体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。和田康彦です。
企業が繁盛・繁栄していくためには、時流に適合していくこと、つまり変化に対応していくことが最も重要です。
今日、注目したのは、米アマゾンがプライムデーに合わせてリリースした商品配達箱で遊べるARアプリです。
同アプリを使って商品配達の箱に記載されたQRコードを読み取ると、デザインがスマホ画面に立体的に表示される仕組みになっています。
立ち上げ時のアイデアは、箱に記載されているカボチャに顔を描き加えてからQRコードを読み取ると、そのカボチャが立体的にスマートフォンにあらわれ、デザインをカスタマイズしたり、セルフィーに組み合わせてアニメーション化することができるというもの。
ほかにも、商品配達の箱そのものが自動車に変わったり、2019年で最も人気を集めたコーギー犬のデザインも登場する予定です。
アマゾンの買った後も楽しめる顧客体験の提供。お客様を喜ばせようという遊び心が女性ファンをつかむ鍵になります。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
企業が繁盛・繁栄していくためには、時流に適合していくこと、つまり変化に対応していくことが最も重要です。
それでは今日も、時流を読み解くデータを見ていきましょう。
新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、初めてインターネット通販を利用する人が増加しています。
総務省家計消費状況調査(2人以上世帯)によると、ネットで買物した世帯は2020年5月に51%となり、初めて5割を超えました。
2014年の年間平均利用世帯は25%でしたので、この数年で倍増したことになります。また2019年の43%からも7ポイント増加しています。
また世帯主が70代以上の高齢者の世帯でも利用率は2割を超え、世代を超えてネット通販が普及していることがわかります。
特に家電や家具をネットで購入する人が増えており、8月の家電のネット購入額は前年比63%増と大幅な伸びを示しています。
ヤフーショッピング(ZOZOを除く)の4月~6月のショッピング事業売上高は、前年比42%増、楽天市場などの「ショッピングEコマース」流通総額は前年比48%増、新規購入者数は63%増といずれも大きく伸びています。また、楽天カードの6月末の会員数は2010万人、この半年間で112万人増えました。
今後もネット通販やキャッシュレス決済を利用する人は大幅に増えていくことが予想されます。まだネットシフトやキャッシュレス決済に舵をきれていない場合は、速やかに検討しましょう。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
企業が繁盛・繁栄していくためには、時流に適合していくこと、つまり変化に対応していくことが最も重要です。
それでは今日も、時流を読み解くデータを見ていきましょう。
日本経済新聞社が全国16~80歳の男女1万275人を対象にした「第9回ネットライフ1万人調査」によると、消費者がネット経由で買物する割合が大幅に増えていることがわかりました。
ポイント①
ネット経由の消費額は年間18万2000円で前回調査より11.6%増
☛新型コロナウイルス感染防止のための外出自粛による巣ごもり消費によってネット通販利用者が増加
ポイント②
消費全体に占めるネット経由の割合は18.9%(前回より1.5ポイント増)
ポイント③
パソコン経由は前回調査より1.9ポイント減少の10万7000円、スマホ経由は、35.6%増の6万4000円
☛スマホ経由はネット消費全体の35%、キャッシュレス決済などを背景にスマホ移行が進んでいる
ポイント④
ネット購入が増加している商品:
IT製品・家電製品、書籍・CD、贈答品、食糧品、飲料
ネット購入が減少した商品
旅行関連、チケット類(新型コロナウイルスの影響)
スマートフォンを利用した買い物は、今後もますます増えていくことが予想されます。ネット通販、SNS対策などスマホシフトに舵を切りましょう。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
「ボタニスト(BOTANIST)」や「サロニア(SALONIA)」などで知られる株式会社I-neが2020年9月25日、東証マザーズへ上場します。
I-neは2007年に美容関連商品の企画、販売を目的として設立。12年にヘアアイロンなどの美容家電ブランドの「サロニア」を、15年にはヘアケアブランド「ボタニスト」をスタート。翌16年にリラクゼーションドリンク「チルアウト(CHILL OUT)」を発売するなどで健康飲料事業にも参入し、19年には日本コカ・コーラと合弁会社を設立しています。
同社の過去2年の業績は18年12月期の売上高が205億円、経常利益が2億7000万円、19年12月期の売上高が212億円、経常利益6億4000万円と増収増益で順調です。
同社の主力ブランド「ボタニスト」は、2015年に誕生。P&G、ユニリーバ、花王といった競合がひしめく中、小さな会社ながら尖がりを出すことで成功したブランドです。
「ボタニスト」は、2015年のノンシリコンシャンプーブームの一巡後、ボタニカル(植物由来の)をコンセプトに、従来のシャンプーと比べると高価格、サロンのシャンプーと比較すると低価格に位置する1500円前後の価格帯で勝負しました。
また、店頭で目立つカラフルなデザインボトルではなく、白と黒を基調にした文字だけというシンプルなボトル容器にすることで独自性を出し、他社製品との差別化を図りました。
ブランド誕生当初は広告宣伝予算も少なく、ECのみで販売するDtoCブランドの位置付けでしたが、楽天での売り上げ1位を獲得し続け認知度を拡大させました。その後は、人気に押されるようにドラッグストアなど小売店でも取り扱われるようになり売り上げが一気に拡大します。
プロモーションでも、同社の強みを活かしたSNSを駆使。特に発売当時若い女性に人気が出かけていたインスタグラムを積極的に活用。スタイリストなど影響力を持つインフルエンサーを味方にしたマーケティングにより、ボタニストの魅力は一気に拡散していきます。
現在はブランドをキャンドルやデフューザーなどのライフスタイル領域まで広げ、東京と大阪で旗艦店も運営。東京の店舗ではビーガンメニューをそろえたカフェも展開するなど、同社の看板ブランドとなっています。
2015年の発売からわずか5年で、ヘアケアブランドの主力ブランドに躍り出た「(BOTANIST)ボタニスト」からは、小さな会社がブランディングで成功するためのノウハウがたくさん学べます。
次回以降で、もう少し深堀していきたいと思います。お楽しみに。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
日本全国で多い日には一日何と80,000万本以上売れている高級「生」食パン専門店「乃が美」。2013年10月に大阪で創業し、わずか6年8ヶ月で目標だった全国47都道府県に出店、2020年9月現在189店舗を展開するほどの成長ぶりを見せています。
今回は、今や高級「生」食パンの代名詞にもなっている「乃が美」躍進の背景について、ブランディングという観点から分析していきたいと思います。
◆どうせなら多くの人に愛されて、歴史に残る日本一のものをつくりたい。
お父さんの事業の失敗から、幼いころ食べる事にも苦労していたという創業者の阪上雄司社長は、「おいしいものをお腹いっぱい食べてもらえる場所をつくろう」という想いから、飲食店経営の道に進みます。その後20年以上に亘って飲食店経営に携わってきましたが、流行や世情に左右される飲食店業界は粗利も低く、「どうせなら多くの人に愛されて、歴史に残る日本一のものをつくりたい」という想いが日に日に強くなっていったそうです。
◆ふわふわの柔らかい食パンをつくろう。
「長く愛されるものって何だろう?」阪上社長は来る日も来る日も考え続けました。そんな時、大阪プロレス協会の会長として慰問していた老人ホームのおじいちゃんやおばあちゃんからこんな声を聞きます。「食べている時がいちばんしあわせ。でも朝食に出てくるパンは耳が固くて食べられへん」。また、卵アレルギーの自分の子供が毎日「パサパサの食パン」を食べていることも気になっていました。
「そうだ!耳までおいしい、ふわふわの柔らかい食パンをつくろう!」阪上社長の心に芽生えたそんな熱い想いが、乃が美を生み出す原点になったといいます。この信念の裏には、長年の飲食店経営から学んだ「柔らかくて甘いものは流行の定番」という同氏ならではの勘や信念もあったようです。
◆こだわりこだわり抜いて、完成まで2年。
パン作りは全くの素人でしたが、「卵を一切使わないのに、ちぎってそのまま食べられるほど柔らかくてほんのり甘い食パン」を目指して開発はスタート。粉の種類、材料の配合、ミキシングのタイミング、焼く温度と時間など何度も何度も試行錯誤し、ようやく2年後「やわらかさ」「きめ細かさ」「甘み」「香り」すべてにおいて納得のいく食パンが完成しました。
ミキシングされた生地はトロトロになったお餅のようなテクスチャー、焼き上がりは「腰折れ」に近いぎりぎりの柔らかさで、これまでのパン作りの常識では考えられない状態だったといいます。
◆徹底した素材への吟味から、乃が美の高級「生」食パンは生まれる。
◆通常の倍の価格でも、少しずつ想いが伝わって行列のできる店へ。
乃が美の高級「生」食パンは、高級という名前が示す通り、1芹432円(税込)、2芹864円(税込)と通常の食パン価格の倍以上のお値段です。当初は「そんな高いパン、売れるわけがない」と周りの人からも非難され、その言葉通り売れ残りの山だったといいます。しかしながら、地道に試食してもらうことで徐々に、乃が美のこだわりの美味しさが伝わっていきます。「うちの子はアレルギーなんで、乃が美さんのパンじゃないと食べさせられない」というお母さんや、「うちのおじいちゃん、このパンでないと食べないのよ」という娘さんなど、乃が美ファンはどんどん増えて、大阪の裏路地にある乃が美の店の前には毎日長い行列ができました。
◆マスコミの力で知名度が一気にアップ。
パンブームの兆しがあった当時、行列ができる店をマスコミが放っておくわけがありません。大阪の情報番組ではこぞって乃が美のこだわりや愛用者の声を取り上げました。その結果、消費者の心の中には、「一度は食べてみたい高級「生」食パン乃が美」というイメージが醸成されます。そういう私も、テレビで紹介されてすぐに、大阪上本町にある総本店を訪れたことを思い出します。ただ、その日はあいにく売れ切れで悔しい思いをして帰ってきました。その後、2017年から2019年まで3年連続で、「Yahoo!検索大賞 食品部門賞」を受賞。また、マガジンハウスの「&premium」という雑誌で『日本の食パン、名品10本。』に取り上げられるなど、全国区に押し上げられます。さらにSNSの普及も手伝い、パンマニアのブログや芸能人にも取り上げられるようになり、乃が美の魅力は一気に拡散していきます。
◆乃が美のブランディングから学ぶ
ここまで見てきたように、「歴史に残る日本一の食パンブランド」を目指している乃が美には、小さなお店や会社が学べるブランディングの本質が詰まっています。
① 揺るぎない信念とビジョン、理念
「ブランドは強い想いから生まれる」ということが、乃が美の成功ストーリーからよく伝わってきます。「どうせなら多くの人に愛されて、歴史に残る日本一のものをつくりたい」という熱い想いが、「ふわふわのおいしいパンをつくろう」という具体的なビジョンにつながり、その結果として、誰もがおいしいと納得する商品が誕生しました。まさに、「たくさんの人を幸せにしたい」という強い想いが乃が美のブランド力の基盤になっているわけです。
② 圧倒的な商品力で惹きつける。
お客様がお金を出してくれるのは、あくまでも商品に対してです。「ふわふわのおいしいパンをつくろう」という想いから挑戦して2年。徹底した素材へのこだわりと妥協しないモノづくりがこれまでの食パンの概念を超えた新しい価値を生み出しました。通常の食パンの倍以上の価格でも、提供する価値がそのお値段以上であるとお客様が納得してくれれば、お客様は喜んで買ってくれます。そして常連さんになり、やがてはファンになってくれます。強いブランドの核は、あくまでも強い商品力であることを乃が美は教えてくれています。
③ ネーミングに込められた願い。
乃が美という名前にも、創業者の熱い想いが込められています。「乃」には「すなわち、まさしく」という意味があり、「美」には「姿、色が美しい。感動、美味い」という意味があるそうです。
ここから、「すなわち、日本一美味しい食パンをお届けする」「まさしく、食パンを通して日本一の感動をお届けする」という揺るぎない信念を込めた「乃が美」というネーミングが生まれました。
熱い想いを込めたネーミングは、多くの人に感動を与えることにつながります。
④ 老舗のような雰囲気を醸し出す
阪上社長は長い飲食店経営から「長く愛されるのは、老舗で強い一品のあるところ」という本質を学んだといいます。そこで、老舗和菓子店をイメージした、伝統を感じる筆文字のロゴを制作。またおみやげや差し入れにも喜ばれる白い紙袋にもこだわりました。私の場合、街で乃が美の紙袋を持っている人を見かけると、思わず柔らかでもちもちした食感が頭の中に浮かび、また買いに行こうという気持ちになるから不思議です。中身はもちろんですが、ロゴや紙袋もブランドイメージを想起させるためには重要な要素になります。
⑤ 本当に美味いものがある老舗には立地が悪くても人は集まる。
大阪上本町にある創業の店、乃が美総本店は、駅から歩いて約5分。大きな通りからちょっと奥に入ったひっそりした裏路地に店舗を構えています。私が訪れた時も、グーグルマップを見ながら結構迷いながら店にたどり着いたことを覚えています。このように、乃が美の店の大半はひっそりした路地裏に位置していますが、ふわふわの柔らかいパンを求めて、立地には関係なく毎日多くの人が訪れています。ブランド力が強ければ、その魅力に人は自然に惹きつけられます。
⑥ 地域に愛される「地元のパン屋さん」を目指す。
今や、47都道府県に189店舗を展開する乃が美ですが、目指しているのはナショナルブランドではなく、地域の人たちに愛される「地元のパン屋さん」です。大量生産は絶対にしないことを約束し、今後も「パン工場」を併設した店舗の展開を目指していきます。どの店にもひとつひとつ手作りで焼き上げた食パンを並べることをミッションにしている乃が美。いつまでも創業の気持ちを持ち続けることが、強いブランドづくりの基本となります。
⑦ 評判を信頼につなげる。
乃が美の店内には、2017年から2019年まで3年連続で、「Yahoo!検索大賞 食品部門賞」を受賞したことや雑誌で『日本の食パン、名品10本。』に取り上げられたことを伝えるポスターが貼られています。お客様からのよい評判を武器に安心や信頼を深めていくことは、強いブランドを育てていく上でとても重要な取り組みになります。
以上、高級「生」食パン専門店『乃が美』から学ぶ小さな会社のブランディングについて解説してきました。どんな会社やお店も最初はゼロからのスタートです。ただ、スタート地点で、「世の中をよくしたい、多くの人を幸せにしたい」という強い想いがあるかどうかが、ブランディングが成功するための肝といえます。