体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。和田康彦です。
米国では、高級百貨店ニーマン・マーカスなどが破綻するなか、無名の商店主やクリエーター、デザイナーなどが、D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)と呼ばれる新しい流通の形に向っています。D2Cは既存の流通店を通さず、アマゾン・ドット・コムも介さない個人経営のオンライン店。いち早く定着し始めた米国では、コロナを受けて「ポスト・アマゾン時代」の小売りの形として急拡大しています。
D2Cの基盤を提供するカナダのショッピファイの2020年4~6月の売上高は、7億ドル強(約750億円)と前年同期比2倍に増加。以前からアマゾン・キラーの異名を取る同社は、ここに来て急成長した裏にはコロナがもたらす非接触型社会をD2C定着の好機に変えた点も大きいといえます。株価は昨年末の2倍以上で時価総額は1200億ドルを超す躍進ぶりです。
ショッピファイは、オンラインでのチップ機能やギフトカードを追加するなど、小さな商店が生き残るための機能作りに集中することで、名もなき「パパママショップ」の支持を得ています。
米調査会社eマーケターは、20年の米国内のD2Cブランドの売上高を合計178億ドルと予測。ネット通販市場全体の2%程度ですが、前年比の成長率は24%ですでに2兆円規模になります。
「個」が主役となる売り方改革の波は今、日本にも押し寄せています。
例えば、ネット企業のGMOペパボがてがけるオリジナルグッズの製作・販売サービス「スズリ」は、写真やイラストを投稿するだけでTシャツなどのグッズを作れるサービス。注文を受けてからGMOペパボが提携するメーカーで作るので利用者は在庫を持たずに済みます。
同社は2014年にスズリをスタート。当初は鳴かず飛ばずで17年には担当者を3人にまで削減。その後、ネット通販とメーカー機能、SNSの販促が結びついたサービスが流行に敏感なクリエーターに支持され、D2Cの機能を担い始めました。スズリの流通総額は2020年6月に前年同月比3.5倍となり4億円を突破。出品者も30万人を超えました。
非接触型社会が新常態となるニューノーマルの時代は、ネットを通じて個人が個人にモノを売るD2Cの裾野がじわりと広がることが予測されます。あなたの会社やあなた個人もぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。