体験消費時代のマーケティングヒント

2020-02-12 14:32:00

みなさんこんにちは。和田康彦です。


必要なものはほぼ満たされた現代、生活者が求めているものは「楽しさ」や「面白さ」といったワクワク感やドキドキ感ではないかと思います。「モノ消費」から「コト消費」や「トキ消費」への流れも、人びとが「楽しさ」や「面白さ」を求めていることが背景にあります。このように、生活者の行動を変えるマーケティング活動において、「楽しさ」や「面白さ」を提供することはますます重要になってきているといえます。

 

ところでみなさんは電車に乗るときや降りた後、階段を使いますか、それともエスカレーターを使いますか。ほとんどの人は、エスカレーターを選んでいるのではないでしょうか。中には、健康のため階段を使う、という人もいるかもしれませんが、おそらく少数派ですね。
そこで「どうやったら駅の利用者はエスカレーターではなく階段をもっと使ってくれるだろうか?」というプロジェクトが、2009年にスウェーデン、ストックホルムにあるodenplan駅で行われました。

 

何はともあれこちらの動画をご覧ください。

 

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いかがでしたか?動画を見れば一目瞭然ですね。階段をピアノの鍵盤に見立てて、階段を上がると音が奏でられるようにした結果、なんと普段より66%も多くの人がエスカレーターではなく階段を利用するようになったといいます。

 

このプロジェクトを仕掛けたのは、世界を代表する自動車ブランド、フォルクスワーゲンです。上記の動画はフォルクスワーゲン・スウェーデン社が提唱する「ファン・セオリー」というプロジェクトの一環として行われた実験で、「ファン・セオリー」とは、一言でいえば「楽しさ」こそが人々の行動を変える一番シンプルで簡単な方法だ、という考え方のことを指します。こうしたアイデアを紹介する同社のウェブサイトには、ほかにも以下のような事例が掲載されていますのでいくつかご紹介します。

 

◆近くにあった普通のゴミ箱の2倍近い、72kgものゴミを集めることに成功したアイデア。

 

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ゴミ箱が置いてあってもポイ捨てがなかなかなくならないのは、ゴミをゴミ箱に捨てに行くのが面倒と思っている人が多いから?であれば、ゴミを捨てに行くのが楽しくなるようなゴミ箱を作ってみよう!そんな発想から生まれたゴミ箱がこれです。どこにでもあるサイズのゴミ箱ですが、捨てられたゴミは、なんと50フィートもの距離を落下する(という音が鳴る)仕掛けです。ゴミを捨てた人々は、延々と鳴り続ける落下音にぎょっとしていますが、結果として近くにあった普通のゴミ箱の2倍近い、72kgものゴミを集めることに成功しました。

 

◆シートベルトの着用率を高めるアイデア

 

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シートベルト着用が交通事故時の死亡率を大きく下げることは誰もがわかっていることですが、面倒くささがベルトの着用を遠ざけています。特に後部座席の着用はあまり進んでいません。そこで考えられたのがこちらのアイデア。映画などを楽しめるディスプレイが後部座席に設置されていますが、そのままでは動作しません。シートベルトを締めることによって初めて、動作する仕組みになっているんですね。とても単純なアイデアですが、シートベルトの着用率が上がることで交通事故時の死亡率が下がるとなれば、大きなイノベーションだと思いませんか。

 

「エスカレーターよりも階段を利用しましょう」「ゴミはゴミ箱へ捨てましょう」「シートベルトは必ず締めましょう。」こうした啓蒙活動も重要ですが、それよりもずっとスマートに、効果的に人の行動を左右する可能性を秘めているのが、今回ご紹介した「ファン・セオリー」です。これからの商品やサービス開発、新しい広告やキャンペーン、集客などを考える際には、この「楽しそう」「面白そう」というアイデアをぜひ取り入れていきましょう。

 

 

 

mashable.com

 

2020-02-11 06:51:00

みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

 

ドン・キホーテやヤマダ電機、アイリスオーヤマなどの流通大手企業が、PB家電を相次いで発売し消費者からの支持を広げています。 

 

 

4K大画面テレビやロボット型掃除機、お米の銘柄を炊き分ける炊飯器など、各社ともに消費者の欲しい機能に絞り込むことで低価格化に成功。売上を伸ばしています。 

 

 

PB商品といえばかつては食料品や衣料品に限られていましたが、メリハリ消費が当たり前になった消費者にとって、これまで重視してきたパナソニックやソニーといった「ブランド価値」よりも「高機能、小機能、低価格」といった実質価値を重視する傾向が強くなってきたといえます。 

 

 

家電業界では、かつての日本製から「ダイソン」などの海外勢が躍進。これまでの日本の家電メーカーの「高機能、多機能、高価格」戦略や松竹梅といったグレード展開では顧客のニーズを捉えられなくなってきています。 

 

 

アイリスオーヤマは、大手家電メーカーが品目数を減らし始めた2009年に家電事業へ本格参入。白物家電でラインアップを広げた後、19年には黒物家電(テレビ)へも本格進出を果たし、総合家電メーカーへまい進しています。 

 

 

卓上IHコンロ対面操作式、両面ホットプレートなど「とがった商品」を次々に開発。余計な機能をそぎ落とし、値ごろ感を追求。生活者の視点にたったユニークな機能やデザインが消費者のこころを動かして、次々にヒット商品を生み出しています。 

 

 

201910月には薄型テレビ市場に参入。自社ブランドの薄型テレビ「LUCA(ルカ)」を、65型で実勢価格12万円程度から展開しています。20万円台が中心の大手ブランドの商品より大幅に安く、12月には75型で30万円程度の格安品を発売しました。 アイリス2.jpg 

開発のキーワードは「高機能、小機能、低価格」。売りになる高機能=ベネフィットに特化しそれ以外は簡素化して価格を下げることで必要なベネフィットだけを求める消費者に支持されています。長年培ってきた「消費者目線」を武器にした価格設定と機能の選択。情報があふれて何を選んだらよいかわからない時代、シンプルでわかりやすい訴求が消費者のこころを動かすポイントになります。

 

2020-02-10 13:03:00

 みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

イタリア・ミラノに世界から注目されているセレクトショップ「スラムジャム」があります。元DJで服に関心があったルカ・ベニーニが1989年に創業。その後2006年、古都フェラーラの本社の隣りに最初の店舗をオープンしました。 

 

 

今までの店舗の概念とは全く違う新しいコンセプトで開発したという同店。訪れた人たちはスラムジャムで扱っている商品と、オフィスで働く社員をガラス越しに見ることができます。商品を売る方法として面白いのはもちろん、スラムジャムが何をしている会社で、どういう人たちが働いているかをクリアにすることが目的だったといいます。 

 

 

次いで201610月にはミラノに基幹店をオープン。店内にはイベントスペースも設置して、アート、音楽、映像、スポーツなどのイベントを積極的に開催しています。イベントの企画監修には、伊アート文化誌「カレイド・スコープ」の編集人を起用するなど、ストリートウェアと文化を融合させることで、新たな価値を発信しています。

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スラムジャムは、ヨーロッパにおいてカーハートやステューシーといったストリートブランドをディストリビューションしてきた老舗チーム。ビズビム、ネイバーフッド、ダブルタップスなど日本発のブランドをいち早くヨーロッパに紹介したことでも知られ、ヨーロッパにおけるストリートファッションの先駆者として今も強い影響力を持っています。 

 

 

「私は単にモノをうるということには関心がない。」「街から生まれるファッションの背景には、アートや音楽といったストリートカルチャーがある。」と語るベニーニ氏は、元DJでもありスケータ―でもあり、そのコミュニティを活かして同じマインドを持つ人間同士でつながり、自らストリートカルチャーの発信地を創り上げてきました。 

 

 

モノが売れないといわれる時代。パリの老舗「コレット」が2017年に廃業に追い込まれるなど、セレクトショップ業界は苦しい状況に追い込まれています。 

 

 

そんな中スラムジャムは、「人を集めること」を目的に、ファッションとアートや音楽などを掛け合わせることでストリートファッションを文化として構築してきたといえます。 

 

 

文化とは一種の世界観とも言えます。その世界観に共感・共鳴して人が集まってくる。これからの時代は、それぞれの企業が独自の企業文化を育み、発信し続けることで顧客とのコミュニティを創造していく時代です。

 

https://www.slamjam.com/en_JP/home

 

2020-02-09 08:50:00

みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

 

昨日は、グランフロント大阪ナレッジキャピタルで開催された「World OMOSHIRO Award 6th」というイベントに参加してきました。

 

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World OMOSHIRO Award」とは、ナレッジキャピタルのコアバリューである「OMOSHIROI」を広げるための国際的なアワードです。 

 

 

「おもしろい」ということばが初めて日本に登場したのは、今から約1300年前にさかのぼります。日本に伝存する最古の正史「日本書記」の中に、『於母之楼枳(オモシロキ)』ということばが詠まれた歌が収められています。 

 

 

漢字では「面白い」と書きますが、「面」は目の前を意味し「白い」は明るくてはっきりしたことを意味します。そこから「目の前がパッと明るくなった状態」をさすようになりました。 

 

 

つまり、「面白い」とは未知なる発見や出会いに心が震えるような状態であり、人間の最も根源的な感覚といえそうです。性別や年齢、国籍を超えて悦びや好奇心を加速させる創造の原動力といってもよいと思います。 

 

 

今社会は大きな転換期を迎えています。既存の価値基準ではない新たな視点やモノサシが求められています。そのような中で「面白い」という感覚は、未来を生み出す大きな力となっていくのではないかと思いました。 

 

 

私が提唱している「ワクワク・ドキドキ」と「面白い」は、人間にとって最も原始的で根源的な感覚であるという点では共通しています。ということは、「ワクワク・ドキドキ」が未来を動かす大きな力になるといっても過言ではありません。 

 

 

価値観が多様化している現在、人の心を動かすのは「面白い」や「ワクワク・ドキドキ」といった誰にでも共通する根源的な感覚なのです。 

 

 

ちなみに昨日のアワードの受賞者は以下の5名の方です。 

 

 

・「ハヤブサの目」の異名を持つ恐竜化石ハンター「小林快次」さん(北海道大学総合博物館教授・恐竜研究者)

 

・微生物×ウェアラブルで女性を性感染症から守る「ジュリア・トマゼッロ」さん(イタリア、インタラクションデザイナー)

 

・科学、工芸、技術を横断するアート界の異種格闘家「福原志保」さん(アーティスト)

 

・「してみたくなる」の謎を追う仕掛学の第一人者「松村真宏」さん(大阪大学教授)

 

3Dプリントでファッション業界に革命をもたらす「ユリア・コルナー」さん(オーストリア、JK Design設立者/UCLA 建築都市デザイン学科 兼任教授

  

 

どの受賞者のプレゼンテーションも、ワクワク・ドキドキする内容ばかり。「面白い」が持つ社会や人類に対する影響力の大きさを考えさせられる素敵な時間となりました。

 

2020-02-07 07:01:00

みなさんこんにちは。和田康彦です。 

 

アパレル大手のストライプインターナショナルが、D2C事業を本格的に始動することを発表しました。第1弾として身長153cm以下の女性向けファッションブランド「レム クローゼット(rem closet)」を立ち上げ、326日に販売を開始します。 

 

 

新ブランドは、低身長で服のサイズが合わないという悩みを抱える20代後半から30代の女性に向け、小柄な女性に合うサイズのトレンドカジュアルウェアを提案。 

 

 

ディレクターに抜擢された松井里穂さんは「コエ(koe)」の元販売員兼SNSディレクターで、松井自身のコンプレックスである150cmの小柄な体型をカバーするコーディネートを毎日欠かさずインスタグラムやファッションコーディネートアプリ「ウェア(WEAR)」に投稿。月120コーディートを2年間継続し、インスタフォロアーは14千人。多くの女性から支持を集めています。 

 

 

アパレル市場が縮小する中、ニッチな市場に的を絞ったD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)に注目が集まっています。成功の鍵は、消費者目線でのモノづくり。お客様に共感してもらえる商品やコミュニケーションで高揚感を感じてもらうことが大切です。