体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。和田康彦です。
▪商売は「ひと」を相手にしているビジネス。
商売をやっていて「儲かる」のも「儲からない」のも道理があります。その道理とは、商売とは「ひと」を相手にしているということです。
お客様、すなわち「ひと」が動いて、あなたの店に来て、商品を買ってくれる。だから、売上ができるのですね。
つまり、「ひと」が商いを成立させてくれているわけです。
ですから、商いを成立させるためにはまず、「ひと」にフォーカスする必要があります。
ひとにフォーカスするとは、「ひとの気持ちをつかむ」、「ひとの感情を動かす」ということです。そのためには、まずは、人間の心を理解することが大切です。
▪人間の心の習性を理解しよう。
今日のコラムでは、人間誰もが共通して持っている心の自然な傾向について理解を深めていきましょう。
面白くない本を読んでいるとき、何処からともなくとても美しいメロディーが流れてくると、私たちの心は自然にそのメロディーに魅かれていきます。
また、美しいバラの花が咲いていれば、自然にそちらに目が向きます。何の努力もすることなく、自然に目が向きますね。
このようなことは、常日頃、誰もが体験していることです。
つまり、人間の持つ心の自然な傾向とは、もっともっと喜びを見出したい、というものなのです。心は常により魅力のあるものを求めています。そして、より偉大なもの、美しいものに魅かれて動いています。
心は、一点に留まることなく、より満足をあたえるもの、エネルギーの大きい状態へと自ら進んでいきます。
また、もっともっと拡大したい、成長したい、進歩したいと願うのも、この心の自然な傾向です。
人類が文明を進化させてきたのも、「もっともっと」と願う、心の自然な傾向があればこそです。
進歩したい、拡大したいと願い、また、より喜びを与えるもの、満足を与えるものへと向かうのが、心の持っている自然の傾向なんですね。
一旦進歩し、満足、喜びが得られても、もしその状態に留まってしまうと、心は苦痛を感じます。飽きてしまうのですね。
画家は、一枚の作品を完成すると、その時点では満足しますが、しばらくすると、もっと素晴らしい作品に取り組もうとします。
どんなに美しいバラでも、それをずっと眺めていると、やがて飽きてしまいます。同じことを繰り返す単純作業では、せいぜい40分程度しか集中できないといわれています。
人間の心は、同じものや同じことでは飽きてしまい、もっと心を喜ばせるもの、満足を与えるものを求めて動いています。進歩が阻まれ、同じ状態が続くと心は苦痛を感じてしまうものなのです。
つまり、心は常により喜びの増大する方向、より美しいもの、魅力のあるものへと、自然に魅かれるのです。
そしてより一層成長し、拡大する方向へと向かうのです。
私たちの商売で考えると、顧客は常に自分のライフスタイルをより豊かにより便利により充実させたい、と願っていることを忘れてはいけません。
顧客に提供すべきは単に機能的に優れた商品ではなく、「生活をより充実させる商品」であり「生活をより向上させる商品」つまり、顧客のライフスタイルを充実させて、豊かに楽しく暮らせる商品なのです。
しかも、人間の心は同じものや同じことではすぐに飽きてしまいますから、私たち商売人は、常に顧客を喜ばせるものや満足を与えるものやことを提供し続けなければいけません。
顧客中心マーケティングの原点は、このような人間の心の習性をしっかり理解して、常に顧客を喜ばせ続けることに挑戦していくことなのです。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
日経リサーチ社は、コンシューマー(消費者)とビジネスパーソンの2つの視点から各業界を代表する600社の企業ブランドを多角的に評価・分析した「ブランド戦略サーベイ2022」を発表しました。
▪ブランド価値を高めるための5つの指数とは。
ブランド総合評価ランキングのベースとなる総合知覚指数(PQ)はコンシューマー、ビジネスパーソン各5つの評価項目で構成されています。調査ではまず、コンシューマーとビジネスパーソンそれぞれの評価5項目のスコアを測定し、それに基づいてコンシューマーのPQとビジネスパーソンのPQを算出。これを統合して総合PQのスコアを導き出しています。
コンシューマー、ビジネスパーソンに聞いた5つの評価項目は以下の通りです。
コンシューマー評価項目
① 自分必要度:自分にとってどの程度必要と感じるか。
② 独自性:他の企業とは違う独自性を感じるか。
③ 愛着度:その企業にどの程度愛着を感じるか。
④ プレミアム(ブランド/価格):どの程度他の企業と価格の差があってもその企業の製品・サービスを購入したいか。
⑤ 推奨意向:どの程度「ほかの人に薦めたい」と思うか。
ビジネスパーソン評価項目
① ビジネス有用度:仕事にどの程度役立つか。
② 独自性:他の企業とは違う独自性を感じるか。
③ 企業魅力度:その企業で働きたいと思うか。
④ プレミアム(ブランド/価格):どの程度、他の企業と価格の差があってもその企業の製品サービスを購入したいか。
⑤ 推奨意向:その程度「ほかの人に薦めたい」と思うか。
自分必要度(ビジネス有用度)、独自性、愛着度(企業魅力度)、プレミアム、推奨意向の5つの指標は、どれも顧客視点に立った、とてもわかりやすい項目です。
あなたの会社でも、ブランド価値を高めていくための社内の共通言語として、ぜひ有効活用していくことをおすすめします。
▪消費者評価の首位は「キューピー」
「ブランド戦略サーベイ2022」消費者からの評価では、キューピーが2年ぶりの首位となりました。その他、味の素、カゴメ、キッコーマン、ミツカン、ハウス食品、サントリーなど食品・飲食ブランドが順位を上げました。
出典:日本経済新聞2022年9月26日付朝刊
背景には、新型コロナ禍での健康志向や内食志向で、食品や飲食系ブランドが一段と身近になっていることがあります。
今回の調査では、消費者評価ランキング30社中19社が食品・飲食系ブランドが占め、19年調査の16社を上回る結果となっています。
首位のキューピーは、消費者の健康意識の高まりに呼応し、「BMIが高めの方へ」「血圧が高めの方へ」などと打ち出した機能性表示のドレッシングや惣菜の開発に注力。顧客視点に立った商品開発力が消費者に支持されています。
また「愛着度」でも、キューピー、味の素、カゴメがトップ3を占め、多くの顧客から愛されていることが分かります。
昨年の33位から19位と大きく順位を上げたヤクルトは、独自性の評価で急伸。21年に発売した乳酸菌飲料「Y1000」が、ストレスの緩和や睡眠の質向上に効果的と話題になり、スーパーや自販機で売り切れが続くほどの人気を集めました。
このように長引くコロナ禍が、企業ブランドの勢力図に大きな影響を与えていることが分かります。「健康」や「巣ごもり」「家充」が消費のキーワードになり、消費者ニーズを充たした企業がブランド価値を高めているわけです。
今年に入り、値上げが相次ぐ中、知名度が高く、ファンが多い優れたブランドの製品は、競合品よりも高い価格設定が可能で高収益を得やすいという強みがあります。
つまり、ブランド価値を高めていくことは、将来に渡って企業に利益をもたらす資産となります。
ブランド価値を高めていくためには、顧客の幸せを第一に考える「顧客中心マーケティング」が欠かせません。
顧客にとっての必要度、他の企業とは違う独自性、顧客が感じる愛着度、価格に対する許容度、人にも薦めたくなるクチコミ醸成力、この5つの指標を常に高める取り組みを社内に浸透させていきましょう。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
▪EC利用者の伸びが鈍化。
新型コロナウイルス下で高成長を続けてきた国内の電子商取引(EC)の勢いに陰りが見え始めてきました。
ナウキャストがクレジットカードのデータからまとめるJCB消費NOWによると、ECの消費支出動向指数は2021年に19年から約2割伸長。総務省の調査でもEC支出額は同期間に3割弱増えました。
イオンはネットスーパーの売上高が22年2月期に750億円と2年で8割増加。農家や漁師から食材を取り寄せる産地直送サイト「食べチョク」は利用登録が65万人を超え、流通額が2年で約130倍に急伸。自由に外出や買い物ができないコロナ禍を経て、ECの普及ステージは着実に一段上がりました。
しかしながら、「JCB消費NOW」によると、オンライン消費額は2022年7月に新型コロナの第7波による感染拡大で再び復調しましたが、5~6月は2カ月連続で前年割れに。
Zホールディングス(HD)やメルカリなどでは2022年4~6月に物販ECの伸びが鈍化。背景には、外出自粛に伴う巣ごもり需要が一服したことが考えられますが、リアルの店舗に流れる利用客をいかにつなぎ留めるかが一段と重要になってきています。
リアル店舗での消費額が2021年10月から10カ月連続で前年を上回ったのとは対照的な動きになっています。
ヤフーやLINEを傘下に持つZホールディングスの4~6月の物販ECの取扱高伸び率は5.9%増(1~3月は7.4%増)と微増。
メルカリでも22年6月期の国内フリーマーケット事業の流通総額は前の期比12%増と期初時点で掲げていた「20%以上」の目標には届きませんでした。
▪日本のEC利用率は8.78%。
独調査会社スタティスタの22年の調査では、日本の衣食住のEC利用度は対象39カ国平均の6割弱。分野別の利用経験はレストラン予約が22%、靴のネット購入が24%、フードデリバリーは32%。21年比で5~9ポイント上がりましたが、いずれも39位と最下位という結果にとどまっています。
経済産業省の調査では2021年の消費者向け物販のEC化率は8.78%。米国(20年に約15%)や中国(同約40%)に後れを取っています。
▪リアル店舗とECの連携が重要。
では、EC拡大をコロナ対応の一過性の動きに終わらせず、さらに底上げするには何が必要なのでしょうか。
一つは行動制限が緩むなかで売り上げが伸び始めたリアル店舗との連携です。
例えば、オーダースーツのFABRIC TOKYOはショールームと採寸に特化した店を増やしています。購入はネットで済ませたいが買う前に実物を見たいという人は多く、同社ではECを併用する来店客の購買単価がECだけを使う客の2倍以上といいます。
オンワードホールディングスでもECの商品を店に取り寄せて試着した後に購入できるサービスをスタート。ECの伸びに加え、導入店の売上高もコロナ前の水準に回復する効果が出ているといいます。
また、大手各社は利用者の使い勝手を高めることで「巣ごもり依存」からの脱却を急いでいます。楽天グループとアマゾンジャパン、ZHDの3社は物流拠点を整備し、配送時間の短縮に取り組むほか、メルカリも商品の投函(とうかん)専用ポストを24年までに8倍の8千カ所に増やす計画を打ち出しています。
▪利便性だけではなく、ECでも「心の豊かさを実感できる買い物体験を」
以前のコラムでも申し上げましたが、人=顧客が求めているものは今も昔も「心の豊かさ」であり、心が豊かにならないただいきていくための消費には、できるだけお金や時間、労力などのエネルギーを使いたくないのが人間の本能といわれています。
私は、ECが伸びてきた要因は、人ができるだけエネルギーを使いたくないという即物的な買い物に対して「利便性」というベネフィットを提供してきたことが大きかったと考えています。
しかしながら、ECが今後も伸びていくためには、利便性だけでなく、人間が本来持っている「自分の人生をよりよいものにしたい」という心の豊かさを求める本能を充たしていくことが重要だと思います。
そのためには、ECと店舗の連携や、ECとテレビショッピングとの連携、ECとカタログショッピング、ECとSNSとの連携等を通して、ただモノを売るだけでなく、顧客の心を豊かにするコンテンツを充実させていくことが重要になってきます。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
▪企業が経営不振に陥る2つの要因
企業が経営不振に陥る要因には、①企業内部に原因がある内部要因と②景気や立地の変化、競合店の出店など外からの影響が原因の外部要因の2つの要因があります。
とはいえ、不振企業の8割は企業内部に要因があるといわれています。
内部要因の中でも最も大きなものが、経営者自身の「経営に対する情熱の欠如」です。つまり、経営者や経営幹部の「あきらめシンドローム」が自ら経営不振を招いているのです。
「経営に対する情熱」と聞いて、あなたはどんなことを思い浮かべますか。
「売上をあげたい!」「利益を今の倍にしたい!」「新規顧客を毎月100人増やしたい!」など、数値目標を達成することを思い浮かべた方も多いと思います。このような大きな数値目標の達成にロマンを感じる経営スタイルも決して間違っているわけではありません。
ただ、顧客中心マーケティングを実践していく上での「経営に対する情熱」とは、「顧客に対する貢献点をどのように高めていくのか」ということであり、「自社が持つ顧客への貢献点を知って磨いていくこと」に他なりません。
ところで、「あなたの会社やブランドが提供する顧客への貢献点は何ですか?」と問われたとき、即答できるでしょうか。
顧客への貢献点こそ、あなたの会社やブランドの存在価値であり、顧客にとってのベネフィットです。
業績不振の要因を突き詰めていくと、自社の顧客に対する貢献点が時流の変化に伴って顧客に支持されなくなったことが浮かび上がってきます。
▪モノが売れない時代の顧客への貢献点とは
特に最近はモノ溢れの時代になり、単に良い品質の商品を売っているだけでは顧客の心を充たせなくなっています。
今の消費者の最大の関心ごとは、「自分の限られた時間をいかにワクワク過ごせるか」ということにあるといわれています。
心の豊かさを得られるのなら、お金も時間も労力も考えることや気を使うことでもどんどんエネルギーを注ぎこみたいと考えているのです。
反対に、心が豊かにならないただ生きていくだけの消費にはできるだけエネルギーは使いたくないというのが本音です。ただ生きていくだけの消費なら、安い方がいい、買い物に時間をとられたくない、あれこれ考えるのはいや、店員や周りの人にに気を使いたくないというのが今の消費者の心の内です。
ですから、「顧客の心を豊かにする」という志を持ち、自社の顧客に対してどんなことで貢献できるのか、を改めて問い直すことが必要になってきているのです。
例えば小売業であれば「価格と価値のバランス」、つまり、グッドプライス(最良の価格)、グッドMD(素晴らしい品揃え)、グッドクオリティ(最高の品質)が重要であることはどんな時代でも不変の価値です。
ただ「顧客の心を豊かにする」という視点で見た場合、顧客に最高の気分を味わってもらうためのグッドサービスや顧客の感性を刺激するグッドセンスの提供が重要になってきています。
さあ、あなたの会社でも、「心の豊かさを求めて自分の人生をよりよいものにしたい」と考える顧客のために、具体的にどんなことで貢献できるのかを問うていきましょう。

みなさんこんにちは。和田康彦です。
顧客中心マーケティングは、常に顧客の立場に立って考えて、顧客が幸せと感じる体験を提供し続ける活動です。
その結果、顧客の心の中に「好き」という感情が生まれ、企業やブランドのファンになってもらうことを最終目標にしています。
つまり、経営者もマーケターも顧客の「好き」という感情をもっと大切にしていかなければいけません。
人間は決断するとき、まず感情で決めているものです。ロジックは、実は後から考えていたりするものなのです。ですから、「好きかどうか」は、お客様から選んでもらうときの絶対条件なのです。
このようにブランディングやファンづくりをしていく上で、人間の本質的なところに訴えかけることはとても重要です。
例えば、私はスターバックスが大好きなんですが、実は社会人になったころスターバックスのコーヒーを持って歩いていると自立した社会人になったような気がして妙に自信を持てた、という体験が今のスタバ好きの原点になっているような気がしています。
スターバックスでは、現在もワクワクするような新商品を次々に開発し、地域や街の特徴に合わせた独自の店舗を展開。生活様式の変化に合わせたデジタル施策を拡充し、私たちに常に新鮮で心地よい体験を提供してくれています。
つまり、常に顧客の期待を超え、時代の移り変わりを捉え、お客様一人ひとりに寄り添った体験を提供し続けることで、多くの「スタバ好き」を生み出しリピーターを増やしているのです。
このように、「好き」という感情こそが行動のトリガーになり、モチベーションにもつながります。知名度や認知してもらっているかということももちろん大切ですが、いろいろな選択肢に溢れた現代は、「好きかどうか」ということが、顧客との関係性を築くための前提となるのです。
顧客から選ばれるのも、顧客がファンになるのも、顧客に使い続けてもらうのも、顧客と顔なじみになるのも
顧客の「好き」という感情がベースにあります。
今や、品質だけで顧客の購買意欲を掻き立てることは難しくなってきており、それよりもブランドとしての情報発信や顧客とのコミュニケーションをとることが重要になってきています。
そのためには、企業は「カスタマーハピネス」の実現を第一に考え、誰に何を伝えたいのか、その結果どういう存在になりたいのか、そのためにはどう伝えればよいのかという順番で考えることが必要です。
顧客との接点すべてが、顧客の心の中にブランドイメージを作っていきます。
ウェブサイトのビジュアルデザインはもちろん、SEO対策も広告もチラシもメールもSNSもブランディングの一部です。
サイトの新規立ち上げもリニューアルも写真撮影も動画制作も、顧客に対するすべての発信は自社のブランドを顧客から好きになってもらうことが最終目的なのです。
ところで、あなたの会社やブランドが顧客から選ばれる理由は何でしょうか。
技術や品質、価格や納期など大切なことは言うまでもありませんが、今お客様が求めているのは、日々の暮らしを向上させることであり、しいては心豊かに暮らすことなのです。
つまり、あなたの会社やブランドの商品やサービスを購入することで、どのような精神的ベネフィットを得られるかということが、現代の消費者にとっての最大の関心ごとなのです。
スターバックスが、老若男女を問わず多くのお客様から支持されているのは、単にコーヒーが美味しいという理由だけでなく、親しみのある接客であったり、ワクワクする新商品との出会いであったり、1人の時も友達と一緒の時もリラックスした時間を過ごせるという精神的なベネフィットを提供し続けているからです。
顧客中心マーケティングの最終ゴールは、あなたの会社やブランド独自の精神的ベネフィットを提供し続けていくことにあります。