体験消費時代のマーケティングヒント

2020-08-28 15:28:00
原点に戻ってブランド再生を目指すシャープのユニーク家電。

 

みなさんこんにちは。和田康彦です。

シャープといえば、かつては電子手帳「ザウルス」や液晶ビデオ「ビューカム」など技術力を生かして新たな需要を創造するヒット商品を次々に生み出していました。「目のつけどころがシャープでしょ!」というキャッチフレーズのもと、大胆なアイデアや技術力で生み出されるユニークな商品群は日本の家電メーカーを牽引していたといってもよいと思います。

 

ところが、主力の液晶パネル事業の不振で163月末に債務超過に転落。東証の上場ルールに基づき、同年8月に1部から2部に降格。その後、ホンハイの出資を受け、日本の電機大手で初めてアジア企業の傘下に入りました。

そしてほぼ同時にホンハイ出身の戴正呉氏が社長に就き、コスト削減や液晶パネル事業の拡大を主導。急ピッチで業績を改善させてきました。

 

「もう液晶の会社ではない。ブランドの会社になる」2018年の株主総会で戴会長はこう宣言して株主らを驚かせました。戴会長が目指すのは家電など自社ブランドを冠する事業の育成です。ネットであらゆるモノがつながるIoTや人工知能(AI)技術を組み合わせ、新たなニーズの掘り起こしを狙ってきました。

 

その結果、このところシャープのユニークな家電のヒットが相次いでいます。過熱水蒸気を使うトースター「ヘルシオグリエ」、ルームエアコンと空気清浄機を一体化した「エアレスト」、独自技術の「プラズマクラスター」を搭載した扇風機――。これらの家電製品を含む「スマートライフ事業」の203月期の営業利益は前の期比3割増の397億円と稼ぎ頭になってきました。

 

最近では、「カレーがおすすめだぜ」。シャープは巣ごもり需要で注目を集めた自動調理鍋「ヘルシオホットクック」でカプコンの人気ゲーム「戦国BASARA(バサラ)」とコラボしたモデルを202087日に投入しました。ゲームの人気キャラの1人、伊達政宗が印刷され、作中で演じた声優の声でしゃべる機能を売りにしています。

 

ホットクックはインターネットと接続してアプリを使えば、具材を入れるだけで加熱具合や混ぜ方を自動で調整します。一番小さいサイズでも価格は3万円を超えますが、新型コロナウイルスの感染拡大後の巣ごもり需要で販売が伸び、家電量販店では品薄の状態が続きました。ホットクック用の食材宅配サービス「ヘルシオデリ」も人気です。

ヘルシオホッとクック.jpg

同社は20213月期連結決算の業績予想で、純利益を前期比2.4倍の500億円と見込んでします。

今後も、シャープらしい「ひとひねり」した家電の開発が、シャープブランドの再生の鍵になると思います。

 

2020-08-27 10:51:00

 みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

以前このブログでもご紹介したhttp://womanmarketing.net/info/3454281

有機や特別栽培野菜など安全性に配慮した食品宅配のオイシックスは、「Oisix」「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」の3ブランド合計で、全国約36万人の会員に食品を定期宅配しています。

 

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う巣ごもり需要の拡大で、オイシックスの202046月期決算は、売上高が前年同期比42.2%増の231億円、営業利益が約3.8倍の20億円と大幅な増収増益となりました。

 

オイシックス・ラ・大地を率いる高島宏平社長は、生産者や消費者の声に耳を傾け、駄目なところを一つ一つ改善し、できることはすべて実践することで「オイシックス」というブランドを磨き続けてきました。

契約する生産者は現在約4000軒ありますが、企業理念にある「よい食生活」とは何かということを社長自ら言葉で説明するより体験した方が早いという考えのもと、年に1回、社長を含め全社員で畑や漁港などで生産者を手伝う機会をつくっているそうです。生産者のこだわりや思いを体で感じることで、自信を持ってお客様に薦められるようになり、オイシックスファンを増やす原動力になっています。

また、オイシックスを利用するユーザーが登壇し、社員が話を聞くパネルディスカッションも定期開催しています。ここでユーザーから改善点を指摘されると、社長や上司から言われるより早く直るそうです。

さらにユーザーのご家庭へも手分けして直接訪問して、不平や不満、意見を聞いているそうです。高島社長自身も創業から20年続けているそうですが、「毎回必ず何か発見があります。」といっておられます。

現在同社の看板商品にまで成長した「ミールキット」も、「オイシックスから農産物や食品はほしいが、忙しさから余らせてしまうのがもったいなくて買い続けられない――。」そんな声をくみ取って開発されました。ミールキットは必要な量の食材や調味料をセットにしてレシピとともにユーザーのもとに。一部の食材は途中まで調理してあり、20分程度で本格的な料理を作りたての状態で食卓に並べられるようにしたところ、働く女性に大きな支持を得ています。

ミールキット.jpg

高島社長は、「経営者の体験記などでは、ひらめきから一発逆転のヒットが生まれ苦境を脱するという話をよく目にします。しかし現実のビジネスは違います。生産者や消費者の声に耳を傾け、駄目なところを一つ一つ改善し、できることはすべてやったから、今があると思っています。」と語っています。

顧客はもとより、生産者や取引先の声にも耳を傾けて、従業員一丸となって真摯に改良改善を続ける。この地道な活動こそがきらりと輝く「ブランド」をつくる鍵になります。

 

 

 

 

2020-08-25 10:46:00

みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

飲食店向け予約/顧客台帳サービスを手掛ける株式会社トレタの顧客管理サービスを導入する全国1万店のデータによると、来店客の回復は「ランチ」「住宅街立地」「少人数」ほど早かったという記事が、2020825日付日本経済新聞に掲載されていました。

全国1万店のデータを細かく見ていくと、

  消費者が予約の際に指定した来店時刻などから推計すると、81016日は午後911時台の来店客数が前年同期比55%のマイナス。緊急事態宣言が出ていた4月下旬の98%減よりは回復したものの、38%減まで戻したランチ(午前11時~午後2時台)と比べると苦戦ぶりが目立つ。東京都などが8月に入って午後10時以降の営業自粛を要請している影響も大きいが、自粛と関係ない午後58時台も48%減と回復が遅い。消費者が感染防止のため、滞在時間が長くなりがちな夜の外食を避けている状況がうかがえる。

   人口の密集する東京都内で調べると、代表的なオフィス街である千代田区や中央区は81016日の来店客数が前年同期比6割前後のマイナス。両区の飲食店はビジネスパーソンが主要顧客で、コロナ禍で在宅勤務が浸透したことが重荷となっている。対照的なのが住宅の多いエリア。高級住宅街の自由が丘などがある目黒区は25%減で、3月上旬と同水準まで回復。成城や二子玉川といった人気エリアを抱える世田谷区は8%減まで戻り、前年並みが視野に入っている。以前は仕事帰りにオフィスの近くで飲食していた人々が、家族と自宅近くの飲食店を訪れるようになったとみられる。

  感染リスクが高いとされる大人数での宴会も、前年と比べるとほとんど開かれていない。81016日は12人での来店が前年比21%のマイナスまで回復したのに対し、35人のグループは41%減、610人は65%減だった。11人以上の大人数になると82%減という深刻な状況が続く。

このように消費者行動が変化する中、飲食各社は変化に対応する取組みを早めています。

例えば、「塚田農場」を運営するエー・ピーカンパニーは6月、新業態「つかだ食堂」の展開をスタート。特徴は定食やおかずメニューの充実です。居酒屋としての性格が強い塚田農場の一部を、家族連れなどがランチでも訪れやすい店舗へと順次転換していく計画です。

またプロントコーポレーションは7月末、東京・港にワイン居酒屋「ディプンティーナ」の1号店をオープン。仕事帰りの女性が1人で立ち寄れる店、というのがコンセプト。少人数での来店を意識し、大皿ではなく小皿で1人分の量を提供するメニューを充実させています。高めのテーブルで立ち飲みもでき、来店客の滞在時間も30分程度と短いケースが多いようです。

プロント.jpg

トレタのデータからは、常連客の大事さも浮かび上がって来ました。81016日の客層を分析すると、その店を訪れるのが3回目以上のリピート客の数は前年同期比18%減にとどまっていたのに対して、初めて訪れるいちげん客は40%となっています。

このデータからも、苦境にあるときこそ、なじみの店を支えたくなるという消費者心理が見えてきます。つまり、今後は広告宣伝を投じて新規顧客を開拓するより、つながりを深めて常連になってもらう努力がますます重要になってくるといえます。

 

ハッピーブランディングラボでは、小さな会社でもブランドづくりで常連客を増やすお手伝いをしています。お気軽にお問い合わせください。

 

http://womanmarketing.net/contact

 

2020-08-24 07:15:00

みなさんこんにちは。和田康彦です。

カミソリやグルーミング製品などを展開する貝印が2020817日から開始した、コミュニケーション広告が話題になっています。バーチャルモデルのMEMEがワキの毛を堂々と見せるビジュアルと、「ムダかどうかは、自分で決める。」というキャッチコピー、#剃るに自由を」というハッシュタグがインパクトを与える広告になっています。また、SNSには本来は剃毛を促進したいはずの貝印が、体毛処理の多様性を伝えるメッセージを発信したことに驚き賞賛する声が多く上がっています。

貝印.jpg

同社の話によると、2019年ごろからSNSに「女性のワキはツルツルじゃないとダメなんておかしくない?」「会社に行くからヒゲを剃らなきゃいけないというのは変」などの声が届き始め、体毛を剃ることに対する世間で言われる常識と、生の声に乖離があるのではないかと感じ始めていたそうです。

また同社が行った調査でも、「ファッションや髪型のように、体毛を剃ることは自分自身で自由に決めたい」という声が90.2%「気分によって毛を剃っても剃らなくても良い」という声が80.5%あることも明らかに。

海外ではワキ毛に対する価値観も多様で、以前からジュリア・ロバーツ(Julia Roberts)がレッドカーペットでワキ毛を見せたりといったこともあり、さまざまな価値観に寄り添うことができればという思いからこのような広告企画が生まれたそうです。

ビジュアルにはバーチャルモデルを起用するというはじめての試みにもチャレンジ。ビジュアルもメッセージも先進的で、多くの反響が生まれています。

今だ収束の兆しが見えない今回の新型コロナウイルスの感染拡大。コロナ禍の中では、これまで常識と思っていたことや普通と思っていたことが、ある日突然、覆されるという経験を誰もが目の当たりにしました。

つまり、新型コロナウイルスの感染拡大から学ぶべきことは「これまでの常識や当たり前を疑え!」ということではないでしょうか。商品開発の方法、売り方、働き方、改めてすべての仕事の仕方に目を向けてこれまでの常識を疑うことがニューノーマル時代の生き残り戦略です。

 

2020-08-18 11:27:00

みなさんこんにちは。和田康彦です。

有機や特別栽培野菜など安全性に配慮した食品宅配のオイシックスは、「Oisix」「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」の3ブランド合計で、全国約36万人の会員に食品を定期宅配しています。

オイシックス.jpg

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う巣ごもり需要の拡大で、オイシックスの202046月期決算は、売上高が前年同期比42.2%増の231億円、営業利益が約3.8倍の20億円と大幅な増収増益となりました。

オイシックス好調の背景には、外出自粛による宅配便利用へのシフトという消費行動の変化がありますが、もうひとつ、同社が長年培ってきたブランドへの信頼感づくりが大きいと思います。

オイシックスブランドが約束するのは、

  Delicious おいしさ

Oisixは取り扱う全ての食材について間違いのないおいしさを提供し、さらに、思わず家族や友達にすすめたくなるほどの感動的なおいしさもお届けする。

  Enjoyable 楽しさ

Oisixはお客様が来店して商品を購入し、調理して、召し上がるまでの全てのプロセスにおいて期待以上の発見や学びを提供し、会話や笑顔が生まれるような、食の楽しさを作り出す。

  Healthy 健康

OisixOisixのある生活をお客様が送ることで、家族や子ども・自分自身が心身の健康を獲得できるようお手伝いをする。

  Easy 簡単

Oisixはお客様が忙しい日々の中で豊かな食生活を簡単に実現できるよう、ストレスを感じない気が利いた商品・サービスを提供する。

  Creadible 信頼

Oisixは「作った人が自分の子どもに食べさせることが出来る」食材のみ販売することで安全を担保し、適切な説明によって安心を提供し、安定的なサービス品質を保つことで、お客様からの継続的な信頼を勝ち取る。

  Social 社会との関わり

オイシックス・ラ・大地は、地域や、農業・水産業・食品業、およびグローバルな様々な社会問題に対し、自らの行動を通して、その問題解決に積極的に寄与する。

6つがありますが、私はこの中でも5番目の「信頼」が、オイシックスファンを増やしている原動力になっていると思います。

「安心・安全を担保してくれている。だからいざというときになおさら応援してあげよう」という形で、企業と消費者の絆がさらに強まっていくと思います。

 このように、アフターコロナでは、ブランドは『信用』を包含したものになります。面白そうだからちょっと体験してみよう、などという消費は減り、本当に信用、信頼できる人やブランドへの消費をかなり意識したものになるでしょう。

「安心」「安全」といえば、日本企業のお家芸。ブランドへの信頼を追い風にして、あなたの会社や商品のブランドをさらに磨いていきましょう。