体験消費時代のマーケティングヒント

2018-07-29 14:59:00

みなさんここんにちは。和田康彦です。

 

肉や魚といった生鮮食品から牛乳や調味料、豆腐やパンなど、毎日の生活に必要な食品を自宅に届けてくれる食品宅配業界が元気だ。矢野経済研究所の調べによると、2016年度の食品宅配市場規模は、前年比3.3%増の2兆782億円。縮小傾向にある食関連市場の中で数少ない有望市場といえる。

 

仕事と家事の両立に忙しい共働き世帯や子育て世帯で利用者が増えているほか、買い物に行きづらいシニア世帯の利用も後押ししている。同研究所の予測では2021年には2兆3985億円に成長していくとみられている。

 

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◆7月1日、オイシックス・ラ・大地株式会社が発足
そんな成長市場を狙って、大規模な企業再編や新規参入が相次いでいる。インターネット食品宅配大手のオイシックスは、2017年10月同業の大地を守る会と経営統合。次いで2018年2月にはNTTドコモよりらでぃっしゅぼーやの株式100%を譲渡し、2018年7月1日オイシックス・ラ・大地株式会社を発足させる。Oisix、大地を守る会、らでぃっしゅぼーやのサービスブランドは継続しながら、デジタルマーケティング、生産者ネットワーク、物流面でのシナジーを構築し、高付加価値な食品宅配マーケットを牽引。今期は売上610億円を目指す。オイシックスでは、2,013年7月から展開している食材とレシピがセットになったミールキット(kitoisix)が働く女性に支持されて好調。累計出荷数は1000万セット(2018年5月)を突破し、今後はNTTドコモと共同でミールキット専用のECサイトの立ち上げを計画している。その他、買い物難民を支援する移動スーパー事業「とくし丸」(2016年5月買収)も順調に拡大しているようだ。

 

◆セブン&アイとアスクルのLOHACOは「IYフレッシュ」開始
一方で、セブン&アイとアスクルのLOHACOは2017年11月28日より「IYフレッシュ」開始した。家事・仕事・育児に忙しい都市部の30~40代女性をメインターゲットとし、セブン&アイの商品をアスクルの配送網で新鮮なまま毎日の食卓に届ける。ロハコの1時間単位指定配達システムを活用。14時までの注文なら翌日の9時~翌々日の22時までに配達。配達手数料は、LOHACOの商品とまとめて4500円以上で無料。4500円未満の場合は350円(税込み)。スマホで毎日の生鮮品を買い物する新たな都市型生鮮宅配を目指す

 

◆イオンも週1回決まった曜日に食品などを届ける定期宅配事業に参入
イオンも週1回決まった曜日に食品などを届ける定期宅配事業に参入した。サービス名は「クバリエ」。2018年4月から千葉市の1店舗で開始。年内にもう一店舗増やし、事業モデルを構築し、当面首都圏で6万人の会員獲得を目指す。当初は生鮮食品、加工食品、赤ちゃん用品、専用商品として「ミールキット」など1000品目でスタート。生協のビジネスモデルを流用し、会員には毎週紙のカタログを配布、ネットで注文してもらう。会費は無料、送料は1回あたり180円、注文なくても手数料100円を徴収する。増加する高齢者や共働き世帯対応していく。

 

◆センター内の商品を6温度帯に分けて適温管理する「Amazon フレッシュ」
各社にとって最も脅威となるのは「Amazon フレッシュ」だ。米国で07年スタート。その後英国、日本、ドイツへ拡大、日本では2017年4月21日スタートした。果物、鮮魚、精肉、乳製品等1万7000点以上の食料品他、キッチン商品、ペット用品等の日用雑貨合計10万点以上を取り扱う。現在の配送対象エリアは、東京都の港区、千代田区、中央区、江東区、墨田区、江戸川区の6区域(一部エリアを除く)だが、今後順次拡大していく予定だ。サービスの対象者は、Amazonプライム会員に限定。プライムの会費3900円(税込)に加え、利用する会員は月額500円(税込)が必要。「Amazonフレッシュ」を30日間無料で体験できるサービスも用意している。配送は、午前8時から深夜0時までの間、2時間ごとの配送時間帯から指定可能。注文から最短で4時間後に商品を購入者の手元に届ける。注文金額が6000円(税込)以上の場合、送料無料。注文額が6000円(税込)未満の場合、1回の注文あたり配送料が500円(税込)必要となる。強みは、センター内の商品を6温度帯に分けて【① 常温(25℃前後の室温でドライ食品など用)、② 16℃(バナナなどトロピカル系用)、③ 7℃(トマト、パプリカなどデリケートな青果専用)、④ 2~5℃(葉物野菜や和洋日配用)、⑤ 0℃(チルドの肉と魚専用)、⑥ マイナス25℃(冷凍食品やアイスクリーム、冷凍肉・魚など用)】、商品毎に適温管理をしている点だ。神奈川県川崎市の物流拠点「アマゾン川崎FC(フルフィルメントセンター)」に、「Amazonフレッシュ」で扱う商材を一括して集約・管理。専用棚を設け、鮮度を徹底管理しており、刺身のような鮮度管理が重要な消費もおいしさそのままに食卓に届けてくれる。

 

◆楽天は西友と組んで「楽天西友ネットスーパー」を開始予定
その他、楽天は西友が運営するネットスーパー「SEIYUドットコム」と楽天の冷凍食品宅配サービス「楽天マート」を統合して「楽天西友ネットスーパー」を立ち上げ、7~9月にサービスを開始予定だ。取り扱うのは、西友の生鮮食品など1万~1万5千点と、ネット通販の楽天市場で扱っている菓子など食品の一部。東京など16都道府県で実店舗から商品を配送するほか、千葉県柏市に年内に開設する専用の配送センターからも商品を届ける。配送料や配送時間帯は未定。主なターゲットは30~40代の兼業主婦で、半調理食品や、一つのおかずに必要なカット野菜、計量済み調味料がセットになったミールキットなど「時短ニーズ」にあった商品を充実する計画だ。

 

◆ローソンは宅配しない生鮮品の通販「ローソン フレッシュ ピック」で対抗
また、ローソンは、宅配しない生鮮品の通販「ローソン フレッシュ ピック」を東京と神奈川の一部地域で開始した。スマホの専用アプリで、肉や野菜など約500種類の中から商品を選択すると、配送センターに商品が集められ、おにぎりや弁当など、通常のコンビニ商品と一緒に店舗へ配送。朝8時までに注文した客は、その日の午後6時以降好きな時間に、会社や自宅近くのローソンで受け取ることが可能。2018年度中に首都圏の約2,000店舗で導入し、その後全国展開する予定だ。

 

乱立する食品宅配市場だが、新規顧客の拡大はもちろん、その後顧客との長い付き合いを通してLTV(ライフタイムバリュー)の拡大を目指すことが重要となってくる。そのためには、安全で安心な食品をお届けすることをベースに、各社の強みを生かした美味しさの独自性で顧客から選ばれることが大切だ。

 

 

 

2018-07-29 14:57:00

みなさんここんにちは。和田康彦です。

 

以前のブログでもご紹介したが、6月1日に阪神百貨店梅田本店建て替え第一期棟がオープンした。リニューアルの目玉は何といっても食フロアの充実だ。その核となっているのが「パンマルシェ」と呼ばれるパン売り場の品揃え。毎日約15の食パンが登場する食パンのセレクトショップや週替わりで7ブランドが登場するパンイベントなど、珍しくておいしいパンが主役になっている。

 

食パンといえばこのところ高級な生食パンがブームになっている。その火付け役のひとつが「乃が美(のがみ)」の食パンだ。2013年に大阪上本町に総本店をオープン。それ以来、行列ができるほどの大人気店になり、2016年には「パン・オブ・ザ・イヤー 食パン部門」(パンスタ主催)で金賞を受賞。現在、全国各地に93店舗展開し、2018年には47都道府県すべてに出店を予定している。

 

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開発までに2年かかったといわれるこだわりの素材と製法による耳まで柔らかい食感は、一度食べると思わずファンになってしまう。とわいえ、1芹432円(税込)、2芹864円(税込)という価格は毎日食べるには少々高い。いわゆるプチ贅沢な食パンとして月に2~3度買い求める客が多いのではないかと思われる。私もそんな消費者の一人だ。

 

高級生食パンブームを追い風に、飲食店を運営するオーネスティグループは6月30日、新食パン専門店「考えた人すごいわ」を東京都清瀬市にオープンする。厳選素材と独自製法、コンベクションオーブンにこだわり、トーストせずそのまま食べても美味しい口どけと味に仕上げた。商品は、プレーンの“魂仕込み(こんじこみ)”(2斤サイズ864円/税込)、マスカットレーズン入りの“宝石箱”(同980円/税込)の2種類。「魂仕込み」は、厳選した小麦、国産バター、そして岩手県のだ塩などこだわりの素材を使って、きめ細かな口どけの良さを実現。「宝石箱」は、オーストラリアのサンマスカットレーズンをふんだんに使用。芳醇でフルーティーなレーズンにあわせて、岩手産のたのはた牛乳、国産のバターをセレクト。カットすると、宝石のように食パンの中からレーズンがキラキラと輝くそうだ。

 

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「考えた人すごいわ」という店名は、食パンを食べた人に「これ考えた人すごいわ」と思ってもらえるような店づくりを目指したことが由来、というから開発者の自信が伺える。

 

焼き立てのパンには、私たちをしあわせな気分にする魔力のようなものが潜んでいる。たかが食パン、されど食パン。美味しい食パンで日本の朝が笑顔になると素敵だと思う。

 

2018-07-10 14:54:00

みなさんここんにちは。和田康彦です。

 

ネット販売が売上を伸ばす中、ネットとリアルを融合させた次世代小売り事業モデル「ニューリテール」づくりの実験が始まっている。

 

提唱するのは、中国アリババ集団の馬雲会長。同社が運営する通販サイト「天猫(Tモール)」や電子決済アプリで集めたデータと店舗を結び付けて新しい買い物体験を提供する。

 

アパレル大手のストライプインターナショナルは、アリババ集団と連携してこの10月にも中国国内に60㎡のスマートストアを開設する。

 

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同社の主力ブランド「アースミュージック&エコロジー」の新しい店舗では、まず来店者に会員登録してもらいデータベース化する。その上でアリババTモールでの購買履歴データとマッチングさせ一人一人の購買特性を販売に活かしていく。

 

また店内では、来店者が手に取ったことを感知するセンサー付きのスマートハンガーを採用。個別商品に対する興味関心の高さを測定することで品揃えの制度を向上させる。

 

さらに、来店者が手に取った商品の色違いを次々と映し出すスマートミラーを採用することで、顧客の色の好みにも対応していく。

 

店内には客層の年齢・性別等をデータ化する顔認識用のカメラも設置。店舗は顧客一人一人のデータを収集する場所へと変化する。つまりリテール(小売)とテクノロジーを組合せて総論的に売上を上げていく仕組みが「ニューリテール」の目指すところだ。

 

今やオンライン、オフラインを分けて考える時代は終わった。スマートフォンが普及し、「消費の形」が多様化する中、一人の顧客とあらゆる接点で関係性を築き、エンゲージメントを上げていくことが重要になっている。

 

特に少子高齢化、人口減少がトレンドとなる国内では、オンラインとオフラインを融合させて一人の顧客のLTV(ライフタイムバリュー)を上げていくことが生き残りのカギとなる。

 

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