体験消費時代のマーケティングヒント

2021-01-26 10:54:00
シャトレーゼ×亀谷万年堂の融合で生み出される新しい菓子の価値。

みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

総合菓子メーカーのシャトレーゼホールディングス(HD、甲府市)は、「ナボナ」で知られる老舗菓子メーカー、亀屋万年堂(東京・目黒)を買収したというニュースが報じられました。

 

シャトレーゼHDは、山梨県初の総合菓子メーカーで1954年の創業。主力事業の洋菓子チェーン「シャトレーゼ」は、20203月期の売上が、前年比110%増の732億円。国内では556店舗、海外は8カ国・地域に90店舗を展開。苦境に立つ洋菓子業界で異例の成長を見せています。

 

同社の成長を支えているのが、お客さまに喜ばれる経営、お取引様に喜ばれる経営、社員に喜ばれる経営を実現する「三喜経営に徹しよう」という社是に見ることができます。

 

一、お客様に喜ばれる経営

わが社は、常に技術革新に挑戦し、より良い商品をより安く提供して、お客様に喜ばれ社会に奉仕する。

一、お取引先様に喜ばれる経営

わが社は、お取引先様の繁栄のお手伝いと奉仕に徹し、運命共同体として共に栄える事を念願とする。

一、社員に喜ばれる経営

わが社は、事業は人なりと信じ、事業の発展を通じて、社員の人間形成を高揚し、会社の繁栄を通じて、社員の豊かな生活を実現し、併せて社会に貢献し、永遠の繁栄と幸福を目指して限りなき前進を続ける。

 

 

同社は山梨県甲府市を発祥とし、これまでは都市郊外を中心に店舗を展開してきました。メニューはケーキをはじめとする洋菓子のほか、アイス、和菓子、ピザ、ワインなど400種類を超えます。目を見張るのはその安さ。年間500万個を販売する人気No.1ケーキ「スペシャル苺ショート」は300円(+税、以下同じ)、爆発的ヒットを記録したアイス「チョコバッキー」は160円です。

 

安さと美味しさを実現できた理由は、「ファーム・ファクトリー」と呼ばれる同社独自のサプライチェーンにあります。

 

山梨県の白州工場を拠点に、素材の調達から生産、配送、そして直売店舗での販売までを自社で管理しており、本来なら市場に流通させる過程で発生する中間マージンやテナント料が要らない菓子業界のSPA(製造小売り)業態を確立。このため相場よりも23割安い価格で商品を提供できています。いわば、菓子業界のユニクロのような存在といってもよいと思います。

 

例えば、牛乳は、山梨県と長野県にまたがる八ヶ岳にある契約牧場から仕入れており、水は甲斐駒ヶ岳のふもとに工場を構え、日本名水百選にも選ばれた「白州名水」を使用。卵や苺、和菓子に用いる小豆も全国の契約農家からそれぞれ仕入れており、加工はすべて自社工場で行っています。

これによって、高い品質の菓子類をリーズナブルな価格で提供することができるようになりました。

 

一方で、2019年からはプレミアムブランドの「YATSUDOKI(ヤツドキ)」を立ち上げ、1号店を東京・銀座にオープン。シャトレーゼの「スペシャル苺ショート」は300円ですが、ヤツドキの「八ヶ岳川上村契約農場の苺ショートケーキ」は540円でグッと価格帯を引き上げています。今後は大阪や札幌、福岡など全国の都市部に順次出店する計画です。

 

しかしながら、シャトレーゼの主力である郊外のロードサイド店は、人口減少と過疎化でいずれ衰退は避けられず、頭打ちになっています。また、同社が自負する契約農家の多くは地元・山梨県やその近隣に集中しており、全国展開を進めれば原材料の調達ルートの確保は難しくなるという課題も抱えています。

 

今回の亀谷万年堂の買収の狙いを、同社会長の斉藤寛氏は、「高齢化が進む中で、シャトレーゼが扱っている日々食べられる手ごろな和菓子はこれから需要が増える。ところが和菓子業界は後継者不足に苦しみ、和菓子のブランドは徐々に減っている状態だ。だから逆に、亀屋のブランド力で和菓子店を増やしたい」と日経新聞のインタビューの中で応えています。

 

今スイーツ業界では和菓子と洋菓子の融合が進み、新しい価値の提供が進んでいます。シャトレーゼと亀谷万年堂の融合が生み出す新しい価値創造に期待したいと思います。

 

2021-01-24 10:06:00
美容への意識の高まりが生み出した高級シャンプー・リンス市場。

みなさんこんにちは。和田康彦です。

生活必需品のひとつ、シャンプー・リンス市場は、人口減を背景に長期的には市場は縮小傾向にあります。

 

一方、総務省の家計調査によると、日本の一世帯あたりの平均消費額は2000年以降一割減少している中、シャンプーや理美容家電などの「理美容用品」の2019年の消費額は48744円で00年に比べて約2割増加。美容への意識が高まっていることが背景にあります。

 

シャンプー・リンス市場は、花王の「メリット」に代表されるメガブランドといわれる大型商品が市場を牽引する構図が続いてきました。

 

ところがここ最近、シャンプー・リンス市場には高価格帯の商品が相次いで導入され、店頭ではメガブランドの存在感が薄れつつあります。

 

高級シャンプー・リンス市場のけん引役になったのが、Ine(アイエヌイー)が手掛けるボタニストです。以前にこのコラムでもご紹介しましたが、BOTANIST(ボタニスト)」ブランディングの成功で、I-neが東証マザーズに新規上場。 - 「生活者視点マーケティング」 Lifevalue Lab. (womanmarketing.net)

2015年に電子商取引で発売し、その後ドラッグストアに販路を広げて多くの女性の支持を集めています。

 

Ine(アイエヌイー)は、ボタニカルブランドをさらに拡充。20201月には、ビーガン(完全菜食主義者)向け(税別2400)を、7月にはボタニストプレミアム(3000)を相次ぎ発売するなど、ニッチ市場の開拓に余念がありません。同社は、テレビCMなどは一切流しておらず、ネット中心にブランド発信していることが特徴です。

 

最近では、韓国のヘアケアブランド「moremo」も女性に人気です。一般的なトリートメントは髪につけて数分待って流しますが、同ブランドの「ウォータートリートメントミラクル10」は10秒で流せるのが特徴。手間をかけずにサラサラな髪を手に入れたいと考える女性ニーズをつかんでいます。

 

一方、大手も新規ブランドの立ち上げで対抗しています。花王は2020年、新ブランド「イネス」を発売。400グラム約3000円と高額ですが、本格的な頭皮ケアを訴求して、SNSで話題になっています。

 

花王によると、ヘアケア市場で、800円以上の「プレミア価格帯」の構成比は、2011年の22%から現在は半分を占めているそうです。

 

美容への関心が高まる中、消費者は年代、髪質、頭皮などで様々な悩みを抱えており、悩みを解決する「私だけのお気に入り」商品を求めています。

 

マス視点からニッチ視点へ。これからは、お客さま一人ひとりのニーズを満たす商品の提供を通して、生活者とパーソナルな関係でつながり続けることが重要な時代です。

 

2021-01-22 15:58:00
2021年世界の消費トレンドTOP10から読み解く、生活者の意識や価値観の変化。

みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

このコラムでもいつも申し上げているように、新型コロナウイルスの感染拡大によって、人々の意識や価値観は大きく変わり、それに伴って生活者の消費行動も大きく変化してきています。

 

国際的な市場調査会社ユーロモニターインターナショナルは、今年2021年の消費者行動を形作り、企業のビジネス戦略に影響を与えると予測されるトレンドをまとめたレポート、『2021年 世界の消費者トレンドTOP10』を発表しました。本レポートで紹介している10のトレンドはいずれも、新型コロナウイルス(COVID-19)の発生によって新たに作り出されたもの、COVID-19の影響を受けているもの、あるいはCOVID-19によって加速されたものです

 

2021年の消費者像とは?

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大によって、次々に新たな生活習慣が生まれ、私たちの行動やお金の使い方、消費の仕方も大きく変化した。

 

2021年、コロナ禍の収束が見えない中でも、消費者は自らのため、人類のため、世界をより良い方向にしたいと考えており、不安や混乱の中でもホリスティックで回復力のあるソリューション、より思慮深い消費の仕方を求めている。

 

同レポートでは2021年、世界の消費トレンドの原動力となるのが「回復力」と「適応力」と分析している。

 

2021年世界の消費トレンドトップ10とは

ユーロモニターインターナショナル社が発表した2021年世界の消費トレンドトップ10は以下の通り。

 

①より良い復興を目指して

②利便性を渇望する消費者たち

③屋外に憩いを求める

④フィジタルリアリティ

⑤時間を上手に使う

⑥せわしない反抗的な消費者たち

⑦安全至上主義

⑧振り回されながらも前に進む

⑨思慮深い倹約家たち

⑩自宅が新たな仕事場

 

◆①より良い復興を目指して

新型コロナウイルスの感染拡大によって、消費者は企業に対して利益を上げること以上に、地球や社会への配慮を求めるようになっている。

 

その結果、消費者は社会的責任を強く持つブランドや企業に共感するようになってきている。

 

消費者はより良い復興に向けて、より清潔で健全な、そしてより回復力があり、公平な世界を目指して行動する企業やブランドを求めている。

 

2021年、消費者は社会問題や環境問題をより真剣に捉えるようになり、パンデミック収束後も「良い目的」のために利益を役立てる企業を支持するようになる。

 

☛より環境に優しく公平な世界を再構築するために行動する企業やブランドは、競争優位性を得るだけでなく、事業のために必要な社会的認可、つまり社会の信頼を得ることができる。

 

◆②利便性を渇望する消費者たち

コロナ禍の中、デジタル化が一気に加速。デジタルコマースを活用すれば、消費者がこれまで慣れ親しんできた「人との対面でのやり取り」を介することなく、シームレスな顧客体験を提供することが可能になった。

 

☛例えば、人との関わり合いや関係性を重視するビジネスにとっては、セルフサービス、非接触、無人操作等を試す機会となった。また、QRコード、事前予約、混雑する時間帯または空いている時間帯の通知等、新しい消費者習慣に合わせた様々なサービスを提供することで、企業は時間を節約できるだけでなく、安定した供給力や製品の配送能力を確保できるようになった。

 

一方で、消費者は以前のように、自分の都合に合わせて日々の用事を済ませたり、店舗で買い物をするといった手軽さを求めている。

 

消費者は今後も利便性を求め続けていく。そして、安全性を最優先しつつ、既に確立している自分たちの嗜好や買い物パターンの変更を最小限に抑えることのできる企業やブランドとの取引を希望している。

 

◆③屋外に憩いを求める

COVID-19による健康への脅威、屋内での集まりや移動に対する制限、そしてリモートワークの増加により、消費者はレジャーや気晴らしを求めて屋外の憩いの場に目を向けるようになった。

 

☛中には人口密度の高い都市部から地方への移住を検討する人も出てきている。

 

☛企業は今後、都市部に暮らす人々のニーズを満たすために、都会暮らしの中に地方生活の穏やかさを取り入れられるような製品やサービスの開発を考えていく必要がある。

 

◆④フィジタルリアリティ

☛コロナ禍の中でも、消費者はデジタルツールを使うことで、自宅に居ながら安全に外の世界とつながったり、安心して外出しやすくなった。

 

☛「フィジタルリアリティ」は、「フィジカル(物理的な現実世界)」と「バーチャル(仮想空間)」を掛け合わせた考え方で、人々が対面とオンラインの両方でシームレスに生活や仕事をし、買い物や娯楽を楽しむことができる世界のことを指す。

 

☛自宅から外出することに不安を覚える消費者が、安心して外出できるようになるためには、店舗などの物理的な空間にバーチャル(仮想)プロセスを組み入れることが有効。

 

Eコマースの売上を後押しし、消費者データを収集するためにも、自宅に居ながらにしてバーチャルで様々な体験ができるようなサービスの提供が欠かせなくなる。

 

☛。今後は複数の異なるチャネルやプラットフォームを通し、安全かつ「忘れられない体験」を提供する企業がロイヤルカスタマーを獲得していくと考えられる。フィジタルリアリティの導入はオンラインと実店舗の両方の売上を促進し、データの収集にもつながる。

 

◆⑤時間を上手に使う

☛今日の消費者は、よりフレキシブルに時間を使えるようになった一方で、日々やるべきことを全てやり遂げるために、よりクリエイティブに時間を使うことを求められている。

 

☛企業は、「時間を最大限に有効活用したい」という消費者の欲求に応えるべく、自宅やその近所からアクセスできる製品やサービスなど、消費者の生活がよりフレキシブルになるようなソリューションの提供を求められている。

 

☛消費者は、時間の都合や事情に合わせてより柔軟に生活のスケジュールを組むという新しい生活

様式に適応しようとする中、自分たちの生活を支援すべく「時間を上手に使う」トレンドに合わせた製品やサービスを提供する企業を「パートナー」と見なすようになる。

 

◆⑥せわしない反抗的な消費者たち

リーダーシップに対する人々の不信は常態化し、偏見や誤った情報によって政府に対する信頼は大きく揺らいでいる。人々は政府や政治に対してより冷ややかな見方をするようになり、「せわ

しない反抗的な消費者たち」は増加の一途を辿っている。

 

☛その結果、これまで他人を優先し、見返りを求めることもなかった人々が、近年の政府に対する不信感などに苦しんだ結果、反感を覚えるようになり、自分たちのニーズや欲求を最優先するようになっている。

 

また、メディアやオンラインコンテンツに対する不信感の広がりは、企業にとってはマーケティング活動を通して誤情報を払拭する機会であると同時に、そうする義務もある。人々は真実を求め、企業やブランドには正しい行動を起こすこと期待している。

 

◆⑦安全至上主義

☛「安全至上主義」は、心身の健康に関する新たなトレンドである。

 

☛感染への不安や健康意識の高まりは衛生用品の需要を喚起し、消費者は人との接触を避けるために非接触型ソリューションを選択するようになった。

 

☛今後、消費者は常に「安全」と「健康」を念頭に置いて行動するようになる。企業は業界を問わず、高まる健康懸念に応えるべく衛生面での取り組みを強化していく必要がある。

 

☛企業は優れた衛生機能を製品・サービスに取り入れ、それらの利点を上手く伝えることができれば、「安全至上主義」な消費者を惹きつけることができる。

 

☛企業は安全対策を強化するとともに、消費者の懸念を安心に変えるようなイノベーションを生み出すことが求められている。

 

◆⑧振り回されながらも前に進む

☛パンデミックは日常生活を大きく変えた。人々はメンタルを試され、行動を制限され、経済危機にも晒されている。

 

☛消費者はこれまで以上に満たされ、バランスが取れた人生を追求するために、自分自身のあり方や居場所について、新たな考え方を持ち始めている。

 

☛自己啓発や技術の取得、より良いワークライフバランスの促進や将来的な資産運用を支援する製品やサービス、体験は、パンデミックが収束した後も需要が増加していく。

 

☛消費者がより多くの時間を自らのために使うようになる中、企業は自社の製品やサービスが、どのように彼らの生活や人生に役立つかを発信していく必要がある。

 

☛困難な状況を乗り越えようとしている「振り回されながらも前に進む」消費者を手助けし、彼らの信頼を得るためにも、企業には心の健康の回復をサポートするような製品やサービスの提供が求められている。

 

◆⑨思慮深い倹約家たち

☛コロナ禍のもと、消費者は支出に慎重になり、倹約している。先行き不透明な経済環境によって、

裁量支出は減少傾向にある。

 

☛そのような中、「思慮深い倹約家たち」にとって優先順位が高くなっているのが、付加価値が高く、健康志向が強い製品・サービス。

 

☛企業は、コストパフォーマンスの高い価格設定の提案へと方向転換し、品質を下げることなく手頃な価格で製品・サービスを提供していくことが求められている。

 

☛プレミアム製品については、消費者が共感できる新たなストーリーによってその製品特徴を強化

し、健康ウェルネス、セルフケア、または心の健康といった要素と強い関連性を持たせることが重要になる。

 

◆⑩自宅が新たな仕事空間

☛「自宅が新たな仕事空間」トレンドは消費者の生活に波及効果をもたらし、衣服のチョイスからテクノロジーへのお金のかけ方、食事習慣にとどまらず、多くのことに影響を及ぼした。

 

☛人々は自分の時間を管理することに苦戦しており、仕事とそれ以外の時間にメリハリをつける方法を模索している。

 

☛企業はワークライフバランスを支援し、生産性及びコミュニケーションの向上に努めなければならない。

 

☛企業がリモートワークのメリットと課題を理解することで、社員はオフィス勤務の良い部分を在宅勤務に取り入れて働くことができるようになる。

 

自宅で過ごす時間が増えた消費者は、よりカジュアルな仕事着やビューティー製品を選ぶようになる一方で、飲食品については自宅でも外食時と同じ体験ができるような、ちょっとした贅沢感や高級感がある製品を求めるようになる。

 

 

以上、ユーロモニターインターナショナル社が予測する2021年世界の消費トレンドTOP10を見てきました。企業は、このような生活者の変化を探究し、理解を深めることで、自社製品・サービス開発の改善や、より効果的なマーケティング戦術の採用、顧客ロイヤルティの確保、そして次のステップへの準備に素早く取り掛かることができます。社会の変化に素早く対応することこそが、企業経営にとって最も重要なことです。

 

今年の消費者行動を牽引する価値観や消費者ニーズについてのより詳しい情報は、『2021年 世界の消費者トレンドTOP10』をご覧ください。日本語版のダウンロードはこちらから。https://bit.ly/3ivEi4F

 

 

2021-01-17 11:17:00
デジタルとリアルの境界線をなくすことで復活した米ウォルマート。

みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

新型コロナウイルスの感染拡大によって人々の意識や価値観は大きく変わり、それに伴って、生活者の消費行動にも変化が現れています。

 

コロナ禍で店舗に足を運びにくくなるという逆風が吹く中、米ウォルマートの好調ぶりが目立ちます。20208月~10月のネット通販売上は前年同期比79%増と大幅増。その要因としては、米国内4700店舗の半数をネット通販の拠点にするといったDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の成功が大きいといえます。

 

ウォルマートの店舗網は、米国で暮らす人の約9割を半径10マイル以内に捉えています。2020年末には、その半分の2500店超を店頭のオンライン注文の処理や配送管理まで担う複合拠点として運用を開始。注文後2時間以内に商品を宅配する「エクスプレスデリバリー」を実現させました。

 

ウォルマートは、注文後2時間以内に届けるエクスプレスデリバリーを実現させるために、人工知能(AI)、ロボット、自動運転、IoTといった様々なデジタル技術を店舗網と組み合わせることに投資をしています。

 

  人工知能(AI

商品在庫や配送人員、交通や気象に関する情報を組合わせて、最適な配送経路を割り出すことで注文後2時間以内の配達を実現。

  ロボット

小型ロボットで倉庫内の運搬作業を自動化。人間の10倍の速さで商品をピッキング。

  自動運転

無人の自動運転トラックによる商品配達をアーカンソー州で開始。

  IoT

冷凍、冷蔵、低温の3種類の温度帯を管理でき、殺菌機能を備える冷蔵ボックスを自宅玄関に設置できるよう無償で提供。

 

さらに、アマゾン・ドット・コムの有料会員サービス「プライム」を意識し、ウォルマートも209月中旬に定額制の「ウォルマート+(プラス)」を開始。12月には購入額35ドル以上からとしていた無料配送の利用条件を撤廃し、アマゾンよりも返品しやすい仕組みも整えています。

 

以上見てきたように、米ウォルマートは、デジタルとリアルの境界線をなくすことで見事復活しました。これからの時代、生活者にとってリアルもバーチャルも関係ありません。両方を利用できることが一番良いわけです。

 

生活者視点に立って最も便利で役立つサービスを進化させていく。企業の論理ではなく生活者の論理で生活者の幸せを提供していくことがますます重要になってきました。

2021-01-17 10:11:00
これからはお客さまに近づいていく「ラストワンマイル」競争の時代へ。

みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

「開いててよかった」。コンビニエンスストアの24時間営業が全国に広がった80年代に流れていた、セブン・イレブンのCMのキャッチコピーです。24時間営業は当時高まってきた深夜需要の受け皿になりました。その後もATMの設置や、すぐに食べられるプライベートブランド(PB)の総菜の開発など、高齢者や共働き世帯の増加といった社会の変化に即したサービスで成長してきました。

 

しかしながら、2019年にはコンビニの店舗数は減少、人手不足や効率面から24時間営業という既存の価値にも疑問符がもたれるようになってきます。

 

そんな中、コンビニ各社が力を入れ始めているのが、店舗から消費者まで商品を届ける「ラストワンマイル」戦略です。ラストワンマイルとは、店から消費者の自宅や職場まで物流の最終区間を指します。

 

全国津々浦々に約21千の店舗網を持つコンビニ最大手セブン・イレブンでは、近くのコンビニに足を運んでもらうのではなく、スマートフォンで注文すると店舗から最短30分で商品を宅配するラストワンマイル戦略を本格化しています。

 

2020年までに300店で実験してきましたが、20216月以降都内など1千店に順次拡大していく計画です。

 

また20年秋にはデニーズの商品をセブンの宅配網に乗せる実験をスタート。今年春からは、そごう・西武のデパ地下の食品の一部の宅配も開始する計画です。

 

今後はグループ各社に広げていくことで、スーパー、百貨店、専門店を傘下に持つセブン&アイホールディングスのシナジーを引き出していくことを狙っています。

 

アマゾンや楽天など、既存ネット通販よりも素早く商品を届けられる宅配網が全国に定着すれば、イトーヨーカドーやそごう・西武の商機も広がりそうです。

 

一方、ローソンも宅配に活路を見いだそうとしています。米ウーバーテクノロジーズと提携し、ネット注文した品を宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の配達員が届けるサービスを198月に開始。いまや1千店舗超で利用されるサービスに成長しました。社長の竹増貞信氏は「コンビニ宅配は消費者の習慣になっていく」と自信を見せます。

 

コロナ禍は、従来の事業のあり方や形態にこだわることなく、新たな存在意義を創造することの重要性を私たちに突き付けてきました。

 

実店舗から出て消費者に最接近する。地域の人々と顔の見える関係をつくることが今後の小売業の生き残りの鍵になっていきます。便利さの中身も社会の変化とともに変わらなくてはいけません。

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