体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。和田康彦です。
シャープといえば、かつては電子手帳「ザウルス」や液晶ビデオ「ビューカム」など技術力を生かして新たな需要を創造するヒット商品を次々に生み出していました。「目のつけどころがシャープでしょ!」というキャッチフレーズのもと、大胆なアイデアや技術力で生み出されるユニークな商品群は日本の家電メーカーを牽引していたといってもよいと思います。
ところが、主力の液晶パネル事業の不振で16年3月末に債務超過に転落。東証の上場ルールに基づき、同年8月に1部から2部に降格。その後、ホンハイの出資を受け、日本の電機大手で初めてアジア企業の傘下に入りました。
そしてほぼ同時にホンハイ出身の戴正呉氏が社長に就き、コスト削減や液晶パネル事業の拡大を主導。急ピッチで業績を改善させてきました。
「もう液晶の会社ではない。ブランドの会社になる」。2018年の株主総会で戴会長はこう宣言して株主らを驚かせました。戴会長が目指すのは家電など自社ブランドを冠する事業の育成です。ネットであらゆるモノがつながるIoTや人工知能(AI)技術を組み合わせ、新たなニーズの掘り起こしを狙ってきました。
その結果、このところシャープのユニークな家電のヒットが相次いでいます。過熱水蒸気を使うトースター「ヘルシオグリエ」、ルームエアコンと空気清浄機を一体化した「エアレスト」、独自技術の「プラズマクラスター」を搭載した扇風機――。これらの家電製品を含む「スマートライフ事業」の20年3月期の営業利益は前の期比3割増の397億円と稼ぎ頭になってきました。
最近では、「カレーがおすすめだぜ」。シャープは巣ごもり需要で注目を集めた自動調理鍋「ヘルシオホットクック」でカプコンの人気ゲーム「戦国BASARA(バサラ)」とコラボしたモデルを2020年8月7日に投入しました。ゲームの人気キャラの1人、伊達政宗が印刷され、作中で演じた声優の声でしゃべる機能を売りにしています。
ホットクックはインターネットと接続してアプリを使えば、具材を入れるだけで加熱具合や混ぜ方を自動で調整します。一番小さいサイズでも価格は3万円を超えますが、新型コロナウイルスの感染拡大後の巣ごもり需要で販売が伸び、家電量販店では品薄の状態が続きました。ホットクック用の食材宅配サービス「ヘルシオデリ」も人気です。
同社は2021年3月期連結決算の業績予想で、純利益を前期比2.4倍の500億円と見込んでします。
今後も、シャープらしい「ひとひねり」した家電の開発が、シャープブランドの再生の鍵になると思います。