体験消費時代のマーケティングヒント

2019-04-29 14:46:00

みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

国立社会保障・人口問題研究所は、4月19日、2019(平成31)年推計の「日本の世帯数の将来推計 (都道府県別推計)」を公表しました。 この推計は5年ごとにまとめており、都道府県別に、5つの家族類型(単独世帯、夫婦のみの世帯、 夫婦と子から成る世帯、ひとり親と子から成る世帯、その他の一般世帯)ごとにみた将来の世帯数を推計しています。今回は2015(平成27)年の国勢調査を基に、2015~40年の25年間についての将来推計を行っています。

 

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出典:国立社会保障・人口問題研究所HP

 

調査結果によると、2040年に世帯主が65歳以上の世帯は全体の44%を占め、75歳以上の世帯は1217万世帯で全体の4分の1を占めることがわかります。また、一人暮らしは1994万人で全世帯の4割を超えることになります。人口は2008年を境に減少傾向にありますが、世帯数も2025年の5411万世帯を境に減少することがわかります。これまでの日本は、「夫婦と子供」という3~4人程度の核家族をモデル家族としてとらえられてきました。ただ核家族も1980年代には40%を越えていたものの、2000年には31.9%、2040年には23.3%に減少します。 

これに代わって存在感を高めているのが高齢者の「おひとりさま」です。企業は、このような世帯構成の変化に合わせた事業の転換が必要になってきています。例えば、セコムはスマートフォンで主に単身高齢者の体調を見守るサービスをスタートさせています。毎日指定した時間に画面操作に反応がなければ家族などに伝え、必要に応じてセコムの警備員が駆け付けるというサービスです。またコンビニ大手のファミリーマートは、小容量のお惣菜シリーズ「お母さん食堂」の2019年2月期の売上が前期より2割増と、単身向け商品が好調に推移しています。

 

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以下に、今回の調査推計結果のポイントをまとめておきます。
【推計結果のポイント】
1 世帯数は2035年までに46都道府県で減少を開始
・世帯数が減少する都道府県数は今後次第に増え、2035年までには沖縄県を除く46都道府県 で世帯数が減少する。
・2040年の世帯数は、42道府県で2015年よりも少なくなる。

2 平均世帯人員はすべての都道府県で減少
・平均世帯人員は2015年から2040年には、すべての都道府県で減少する。
・2015年に平均世帯人員が1.99人となった東京都に続き、2040年までに北海道や高知県で平均世帯人員が2人を下回る。 

3 2025年にはすべての都道府県で単独世帯が最多に
・2015年に41都道府県で最大の割合を占めていた単独世帯は、2025年にはすべての都道府県で最大の割合を占めるようになる。 
4 65歳以上の世帯主の割合は、2040年には45道府県で40%以上に
・65歳以上の世帯主が全世帯主に占める割合は、2030年にはすべての都道府県で30%以上となり、2040年には45道府県で40%を超える。
・75歳以上の世帯主が全世帯主に占める割合は、2040年には東京都を除く46道府県で20%以 上となる。 
5 世帯主65歳以上の世帯における単独世帯の割合は、2040年には全都道府県で30%以上に
・世帯主65歳以上の世帯に占める単独世帯の割合は、2040年にはすべての都道府県で30%以上となり、15都道府県では40%を超える。
・65歳以上人口に占める単独世帯主の割合は、すべての都道府県で上昇し、特に東京都では 2040年に29.2%に達する。

 

2019-04-28 14:43:00

みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

このところ「ESG」ということばをよく耳にするようになりました。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったものです。今日、企業の長期的な成長のためには、ESGが示す3つの観点が必要だという考え方が世界的に広まってきています。一方、ESGの観点が薄い企業は、大きなリスクを抱えた企業であり、長期的な成長ができない企業だということを意味します。ESGの観点は、企業の株主である機関投資家の間で急速に広がってきています。投資の意思決定において、従来型の財務情報だけを重視するだけでなく、ESGも考慮に入れる手法は「ESG投資」と呼ばれています。 

そんな流れの中で、2019年4月28日付の日本経済新聞では、「企業の報酬、ESGの波 偽ニュース対策・温暖化ガス削減…目標達成を後押し」という記事を掲載。役員や従業員の報酬にESG(環境・社会・企業統治)評価を取り入れる動きが世界的に広がってきていることを報じています。 

例えば米フェイスブックは、2019年前半にも従業員・役員の賞与を、フェイクニュース対策など、同社が直面する社会的な課題の解決に向けた進捗状況に連動するように変更します。従来はユーザー数の伸びや売上高増への貢献度などで評価していましたが、昨年3月に個人情報の流出問題が発覚して以来、投資家から厳しい批判を受け、従業員が長期的な視点を持って働くよう促す評価体系に変えるようです。

 

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日本でもオムロンは役員報酬のうち、中長期の業績に連動して株式報酬で支給する部分に外部評価機関からのESG評価を反映させます。コニカミノルタも役員報酬の年度業績部分を算定する際、ESGなど非財務的な評価を加える取り組みを始めています。 

背景には、ESGを重視する投資家が増えていることがあります。このところ株価などにマイナスの影響が出るのを避ける狙いもあって、温暖化ガスの削減目標などを打ち出す企業が増えています。この際、ESG目標の達成が確実なものになるよう、報酬と連動させる仕組みを導入するように投資家が迫っているのです。今後は日本企業の間でもESG目標の達成度で報酬を決める動きは加速していきそうです。 

企業経営においても生活者のライフスタイルにおいても「サステナビリティ」という概念が浸透しつつある中、社会や環境を意識した経営戦略や生き方がより良い未来をつくる鍵となりそうです。

 

2019-04-12 15:04:00

みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

日本の家電の歴史を見ていくと、1953年(昭和28年)、三洋電機が電気洗濯機を発売。その後、昭和30年代(1955年~1964年)には、洗濯機、冷蔵庫、白黒テレビという「3種の神器」が一気に普及しました。続いて、昭和40年代には、3C(カー、クーラー、カラーテレビ)が普及し始め、当時憧れだったアメリカン・ウェイ・オブ・ライフに近づいていきました。それ以降今日に至るまで、家電メーカーは技術革新を繰り返し、より性能の良いもの、より大型のもの、より省エネを実現できるものへとスペックを進化させてきました。つまり、家電製品は不便さを解消することで私たちの生活に役立ってきたわけです。しかし、生活が十分に便利になった今、生活者が家電に求めることは変化してきています。 

2015年にバルミューダが発売した「バルミューダ ザトースター」は、2万円以上もする高価格にもかかわらず、独自のスチームテクノロジーと温度制御により、窯から出したばかりの焼きたての味を食べられるという評判を呼び大ヒット。また、独自の技術によって自然界の風を再現する扇風機「The GreenFan」は、夏の午後を吹き抜ける心地よい風を体験できるとあって、こちらも3万円台の高価格にもかかわらず話題の商品になりました。

バルミューダは、2003年、代表の寺尾玄氏が設立したクリエイティブとテクノロジーの会社。同社のミッションは「自由な心で夢見た未来を、技術の力で実現して人びとの役に立つ」。新しい考え方で、これまでになかった価値を持つ家電をつくっていくことを目指しています。寺尾氏は、「現代を生きる私たちが道具やサービスに求めているのは、驚きや感動、うれしくなるような体験なのだと思います。バルミューダは家電という道具を通して、心躍るような、素晴らしい体験を皆様にお届けしたいと考えている企業です。」と語っています。 

さて、その「バルミューダ(BALMUDA)」から、子どもの目を守るためのデスクライト“バルミューダ ザ・ライト”が発売されました。製品は既存のキッチンシリーズ、空調シリーズに次ぐ3つ目のカテゴリーになります。

 

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文部科学省の学校保健統計調査(2017年度)によると、近年の子どもの視力低下は著しく、2017年には裸眼視力が「1.0未満」の小学生の割合は32.5%と過去最高に。従来の原因にくわえ、タブレットやスマホなどのブルーライトを発する光を長時間見ることも一因と考えられ対策が必要とされてきました。 

誰しも、デスクに向かい集中していると徐々に姿勢が悪くなりますが、特に大人に比べ背が低い子どもは目線が低く、とりわけ下方向が見えづらい傾向があります。そのため、手もとをよく見ようと頭を下げ、ますます視界は狭くなりさらに、上方からの照明の光による自身の頭の影が手もとを暗くしてしまいます。バルミューダ ザ ライトは、この視界と姿勢の関係性に着目。子どもの視界に最適な光で照らすフォワードビームテクノロジーを手術灯で国内シェアNo.1の山田医療照明と共同開発。離れた場所から広く手元を照らし、子どもの目線の先に影を作らない光を実現しました。 

さらに、デスク上でも青空の下で見るような本来の色を再現する太陽光LEDを採用。太陽光の波長に近い太陽光LEDは、ブルーライトのピーク波長が一般的な白色LEDライトの約半分。自然光のように目に優しい光で、子どもの目の疲労を抑え、集中を妨げないことが特徴で、成長期にある子供たちの目に優しい理想的な光だそうです。 

さらに、もう一つの特徴がそのデザインで、あえてシンプルな見た目にすることで照明台に文房具を刺したり、シールを自由に貼ることができるような遊び心を取り入れています。ライトの操作音はピアノ音。“90%までのデザイン”をテーマにし、最後の10%は子どもたちが自由にデザインできる余白としたとのこと。

 
寺尾玄・社長は制作背景について、「われわれはクリエイティブとテクノロジーの会社。クリエイティブで夢見た未来をテクノロジーで実現したいと思っている。自宅でいつも息子が机に顔を近づけて絵を描くたび、前かがみになって目が悪くならないかと心配していた。子どもが前かがみになるのは、大人と子どもの視界が異なるから。子どもたちが自由に夢を見られるために、前かがみにならずに絵を描くことができるライトを作りたいと考えた」と語っています。 

開発に着手したのは2014年。ヒット商品となった「バルミューダ ザ・トースター」よりも先に動き始めていたプロジェクトなので、かれこれ4年を費やした思い入れの強い商品だということがわかります。この開発にかける熱い想いとテクノロジーの融合が、バルミューダ流イノベーションのベースになっているのだと思います。 

来年以降、照明カテゴリーでのさらなるラインアップを予定。同社の2017年度の売り上げは89億円で、今年度は100億円以上を計画しています。

 

2019-04-12 14:53:00

みなさんこんにちは、和田康彦です。

 

「自分たちは大きな市場は狙わない。すべて非常に特殊なニッチのサービスばかりを追求する。そのニッチ分野で世界のトップ企業になり、大きなシェアを獲得できれば、その市場で高い利益率を確保できる。ただ、それだけでグローバルに大きな企業になれるわけではない。しかし、10~20の分野でニッチトップになれば、全体として巨大な金融機関になれることも可能であるのだ。」 

今から20年ほど前、当時成功を収めていたGEの(ゼネラル・エレクトリック)の金融部門であるGEキャピタルのトップの言葉です。 

経済が高度成長から成熟の時代に移り、消費者の嗜好が多様化し、衣服も含めたモノへの消費に飽和感が起きています。これまで大手小売業にとってマスマーケティングの手法は欠かせないものでした。ただ、今後はその中の細かな部分で特徴を出していくことが全体としての差別化につながります。 

例えば、阪急うめだ本店は、4階のシューズギャラリーにスニーカーの自主編集売り場をオープン。バイヤーが国内外からセレクトしたモードなブランドを品揃えしています。売り場面積は約50平方メートル。スニーカーを扱う既存店「スニーカーズ バイ エミ(Sneakers by emmi)」に隣接し、同店を含むスニーカー売り場を「スニーカー エディット(SNEAKER EDIT)」と名付けました。

 

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 また、高島屋は日本橋店(東京・中央)内に女性がパーティーなどで着飾るドレスを集めたコーナーなどを新設しています。 

このように、百貨店のように大きな規模の店舗を運営する場合には、その中の細かな部分で特徴を出していくことが、全体としての差別化につながります。 

売上規模は小さくても、キラット光る魅力ある売場を作ることが、全体の集客力アップにもつながる時代です。

 

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