体験消費時代のマーケティングヒント
みなさんこんにちは。和田康彦です。
毎年恒例の「日経MJヒット商品番付」2017年上期(1月~6月)の顔ぶれが昨日発表されました。東の横綱には、19年ぶりの日本出身横綱として大相撲を盛り上げた「稀勢の里」が、西の横綱には、発売1カ月で274万台を販売し、18年3月末までに累計1270万台の出荷を計画する据え置き型のゲーム機「ニンテンドースイッチ」が選ばれました。
今回、私の目を引いたのは東の前頭に選ばれた、ポーラ化粧品の「リンクルショット メディカル セラム」です。
この商品は、ポーラ化粧品が15年の歳月をかけて開発した日本初のシワを改善する薬用化粧品です。シワのメカニズムを一から研究し直した結果、世界初のシワ改善メカニズムを発見。約5400種の素材をひとつひとつ検証して、シワを改善する新医薬部外品有効成分を発見しました。その後製品化のためのデータ収集やテストを入念に実施し、有効成分を真皮に届ける「ニールワン真皮浸透処方」を開発。2017年1月に発売がスタートした生まれたての新商品です。
20gで16,200円(税込)とかなり高額な商品にも関わらず、発売1ヶ月で販売計画を大きく上回る約25万個、36億円を売上げました。2017年度の当初の販売目標は100億円に設定していましたが、1月~3月の売上も好調なことから125億円に上方修正。全売上の5%を占める大ヒット商品になりつつあります。この新商品効果もあって、2017年12月期の売上を期初より60億円プラスの2330億円に、また営業利益は25億円プラスの335億円に上方修正しています。
富士経済の調査結果によると、「女性のシワの悩みの深刻度」に関する調査では、約6割の女性がシワを気にしていることがわかっています。高齢化が進むにつれて、シワに悩む女性はうなぎ上りといってもよいでしょう。ところが、シワのメカニズムの発見やシワを改善する画期的な方法の開発についてはかなりの難題であったことが推測されます。「シワをできるだけなくしていつまでも美しくありたい!」という女性ニーズはわかっていたものの、その悩みを解消する研究や技術が各社追い付いていなかったと言えます。ポーラ化粧品が開発した「リンクルショット メディカル セラム」は、真皮まで届きシワを改善するという商品特徴が多くの女性ニーズと合致した結果大ヒットにつながりました。ただその裏には15年間に亘る地道な企業努力があったということを知って、ポーラ化粧品は女性に寄り添った本当に素晴らしい会社だなと思いました。
一方で、誰にでもわかりやすい効果・効能(ベネフィット)を持ったこの商品は、製品発表とともにマスコミ各社が取り上げ、パブリシティ効果で拡散したことも大ヒットした一因です。
さらに、ポーラ独自のビューティディレクターや全国の百貨店での対面カウンセリングにより顧客1人ひとり肌状態をチェックし使い方を説明する、といった丁寧な接客が顧客との信頼関係を醸成。新規客の購入が増えたことも予想以上の販売に結び付いた一因と言えます。
高齢化の進展で注目されているシニア市場ですが、今一つ成功事例が聞こえてきません。そんな中、今回の「リンクルショット メディカル セラム」は、「いくつになっても美しくありたい」という女性の潜在ニーズを満たして大ヒットしています。単なるお悩み解消というよりも、「今よりもっと美しくありたい!」という女性の貪欲な気持ちを満たして、大きな喜び(うれしいという気持ち)を提供できた結果だと思います。
モノが売れない時代といいますが、「女性が喜ぶモノやコト」「女性がうれしいと感じるモノやコト」を提案できれば、女性は必ず振り向いてくれます。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
宝飾品店「4℃」を展開するヨンドシーホールディングスの2017年2月期の売上高は 497 億 97 百万円(前期比 5.8%減)、営業利益は 65 億 29 百万円(前期比 6.8%増)、経常利益は 77 億 96 百万円(前期比 13.7%増)、当期純利益は 49 億 62 百万円(前期比 16.0%増)となり、営業利益、当期純利益は5期連続、経常利益は6期連続で過去最高を更新しました。売上高こそ傘下のアパレル子会社を譲渡した影響で目減りしたものの、低迷するジュエリー業界の中で独走を続けています。
◆国内ジュエリー市場はピーク時の3分の1に縮小
国内のジュエリー小売市場は、ピーク時の1991年に3兆円強に達したものの、長期低落傾向が続き、2016年度は前年比97.1%の9413億円と1兆円を割っています。2008年のリーマンショック後は、1万~2万円程度以下の低価格品しか売れなくなっていたのですが、2012年末頃からは、アベノミクスによる株価高騰を受け、富裕層向けに10万円以上の高価格品の需要が復活しました。ただ2016年は、インバウンド需要も沈静化、婚姻組数の減少によりブライダルジュエリーは縮小基調にあります。
◆源流はアパレル会社、いち早くジュエリーSPAを確立
売上高の66.6%を占めるジュエリー事業の売り上げは前年比4.0%増の331億66百万円、営業利益は同2.6%増の59億80百万円。売上高に占める営業利益率は18%と高い水準です。また、アパレル事業の売上高は傘下の子会社を譲渡した影響から前年比20.8%減の166億30百万円、一方営業利益は前年比162.1%増の4億94百万円と大幅な増益になっています。
同社は1950年創業のアパレル会社が起源で、1972年にジュエリー事業に進出。当時から20代女性をターゲットにしたおしゃれなデザインは、多くの女性ファンの心を捉えてきました。また男性にとっても女性にプレゼントする際、4℃ならおしゃれで安心!というブランド神話が受け継がれており、デビューから45年たった今でもジュエリー業界をリードしています。同社の最大の強みは、企画・デザインから製造、販売までを一貫して行うSPA(製造小売業)業態をジュエリー業界でいち早く確立したことにあります。SPA業態は、従来からの「製造メーカー⇒卸売⇒小売⇒消費者」という流れではなく、自社でリスクを負って商品企画、生産から販売までを一貫して行うためリスクを伴います。しかし一方で、消費者の嗜好の移り変わりを迅速に製品に反映させ在庫のコントロールが行いやすいなどのメリットがあり、新たな市場の創造や強固な収益体質づくりに適したビジネスモデルといえます。
◆日本のジェリー業界の歴史
もともとジュエリー業界は貴金属業界とも言われるように、金やプラチナ、ダイヤモンドやルビー、サファイアといった希少な天然資源を身に着けることで、自己の存在価値をアピールしたり、資産形成ために購入されていました。いわゆる富裕層向けの業界だったわけです。その後、婚約指輪や結婚指輪が一般化する中、ブライダル向けジュエリーが市場を牽引していきます。日本での婚約指輪は1960年頃から結納品の一つとして贈られるようになりました。 婚約指輪を贈ることが一般化した背景には、1970年代頃にダイアモンドジュエリーを中心に展開している“デ・ビアス社”がキャンペーンで流したCMの影響があります。「お給料の3ヶ月分」というキャッチフレーズとともに、幸せそうなカップルが映し出されるCMは、とても新鮮で印象に残るCMだったため、婚約指輪にかける金額は給料の3ヶ月分が常識で、宝石にはダイヤモンドを使うという今の考え方が根付いていったのです。このCMがきっかけとなり、1970年当初は16%ほどしか贈られていなかったダイヤモンドの婚約指輪も、1980年代には70%以上の婚約指輪にダイヤモンドが使われるようになったと言われています。
そして1980年代に入ると好景気に支えられて、消費者の購買意欲はますます旺盛になっていきます。家電製品や自動車ななど、皆が同じものを持つようになると、次に日本人が求めたものは、「他とは違うもの」でした。ファッション業界においても、ライフスタイルや多様な価値観に合わせてモノを作ることが求められ、いわゆるDC(デザイナーズ&キャラクターズ)ブランドブームが巻き起こります。コムデギャルソンやヨウジヤマモト、フォークロア風のピンクハウスやヨーロピアンテイストのニコル、サブカルチャーの影響を強く受けたタケオキクチ、コムサ・デ・モードなど、個性を売りにしたファッションブランドが当時のおしゃれ好きの若者の心を虜にしていったのです。この流れは、バッグや靴、ジュエリーといった服飾雑貨業界にも波及し、人気ブランドのライセンス商品が次々に生まれました。ジュエリー業界でも、KENZOやミチコロンドン、クレージュといったブランドのライセンス商品が百貨店の1階売り場を席巻するようになります。ジュエリーも貴金属の時代からファッションジュエリーの時代へと大きく変化していったのです。
◆アパレル仕込みの鮮度管理と4℃らしい独自のデザインで女性の心を掴む
4℃といえば、「4℃しずく」「4℃ハート」「4℃ダブルループ」といった4℃らしい独自のデザインに特徴があります。どんな女性にも合うしなやかな曲線美は、好き嫌いが少なく、上品で都会的なセンスを感じます。ご存じない方には、日本版ティファニーと言うとわかりやすいかもしれません。また、元々アパレル会社が源流の4℃は、デザインの鮮度管理も徹底しています。店頭で売れない商品は早めに見切りをつけて新しい商品に作り替え、売れ行きの良い商品だけを店頭に並べるようにしているのです。ジュエリーもファッションの一部と考えると当然のように見えますが、元来古い体質のジュエリー業界では、デザインの鮮度にこだわる企業はそれほど多くはありません。
◆変色しにくいシルバーアクセサリーが大ヒット
2008年のリーマンショック以降は、1~2万円程度の低価格品しか売れなくなったジュエリー業界。その後アベノミクスの株価高を受けて2012年以降は10万円前後の高価格帯が復活し市場は2極化しています。4℃は、早くから市場の変化に対応し、10万円前後の高価格品と2万円程度以下の低価格品に注力した2極化対策に取りんできました。そんな中、2014年6月に本格投入した「エターナルシルバー」シリーズは、変色しにくいシルバーアクセサリーを謳って大ヒットしました。プラチナや金より割安感のあるシルバーは、遊び心のあるデザインを楽しみたい若者に人気がある一方で、空気に触れることで酸化し変色してしまうことから敬遠する女性も少なくありません。4℃オリジナル素材の「エターナルシルバー」シリーズは、「シルバーは好きだけれど、変色するのがイヤ」と思っていた女性の潜在ニーズを掴んで新しいシルバー市場を創造したと言えます。価格も1~2万円と買いやすいうえに、指輪やネックレス、ブレスレットなど幅広い品ぞろえでギフト商品としても人気を集めています。
◆お客様に寄り添う「コンサルティングセールス」
4℃が独走を続ける背景には、「ファッションアドバイザー」と呼ばれる販売員の存在があります。4℃では、「ジュエリーは自分へのご褒美から結婚という人生の節目までお客様の幸せに寄り添う商品」と位置づけ、お客様の想いに共感し、お客様に心から満足してもらうための「コンサルティングサービス」という独自の販売方法を取り入れています。コンサルティングセールスとは、お客様の話を丁寧に聞きながら潜在的な想いを引き出し、その想いに添ったジュエリーを一緒に選び、本当に満足してもらえるものを提案するという販売スタイルです。ファッションアドバイザー-は、単に商品を売るというよりも、お客様に寄り添いながら「心から喜んでいただく」ことを使命にしており、モノの満足はもちろん心の満足を提供していることが4℃の強みなのです。さらには、セール販売を行わないことで、顧客との信頼関係が構築できていることも強みの一つと言えます。
◆多彩な研修制度でキャリアアップをサポート
4℃には「F.D.Cフレンズカレッジ」という研修施設があり、年次に合わせて様々な研修制度で社員のキャリアアップをサポートするとともに、質の高いコンサルティングセールスを実現する仕組みを整えています。F.D.C フレンズカレッジには、ビジネスマナーからジュエリーの基礎知識などを学ぶ講義スペースのほか、模擬ショップが併設されており、接客技術を実践的に磨く場として活用。プロフェッショナル人財の育成にも力を注いでいます。
◆徹底した品質管理でお客様に最高品質を届ける
4℃では、お客様の安心・安全を担保し、ブランド価値を維持・向上させるための品質管理体制の強化にも力を注いでいます。神奈川県相模原市にある「4℃クオリティコントロールセンター」では、科学の目と細やかな人の目を融合した検品体制で最高品質を届ける仕組みを常に進化させています。貴金属の純度を科学的に分析する「X線検査機」やダイヤモンドの識別を行う「ダイヤモンドテスター」の導入による全数検品をはじめ、検品のプロ100人による厳しいチェック体制で不良品の撲滅に注力。業界では類を見ない高水準な品質管理体制が4℃の独走を支えています。
◆世代やチャネルに合わせた7つのブランド
4℃には、百貨店を中心に販売する中核ブランドの「4℃」の他にも6つのブランドがあります。「4℃BRIDAL」は、ゆとりあるスペースでホスピタリティ溢れる接客を行うブライダル専門店で主に路面店中心に展開。「EAUDOUCE 4℃」は品格と遊び心を兼ね備えたクラシカルテイストの百貨店ブランド。「Canal 4℃」は、駅ビルやファッションビルを中心に展開する普段使いできるカジュアルジュエリー。また、「MAISON JEWELL」は大切な人とつながる「絆ジュエリー」をコンセプトに郊外型SCで展開。「Luria4℃」は、ジュエルパース(バッグ・革小物)の専門ブランドで駅ビルやファッションビルに出店。他にも「4℃バッグ」があります。
ジュエリー売上の半分弱を占める主力の「4℃」は、百貨店業界の売上不振の影響もあり、2016年度は3.9%の減収。次いで売上の大きい「4℃BRIDAL」も、婚姻件数の減少を背景に5.2%のマイナスとなりました。一方で「Canal 4℃」は、前年比14.8%増の約50億円と準主力ブランドの位置づけに成長しているほか、売上規模は小さいながらも、「MAISON JEWELL」や「EAUDOUCE 4℃」「Luria4℃」の3ブランドも前年に比べて大きく売り上げを伸ばしています。
また、販売チャネル別でみると、路面店や百貨店売り上げが不振の一方で、ファッションビルや郊外型SCの売上は順調に伸ばしています。
◆ブランドポートフォリオ戦略で企業価値を最大化
4℃では、所有する7つのブランドを体系化し、それぞれのブランドの価値やブランドを所有する4℃ホールディングスの価値がより高まるよう、俯瞰的視点から計画的に各ブランドを管理していくブランドポートフォリオ戦略を推進しています。2016年度の取り組みを見ても、「Canal 4℃」は取扱アイテムを拡大することで既存店の伸びは継続し、出店や改装効果で売上・利益とも大きく成長。同様に、「MAISON JEWELL」や「Luria4℃」にも積極投資し、第2、第3の成長ブランドの育成に注力しています。百貨店が中心の主力ブランド「4℃」の成長は見込まれない中で、それを補う販売チャンネル開発やブランド育成にいち早く取り組んできたマーケティング力が、他社の追随を許さないベースになっています。
◆今後はEC、ギフトも強化
主力の「4℃」に代わる第2、第3の準主力ブランドが育ってきている一方で、2016年度のEC売上は前年比30.5%増の約15億円とこちらも拡大基調で業績を牽引しています。2016年8月には「4℃BRIDAL 公式オンラインショップ」がスタート。これまでの「JEWELRY BOUTIQUE」と合わせて、販売ゾーンやアイテムの拡充によって売上拡大を狙います。また、商品開発力と品揃え強化によるギフトニーズの対応力を強化する取り組みにも着手。「4℃BRIDAL」についてはブライダル専門店としての独自性を追求した商品展開と売場づくり、接客水準の向上に取り組むなど、2017年度もさらなる成長に向けたきめ細かい取り組みが実行されています。
◆「100年企業」「100年ブランド」を目指す4℃ホールディングス
4℃ホールディングスでは、全従業員を対象とした「まっとうな経営塾」(コーポレートユニバーシティ)を2015年11月に開校しています。同塾は永続できる企業として成長していくために、創業以来脈々と受け継がれてきた同社グループの経営哲学・魂を次世代に継承し、まっとうな経営を理解・実践できる人材を育成することを目的に設立されました。塾名は創業者をはじめ、歴代経営者が大切にしてきた考えである「まっとうな経営」という言葉が由来となっており、「価値観の伝承」研修では、同社の取締役が講師を務め、次世代リーダーの育成を行っています。
◆4℃の成長を支える「商品力」「販売メディア力」「オペレーション力」「フィロソフィー力」
ここまで、4℃ホールディングスが低迷するジュエリー業界で独走を続けている要因を見てきました。整理してみると①女性が好むデザイン開発力や徹底した鮮度管理、品質管理といった「商品力」②販売チャネルや顧客ニーズにきめ細かく対応した7ブランドの店舗開発、また店頭でのコンサルティングセールスといった「販売メディア力」③優秀な販売員を育成したり、万全の品質管理体制を構築する「オペレーション力」。そして、それらのベースになっている経営哲学を伝承・実践していく「フィロソフィー力」。当たり前といえば当たり前ですが、これらの商売の基本を徹底していることが経営の好循環を生み出していると言えるのではないでしょうか。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
個人消費の低迷が続く中、東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、快走が続いています。2016年10月2日の日本経済新聞朝刊では、「好調テーマパーク進化の行方は」というタイトルで、ユー・エス・ジェイ執行役員の森岡毅氏へのインタビュー記事を掲載していました。今回は、森岡氏の発言の中から、女性客に選ばれるために重要と思われる部分を紹介させていただきます。
森岡氏は入場者数が低迷していた2010年に経営再建を託された転職組です。それまでは映画の世界観のお仕着せだった従来路線を否定し、消費者起点のマーケット手法の転換。子供向けの家族エリアの新設や後ろ向けに走行するジェットコースターを生み出すなどヒットを次々に飛ばして、過去最高の入場者数を更新しています。その背後には、消費者ニーズへの原点回帰があります。
今回のインタビューの中でも、「昨年より高い価値をどう作り出すかの闘いだ」「科学的、かつ合理的にアトラクションを開発し、外さずにヒットするようにしている。興奮やスカッとしたい動的なモチベーションをつかむのが大事だ。消費者に『なぜUSJに行くのですか』と聞いても答えは見つからない。普通の消費者は頭の中で常日ごろUSJのことを真剣に考えてはいないからだ。入場者の表情と真剣に向き合うと、根源的な理由が見えてくる」と消費者の心を読み解くことの重要性を力説されています。
また、「遊園地などの閉鎖も相次ぐが、それはディズニーの遥(はる)かに劣るまねごとをしたからだ。USJは非ディズニーを進めて成長することを示した。それこそマーケティングの力だと思っている」「。一度築いた世界観を変えることの葛藤だ。だが消費者がUSJに期待するものが分かればそれに合わせる方が失敗は少なくなる。世界観は一神教ではなく、『八百万(やおよろず)の神』であってもいい。多様な価値観のある消費者をカバーできる。また複数の重なる部分では合わせ技によってこれまで来て下さらなかった消費者の足がUSJに向かう」
と、消費者の価値観が多様化する中で、多くの顧客を虜にするコツを述べています。
そして、「日本はアニメのように0から1を作り出す天才的な力はあると思うが、それを1から100にするためのビジネスプラットフォームに仕立てる力は欧米に比べてどうしても劣る。我々のようなビジネスサイドのマーケッターが頑張らないといけない」と、骨太のマーケティング力の重要性を説いています。
最後には、「物理的なら入場者数だとリミットがある。しかし入場者数を上げることが目的ではない、それは結果だ。むしろ入場者一人ひとりがどれだけUSJの中で支出して下さるかだ。これは入場者の満足に直結する。つまりブランド価値の向上だ。ブランド価値を上げることを目的にすれば、数字にどう落とし込めばいいのかが見えてくる」「ブランド価値を意識するのは頭の中だから、無限なのではないだろうか。成長を量的でなく質的に見る。もっと簡単に言えば、どれだけ人を笑顔にするか。そしてその笑顔をどう強力にするかだ。自分の仕事がブランド価値向上につながっているのか。日々、その姿勢でUSJの仲間は仕事をしている」と結んでいます。
・昨年より高い価値をどう作り出すか
・ブランド価値を上げることを目的にする。
・ブランド価値を意識するのは頭の中だから、無限である
・成長を量的ではなく、質的に見る
・どれだけ人を笑顔にするか、そしてその笑顔をどう強力にするか。
・自分の仕事がブランド価値向上につながっているか
などなど、森岡氏の力強い肉声からは、女性客から選ばれるための本質を学べると思います。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
今や世界の25の国や地域に展開し、世界中で愛されるグローバルブランドとなった「無印良品」。その強さの背景には、無印流の「見出す力」があります。
私が今でも鮮明に覚えているのが、「割れ椎茸が、笑った」という広告コピー。今から25年以上も前の1980年だったと思います。まさに無印良品の原点となる商品の誕生です。当時の西友生活研究所が椎茸の使われ方を調査していると、ほとんどが「だしをとるため」ということがわかりました。一方で生産地に目を向けてみると、生地やカタチのいいものは収穫に手間がかり、割れたようなものは売り物にならず捨てていたと言います。「だしをとる」ためだったら、形は完全でなくてもいいのでは?それよりもお手軽な価格で買えれば主婦も喜び、産地にとっても無駄もなくなる。そんな発想から生まれたのがこの「割れ椎茸」だったのです。売り出した価格は通常の3割安。「大きさはいろいろ、割れもありますが風味は変わりません」と安さのワケをきちんと語ることで大ヒット商品につながり、今の無印があるというわけです。
その後は、何百回洗濯しても使う側が満足できる「ホテル仕様のタオル・シーツ」や劣化して壊れやすい部分を外した「合羽橋道具街仕様の柄のない鍋・フライパン」など、シンプルな機能に特化した商品を見つけ、選んで、無印良品流にアレンジして次々とロングセラー商品を生み出していきます。
いいものを見出す活動は国内に留まりません。開発部隊は世界中を歩いて「これはいいな!」と思うものを見つけて、無印流にアレンジしていきます。例えば1984年に発売された「まんま色」セーターは、新疆ウイグル自治区のカシミアやモヘア、南米ペルーのアルパカ、トルコのアンゴラモヘア、イギリスのシェットランドなど
世界各地から良質な原毛を調達して持ち味を活かして製品化しました。、
しかしながら、世界中を歩き回って「これはいいな!」と思うものを見つけるとなると手間と時間とコストがかかります。そこで次第に商社にこの「見出す」仕事を依存するようになりました。その結果集まってきた物は玉石混交状態。無印良品さしさはだんだんと薄まっていき、業績不振を招く結果になりました。敏感に変化を感じ取るお客様からは「最近の無印は薄っぺらくなった」とのお叱りの声。そこで、改めて無印らしさを取り戻すために2003年「ファウンド・ムジ」に取組みます。
世界の生活文化や歴史に根付いた良品を探しだし、世界の優れた日用品から学び、無印良品のフィルターを通して商品化する。というのがこのファウンド・ムジのコンセプトです。つまり、それぞれの国や地域でずっと長く作られているもの、使われているものは全世界どこへ持って行っても受け入れられる。そんな世界中で愛されている商品の魅力を探しだし、アレンジして新しい価値を生み出すことが、使命だったのです。
このファウンド・ムジの取り組みからも大ヒット商品が生まれています。例えば、チェコの「足なり直角靴下」は、チェコのおばちゃんが編んでいた、かかとが直角になった靴下を商品化したものです。日本の靴下はきれいに折れるように通常は120度。編み上げる機械の構造自体が120度で設計されているので仕様変更は困難を極めました。そこで実際にチェコのおばちゃんに日本に来てもらって編み方を伝授してもらい、そこから素材や編み機の開発に挑戦しました。その結果、2006年から2014年までに累計4500万足を売り上げる大ヒット商品になりました。もちろん日本だけでなく海外でも人気のようです。
無印良品の復活を成し遂げた良品計画の松井前会長は「無印良品が転落してしまった理由は「ブランド磨きを怠ったから」と断言しています。ブランド復活のためには「見出す力」を磨いて世界中のニーズに遅れない世界で通用するものを探してアレンジして作り出す。そんなこだわりが、世界中で愛される無印良品を支えていると言っても過言ではないと思います。
小売業の使命って何だろう?って考えた時、最も重要なのは、今お客様が欲しいと思っているもの、これから欲しくなるだろうな、と思うものを集めてきたり、作ったりしてお客様に提案することだと思います。そのためには、生活者のニーズやウォンツ、心の気持ちを読んで、次々に先回りしていくことが重要になります。無印良品流の「見出す力」もまずは生活者の気持ちを理解する力を磨いていくことから始まるのではないでしょうか
みなさんこんにちは。和田康彦です。
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下CCC)が、京阪電車「枚方市」駅前に、2016年5月16日にオープンした「枚方T-SITE」に行ってきました。
CCCといえば「TSUTAYA」。実は蔦屋書店は今から33年前の1983年に枚方市で創業したんですね。
創業の地に感謝を込めて開業したという枚方T-SITEは、2011年にオープンした代官山、湘南に次ぐ3店舗目。その規模はTSUTAYA・蔦屋書店・T-SITE史上、過去最大で「上質な日常を届けるライフスタイルデパートメント」をコンセプトに、食、キッズ、美容など、三世代で楽しめる9フロア(B1Fは夏オープン予定)を展開しています。
TSUTAYAと蔦屋書店を中核として43の個性的なライフスタイルショップが大集合し、朝7時から深夜25時まで利用できる便利さ、1Fから5Fに設置した300席の椅子でコーヒー片手にゆったりと読書できるBOOK&CAFÉの快適さ、スマホで、簡単にレストラン予約ができてエンタメ情報も得られる楽しさを提供する画期的なデパートでした。
☛私が訪れたのは土曜日の午後。若い女性連れやカップルで店内は賑わっていました。コーヒーを片手にお気に入りの本を楽しむ風景はとても心豊かなライフスタイルを感じます。1階から8階まで宝探し感覚で顧客の発見する喜びをプロデュースする枚方T-SITE。特にマルシェ感覚でお気に入りの雑貨や本、化粧品から洋服まで探せる4階フロアは、女性客の好奇心を刺激してワクワクドキドキさせる編集になっていました。心豊かで幸せを感じさせる空間と時間の提供、そして好奇心を刺激する生活編集など、これからの女性客に選ばれるためのヒントが満載でした。
■1階は焼き立てパン屋さんやオープンなカフェなど、パリにいるような気分を味わえます。
1階にはパンケーキ店「gram」や自家製ワインが飲める「フジマル食堂」などが集結。東京で話題のアイスキャンディー「PALETAS」、京都の人気茶寮の「錦一 葉かふぇ」のスイーツなど、人気店の味を一度に楽しめます。「THE GROUNDS BAKER」では朝7時から焼きたてパンで食べることができ、まるでパリの街角にいるような気分にさせてくれます。
また食にまつわる本・雑誌、花屋やデジタルプリント、スターバックスのテイクアウト専門カウンターがある点も見逃せません。駅直結なので、出かける前、帰宅前にサッと立ち寄るのにも便利です。枚方に引っ越したいなーって思いました。