体験消費時代のマーケティングヒント
みなさんこんにちは。和田康彦です。
イタリア・ミラノに世界から注目されているセレクトショップ「スラムジャム」があります。元DJで服に関心があったルカ・ベニーニが1989年に創業。その後2006年、古都フェラーラの本社の隣りに最初の店舗をオープンしました。
今までの店舗の概念とは全く違う新しいコンセプトで開発したという同店。訪れた人たちはスラムジャムで扱っている商品と、オフィスで働く社員をガラス越しに見ることができます。商品を売る方法として面白いのはもちろん、スラムジャムが何をしている会社で、どういう人たちが働いているかをクリアにすることが目的だったといいます。
次いで2016年10月にはミラノに基幹店をオープン。店内にはイベントスペースも設置して、アート、音楽、映像、スポーツなどのイベントを積極的に開催しています。イベントの企画監修には、伊アート文化誌「カレイド・スコープ」の編集人を起用するなど、ストリートウェアと文化を融合させることで、新たな価値を発信しています。
スラムジャムは、ヨーロッパにおいてカーハートやステューシーといったストリートブランドをディストリビューションしてきた老舗チーム。ビズビム、ネイバーフッド、ダブルタップスなど日本発のブランドをいち早くヨーロッパに紹介したことでも知られ、ヨーロッパにおけるストリートファッションの先駆者として今も強い影響力を持っています。
「私は単にモノをうるということには関心がない。」「街から生まれるファッションの背景には、アートや音楽といったストリートカルチャーがある。」と語るベニーニ氏は、元DJでもありスケータ―でもあり、そのコミュニティを活かして同じマインドを持つ人間同士でつながり、自らストリートカルチャーの発信地を創り上げてきました。
モノが売れないといわれる時代。パリの老舗「コレット」が2017年に廃業に追い込まれるなど、セレクトショップ業界は苦しい状況に追い込まれています。
そんな中スラムジャムは、「人を集めること」を目的に、ファッションとアートや音楽などを掛け合わせることでストリートファッションを文化として構築してきたといえます。
文化とは一種の世界観とも言えます。その世界観に共感・共鳴して人が集まってくる。これからの時代は、それぞれの企業が独自の企業文化を育み、発信し続けることで顧客とのコミュニティを創造していく時代です。