体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。和田康彦です。
新型コロナウイルスの影響で、アパレル業界は苦境に立たされています。5月15日には、「ダーバン」「アクアスキュータム」などのブランドを展開する老舗・レナウンが民事再生手続きを開始しました。業界大手オンワードホールディングスは、国内外の約700店舗の閉店を決定。2021年2月期までの間に、さらに約700店舗を追加で閉店することを発表しています。
また、サンエー・インターナショナルは、1991年から続いた人気ブランド「ナチュラルビューティー」を終了。ストライプインターナショナルも、長年10〜20代前半の女性向けの主力ブランド「イーハイフンワールドギャラリー」を終了します
コロナ禍の中でのファッションビルや百貨店の営業自粛に加え、長引く外出自粛ムードや在宅勤務の広がりにより、消費者の「装い」への意識が大きく変化したことも、多くのアパレルが苦戦を強いられている要因といえます。
◆コロナ禍の中でも成長を続けるD2Cブランド「foufou(フーフー)」
そうした中、2020年2〜5月、4カ月連続前年同月比で200%以上の売り上げ成長を遂げたブランドがあります。20代女性を中心に、幅広い層から支持されているブランド「foufou(フーフー)」です。
「フーフー」は代表兼デザイナーの高坂マール氏が、「服よりも他のことにお金を使いたいが、『ユニクロ(UNIQLO)』や『ザラ(ZARA)』では満足できない。そういった人たちが買えるような服を売りたい」という思いからEC専売のハンドメードブランドとして2016年にスタート。感度が高いネットユーザーたちの目にとまり、一気に成長してきました。実店舗を持たず、販路は同社ECサイトのみという、D2C(Direct to Consumer)ブランドです。
2019年末時点での年商は2億円、2020年は4億円を超える見込みで、業界でもD2Cの成功例の1つとして注目されています。
◆消費者目線のモノづくりを大切にする「foufou(フーフー)」
「フーフー」は、“ニューウェーブなファストファッション”を自称し、安価でありながら、50~70%と高い原価率で従来のファストファッションにはないデザインの商品を毎月2型ずつ販売。服の生産背景や商品の価格付けの理由などを高坂デザイナーが自身のインスタグラムでユーモアを交えつつ伝えるというユニークな点もあわせ、20代女性を中心にコアなファンを獲得してします。
コンセプトは、適度にお洒落で、適度に使い勝手のよく、適度な価格の服に文脈を持たせ、提供する人達の暮らしや消費を変えるブランドです。
高坂デザイナーが一貫して注力しているのは「消費者目線のモノ作り」です。同氏は「重要なのは消費者が価値をどこに感じるかということ。原価率が仮に10%だとしても、購入者が健康的に消費ができるのであればそれでいい。業界の視点だけで服を作っていくと、お客さんとの間に認識のズレが生じる。」と語ります。目指すのは、安くて、使い勝手が良くて、品質はそこそこ。そしてパッと買いに行けるものです。
◆価値の高い商品をリーズナブルな価格で提供する「foufou(フーフー)」
同社の服はすべて国内生産で、布をふんだんに使った商品が多いのが特徴です。原価率は50~70%と、20〜30%に抑えるブランドが多い中で、極めて異常な数値といえます。ただ、消費者にとっては価値の高い商品をリーズナブルな価格で手に入れることができるといううれしいメリットがあります。
フーフーでは、独特のビジネスモデルでこの原価率の重さをカバーしています。フーフーの戦略は「広告宣伝費はゼロ円」「セールは一切しない」「販路を拡大しない」。どれも、業界の常識を覆す内容です。また、配送や梱包なども簡素にして安く届けることにこだわっています。
また2018年5月からは、縫製職人とのマッチングサービス「ヌッテ(NUTTE)を運営するステイト・オブ・マインドと協業。生産管理、梱包、配送などの業務サポートを受けることでブランド規模を拡大してきました。
◆在庫は残さない健康消費を目指す「foufou(フーフー)」
フーフーでは、新作はすぐに完売するそうですが、たとえ在庫が売れ残っても、セールはしません。「定価でも購入してくれる、熱量の高い顧客を大切にするため」です。
同社はブランド設立当時から「健康的な消費」というコンセプトを掲げていますが、見事それを体現しているといえます。
コストへの姿勢は、コロナ禍での対応にも表れています。普段、商品ページにはプロのモデルを起用していましたが、スタジオ撮影ができないコロナ自粛中は、メンズアイテムについてはマール氏自らがモデルを兼任。コストもかからず、顧客からの反応も上々だったそうです。
◆コロナ禍の中でライブ配信に注力する「foufou(フーフー)」
普段はLINE@やインスタグラム、noteなどで新作情報やブランド理念を発信していますが、それに加え、全国各地で試着会(展示会)を実施しています。実店舗を持たないブランドながら、ファンに直接商品をアピールする試みです。
ここ数カ月は、新型コロナの影響で試着会は中止に。そこで、インスタグラムでのライブ配信に注力してきました。インスタライブでの販売自体は目新しいものではありませんが、フーフーがちょっと面白いのは、モデルではなく、それぞれ身長が異なるスタッフが商品を試着し、動画で服をアピールしている点です。
コメント欄には、視聴者から「162cmだとSとMどちらがいいですか?」などの質問が飛び交い、その一つひとつに、スタッフとデザイナーが直接回答しています。ライブ配信では、説明しすぎず『ツッコミどころ』を意識して発信。顧客の発言ハードルを下げ、コメントが集まる仕組みをつくることで、双方向のコミュニケーションを大切にしています。
◆今後も軸はぶらさない「foufou(フーフー)」
新型コロナウイルスによって、『わざわざ外出する』ことが大きな意味を持つようになりました。日用品としての服飾費を抑える人は増える中、『日常を非日常に変えてくれるためのファッション』に投資する人も多くなることが予測されます。
そんな中、お客さんが着た時に高揚感が感じられる服を作っていきたいという軸はぶらさず、変化していかなければいけないことは変化していくという「foufou(フーフー)」の経営スタイルからは、ファッション業界のみならず、あらゆる業界がニューノーマルの時代に生き残るヒントが見えてきます。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
前回は、「ニューノーマルの時代は、個人が主役のD2C(ダイレクト トゥ コンシューマー)が拡大する。というテーマでお届けしました。 http://womanmarketing.net/info/3474624
そもそも、D2Cというキーワードが出てきたのはここ数年の話。主にファッション商品から広がってきましたが、その意味するところを正確に理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。そこで今回は、D2Cビジネスの概念や特徴について解説しておきたいと思います。
D2Cとは、基本的には店舗を持たず、EC専売でダイレクトに顧客に販売をする業態をいいます。
原価率を比較的高く設定し、セールや中間マージン、店舗費用などを省くために販売価格はかなりお手頃になります。
本来ファッション商品の場合、セレクトショップなどに卸すと集客をしてくれるわけですが、自分で販売まで行うD2Cの場合は、拡散力やファンをつけるだけの他にはないブランドストーリーが欠かせません。
つまり、ファンとの距離感がこれまでとは異なるわけですね。例えば、音楽業界ではこれまではライブハウスが集客を担っていましたが、今はアーティストにファンがつく時代です。これと同じように、ファッション業界でもお店やブランドにファンがつくのではなく、これからはデザイナーやクリエイター、プロデューサーといった個人にファンがつく時代に変わりつつあるのです。
もう一つの特徴は気軽にトライアルができることです。例えば、D2Cの場合は、SKUあたりの生産数は50着ほどでスタートすることが可能です。これは大量消費の時代には考えられないロット数ですが、いろいろな商品をテスト的に販売し、顧客の反応を見ながらロット数を増やしたり、商品を改良することで、少しずつ利益を上げていく仕組みがつくれます。
その結果、工場とブランド、顧客そして社会がハッピーになれる関係を構築することが可能になります。直接販売によりコストを削減しながらも、売れ行きなどのデータをもとに商品ラインアップを効率化していくことこそが、D2Cモデルの醍醐味といえます。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
米国では、高級百貨店ニーマン・マーカスなどが破綻するなか、無名の商店主やクリエーター、デザイナーなどが、D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)と呼ばれる新しい流通の形に向っています。D2Cは既存の流通店を通さず、アマゾン・ドット・コムも介さない個人経営のオンライン店。いち早く定着し始めた米国では、コロナを受けて「ポスト・アマゾン時代」の小売りの形として急拡大しています。
D2Cの基盤を提供するカナダのショッピファイの2020年4~6月の売上高は、7億ドル強(約750億円)と前年同期比2倍に増加。以前からアマゾン・キラーの異名を取る同社は、ここに来て急成長した裏にはコロナがもたらす非接触型社会をD2C定着の好機に変えた点も大きいといえます。株価は昨年末の2倍以上で時価総額は1200億ドルを超す躍進ぶりです。
ショッピファイは、オンラインでのチップ機能やギフトカードを追加するなど、小さな商店が生き残るための機能作りに集中することで、名もなき「パパママショップ」の支持を得ています。
米調査会社eマーケターは、20年の米国内のD2Cブランドの売上高を合計178億ドルと予測。ネット通販市場全体の2%程度ですが、前年比の成長率は24%ですでに2兆円規模になります。
「個」が主役となる売り方改革の波は今、日本にも押し寄せています。
例えば、ネット企業のGMOペパボがてがけるオリジナルグッズの製作・販売サービス「スズリ」は、写真やイラストを投稿するだけでTシャツなどのグッズを作れるサービス。注文を受けてからGMOペパボが提携するメーカーで作るので利用者は在庫を持たずに済みます。
同社は2014年にスズリをスタート。当初は鳴かず飛ばずで17年には担当者を3人にまで削減。その後、ネット通販とメーカー機能、SNSの販促が結びついたサービスが流行に敏感なクリエーターに支持され、D2Cの機能を担い始めました。スズリの流通総額は2020年6月に前年同月比3.5倍となり4億円を突破。出品者も30万人を超えました。
非接触型社会が新常態となるニューノーマルの時代は、ネットを通じて個人が個人にモノを売るD2Cの裾野がじわりと広がることが予測されます。あなたの会社やあなた個人もぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
鳥取県倉吉市に本社を構えるバッグメーカーのバルコス(山本敬社長)は2020年8月28日、東証TOKYO PRO Marketに新規上場を申請しました。上場日は10月2日を予定しています。
バルコスは1991年に設立。バッグブランド「バルコス(BARCOS)」「バルコスジェイライン(BARCOS J LINE)」「ハナアフ(HANNA-FU)」「バルコスブルー(BARCOS BLUE)」などを抱え、クリエイティブなレディスハンドバッグや財布などの皮革商品の企画・デザインを行い、国内外で販売しています。
またテレビや雑誌、そしてインターネットでの販売でも、リーティングカンパニーの地位を築いているほか、インフライトマガジンへの商品企画、アパレルメーカー、グローバルブランドへのOEM・ODMなど、他社との共同企画商品も提供しています。
海外では、ニューヨークで開催される展示会”COTERIE”(コーテリー)へ出展、またミラノで開催される世界最大規模のハンドバッグ展示会“MIPEL”(ミペル)にジャパンブランドとして唯一継続出展を果たし、過去三回デザイン賞などを受賞しています。
現在は、パリで年4回開催されている “PREMIERE CLASSE”(ブルミエールクラス)にも出展し、世界的にそのデザイン力と商品力が高く評価されています。
07年にスタートした「ハナアフ」は、折り紙からインスピレーションを得た6通りに変形できるバッグ“アリエス(ARIES)”が注目を集め、アメリカやアジアなど、世界中の百貨店やセレクトショップで扱われています。生産では中国・広州に自社サンプル専門工場を構え、迅速で大量にサンプルを制作できる体制を有しています。
◆コロナ禍の中でも業績は好調
2020年12月期の見通しは、売上高が前期比44.3%増の44億円、営業利益は同51.9%増の4億7200万円、経常利益が同52.7%増の4億5100万円、純利益が同81.6%増の2億9100万円を見込んでいます。新型コロナウイルスの影響で店舗事業が苦戦を強いられていますが、鳥取県が行う新型コロナウイルス感染対策事業のマスク販売あっせんに協力したことや、オンライン事業の強化などで店舗事業の損失をカバーしています。
◆倉吉市内の6畳一間からスタート
山本敬社長は、1966年大阪市生まれ。12歳の時に両親が離婚し母親の実家がある倉吉市へ。県立倉吉東高校卒業後、大学進学とともに上京。卒業後、大手出版社の女性誌などのカメラマンとして活躍していましたが「商売のほうがクリエイティブ」だと、20代半ばの1991年、倉吉市内の実家の6畳一間で独力で創業しました。「(実業家として)日本一になりたい」という思いから、当時規模が小さかったというバッグ業界で勝負を挑みました。社名のバルコスは、スペイン語のbarco(船)から、会社が大きく発展するようにという願いを込めて名付けました。
ワニ革のバッグなどを卸売りしていた97年、ドイツの人気バッグブランド「PICARD(ピカード)」のメーカーから声がかかり、同社の日本総代理店に。日本向け商品を企画して商品開発のノウハウを学び、独自商品の製造もスタート。イタリア・フィレンツェに支社を置き、世界20カ国以上に進出。日本全国の大手百貨店等と取引があります。
◆倉吉から世界へ
1991 年、バルコスは鳥取県のほぼ中央に位置する倉吉に誕生しました。市内には古を思わせる白壁の土蔵が並び、あたりは緑豊かな田畑が広がるのどかな地域です。
ファッションに限らず、産業のほとんどは大都市に集中し、多くの人を呼びこみ、トレンドや独自の文化を形づくってきました。しかし、近年では必ずしも都市が物事の発信地とは限りません。
情報や物流の発達により、地域産業の魅力を全国、そして世界に発信し注目を集めている場所も数多く存在します。
同社も、品質の高さを背景とする日本ブランドのバッグとして、世界のステージに向けて挑戦、独創的な魅力をとどけています。
合言葉は「倉吉から世界へ」。made in kurayoshi のバッグが、日本を代表するバッグとして世界にひろがり、人の心を豊かにつつみこむことをバルコスは夢見ています。
山本社長は、「ヨーロッパに東京のような大都市はない。適度に田舎で、みんな豊かなんです。ワインづくりやシャツの縫製などで、いいものに付加価値をつけて商売をしている。日本もそうするべきです。地方で貧しくではなく、地方で豊かに暮らす。県内にそんな企業が2社、3社と出てきたらモデル地域になるかもしれない。自分が実績を残して、若い人に伝えたい。」
「ブランドによるイメージ戦略が上手なヨーロッパ型を目指していきたい」
「フィレンツェにグッチがあるんだから、倉吉にバルコスがあっても不思議じゃないはず」
「イタリアでは、名だたるデザイナーがフィレンツェの出身で、フェラガモはローマでもミラノでもなく、フィレンツェで起業しました。結果的にフィレンツェがファッションの街になったのであって、真面目にやっていいものを作り続けるのには、本社の場所は大都市じゃなくても、どこでもいいということです。」と倉吉で創業した思いを語っています。
◆目指すのは「愛される質」
同社のホームページには、バッグづくりにかける熱い思いが下記のように綴られています。
「心からほんとうにいいと思ってもらえるバッグをつくりたい。バルコスの想いは、単純すぎるほど正直でまっすぐです。それは、デザインの豊かさだけではありません。素材や縫製の確かさ、機能性といったものだけでもありません。手にするたびにときめきを覚え、その喜びがいつまでも長くつながっていくものであること。目に映る品質を超えた先にある、愛される質を求めつくり続けています。倉吉という小さな場所から、日本ブランドとして世界の大きなステージへ。バルコスはきょうも夢と情熱、そのすべてをバッグづくりに捧げています。」
◆「響きあう情熱」が世界から支持される商品を生み出す原動力
また、「創造にとって大切なのは、既存の概念にとらわれないしなやかな発想力。それを表現するのは若さ、自由さ、それらを妨げることのない空気だと考えます。バルコスのデザイナーは自ら考え、その答えを言葉とビジュアルで明確に形にしていきます。そのあふれる熱意と瑞々しい感性こそが、型にはまらない独創的なスタイルにつながっています。日本の新しい質を備えたバッグは、ここから生まれます。」と、世界中から支持される商品を生み出す原動力は「あふれる情熱」にあることをメッセージしています。
◆付加価値を生み出すブランドづくりで世界へ進出
バスコスは、ビジネスのスタート当初、自社にブランド力がなかったことから、バッグに「爬虫類皮」という付加価値を持たせて販売。その後、流通業のトップである百貨店への参入を狙い、日本での販売代理店を探していた「PICARD」の代理店になり、「ドイツバッグメーカーの販売代理店バルコス」という肩書を得て、百貨店事業参入に成功。「PICARD」のバッグは当初はデザインやサイズが日本人に合わず売れなかったのですが、中国の工場で水牛皮の日本仕様のバッグを作ったところ、これが人気となりました。
その後「PICARD」に加え、百貨店で自社ブランドのバッグや雑貨販売を開始し、事業は拡大。しかしディベロッパーの商業ビルテナントでの直営事業に進出したが失敗。顧客は「百貨店で扱っているバッグ」を購入していたということに気づいたことから、ビジネスモデルについて再考し、ライバルの少ない海外事業での展開を考えました。
2007年1月、他社と差別化した付加価値をつけるため、イタリア(フィレンツェ)に支店を開設。
2007年9月には、日本企業として初めてミラノの国際皮革製品見本市「MIPEL」に出展を開始。3回目となった2008年秋には、世界491社の中で、 「デザインイメージ賞」上位5社にノミネートされました。そして、著名なイタリア人デザイナーにブランドの監修を依頼し、いち早くトレンドを取り入れる工夫をしました。
「MIPEL」への出展や、トレンドをすばやく製品生産に活かす仕組みにより、国内でのOEMに加え、相手先のブランド名で設計から製造までを手掛けるODMが急増。セレクトショップにも取引が一気に広がりました。また北欧などを始め、海外にも販路が拡大しました。
◆「生産は適材適所」という考えに基づき、中国の広州にサンプル工場を開設
バルコスの強みの一つが、中国につくったサンプルだけを作る自社工場。サンプルだけを月に500個作れるようになっており、他社との差別化の武器になっています。
製造工場は、ラインを止めてまでサンプルを作るのを嫌がるので、細かい修正に応じてもらえない場合があり、急ぎの仕事が頼みにくいという実情があります。一方、サンプル専門工場ならならレスポンスも早く、ポケットをあと何ミリ下げてもう1回作って、などの注文にも素早く対応できます。
OEMの場合、速さは他社では真似できないことなので大変有利になります。また自社ブランドでも、サンプルをモニターしてもらって納得がいくまで何度でも作り直すことが当たり前にできるのでお客様に満足していただけるモノづくりができます。
この、完成度が高いサンプル作りもバルコスの付加価値のひとつであり、これができるブランドはなかなか見当たりません。サンプルを見せれば、どのレベルの仕事ができるかプロはわかるので、商談も早く、世界各国からの注文には、言葉よりサンプルを見てもらったほうがわかりやすいというメリットもあります。
◆海外で大ヒットしている、折りたためるバッグ「Hanaa-fu」
バルコスは、いかに海外の女性に日本のブランドのバッグを持ちたい、バルコスが欲しいと思ってもらうかを考えています。『Hanaa-fu(ハナアフ)』は折りたためるバッグでありながら、どのたたみ方でも美しい形と機能性を備えてます。この技術と発想が海外でウケて「折り紙のようだ」「高品質と高機能が日本らしい」と高い評価を得ました。世界では『Hanaa-fu』がバルコスのイメージになっています。この成功により、バルコスが作るとバッグも楽しくなると印象づけることができました。
◆最高品質のラグジュアリーブランドの育成
一方、国内向けには、世界基準のラグジュアリーブランド『バルコスJライン』を提供しています。Jラインは革なめしから、裁断、縫製、彫金にいたるまで、すべて日本製。日本最高峰の職人たちが、徹底的にこだわった日本のモノづくりを追求しています。この伝統の技に日本が世界に誇るクリエーターの感性を掛け合わせることで、これまでにない、世界に通用する高感度なラグジュアリーレザーブランドを作り上げました。同社は、ジャパンラグジュアリーの創出は、日本ならではの文化、伝統を守り、新たな形で発展させていくことにつながっていくと考えています。
◆バルコスから学ぶ、「ニューノーマルの時代は、地方発世界へ」
新型コロナウイルスの感染拡大が続き、東京一極集中の弊害やテレワークの推進に注目が集まっています。バスコスは、今から約30年も前に、大都市一極集中に疑問を呈し、鳥取県倉吉市からファッション商品を発信することにチャレンジしました。当時銀行からは「倉吉でファッションなんかできるわけがない」って。みんなから笑われていたそうです。地方に工場や小売店はあっても、ファッションブランドなんてゼロの時代。当然といえば当然といえます。
一方で、ヨーロッパは自国の各地に都市が点在しています。大都市はそんなに多くなくて、それぞれが小規模。たとえばバルコスの子会社があるフィレンツェは、だれもが知っているイタリアの歴史ある街のひとつですが人口は約35万人とそれほど多くありません。観光客が年間約300万人訪れる街で、ファッション、農業、観光で成り立っています。市街中心部は「フィレンツェ歴史地区」としてユネスコの世界遺産に登録されており、1986年には欧州文化首都にも選ばれています。
ニューノーマルの時代はデジタルシフトの重要性が叫ばれていますが、一方でこれからの日本人が目指すべきは文化的に成熟したヨーロッパが先行するローテクの付加価値づくりです。アフターコロナの時代は、世界に認めてもらえる文化度の高さでモノを売る時代です。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
株式会社キタムラは、旗艦店となる「新宿 北村写真機店」を2020年7月3日にオープンしました。
キタムラは1934年に創業した老舗カメラチェーンですが、2018年にカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の完全子会社になっていました。
キタムラをどう再生させるか。CCCはこれまで既存の小売事業を再構築してきた実績があります。書店は「蔦屋書店」、家電は「蔦屋家電」。レトロな店名で、専門性を高めた売り方でブランド力を高めてきました。「北村写真機店」も「カメラのキタムラ」をレトロ調に作り直した店舗で、従来型のカメラ店を再編集しています。
コンセプトは「新しい写真の売り方」。1階はグッズ、2階は日本で発売している大半のカメラとレンズの新品、3階は写真プリントとブックラウンジ。通常は工場での仕上げが必要な精度の高い現像が、ここでは15分でできます。4階は5000種類がそろう中古カメラで、5階は買い取りと修理、6階がヴィンテージカメラとドイツの高級カメラ「ライカ」の専門売り場になっています。カメラというモノと専門性の高いコトを組み合わせ「記憶と記録に寄り添うサービス」を目指しています。
日本のカメラは、ピーク時には2兆円に膨らんだ世界市場で、日本企業はシェア上位を占め続けています。しかしながら、今はカメラを趣味とする人は国民の1%にも満たないともいわれています。
スマートフォンの浸透などでカメラ離れが進みデジタル化が広がっています。ただ一方ではわざわざカメラを持ちたがる需要も生まれています。北村写真機店の来店者も年配層ではなく、20~30代が半分を占めており、ライカの購入者も同じような比率といいます。
シャッターを押すと、「ウィーン…」という音とともに10秒ほどで白いフィルムが出てくる。フィルムには撮影した画像がじわじわと浮かんでくる。富士フイルムのインスタントカメラ「チェキ」の使用光景です。
そのチェキの年間販売台数がついに1000万台の大台を超えました。2018年4月から2019年3月までの期間に1002万台を販売。1998年の発売開始以降、20年間の売上累計は約4400万台で、4分の1近くを2018年度の1年間で売った計算になります。
チェキの販売台数はiPhoneが発売された2007年を契機に増加傾向に転じており、スマホと競合することなく販売台数を伸ばしていったことがわかります。
チェキは撮影後、すぐに写真が出てくるので、イベントなどでその瞬間の思いをメッセージとして書き込んで残せるコミュニケーションツールとしても使えます。
スマホやSNSで写真をやり取りするのが当たり前の中で、フィルムとその質感が特別感を与えていることが人気の背景にあります。
また近年は、暖かみのある音、モノとしての味わい。インテリアとして壁に飾ってもお洒落なデザイン。従来はマニアの嗜好品、またはDJツールだったアナログレコードが、いまや若い世代も注目する最新メディアへと浮上しています。
デジタル化がどんどん進む暮らしの中で、人びとは今「質感」や「温もり」「味わい」を求めています。お客様との絆をつくっていくためにも「温もり」や「味わい」「質感」などニューレトロな感覚は重要な鍵を握っています。