体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。和田康彦です。
無印良品を展開する株式会社良品計画は、住友不動産ショッピングシティ有明ガーデン(のモール&スパ1階~3階に、「無印良品 東京有明」を2020年12月3日(木)にオープンする。
関東地方で最大面積を誇る売場には、無印良品のほぼ全ての商品を揃えたうえで、【暮らしのサポート】【家づくり】【街づくり】の3つをテーマにおいた様々な新商品・サービスを開発。百貨店を超える"百八貨店"として、永く地域の方々のくらしに役立つ存在を目指している。
今回は、ニューノーマル時代の店舗づくりの最先端事例として、紹介する。
◆関東最大の売場面積に、暮らしの全部が揃う"百八貨店"
新型コロナウイルス感染症の拡大により生活様式や価値観が大きく変わる中でオープンする東京有明は、お米や新鮮な野菜などの食品、スプーンや靴下など日々の生活を満たす道具から、部屋のリフォーム、戸建販売、そして街の活性化まで、暮らしの全てに関わり、店舗周辺に住む方々の「感じ良いくらし」の具現化をお手伝いする店舗を目指す。
関東地方で最大面積を誇る売場には、無印良品のほぼ全ての商品を揃えたうえで、【暮らしのサポート】【家づくり】【街づくり】の3つをテーマにおいた8つの新商品・サービスを開発。百貨店を超える"百八貨店"として、永く地域の方々のくらしに役立つ存在になりたいと考えている。
(1)【暮らしのサポート】 くらしのなんでも相談所
2階に設置する相談カウンター「くらしのなんでも相談所」では、ひとりひとりの困りごとに寄り添い、暮らしを整える、様々なサービスを新たに展開。これらのサービスは、近隣住民への住まいに関するアンケートや座談会を1年前から開催し集めてきた、有明エリアをはじめとする湾岸地区で生活する方々が実際に感じている「暮らしのお悩み」に基づいて開発した。
共働きかつ子育てとの両立で時間がない、時間はあるけれど心地よい暮らしの作り方がわからない、自分の暮らしは自分で整え自立した生活を送りたい、高齢化により自分だけで暮らしを充実させるのが難しい人など、たくさんの困りごとに対応する商品・サービスを揃えているのが特徴だ。
◆お片付けサポート
お片付けサポートは、必要以上のものを持たず暮らしをシンプルに整えるために、無印良品のスタッフが顧客宅に訪問して、暮らしに本当に必要な持ち物を整理しお部屋の収納を改善するサービスだ。
【収納相談】
収納専門スタッフが顧客宅に伺い、使い方に合わせた収納選び、採寸から最適な収納プランまでを提案する。
【不用品引取り】
不要となったものを引き取り、地域企業や協力会社と連携し、次の方へ譲ったり、補修やアップサイクル後に再販するリユース活動につなげていく予定。
【預かり】
普段使わないものを一時的に1箱単位からお預かりするサービス。家の中だけでなく家の外まで活用できる空間を広げ、今の生活様式にあった収納方法を提案。
【掃除】
掃除の専門資格を取得したスタッフが掃除のお手伝いやアドバイス。また、店頭では、掃除セミナーのワークショップなどイベントを開催したり、日常に根差した暮らしの道具の使い方やご自宅での掃除アドバイスを紹介する。
◆インテリアの相談
暮らし方や間取りに合わせ、家具選びやオーダー家具、オーダーラグ/カーテンのほか、部屋の照明計画、収納の施工などについて店頭、オンライン、出張にて相談を受けるサービス。
◆観葉植物の月額定額サービス
グリーンのある豊かな暮らしを提供することを目的に、大型のものを含む観葉植物の販売と月額定額サービスをスタート。店頭で販売する高さ100~200㎝の幅広い種類の植物と鉢を3か月/6か月/1年単位で利用できるプランを用意。暮らしに応じたグリーンを紹介するほか、品種特性に応じた育成のコツを分かりやすく提供する。
◆暮らしを彩る限定商品
家具の価値やインテリアの価値を改めて見直すために、使い込むほどに風合いのよくなる素材やずっと使いたくなる道具や家具として、黒家具シリーズ・北欧ビンテージ家具、IDÉEのアートやグリーンなど、東京有明限定の家具やインテリアアイテムを提供する。
(2)【暮らしのサポート】食と農
衣・食・住の暮らしの営みはそれぞれ密接に関連しており、中でも「食」はその中心となるもの。東京有明では、地域住民のの暮らしの拠りどころとなることを目指して、食に関する商品とサービスを1階フロアに集積して展開する。
◆食の量り売り
「ひとりひとりのちょうどいい」に応えるために、食品の量り売りを開始。食の基本となる雑穀や乾物を中心に、コーヒーやナッツやドライフルーツなどの50種類以上の食品を、20グラム以上から1グラム単位で、1個ずつ、一人分ずつの最小単位で販売し、必要以上にものを持たない「食のコンパクトライフ」を提案する。
◆Café&Meal MUJI、ベーカリー、ジューススタンド
素材そのものの味を生かしたからだにやさしい「素の食」、シンプルでどの食材とも合うロールパン・食パン・クロワッサンなど素材にこだわり店内で焼き上げた「パン」、旬の野菜や果物を使った「フレッシュジュース」など、3つの飲食スペースで無印良品の食の世界が楽しめる。
◆青果販売
生産者と直接つながり、新鮮な青果を無印良品ならではの品揃えで展開。フードロス削減につながるよう保存方法や最後まで食べきるコツを伝えたり、地域と共生して生産者と食卓をつなげるほか、青果売場に併設したキッチンカウンターでは、朝食や夕食メニューを「今日のこんだて」として健康をサポートするレシピ提案を行う。
◆給水サービス
飲料水をきっかけに、顧客と一緒に環境や健康について考えて行くことを目的に、店内3か所に給水機を設置。マイボトル持参で誰でも無料でご利用できる。
(3)【暮らしのサポート】環境に配慮した商品・サービス
無印良品は1980年の創業から、「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」の3つをベースに環境や社会に配慮した商品を開発し続けている。東京有明でもこの視点から生み出した新たな商品、サービスを開発している。
◆洗剤の量り売り
肌にやさしく環境に配慮した無印良品の洗剤4種(衣類用洗濯洗剤・バス用洗剤・トイレ用洗剤・食器用洗剤)とアルカリ電解水クリーナーを100ML単位で量って販売する。
◆包装の簡略化
東京有明では新たに包装容器のプラスチックを約20%削減したエイジングケア化粧水シリーズを先行販売する。
(4)【家づくり】部分リフォーム/全面リノベーション
新型コロナウイルス感染症の拡大により大きく変化した生活様式に対応するため、自分にとっての心地よさや個性を生かした「これでいい」という居住空間、永く使うための汎用性や機能としての合理性などをお客様と一緒に考え、生活の変化に合わせた家づくりをもっと身近に自由に行うためのサービスを展開する。
◆部分リフォーム
暮らしを変えるきっかけをつくりたい、本格的に暮らしを変えたいという声に応え、気軽に部分的なリフォームの相談できる窓口を設置。
◆DIYサポート / MUJI INFILL +
顧客参加型の部屋づくりのサポートサービス。DIY経験者だけでなく、DIY初心者も最初の一歩を踏み出せるように、セミナーやワークショップなどのイベントを通じてDIYの基礎知識や壁の塗装などを体験できる。また、売場には自在に内装を編集できる暮らしのパーツ「INFILL+」コーナーや家づくり関連の書籍も用意している。
◆全面リノベーション MUJI INFILL 0
本当に必要なものだけを残して、暮らしの「0(原点)」をつくり、自分らしく住まいを編集するフルリノベーションの相談もできる。より身近に、より具体的にリフォーム後の完成形をイメージできるよう、店頭では東京有明が初となる、マンションを想定した部屋まるごと原寸大の「INFILL 0」のモデルルームを設置。
(5)【家づくり】戸建「陽の家」原寸大モデルハウス
新型コロナウイルスの影響などにより働き方が大きく変化している中で、住まい方の見直しを検討されている人や、2拠点居住や田舎暮らしを検討中の人などに、戸建「陽の家」や「無印良品の小屋」を店頭で紹介。店内に首都圏初となる原寸大のモデルハウスを設置し、無印良品の家具や雑貨などを実際の住空間で体感席る。また、無印良品が考える暮らしの形をテーマに、クリエーターとともにトークイベントを毎月開催する予定。家や別荘ほど大げさでなく、気に入った場所でくらす道具として、「無印良品の小屋」も販売。
(6)【街づくり】 街全体を"自分の住まう空間"と捉えた空間づくり
無印良品としてこれまで地域共創を軸にした空間づくりを行ってきた経験を活かし、街全体を"自分たちの住まう空間"ととらえて「家」「オフィス」「商業施設」「公共」の4つの分野において、企画から考える空間づくりのサービスを開始。この店舗に設置する法人カウンターでオンラインも活用し、全国から相談を受ける。
コロナ禍によりさらに加速する空き家や過疎化などの地域課題や暮らし方の変化に対し、無印良品やIDÉEのコンテンツを元にした場の活用を目的とする空間企画と合わせて、自然素材を活かした内装や什器、地域ならではの特注家具やアートの設計、サイン・チラシのツールデザインなどのトータルプランを、場の交流と地域活性化をテーマに依頼主の方と共に共創する。
◆家
賃貸住宅の老朽化や過疎化、生活スタイルの急激な変化により増加する空き室に対し、リフォームを中心にした場の価値を高める空間活用方法を考える。
◆オフィス
テレワークや在宅ワークに合わせたオフィス拡縮、オフィスの在り方や働き方を根本から見直したい人に向け、オフィスリノベーションを提供する。
◆商業施設
商業施設をより居心地が良い環境に改善したいという法人に向けて、人々が集い、憩いたくなるイートインなどの共用スペースや店舗デザインを行う。
◆公共
駅や廃校、社宅や集合住宅共用部など自治体や法人が所有する公共の遊休スペースを活用し、地域住民が日々の暮らしで使うことができる、その地域の特性を活かした開かれたコミュニティスペースを考える。
(7)【街づくり】「つながる市」の開催
地元で活躍しているさまざまなジャンルの人と連携し、マルシェ販売やイベントを開催。グランドオープン後の12月は、トークイベントや雑巾つくり、しめ縄作りなどのワークショップなどを開催する予定。
(8)【街づくり】 江東区との取り組み
江東区は、古着、食品ロス削減、脱プラ、ごみの分別、リサイクルなど、環境に関する取り組みを積極的に行っている。東京有明は、同地域に出店する店舗として何ができるかを考え、江東区ともに廃棄物の削減、資源循環型の社会を目指す。第一弾として、購入店舗に関わらずご不要になった服を店頭で預り、リユース・リサイクルルートによって国内外で再利用したり、工業用雑巾(ウエス)の加工や綿やフェルトの原料にする取り組みをはじめる。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
前回は、世界ブランドランキング2020の中から、日本のランキング企業の取組みについて見てきました。今回は、インターブランド社が分析する中から見えてきた、優れたブランドに共通する3つのテーマについて見ていきます。
インターブランド社は、世界ブランドランキング2020の分析の中で、一つの重要な疑問が浮かびました。どのようにしてブランドは、エコノミックレジリエンス(経済的回復力)を向上させ、個人との信頼関係を築き、人々にとってより良い未来の可能性を高めることができるのかという課題です。同社は今回の分析の中から以下の3つの重要な項目の連鎖が明らかになっていることを明らかにしました。
◆ Leadership:混乱や混沌の先に、価値のある目的と強力なアンビションを定めることは、ブランドの将来を示す旗印となる。
Teslaが掲げたブランドの将来を示す旗印は、当初から需要と支持を呼び起こし、さらに個人投資家の忠実な支持を集め、保持することにより、莫大な流動性資産を得ることに成功しています。
◆ Engagement:優れたブランドは、消費者と対話し相互の関係を形作ることによって、消費者がそのストーリーの一部になりたいと思うようにする。
Salesforceは、コミュニティに耳を傾け、顧客の成果を共有することで爆発的な成長を遂げました。顧客と絶えず会話を交わすことで、顧客とともに「旅」をしているのです。
◆ Relevance:優れたブランドは、消費者を無関心から解放し、消費者の選択を意味のあるものにする。
Paypalは、詐欺に関する顧客の懸念を軽減する取り組みを行い、また顧客のお金を安全に保つため、セキュリティ技術に巨額の投資を行うことにより、最も信頼される決済代行ブランドの1つとなりました。不安が高まり、経済の見通しが不確実な時代において、これ以上重要なことはありません。
「Leadership、Engagement、Relevanceは、急速に変化するビジネス環境の中でブランドが前進していく際に一貫して見られる3つのテーマです」とインターブランド グローバルCEOのチャールズ・トリヴェイルは述べています。
「これらは、現在の危機的状態から解き放ち、顧客の信頼とビジネスのレジリエンスを構築するための鍵となります。強力なアンビションを掲げ、勇気と誠実さをもってそれらを追求することにより、ブランドは、私たちが前を向き混乱を理解し、将来を望むことができる、新しい可能性に満ちた10年をもたらします。」

みなさんこんにちは。和田康彦です。
前回は、世界ブランドランキング2020のランキングから、世界で成長率の高い企業の取組みについて見てきました。今回は日本のランキング入り企業の取組みについて見ていきます。
【Toyota】:7位、516億ドル(前年比-8%)
Toyota は CASE の時代に合わせたビジネスモデルの転換を図り、「モビリティカンパニー」へのフルモデルチェンジを宣言、CES2020 では「コネクティッド・シティ」プロジェクトを発表しています。業界を超えたアライアンスにより、「人」が中心となる未来の実現に向けた活動を着実に進めています。2020 年、愛車サブスクリプション「KINTO」の本格的開発支援の一つとして、ヨーロッパにも展開することを発表、また RAV4 は、トヨタ車としては9年ぶりに CAR OF THE YEAR JAPAN 2019-2020 を受賞するなど、2019 年の第 3 四半期で売上は前年度を上回り、Toyota は日本の企業として初めて 30 兆円企業となっています。
【Honda】:20 位、217 億ドル(-11%)
Honda は、主軸である二輪、四輪事業のビジネスで苦戦する一方で、ラリーや Honda Jet などでは成功を収め、本田技研工業の直下に R&D 部門を移行するなど、事業一体の R&D に注力しています。Honda はまた 2025 年までにヨーロッパで販売されるすべての四輪を電気自動車に置き換えることを宣言しました。「人のココロとつながるクルマ。」がコンセプトの BEV(バッテリー式電気自動車)「Honda e」は、Red Dot Design Awards で、年間の最高賞である Best of the Best 2020 を受賞。日本で展開された企業 TV 広告「Go, VantagePoint.」は、YouTube で視聴回数(1,500 万回)を獲得し、消費者との高いエンゲージメントを築いています。
【Sony】:51位、120億ドル(+14%)
Sonyは、エレクトロニクス企業から創造的なエンターテインメントブランドへのシフトを加速しています。エレクトロニクス事業やゲーム&ネットワークサービス事業に加え、イメージング&センシングソリューション事業が成長をドライブしています。2019年度の見通しは2018年度に及ばないものの、近年の財務業績は安定しており、2020年1月には、ITバブル期以来となる時価総額1兆円の突破も果たしています。Sonyは、コロナ禍において、最前線の医療に従事する人々、遠隔で学ぶ子供や教師、エンターテインメント業界全体に携わる人々を含む、Covid-19の影響を受けた世界中の人々を支援する1億ドルの救援基金を創設するなど社会貢献活動にも積極的に取り組んでいます。
【Nissan】:59位、106億ドル(-8%)
Nissan は、2019 年度通期のグローバル全体需要は、中国市場の減速や、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、第 4 四半期に各市場が低迷したことを受け、前年比 6.9%減の 857 万台となっています。その状況下において、Nissan は、「事業規模の最適化」「選択と集中」の推進による事業基盤改革と市場をリードしてきた電気自動車と運転支援技術などをベースに、新しいモビリティへのチャレンジを続けています。
【Canon】:71位、81億ドル(-15%)
Canonは、エントリーユーザー向けのカメラやレーザープリンターの市場縮小の加速が反映され、景気低迷の影響も受け、売上、純利益ともに大きな影響を受けています。またCovid-19の 影響により、オフィス向け複合機とレーザープリンターやカメラ市場はこれまでの縮小傾向がさらに強まっています。インクジェットプリンターは、一部の新興国では減速が見られる中、先進国と中国では在宅勤務や在宅学習向けに需要が高まりつつあります。医療機器は、Covid-19の影響の長期化による移動制限などにより、販売活動が影響を受ける見通しです。
【Nintendo】:76位、73億ドル(+31%)
コロナ禍で、自宅で過ごす時間が増え、ゲームサービスへの需要が爆発的に高まりました。ゲームとフィットネスを合わせた、NintendoのRing Fit Adventure ゲームは、都市封鎖の間、一時は在庫がなくなり、79.99ドルが250ドルの値がつくほど最も需要が高まったゲームのひとつです。コロナ禍の初期、「あつまれどうぶつの森」は、過酷な状況から逃避できるゲームとして、1,100万人以上がプレイし、世界で一番多く楽しまれたゲームとなりました。
【Panasonic】:85位、58億ドル(-6%)
Panasonicの業績はコロナの影響を受け減収・減益となりました。しかしながら、新中期経営計画では、「くらしアップデート」を実現する企業という新たな方向性を打ち出し、「基幹事業」、「再挑戦事業」、「共創事業」を中心とする事業ポートフォリオ改革を行い、売上成長と収益性改善を目指しています。B2C事業では、サウンドシステム、ノイズキャンセリングイヤホン、一眼レフカメラなどインスピレーションあふれる製品を開発し、顧客の新たなニーズに対応しています。一方、B2B事業ではToyotaやTeslaとの自動車用電池のコラボレーション、コールドチェーン、プロジェクションマッピング、ファクトリーオートメーションなど社会的に期待される技術を生み出しています。

みなさんこんにちは。女性を笑顔にするマーケティング研究会の和田康彦です。
前回は、ブランディング事業を手掛ける米インターブランドが2020年10月20日に発表した、グローバルのブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2020」の概要をお伝えしました。今回はその第二弾として、2020年の調査でランキングが大きく躍進した企業の取組みを見ていきたいと思います。
【Amazon】:2位、2,007億ドル(前年比+60%)
2020年、Amazonは設立25周年を迎えました。2020年初め、米国ビジネス誌『FAST COMPANY 』は、「2020年はAmazonが止まらない年になるであろう」と記載しており、驚異のブランド価値60%成長は、まさにこの成功の証です。2002年に80位でランクイン以降上昇し続け、今年初めて2位となりました。この成功の主な理由は、”Customer Obssesion”というAmazonの顧客中心主義にあります。Amazonは、Covid-19の感染拡大に際し、非常に迅速に反応しています。175,000人を新たに雇用しオンラインビジネスを強化、不安を抱える消費者がオンラインでの購入にシフトしたことにしっかりと対応し、より大きな利益を獲得しています。
【Microsoft】:3位、1,660億ドル(+53%)
クラウドサービス、リモートワークの接続を支援するツールや製品に注力したMicrosoftの戦略は、大きな利益を生んでいます。特に、Microsoft Teamsのようなソリューションは、分散型労働を強いられる時代において、多くの企業にとっての生命線となりました。また、GitHubの買収は実を結び、現在利用者は4,000万人となっています。Microsoftは、生産性とビジネスのプロセスを再考し、Intelligent EdgeとIntelligent Cloud Platformを構築し、パーソナルコンピューティングを推進しています。
【Spotify】:70位、84億ドル(+52%)
Spotifyは、事業領域を拡張し、Podcastを使い、音楽を聴くプラットホームから、広範囲なオーディオ・エンターテインメント体験にシフトしました。Podcastカタログのコンテンツは、3月の70万余りから、4月には100万を超えました。また、クリエイターツール、Podcastサービス、Podcastのためになるオリジナルコンテンツやメディアスタジオに何度も投資を行うなど、Spotifyは、Covid-19の影響からいち早く脱却し、以前の全世界消費時間まで回復しています。広告収入は減少しましたが、総売上の10%であるため、ビジネスへの影響は最小限に抑えられています。
【Netflix】:41位、127億ドル(+41%)
Netflixは、2020年に初めて、27か国のTV、ラジオ、野外広告で、グローバルブランドキャンペーンを行い、2020年の第1、第2四半期で、2,500万以上の加入者を獲得しています。この数字は2019年のおよそ一年分(2,800万人)に相当し、加入者の最大市場は、アメリカ、ブラジル、イギリスとなっています。Netflixは、「今日のTOP10リスト」機能を加え、全体の操作を簡単にすることで、UI/UXを改善しました。Netflix Originalの早い制作スピードはブランドの最大の特徴となっており、Peacock (NBCUniversal)やHBO Max (WarnerMedia)のような他のストリーマーは、コロナ禍によりプログラミングの遅れに直面している一方、Netflixは膨大な数の新しいタイトルを世に出すことを実現しています。
【Adobe】:27位、182億ドル(+41%)
2020年初頭、Adobeは、見た目をフレッシュに保ちつつ、消費者が操作や理解しやすいブランドとして継続するために、ブランドアイデンティティーを何度か更新しています。ロゴは赤の単色にし、より温かくより現代的にアップデートし、Creative Cloudのロゴも一新、その製品全てに新しいコーポレートカラーの赤を使用しています。また、これらデジタルメディア分野のサブスクリプションのセールスによってこの3年間で売上は53億ドルに達しており、製品のポートフォリオをサブスクリプション・モデルに移行したことが成功に寄与しています。特にこのモデルは、景気後退の中でも安定したキャッシュフローを生み出し、マーケティングや新しい顧客を開拓する費用を抑えることに貢献しています。Adobeは、ブランドをより使いやすい体験に進化させ、消費者とスクリーンで長時間を共にすることに成功しています。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
ブランディング事業を手掛ける米インターブランドは2020年10月20日、グローバルのブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2020」のトップ100を発表しました。
本ランキングは、グローバルに事業展開を行うブランドを対象に、そのブランドが持つ価値を金額に換算してランキング化するもので、レポートの発表は2000年から今年で21回目となります。時代の不安定性・不確実性がコロナ禍で加速され、本ランキングにも大きな影響を与えています。
今回のランキングの概要は以下の通りです。
・Appleが8年連続で第1位、Amazonが第2位、Microsoftが第3位に浮上
・Instagram、YouTube、Zoomが初めてBest Global Brands入り
・Amazonがブランド価値を60%アップさせ、成長率1位
・業種別では、テクノロジー部門が最も高い成長率
・Toyotaは昨年に続き第7位、17年連続で自動車ブランドの最高位
ランキングでは、Appleが8年連続で第1位 (ブランド価値 3,230億ドル、前年比 +38%)、同60%アップしたAmazonが第2位(2,007億ドル)、Microsoftが第3位(1,660億ドル、同 +53%)、2013年より第2位であったGoogleは前年比1%ダウンで第4位(1,654億ドル)となりました。また、Samsungが第5位(623億ドル、同 +2%)となり初めてTop5にランクインしました。
ソーシャルメディアとコミュニケーションのブランドが躍進し、Instagram(19位、261億ドル)、YouTube(30位、173億ドル)、Zoom(100位、45億ドル)が初めてBest Global Brandsにランクインしました。
また、Tesla(40位、128億ドル)とJohnnie Walker(98位、46億ドル)が、再ランクインしました。
Top5 Growing Brands(最も成長率の高い5ブランド)は、Amazon(前年比+60%)、Microsoft(同+53%)、Spotify(同+52%)、Netflix(同+41%)、Adobe(同+41%)となりました。
コロナ 禍の影響によりオンラインサービスブランドが発展を遂げ、2桁成長をしたブランドの6割がサブスクリプションのビジネスモデルを採用しています。
また、PayPal(60位、前年比+38%)、Mastercard(57位、同+17%)、Visa(45位、同+15%)も、それぞれブランド価値を高めています。
感染拡大の影響から主要な支払方法として電子決済への急速な移行が進んだことや、ロックダウンの中で地元のビジネスをサポートするプログラムを迅速に展開したこと等により、不確実な時代に家計や資本へのアクセスを提供する信頼できるブランドとして飛躍を遂げています。
業種別に見ると、コロナ禍の影響により多くの店舗の閉店を余儀なくされたZara (35位) とH&M (37位) は、それぞれブランド価値が-13% 、-14%と低下し、昨年より順位を下げています。
2年連続で成長率がトップであったラグジュアリー業界は、そのブランドのほとんどがブランド価値を下げています。
その一方で、コロナ禍で成長した業種の一つは物流です。平均5%の成長が見られ、UPS(24位)、FedEx(75位)、DHL(81位)はすべてブランド価値を上げました。物流ブランドは、世界各地でロックダウンされた人々の生活に欠かせない存在となっています。
テクノロジーブランドの躍進により100ブランドの合計金額価値は2兆3,365億ドルとなり、2019年に比べ9%成長しています。前年比で成長したブランドの成長率は平均14%であるのに対し、テクノロジーとプラットフォームブランドは20%成長しており、100ブランドの合計価値の48%を占めています(2010年は17%)。さらに、Top3のテクノロジーブランドの合計価値は100ブランドの合計価値の30%を占める結果となっています(2010年は16%)。