ネット広告が軸だったサイバーエージェントは、今ではスマホ向けが強い「ゲーム」が最も稼ぐ姿となっています。
今回調査で稼ぎ頭が交代した企業の純利益の合計は10年前と比べ5.6倍に拡大、交代していない企業全体(2.4倍)を大きく上回ったそうです。
コロナ禍の長期化も懸念されるなか、次の10年を勝ち残る経営者の選別眼が一段と求められています。そのためには、中長期的視点に立った時流を見極めることが重要です。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
西友のPB「みなさまのお墨付き」は、第三者機関が実施する厳正な消費者テストにおいて、味/使い勝手・価格・量に関しての評価を集計して好評価の製品のみを商品化するという、ユニークな仕組みを取り入れたブランドです。
◆消費者テストの支持率80%以上で商品化
2012年12月の発売以来、“有名メーカーと同等以上の品質で10%以上低価格 ~良いのに安い!~” を目指して、お客様のニーズに応える商品を開発。2020年8月時点で 約1,000アイテム以上を取り扱っています。
より厳選された製品のみを商品化するために2019年10月にはブランドのルールを見直し、それまでの消費者テストの支持率70%以上で合格という基準を80%に引き上げました。消費者テストに合格して商品化された後も、味や価格の最新トレンドに対応することを目的に、定期的に再テストを実施しています。
消費者の支持率を10ポイント挙げるのは、簡単なことではありません。当然不合格になる商品も増えます。それでも同社は、改良を繰り返しながら再度消費者テストを受けることで、商品化を実現しています。
その一例がインスタントの豚汁。当初は65.1%の支持しか得られませんでしたが、「具材が少ないという消費者からの不満を聞き、具材を60%以上増やした結果、96.4%の支持を獲得するに至ったといいます。
多くの小売業のPBが「小売側の視点や外部の専門家の視点で価値を認めた」商品であるのとは対照的で、商品の品質や味についての担保を消費者の評価を基にしている点で、他にはないブランディングを行うPBであると言えます。
これまでにカップ麺、ポテトチップスなどにおいてシーズナルフレーバー商品の数量限定発売や、本格的なカレーのレトルト食品のような個食用簡便食など特色あるアイテムも追加してきました。
◆西友のビジョンと4つの提供価値
現在西友は、「ローカル・バリュー・リテーラー(「地域のみなさまに、良いものを安く」)」というビジョンを実現するために策定した中期事業計画「スパーク 2022」を実行中です。
「ローカル・バリュー・リテーラー」になるために、西友では「毎日のお買い物を一番安く」「うれしい、おいしいお惣菜」 「新鮮な生鮮食品」、そして「快適な買い物体験」の4つの価値提供を進めています。
同社では、提供価値のひとつ「毎日のお買い物を一番安く」を実現するための施策の1つとして、PBを位置付けています。西友のPBは、消費者テストに合格した製品だけを商品化した「みなさまのお墨付き」とベーシックな商品に特化した「きほんのき」の2種類です。
◆今後はさらに「みなさまのお墨付き」の新商品開発を強化
今後は、「みなさまのお墨付き」の新商品開発の加速化および開発手法を強化していく計画です。その一環として、この秋、「みなさまのお墨付き」から、インスタント食品、お菓子、缶詰、日用品、ペットフードなど100品目以上もの新商品を全国の西友・サニーの店舗と楽天西友ネットスーパーで発売。今期(2020年12月期)は前期比で2倍の「みなさまのお墨付き」新商品を発売する予定で、2022年には、グロサリー分野における同ブランドの売上構成比20%以上を目指しています。
西友でも当初はナショナルブランドのベンチマーク型PBの開発が主軸でしたが、消費者の声を生かした商品開発を数多く進めていくなかで、徐々に「みなさまのお墨付き」がベンチマークPBの殻を破り始め、お客さまの支持を得られるエッジの効いた商品を開発できるようになったといいます。
その際たる例が、レトルトカレーシリーズです。14年に4種類のレトルトカレーを発売して以来、150円という低価格で本格的なエスニックカレーが楽しめるとあって、PBにおける人気ナンバーワンカテゴリーとなっています。最も人気なのが、タイカレーの1つマッサマンカレー。当初はお客さまに馴染みのないカレーでしたが、今では西友のレトルトカレーカテゴリーで常に上位を占めています
◆コロナ禍で4つの切り口で商品開発(独自価値の提供)
そうしたなか、西友ではコロナ禍における消費者ニーズの変化として、巣篭もり・在宅による調理負担の増加と、生活防衛意識の高まりに対応した商品開発を進めることで、さらなるPBの拡大をめざします。
具体的には、 昨今の自宅で過ごす時間の増加や健康志向などニューノーマル時代の生活スタイルへの変化を踏まえ、今後の商品開発では、「Quick & Easy~もっと簡単に、もっと美味しく」「Guilt Free~話題のギルトフリーなおやつ」「Healthy~健康生活、はじめるチャンス」「Stay Home~お家時間を楽しもう」の4つを新基軸として、お客様のニーズに応える新商品を随時発売して「みなさまのお墨付き」のラインナップを充実させていきます。
このうちQuick & Easyでは、女性をターゲットに小盛りのご飯の上にかけるだで、ガパオやユッケジャンなど家庭では作るのに手間がかかるメニューを手軽に楽しめる「On the ごはんシリーズ」を発売。4Guilt freeでは、コロナ禍で菓子カテゴリーが慎重する中、罪悪感を感じずにお菓子を楽しめるよう、食物繊維を含有させた糖質オフのお菓子を開発。NBにはないフレーバーも投入します。
西友では商品開発のスピードも加速させ、20年の1000アイテムから、22年までに2000アイテムに増やし、グロサリーの構成比20%をめざす考えです。
◆消費者起点で独自の価値を提供してお客様を笑顔にする
「みなさまのお墨付き」からは、ブランドづくりをしていく上で学べる点がたくさんあります。ブランディングとは、商品やサービス、企業が、独自の価値をお客様に提供して、お客様に喜んでもらい、その結果お客様から「大好き」といってもらえるようになる活動です。
まず、お客様に喜んでもらうためには、「みなさまのお墨付き」が目指すような消費者起点に立った商品づくりが欠かせません。
また、独自の価値をお客様に提供していくためには、まず確固たるビジョンがなければいけません。
西友は、「ローカル・バリュー・リテーラー(「地域のみなさまに、良いものを安く」)」というビジョンを掲げ、それを実現していくために、「毎日のお買い物を一番安く」「うれしい、おいしいお惣菜」 「新鮮な生鮮食品」、そして「快適な買い物体験」の4つの価値を提供していくことを明確にしています。
さらに、変化の激しい現代は、柔軟に変化対応していくことも重要なポイントです。同社は、昨今の自宅で過ごす時間の増加や健康志向などニューノーマル時代の生活スタイルへの変化を踏まえ、今後の商品開発では、「Quick & Easy~もっと簡単に、もっと美味しく」「Guilt Free~話題のギルトフリーなおやつ」「Healthy~健康生活、はじめるチャンス」「Stay Home~お家時間を楽しもう」の4つを新基軸として商品開発していくことを明らかにしています。
その結果、ごはんにかけるだけで本格アジアンメニューになる「ガパオ」(1人前 / 150円)や、おから等を使い食物繊維がたっぷりで糖質も抑えたロカボビスケット「ザクザク食感の豆乳ビスケット(38g / 150円)」など、お客様の潜在ニーズを満たす新商品が続々誕生しています。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
サントリー食品インターナショナル(株)は、サントリー緑茶「伊右衛門」において、発売以来最大のリニューアルを行い、2020年4月14日から全国で発売しています。
サントリー緑茶「伊右衛門」は、創業200年以上の歴史をもつ、京都の老舗茶舗「福寿園」の茶匠が厳選した茶葉を使用した本格緑茶です。2004年の発売以来、幅広いお客様の支持を受けて、2019年には累計販売本数100億本を突破しました。
近年は、生活スタイルの変化により、緑茶のRTD(Ready To Drink)=蓋を開けてすぐにそのまま飲める飲料が進行しています。そうした中、「伊右衛門」はお客様に“淹れたてのような緑茶”を楽しんでもらえるペットボトル緑茶を目指し、中味・パッケージを大幅にリニューアルしました。
●独自の価値創造「おいしさ=機能的価値」
今回のリニューアルでは。香り成分や旨味が豊富と言われる一番茶を「伊右衛門」本体史上最大の比率で使用し、そのよさを最大限に活かした焙煎技術と抽出方法で、淹れたてのような「豊かな香り・旨み」と「雑味のない穏やかな渋み」を両立しました。また、サントリー独自の技術で緑茶本来の鮮やかな緑の水色(すいしょく)を実現しています。
●独自の価値創造「デザイン=情緒的価値」
鮮やかな緑の水色(すいしょく)を体感してもらえるように、ボトルを覆う面積が少ないロールラベルを採用。また、600ml、525mlに関してはラベルをめくって緑の水色(すいしょく)を楽めるための仕掛けとして、ラベル裏やボトル中央部に招き猫や七福神など縁起の良い絵柄を配しています。
さらに緑茶本来の“鮮やかな緑の水色(すいしょく)”を最大限体感もらおうと、通常のフィルムラベルを外した商品「伊右衛門ラベルレス(首掛式ラベル付)」を数量限定で発売。淹れたてのような色・味・香りを目指してリニューアルした新「伊右衛門」を、視覚から楽しんでもらうサントリーらしいアイデアです。
リニューアルした伊右衛門は、以前にもまして人気が高まっており、7月の販売量が前年同月比4割増となるなど好調な売れ行きが続いています。これを受けて同社は7~9月の生産量を前年同期に比べて5割増やす計画です。
清涼飲料は新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛の影響などで自動販売機やコンビニでの販売が落ち込んでいます。飲料総研によると、1~6月の販売数量は8億2850万ケースと前年同期比8%減少したようです。自販機は18%減、コンビニは10%減と特に苦戦し、梅雨明けした8月以降も前年割れが続いています。
ペットボトル緑茶飲料のブランド価値は、美味しさという機能的価値とパッケージやCMなどのデザイン(情緒的)価値の掛け合わせで生まれます。
今回のリニューアルでは、美味しさ=機能的価値を従来にもまして高めるとともに、ユニークなアイデアでデザイン価値も高めることで、伊右衛門がお客様に提供する価値が飛躍的に高まったといえます。
サントリー伊右衛門は、価格に見合った価値ではなく、価格を大幅に超えるあっと驚く価値を提供することで、圧倒的なブランド力を発揮しました。
独自の価値を磨いてお客様を笑顔を大きくすることが、ブランディングの醍醐味です。