体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。顧客創造マーケティングの和田康彦です。
RIZAPグループ(東京都/瀬戸健社長)が運営する会員制トレーニングジム「chocoZAP」(チョコザップ)が会員数が80万人を突破したことを発表しました。
チョコザップがサービスを開始したのは22年7月のこと。フィットネスジム業界では異例の急成長を遂げ、23年8月15日時点で会員数は80万人、店舗数は全国32都道府県に880店を突破しています。
▪運動習慣のない人や女性にターゲットを絞って差別化
すでに世の中に多くのトレーニングジムがあるなかで、チョコザップが大きく差別化できたのは、運動習慣のない人や女性にターゲットを絞った点にあります。
そこで、チョコザップは、「初心者でも通いやすいコンビニジム」をコンセプトに、トレッドミル(ルームランナー)やフィットネスバイク(エアロバイク)、トレーニング初心者でも簡単に操作できる筋トレマシンなどを設置しています。
一方で、ダンベルやベンチプレスなど、筋トレ上級者向けのマシンは設置していません。これらを設置すると、筋トレ上級者の会員が増え、初心者が通いづらい環境になってしまうからです。
また、ジムにはトレーナーや受付のスタッフを配置するのが一般的ですが、チョコザップは無人。営業時間は24時間で、会員はチョコザップ専用のスマホアプリからQRコードをかざすと入店できる仕組みです。
また、服装自由のためウエアに着替えたり、靴を履き替えたりする必要がないのが特徴となっています。トレーニング以外のサービスが充実している点も強みで、多くの店舗にセルフエステやセルフ脱毛ができる美容機器を、一部店舗にはゴルフの練習ができる設備を設置しています。
会費は月額2980円(税抜)で、会員は全国のチョコザップの店舗を利用できます。
このように、チョコザップは商品を豊富に揃えるコンビニエンスストアのように、健康課題に向き合いながらさまざまなコンテンツを掛けあわせる「コンビニジム」を目指しています。
▪退会率を改善するためのパーソナライゼーション
これまでのトレーニングジム業態の収益面の課題は、退会率の高さにありました。一般的なトレーニングジムでは、入会した会員の半分が1年以内に退会するといいます。
それは「筋トレ上級者の設計による、筋トレ上級者のためのジム」になっているため、初心者が気おくれし、「自分はトレーニングに向いていない」と感じ、やがて退会してしまうという悪循環につながっていたためです。
そこで、チョコザップでは1週間以上来店のない会員に向けてアプリ上で来店を促す通知を配信しています。
また、防犯用AIカメラのデータからマシンが使われている頻度などチョコザップの利用実態も解析しています。データ分析により、会員が何を求めているかを理解し、利用率の低いトレーニングマシンを廃止する一方で、人気のあるマシンを積極的に導入しています。
26年3月期までに全国で2000店舗の出店を計画しているチョコザップ。今後は、アプリ上でRIZAPのトレーナーによるトレーニングプログラムや、適切な食事を提案する機能の追加を検討しているそうです。
▪チョコザップの戦略とは
企業戦略の基本は、①差別化が利益を生む ②戦略とは資源は配分である。この2点に尽きます。
チョコザップは、これまでの上級者をターゲットにしていたトレーニングジムと一線を画し、初心や女性にターゲットを絞ったことで差別化に成功しました。
そして、受付などの人件費には投資せず、徹底的に無駄を省いた運営で効率的な展開を可能にしています。一方で、デジタル投資は積極的に行い、利用者とのつながりや満足度の向上など、デジタルトランスフォーメーションで退会率を抑えることに取り組むなど、これからの企業戦略を考えていく上で学べることがたくさんあります。

みなさんこんにちは。顧客創造マーケティングの和田康彦です。
300円を中心したおしゃれな商品が並ぶ雑貨ショップ「3COINS」が、今すごい勢いで伸びているのをご存じですか。
いつ行っても、店内は女性客でいっぱい。生活雑貨、インテリア雑貨、服飾雑貨、モバイルアイテム、キッズアイテムなど300円で買えるデザイン性の高い商品が品揃えされていて、幅広い年代の女性客が楽しそうに商品を手に取っています。
株式会社パルグループホールディングスが運営する3COINSは、全国に268店(2023年2月現在)展開しており、23年2月期の売上は489億8千万円。前年度から110億円も売上を伸ばしている急成長ブランドです。
「あなたの“ちょっと幸せ”をお手伝いする」をブランドメッセージに掲げ、「ふだんの生活の中であったらいいもの」を基本価値として提供しています。
新商品発売時には即日完売する商品が絶えないなど、3COINS商品が人気を博している理由はいったいどこにあるのでしょうか。
▪あえて世代ターゲットを絞り込みすぎない。
いまや、インターネットやSNSの普及により、誰もが情報を取りに行けばたくさん取れる状態になり、世代による情報格差はなくなってきています。
また、ライフスタイルが多様化・細分化する事で、一人の消費者の中にも様々な嗜好が芽生えてきています。
これまでのマーケティングでは、対象とする顧客像を細かく設定したペルソナを設けることが定石といわれてきました。
ただ、3COINSでは30代女性という大まかなターゲット像を持ちながらも、あえて細かく絞り込むことはやめ、3COINSが提案する商品に共感する顧客を惹きつけていく「顧客吸引マーケティング」を重視しています。
女性消費者が興味を持ちそうな商品や好きな商品を次々に開発。女性顧客の好奇心を刺激し、新しい発見のある売り場づくりを通して3COINSが大好きなファンを増やしていく。それが3COINSの戦略なのです。
▪オタクバイヤーが大ヒット商品を次々に開発。
3COINSの商品に対しては、「痒い所に手が届く商品」「絶対、あの会社にはオタクがいるのでは?」とった声が多く寄せられているそうです。
それもそのはず、3COINSのモノづくりでは、20人のバイヤーたちが、それぞれの「好き」や「個性」を活かした商品開発に注力していることこそが、大ヒット商品を生み出す原動力になっているのです。
3COINSには、多種多様なカテゴリーがありますが、それぞれのカテゴリーに対して、年間でどういうものを売るか、どんな仕掛けをしていくかは、基本的にその担当者が自分で決めて自分で実行していくことがベースになっています。
商品企画に関しても、ブランドメッセージから外れておらず、バイヤー自身の熱量があればOK!というゆるゆるのマネジメント体制ですが、モノづくりをするバイヤーの「好き」という熱量が高ければ高いほど、やりたいことを掘り下げることができ、その結果、お客様に驚きや感動を与えて共感を得られるという好循環を生み出しているのです。
消費者がたくさんの情報を持つようになった今、薄っぺらいことをやるとすぐに見破られてしまいます。○○が大好きなオタクバイヤーがだからこそ、○○好きな消費者の気持ちがよくわかり、結果として大ヒット商品を生み出すことができるのです。
▪他企業やブランドとのコラボで新しい価値を生み出す。
売り切れが続出するほど人気が高いコラボ商品を次々に生み出している点も3COINSの強みの一つです。
コラボ商品は、それぞれのバイヤーの個性を発揮しやすく、相手先企業やブランド担当者の熱量も掛け合わされて、より情報力のあるコンテンツに仕上がります。
その結果、SNSなどでも拡散されて、顧客が顧客を呼び込み、大ヒット企画につながっていきます。
例えば、2022年10月に発売されたサウナポータルサイト「サウナイキタイ」とのコラボは、サウナオタクのバイヤーが企画。サウナアイテムの定番であるサウナハットやサウナマット、タオル、巾着など便利かつデザインにもこだわった商品を販売。店頭では、各店舗から近いサウナ施設の紹介POPも掲示するなど、企画の細部まで担当者のこだわりが見えるプロモーションを展開することでSNSでの話題化をはかりました。
その結果、サウナ好きの仲間を見つけたいと思っていた“サウナー”の間でコラボグッズは自然と認知が広がっていきました。このように、サウナという共通軸を突き詰めることで、結果的に多様な年代にアプローチでき、新しい“マス”の顧客を生み出すことに成功しています。
▪SNSでの情報発信も、担当者の個性に任せて成功
さらに3COINSは商品企画だけでなく、情報発信も担当者の思いや興味関心を尊重しています。
各店舗にはスタッフインフルエンサーは計約80人在籍しており、中には約10万フォロワーのスタッフもいるそうです。
そしてインフルエンサーにも、バイヤーと同様、自分の思いを軸に、できるだけ自由な活動をしてもらえるように意識した運営に注力しています。
SNSを運営するのは希望者のみに限定。Instagramでの発信を中心に、動画制作が得意な人は動画メディアも担当しており、インフルエンサーに会いに店に来てくれる顧客も多くいるというのも、3COINSの大きな強みといえます。
3COINSのインフルエンサーには、アルバイト、社員、学生、子育てしている人、店長として頑張りながら情報発信している人など多彩な顔触れで、発信したい内容のある人が自主的にインフルエンサーとしての活動をしているのも特徴です。
また、趣味もアイドル、料理など多岐にわたっており、3COINSの商品を使ってアレンジレシピを作るなど、発信する内容は本人に任せており、バリエーションは豊富なことも、幅広い顧客とのつながりを育んでいる背景にあります。
さらに、インスタライブやお客さまとのコミュニケーションも大切にしています。バイヤーは、アカウントに来たコメントは常にチェックして情報を商品づくりへと生かしており、共創好きな女性のこころをしっかりつかんでいるのです。
▪従業員の強みや個性を伸ばし、自律的行動を引き出していくことが重要。
以上、今回は3COINSが急成長している要因についてみてきましたが、従業員の熱量の高さが同社の急成長を牽引していることがよく理解いただけたのではないでしょうか。
オタクを本気でやっているバイヤーが、世の中にまだ無くて不便を感じているものや、あっても高すぎるものなどをオタクである自分たちの目線で開発する。その結果、女性消費者から大きな共感を得て、大ヒットを生み出している3COINS。
従業員の強みや個性を伸ばし、自律的行動を引き出していく経営スタイルが、企業の成長を牽引する時代です。

みなさんこんにちは。顧客創造マーケティングの和田康彦です。
▪資生堂が体の内側からの健康美をコンセプトにした新ブランドを発表
「資生堂」は9月20日、新ブランド「SHISEIDO BEAUTY WELLNESS」を来年2月に立ち上げると発表しました。新ブランドは、資生堂の代名詞である化粧品とは違い、体の内側からの“健康美”を掲げています。
まずは漢方薬大手の「ツムラ」、食品メーカー大手の「カゴメ」の2社と提携。ツムラとは漢方の技術を生かし「サプリメント」をカゴメとは野菜や果実を原料に使う技術を生かし「飲料タイプのサプリメント」を販売する計画です。
2025年以降は中国などアジア地域で展開することも狙っており、今後10年で数百億円の事業規模を目指すそうです。
▪セブンイレブンは、女性向け健康商品を次々に導入
一方、セブンイレブンは、2023年度に「スムージー」を新規商材として導入しました。冷凍果実・野菜を使用し、店内の専用マシンで提供することで、おいしさ・安全安心の「ウェルビーイング」とフードロスを低減することによる「環境負担低減」の両立を目指したものです。
上期の「スムージー」の売り上げは好調で、若年女性の購入率が高く、スイーツ・菓子との併買、週末に高い販売を見せているそうです。
同社によると、セブンカフェのコーヒーが、年齢層の高い男性の利用が多く、菓子パン、サンドイッチといった食事とともに購入されているのに対し、スムージーは、若年女性に好まれているそうです。また、スムージーは2024年中に、設備的に導入可能な店舗では全店で採用する予定で、10月より、バナナミルクスムージー、明治ブルガリアヨーグルトを使ったベリーベリーヨーグルトスムージーといった新商品も投入する計画だそうです。
健康志向を捉えた商品では、時間栄養学の考えを取り入れた「サイクルミー」シリーズの販売も好調だそうです。女性の購入率が高く、新たな客層の誘因、売り上げの創出につながっているといいます。
また、10月には、初のペストリー商品で、食物繊維が豊富な「チョコクロワッサン」などが登場する予定です。
さらに、人気商品の「もち麦もっちり!おむすび」シリーズで使用している、食物繊維が豊富なもち麦に含まれる栄養素「β‐グルカン」にも着目。もち麦の種類変更と使用量の増加により、「β‐グルカン」の含有量を1.4倍に増やすことで、食後の血糖値の上昇をおだやかにする効果が期待できる「機能性表示食品」として9月19日リニューアル発売しています。
野菜を中心に複数の具材を使用したチルド弁当の「ビビンバ」についても、白米からもち麦入りご飯に変更することで、「機能性表示商品」として展開します。
▪女性の健康志向はポジティブに進化、体の内側から輝いていたい
いつの時代も、女性は健康で美しく輝いていたい!と強く思っていますが、健康や美に他にするニーズは深化、多様化しています。
従来はカロリーや糖質を減らす商品が求められていましたが、最近では食物繊維やたんぱく質を積極的にとれる商品のニーズが高まっています。
健康や美を維持したいというニーズから、もっと積極的に体の内側から健康になって輝いていたいというニーズへ。女性の向上心を満たす商品開発が、ますます求められています。
あなたの会社やブランド、商品やサービスは、女性の日々進化する向上心を満たせていますか。