体験消費時代のマーケティングヒント

2017-08-29 14:02:00

みなさんこんにちは。和田康彦です。 

 

働く女性の増加にともなって、共働き家庭も増加しています。2001年の共働き世帯は961万世帯でしたが、2016年には1129万世帯に増加。一方専業主婦世帯は、2001年の890万世帯から2016年には664万世帯まで減少しており、今後も共働き家庭の増加が予測されます。(総務省 平成28年版(2016年版)の「国民生活基礎調査の概況」より) 

 

ところで、共働き家庭の増加は、これまでになかった様々な社会課題を生み出しています。特に大きな課題は、働く女性の健康維持と仕事と育児や家事の両立です。 

 

働きながら子育てしたり、家事をこなすためには、いかに時間を効率的に使うかにかかってきており、時間を有効に使うことへの出費は惜しまないという女性も増えています。このような時間の使い方の変化が、消費の面でも大きな変化を生み出しています。 

 

例えば、「さしすせそ」と言われる日本の伝統的な調味料「砂糖、塩、酢、醤油、味噌」の一世帯当たりの年間消費量の合計をみると、2000年には9318円だった消費が2016年には6379円とおよそ3割も減少していることがわかります。特に味噌の消費量の減少が大きく、以前のように味噌汁を家庭で作る女性が少なくなっていることが推測されます。 

 

一方で、総務省の家計調査によると、調味料全体の2016年の消費量は2000年に比べて5%増加(二人以上世帯)。中でもケチャップやマヨネーズ、めんつゆ、焼き肉のたれなどが伸びており、「つゆやたれ」に至っては3割も増加しています。調理時間を少しでも短縮したい女性にとって、すぐに使えたり、汎用性の高い調味料へのニーズは今後もますます大きくなることが予測されます。 

 

このところコンビニ各社は冷凍食品やレトルト惣菜の品揃えを強化していますが、調理の時短マーケットは拡大していくことは間違いありません。ただ今後は「本格的な料理を短時間で手間をかけずに作れる」といった、より高度なニーズへの対応が必要になってくるでしょう。 

 

2017-08-29 13:54:00

みなさんこんにちは。和田康彦です。 

 

先日の日曜日、4月20日にオープンした「GINZA SIX」を訪れました。開業から2ヶ月余りが経ったこともあるのか、日曜日の昼過ぎというのに、ラグジュアリーブランドを集積した売場は人影もまばら。賑わっていたのは、6階の蔦屋書店や銀座大食堂、3階のライフスタイルフロア、B2の フードフロアに限られていました。

 

 f:id:happymk:20170707182436j:image

 

私のお目当ては、蔦屋書店です。今回GINZA SIXにオープンした蔦屋書店のテーマはずばり「アート」。売場には、日本的なアートや工芸にこだわった書籍や周辺グッズが充実していました。

 

f:id:happymk:20170707182523j:image

 

f:id:happymk:20170707182551j:image

 

 

江戸時代の文化を伝える書籍のそばには、数十万円の万年筆や刀といった工芸品も販売しています。また併設するスターバックスコーヒーには、屏風やオブジェが飾られていて、まるで美術館のような演出。世界一アーティスティックなスタバでは、世代を超えた顧客がコーヒーを片手に思い思いの時間を楽しんでいました。

 

 f:id:happymk:20170707182645j:image

 

蔦屋書店を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)株式会社の増田宗昭社長は、2017年5月28日付の日本経済新聞電子版で、「これからの世の中でいちばんインパクトのある分野はアート。アートを大衆化したい」と語っています。

 

f:id:happymk:20170707182722j:image 

 

1983年に創業したCCCは、レンタルショップ業態のTSUTAYAの展開を通して映画や音楽を大衆化して、豊かなライフスタイルを日本に定着させてきた実績があります。そんな背景もあり、増田社長が語る「アートを大衆化したい」という言葉には自信すら感じます。

 

f:id:happymk:20170707182818j:image 

 

増田社長は、アートを大衆化するという目的を達成するために、2015年には美術出版社を買収。「美術手帳」の編集者や彼らの人脈などアートをわかっている人のネットワーキング化に着手しています。その後、今年の3月には徳間書店を買収してコンテンツ分野を強化。また6月には、DPE大手のキタムラの筆頭株主になり、写真を使ったコンテンツ分野の可能性を探りだしています。増田社長の頭の中にはすでにアートをビジネス化する構想ができているのでしょう。 

 

増田社長が創業以来一貫して追い求めてきたのは、「顧客をハッピーにすること。」モノがない時代は「モノ」を手に入れることで顧客はハッピーになり、高度成長時代には「おカネ」がハッピーの基準になりました。そして欲しいものが満たされ、世の中が成熟してくると「ライフスタイル」を充実させることがハッピー、という時代になっています。 

 

例えば、衣生活がまだ貧しかった時代は、流行の「ファッション」に身を包むことでハッピーな気分を手に入れていました。ところが誰もがきれいになった今では、ファッションではもはや感動することはなくなり、結果として現在のファッション産業の不振につながっているのです。 

 

人は、欲求が満たされてくると、ちょっとのことでは感動しなくなります。つまり欲求の高度化がどんどん進んでくるわけです。マズローの欲求5段階説でも、生理的欲求→安全欲求→社会的欲求→尊厳欲求→自己実現欲求へと欲求が高度化することは語られていますが、まさに現代は、消費によって欲求を満足させることは行きつくところまで行きつき、いまや消費することからはハッピーが見えなくなっているのです。 

 

増田社長は、こんな時代だからこそ、「ムダ」と思われるアートが人のココロを動かすのだと言います。資本主義社会では、一部の富のある人だけが楽しんでいたアート。私たちの生活からかけ離れていたアートを大衆化したいという想いの背景には、これからの時代にはモノではなく「コンテンツ」こそが人を幸せにする鍵、という強い信念が隠れています。 

 

そういえば、瀬戸内を始め全国各地で開かれているアートイベントや博物館や美術館には人が溢れています。アートに触れることによって心を癒したい、心を豊かにしたいと考える人が増えていることが背景にありそうです。つまり増田社長の狙い通り、アートを求める潜在ニーズは無限に広がっているといえます。 

 

「アートが儲からないという意味が分からない。これからはアートしか儲からない」と断言する増田社長。「今後はクラウドファンディングを通じて、消費者とアーティストをつないでゆく」という次の展開も視野に入っています。成熟社会の中で新たな幸せ探しをしている消費者の心を動かすものは、確かにアートしかないのかもしれません。 

 

「アート」ということばをもう少し拡大解釈してみると「美的センス」や「思い、主張」「カッコいい」「本質的」と置き換えることができます。つまり、ますます高度化する女性の欲求を満たすためには、作り手の思いや主張、フォトジェニックな美的センスやカッコよさ、本質的な機能やベネフィットが重要になってきているともいえるのです。 

 

 

 

2017-08-29 12:56:00

みなさんこんにちは。和田康彦です。 

 

スポーツ庁健康スポーツ課は、週一回以上スポーツする人の割合(スポーツ実施率)を65%にする数値目標を設定しました。この数値目標を達成するため、2017年度からは運動促進キャンペーンをスタート。スキマ時間を利用して手軽に運動に取り組む人の割合を増やしていく計画です。 

 

現在20~40代のスポーツ実施率は3割強で、決して多いとは言えません。運動しない理由では「仕事や家事で忙しい」からが最も多く、多忙な現代人を象徴する結果となっています。スポーツ庁では、エレベーターを使わずに階段を利用する。一駅分を歩いて通勤するといった手軽にできる運動習慣を推奨。今後はクールビズのようなおしゃれなキャンペーンを実施していく予定です。 

 

高齢化が急速な勢いで進行し、医療費が年々増大する中、主体的に健康管理ができる国民を増やしていく取り組みは、日本の赤字財政を解消する上でも、とても有意義なことだと思います。 

 

ところでみなさんは、女性専用の体操教室「カーブス」をご存じでしょうか。ターゲットを50代以上の主婦に設定。1回30分のサーキットトレーニングを売りにしたビジネスモデルは、既存のフィットネスクラブとは一線を画しています。

 

 

 

f:id:happymk:20170609141816j:image 

 

 ◆カーブスは全国に1791店舗、80万人の女性が利用。

運営するのは、株式会社コシダカホールディングス。総合余暇サービス提案企業を標榜し、カラオケ事業、カーブス事業、温浴事業の3事業を展開。「常識を超えていく」というビジネス戦略を掲げ、「既存事業新業態」の開発に取組むユニークな企業です。従来からある業種を対象に、常識にとらわれない発想でお客様視点で全く新しい市場を創造しており、「カーブス」もその一つといえます。

 

同社の2016年8月期の売上高は前期比15.6%増の511億7000万円、営業利益は同9.5%増の48億1000万円。9期連続増収増益の成長企業です。カーブス事業でみると、売上高は216億6700万円(前期比16.2%増)、セグメント利益42億3500万円(同9.8%増)と好調に推移していることがわかります。 

 

「カーブス」は、米国で1992年に設立。その後世界各国に進出し現在80ヶ国で展開しています。創業者は実母を生活習慣病で亡くしたことをきっかけに予防の重要性に目覚め、運動する機会の少ない女性だけのカーブスを設立しました。コンセプトは「運動習慣を広め、豊かな人生と社会の問題を解決する」こと。国内では、2006年3月に北海道と埼玉県に1号店2号店をオープン。その後コシダカホールディングスがカーブスジャパンを子会社化して多店舗化を加速させます。その結果、2017年5月時点で店舗数は1791店、全国で80万人の女性が利用する体操教室に成長しています。 

 

カーブスがターゲットにしているのは、これまで運動習慣のなかった50歳以上の主婦。言い換えると「運動の必要性は感じてはいるものの、これまで運動してこなかった」人です。過去5年間に他社のフィットネスクラブに在籍していた人は会員の5%以下という同社の調査結果から見てもこのことはわかります。つまり、「運動しなければいけないことは分かっているけれど、家事や子育てに忙しくてなかなかできなかった。でもこれから先のことを考えると何かしら運動をしなくてはいけない」と考えている女性の未充足ニーズを上手く取り込んだと言えます。 

 

◆都合のいい時間に無理なく気軽に通える30分体操教室。

 

カーブスの特徴を見ていくと、①1回たったの30分の簡単エクササイズなので、すきま時間を利用してマイペースで気軽に利用できる。 ②予約やキャンセル不要でいつでも気が向いた時に気軽に通える。 ③家の近くにあるので、ふだん着のまま歩いて、或いは自転車で気軽に行ける。 ④女性専用なので化粧や体型など、男性の目を気にせずリラックスして気軽に運動できる。 ⑤会費も他社に比べると安いので、家計を預かる主婦でも気軽に続けられる。といった5つがあげられます。それぞれの特徴で共通するキーワードはズバリ「気軽さ」。この『気軽に通える』というコンセプトこそが、それまで敷居の高さで敬遠していたフィットネスクラブの潜在顧客を掘り起こしたと言えます。 

 

◆会員とのつながりを大切にした、フレンドリーなコミュニケーション。

 

カーブスのもう一つの大きな特徴は、女性コーチが優しくフレンドリーな対応で、会員女性にアドバイスしたり励ましたりする独自のコミュニケーション方法です。カーブスのコーチは全員女性。それぞれのコーチは会員を苗字ではなく下の名前で呼んでいます。長年「のりこさん」とか「ゆみさん」と下の名前で呼ばれることのなかった中高年女性にすると、下の名前で呼んでくれるコーチに親しみを感じるとともに自分のことをとても大切にされているような気になります。運動中もコーチはひとりひとりの名前を呼びながらアドバイスや励ましの声をかけてくれるので楽しく気持ちよく運動できるわけです。しかも、1週間教室に行かないと8日目にはコーチから会員に対して「○○さん、どうしているの?元気にしているの?」といった内容の電話がかかってきます。ここでも会員女性は、自分のことを気にかけてくれていることを実感し、「また行こう!」というモチベーションを高めることになるのです。このような会員とのフレンドリーな関係性が口コミでも広がり新規顧客を増やすとともに、会員の継続率を高める上でも大きな効果を発揮しているのです。 

 

◆ビジネスモデルから見たカーブスの強み。

 

カーブスの店舗がここまで全国に広がった背景には、比較的低コストで出店できるフランチャイズシステムの導入があります。標準的なカーブスのお店は約40坪。そこに12基のマシンを設置して運営すると、初期投資は約2000万円。ちょっと古いですが、カーブス本部が発表している資料によると、2010年の加盟店平均会員数は420人、純売上高251万円、営業利益率27.7%(損益分岐点売上高は約153万円)となっています。固定費が安く、損益分岐点が低いためフランチャイズへの加盟を希望する人が後を絶たず、現在は募集を取りやめているようです。 

 

カーブスの営業時間は、平日は10時~19時(13時~14時は休憩、14時~15時はマシンメンテナンスやスタッフミーティング)、土曜日は10時~13時、日祝は休業、と完全に主婦に合わせた営業時間となっています。このためコーチになる女性は働きやすく、また毎日1時間のミーティングタイムをとっているためスタッフ間での会員情報の共有化が図られ、会員との親密な関係づくりにつながっています。 

 

入会金は16200円(税込)、月会費は通常7236円(税込)、12ヶ月のお得コースは6156円(税込)と他のフィットネスクラブと比べると割安感があり、家計を預かる主婦でも入会しやすい料金体系になっています。また、健康状態の問診や体力測定、マシンプログラムを体験できる一日無料体験や入会金50%オフキャンペーンを通して新規会員の創造に力を入れています。 

 

カーブスのトレーニングは①筋トレ ②有酸素運動 ③ストレッチの3本柱が特徴です。1人1人が自分のペースでトレーニングでき、順番にメニューをこなしていく仕組みなので、最大24名が同時にトレーニングできるというメリットもあります。このため会員はあまり待つこともなく、カーブス側は回転の良い運営が可能です。また月に1回は計測し、トレーニング効果を見える化しています。会員にとっては次のモチベーションにつながり継続を促す手段となっているのです。 

 

ここまで女性専用30分体操教室「カーブス」がなぜ多くの中高年の女性に選ばれているのかを見てきました。顧客から見ると「気軽に利用できること」が最も大きな魅力となっています。またビジネスモデルから見ると、こちらも「比較的気軽に出店できる」というメリットが、全国出店を可能にし、誰もが利用しやすい立地に展開できています。一般的に女性は、複雑なことや難しいことを嫌う傾向があります。「簡単」「お手軽」「お気軽」「お気楽」といったキーワードは女性ゴコロを掴む基本的なキーワードであることを覚えておきましょう。 

 

さて、カーブスが女性客から選ばれていることを証明しているのが、JCSI(日本版顧客満足度指標)の調査結果です。フィットネス部門で2016年度も1位となっており3年連続トップの座を保っています。決して付加価値の高いサービスや設備を提供していないにも関わらず高い顧客満足度を獲得できているのは、先ほども述べたように「簡単」「お手軽」「お気楽」「お手軽」に対するニーズが高い結果といえるでしょう。

 

 

 

 

 

2017-08-21 14:06:00

みなさんこんにちは。和田康彦です。 

 

 

知人に誘われて兵庫県立美術館で開催されている「怖い絵展」を見に行ってきました。

 

f:id:happymk:20170822182506j:image

 

f:id:happymk:20170822182528j:image

 

f:id:happymk:20170822182555j:image 

 

前日には、開幕25日目で来場者が10万人を突破したというニュースが流れていましたが、これは平成26年の「だまし絵Ⅱ」以来の快挙だそうです。 

 

会場に到着したのは午前10時30分、この日は午後から本展の特別監修をされている、ドイツ文学者、中野京子氏による講演会が開催。11時から参加整理券が配られるというので少し早めに行ったつもりでしたが、もう時遅し。定員を超える400人以上の中野ファンが長蛇の行列を作っており、講演会は早々に諦めることになりました。 

 

そこで早速展示会場へと向かいましたが、こちらも満員電車並みの混雑ぶり。モノにはお金は使わないけれど、素敵な体験は積極的に楽しむ!そんな生活スタイルがますます広がってきていることを改めて実感しました。 

 

本展は、作家・ドイツ文学者の中野京子氏によるベストセラー「怖い絵」というシリーズ化された書籍の第1巻刊行10周年を記念して開催されました。 

 

従来の美術展といえば、ゴッホやセザンヌといった「作家」やボストン美術館やエルミタージュ美術館といった「美術館」をテーマにしたものが主流でしたが、今回の「怖い絵展」のように「恐怖」というテーマに沿って編集されたコンテンツは、まさにキュレーション時代の新しい美術展!といえます。 

 

会場も、第1章「神話と聖書」、第2章「悪魔、地獄、怪物」、第3章「異界と幻視」、第4章「現実」、第5章「崇高の風景」、第6章「歴史」といった章立てで構成。日本初公開となるポール・ドラローシュ作「レディ・ジェーン・グレイの処刑」(ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵)など、「恐怖」をテーマにした約80点が展示されています。作品は近世から近代にかけてヨーロッパ各国で描かれた膨大な絵画の中から油彩画と版画の傑作を選び出して編集。まさに目利きによる「キュレーション技術」が、新しい価値を生み出すことに成功した美術展といえます。 

 

また音声ガイドには、人気女優の吉田羊を起用するなど、話題作りにも事欠きません。 

 

モノも情報も溢れる中で、「いかに生活者の興味や関心を引くか」ということが、ヒットするための重要な要素となってきています。そのためには、コンテンツのテーマ設定がまず大切になってきます。そしてそのテーマを具現化していく編集力、つまり目利きによるキュレーション力が成否を決めていくのです。 

 

「怖い絵展」をみて、キュレーション力の可能性に改めて気づくことができました。

 

 

 

 

 

 

 

2017-08-20 13:59:00

みなさんこんにちは。和田康彦です。 

 

ここ数年、服が売れない!とアパレル不況が叫ばれていますが、「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイ社の2017年3月期の商品取扱高は、前年比33.0%増の2120億円、営業利益は前年比48.0%増の262億円と2004年のサイト開設以来快進撃を続けています。

 

さらに先日発表された2018年3月期第1四半期の決算報告でも、商品取扱高は前年同期比40.9%増の595億7400万円、売上高は前年同期比39.4%増の214億5100万円、営業利益は前年同期比59.3%増の79億8100万円と今期に入っても絶好調です。 

 

同社は、2007年には東証マザーズ、また2012年には東証一部に上場。現在では、987ショップ、5848ブランド、年間購入者数673万4740人(2016年7月~2017年6月)を誇る日本最大級のファッションを中心とした、インターネットショッピングサイトに成長しました。 

 

このスタートトゥディを創業から率いるのが、前澤友作社長です。前澤社長は、「好きなことしかやらない」「仕事は全部趣味の延長」「週に3日しか会社に行かない」等ユニークな発言や行動でも話題になっている人で、もともとは自分の大好きな音楽のCDやレコードのカタログ販売からスタート。その後、音楽と同じくらい大好きな洋服も売りたいと思い、ストリート系アパレルブランドを中心としたセレクトショップをウェブ上に公開したのが「ZOZOTOWN」の始まりです。 

 

前澤社長は、「好きなことをとことん突き詰めたら、結果的にそれがビジネスになる」という信念のもと、社員の採用では、自分と同じくらい洋服を好きなことを特に重視しています。それはSEのようなバッグヤードの社員を採用するときも同様で、洋服が好きだからこそ、洋服を買うお客様の気持ちになってインターフェイスも設計できるという考えに基づいています。 

 

つまり「洋服が好きな人がひとつ屋根の元に集まって、洋服が好きなお客様に心から喜んでもらうために自分たちの大好きな洋服を販売する」というのが同社のスタンスといえます。洋服のサイズ表示や写真の多さなど、使い勝手では群を抜くサイトを実現しているのもまさに「好きこそものの上手なれ」。「ファッション大好き」というエネルギーが、アパレル不況をものともせずに、ファッション好きな消費者の心を捉えています。 

 

2018年3月期は、商品取扱高2700億円、売上高1000億円、営業利益320億円を計画。年内には準備に6~7年もかけてきたというICTやIoTをフル活用した前代未聞のプライベートブランドを立ち上げる予定です。また、2018年秋にはZOZOBASEと呼んでいる物流センターを現在の2倍に拡張する準備も進めています。 

 

成熟社会になり今までのマーケティング手法が通用しなくなった時代。前澤社長が率いるスタートトゥデイ社のように、夢中になれること、熱中できること、大好きなことを突き詰めて、お客様を感動させることこそが、これからの時代のマーケティングの真髄といえるのではないでしょうか。

 

 

 

1