体験消費時代のマーケティングヒント
みなさんこんにちは。和田康彦です。
行動分析サービスを提供するニールセン株式会社は、スマートフォン視聴率情報Nielsen Mobile NetView(ニールセン・モバイル・ネットビュー)の2016年4月データをもとに、スマートフォンアプリの利用状況を分析し5月31日に結果を発表しました。
2016年4月時点でスマートフォンの利用者数は5,496万人となり、1人あたり1日の平均利用時間は、2時間11分。スマートフォンの利用時間全体のうち、アプリからの利用とWEBブラウザからの利用の内訳をみると、アプリからの利用時間は全体の80%を占めていています。(図表1)。
アプリの利用者数TOP10をみると、利用者数1位は「LINE」で、4,305万人が利用。TOP10アプリの利用者数を昨年と比較すると「Yahoo! Japan」の増加率が最も高く42%増加。また、エンターテイメントアプリである「YouTube」や「Apple Music」、コミュニケーション/SNSアプリである「Twitter」や「LINE」も増加率が高くなっています。「LINE」や「Twitter」は、増加人数も多く、昨年と比べて500万人以上利用者数が増加。SNSアプリでは「Instagram」の増加率が高く、昨年から500万人利用者数が増え、初めて利用者数が1,000万人を突破しました。
利用者数が大きく増加している「Twitter」と「Instagram」に注目し、性年代別の利用者数を昨年と比較すると、「Twitter」は、35歳以上の増加率が高く、特に35-49歳女性と50歳以上の男性利用者が増加したことが、全体の利用者数増加に寄与。一方「Instagram」は、もともと利用者数の多かった34歳以下の女性に加えて、35~49歳女性の利用者も増加。また、Twitter同様、50歳以上の男性利用者も大きく増加していました。「Instagram」の利用者は、女性が661万人、男性が430万人。約6割が女性ユーザーで、特に若い女性に圧倒的に支持されているSNSということがわかります。(図表3)。
☛スマートフォンが生活に浸透するにつれ、生活者をとりまく情報やコミュニケーション環境は大きく変化しています。「LINE」や「Twitter」「Instagram」といった誰もが気軽に利用できるSNSが支持される中、お客様とのコミュニケーションのあり方も変化させていくことが大切です。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
ニトリホールディングスの2016年2月期の業績は、29期連続で過去最高益を更新し、前の期比10.2%増の730億円強を確保しました。売上高は9.8%増の4581億4000万円と従来予想を100億円上回ります。国内外で50店を新規に出店。昨年4月には「プランタン銀座」(東京・中央)にも出店するなど、従来よりも都心出店を増やしたことで若い女性やシニア層など、顧客の裾野も広がりました。
また、ここ3~4年は5万~10万円のソファなど高機能・高品質な「ちょっといい物」の品ぞろえを強化し、いいモノ志向の顧客を獲得。客層を多様化して客数を伸ばし、増収増益につなげた格好です。
ところで皆さんは、「ニトスキ」ってご存知ですか。実はこの「ニトスキ」とは、ニトリで販売されているスキレット(鉄製の鍋)のこと。何と30万個以上売れる大ヒット商品になり、今期の増収増益に貢献した商品のひとつなんですね。保温性が高く冷めにくい、使い勝手の良いフライパンで、そのままテーブルへ置いて食器の代わりにもなるし、オーブン調理だってお手の物。さらに、驚きなのはその価格。このフライパン、お値段なんと476円!さすが、「お、ねだん以上ニトリ」さんです。一つ500円程度で購入できるスキレットは、家族全員分を揃えられる手軽さ、サイズも2種類から選べるとあり、インスタグラムなどのSNSから再燃し、全国的に品薄になるほどの人気になりました。
☛モノ余りの時代、売れない時代と言われる中でも、30万個も売れる「ニトスキ」を生み出したニトリの商品開発力。そこからは生活者のインサイトを掴み潜在ニーズを発掘すればまだまだ売れるモノは作れるという可能性を感じます。また「ニトスキ」は、インスタグラムという女性に人気のSNSを味方につけたヒット商品といえます。、これからの時代、女性に選ばれるためには単に商品がよいだけではなく、SNSや口コミで話題になることが重要なポイントになります。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
スマートフォンが急激に拡大する中で、スマホアプリで1点モノの手作りアクセサリーや洋服などを販売できるハンドメイドマーケットプレイスが今大人気です。創作活動に取り組む全国のクリエイターと生活者が、オンライン上で直接オリジナル作品を売買できる手軽さが受けて、前年比2倍以上の勢いで拡大。今回は、主に女性作家が牽引して急成長を続けるハンドメイドC2C市場の実態をみていきます。
●国内最大級サイト「minne(ミンネ)」の登録会員数は20万人超。
国内最大のハンドメイドマーケットプレイスといえば、GMOペパボ㈱が運営する「minne(ミンネ)」です。2012年1月にサービスを開始し、10月にはスマホアプリをリリース。その後多様な決済方法の提供やテレビCMによって利用者や認知度は一気に広がり、2015年3月には登録会員数10万人、今年3月には20万人を突破。1年間で2倍以上の登録作家数の拡大を達成しました。また2016年2月にはスマホアプリのダウンロード数が500万件を突破するなど成長の勢いはとまりません。
●「minne(ミンネ)」の後を追う、「creema(クリーマ)」「iichi(イイチ)」。
minneのスタートより2年早い2010年にサービスを開始した「creema(クリーマ)」は登録会員数は約6万人、2011年にスタートした「iichi(イイチ)」は登録会員数約2万人で、会員数ではminneが2位以下を大きく突き放してトップを走っています。ただ、出品数ではminneの約250万点に対して、creemaは246万点とほぼ同じ規模で肩を並べており(iichiは約42万点)、今後は両社の競争が激しくなることが予想されます。
●リアルイベントにも注力、交流・体験の場を提供。
ネット上のマーケットプレイス以外で力を入れているのが、クリエイターと手作りファンが一堂に会するリアルイベントです。minneは今年の4月、東京ビッグサイトで「minneハンドメイドマーケット」を開催、約3000ブースに1400名以上の作家が参加して行われました。またcreemaも2016年7月23~24日の2日間、同じく東京ビッグサイトにて「ハンドメイドジャパンフェスティバル」を開催。全国で活躍する5000名以上のつくり手が集まる予定で、昨年は53000人の来場者がありました 。
●作家の支援活動を通して人気作家を育てる。
また出展作家の支援活動にも注力。minneは全国各地の大型商業施設での対面イベントを通して作家の活躍の場を増やしています。2016年は1年を通じて、東京・広島・北海道・宮城・福岡の全国5か所の「PARCO」を巡る対面販売イベント「ミンネとパルコのミエルツアー」を開催。イベント限定販売の作品など、会場でしか出会えないハンドメイド作品に触れ、作家と直接話しができる機会を設けることで、人気作家の創出に取組んでいます。
●「minneハンドメイド大賞」の開催で作家の創作意欲を後押し。
また、2015年度からは「minneハンドメイド大賞」を創設。創意・工夫を凝らした作品を発掘・表彰することで作家の活躍の場を広げています。2016年度の募集には2万300点以上の応募があり、ハンドメイド市場の裾野の広がりを示しています。
その他、東京・世田谷と神戸市に「minenのアトリエ」を設け、作家向けの勉強会や作家同士の交流の場としてワークショップの開催にも力を入れています。
●ハンドメイド作家という新しい働き方に注目が集まる。
ハンドメイドC2C市場の拡大に伴って、ハンドメイド作家を新しい働き方のひとつとして選択する女性が増えてきました。通常minneでは、作品が売れた場合、販売手数料として10%をGMOペパボ側に支払う仕組みで、出店料は無料。2016年3月時点で月10万円以上を売上げる作家は1227名と2年前の15倍以上に増えているそうです。ワークシェアリングやクラウドソーシングといったインターネットを活用した新しい働き方が注目を集める中、ハンドメイドC2C市場で活躍するクリエイターは今後もますます増えていくことが予測されます。
☛「生産者志向」と「自己実現の欲求」の高まり。ハンドメイドC2C市場が急成長している2つの理由。
2008年に起きたリーマンショック以降、日本女性のライフスタイルにいくつかの大きな変化が起きています。そのひとつが、単に消費するだけでなく、自ら何かを生み出していくという「生産者志向」の高まりです。例えば、家庭菜園やベランダで野菜を手作りする、梅干しや漬物など保存食を作る。家具も自分で組み立ててしまう。ちょっとした修繕はDIYで自分で直すといった生産者志向は生活のあらゆる面に及び、自ら作家として作品を作り、その売買で収入を得ることができるハンドメイドC2C市場はその代表例といえます。またポイントを増やす達人が生まれたり、モニターや懸賞公募に参加して報酬を得る人も増えてきています。最近ではクラウドソーシングを利用して収入を得る人も増えてきているほか、「メルカリ」や「フリル」などのフリマアプリで収入を得る人も一般的になってきました。実質賃金が増えず節約生活が当たり前となった現在、自ら収入を生み出して少しでも家計の足しにしたいという女性心理は今後も衰えることはないでしょう。
ハンドメイドC2C市場が急成長しているもう一つの理由が「自己実現の欲求」の高まりです。アメリカの心理学者アブラハム・マズローは、人間の欲求には5つの階層があり、ある階層の欲求を満たすと一段階上の欲求に駆られるという「5段階欲求説」を唱えています。それは①食欲・睡眠欲など生きる上で不可欠な「生理的欲求」②危機管理や健康維持などの不安から身を守りたいという「安全に対する欲求」③人から良く思われたい、嫌われたくないという「親和の欲求」④社会的ステイタスを築きたい、人から認められたいという「自我の欲求」⑤自分の能力や可能性を発揮していたいという「自己実現の欲求」の5つです。あらゆるものが満たされた現在、人々の欲求は「自己実現の欲求」を満たす方向に進んでいます。ハンドメイド作家という立場で自分の能力や可能性を発揮できるminne のようなハンドメイドマーケットプレイスは、まさに自己実現を求める現代女性の心理を上手く捉えたニュービジネスといえるのではないでしょうか。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
ワールドやTSIといった大手アパレルの大量店舗閉鎖や不振ブランドの撤退、ユニクロの業績不振などファッション業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。
そんな環境の中でも成長を続けているルミネは、20~30代の女性をコアターゲットに、大宮・北千住・池袋・有楽町・新宿・ルミネエスト・渋谷・立川・横浜・町田・大船・荻窪・川越・藤沢など、ターミナル駅 を中心として首都圏 15 店舗のショッピングセンター(3月開業の「ニュウマン」を除く)とネット通販 「i LUMINE(アイルミネ)」を運営しています。
全館売上高は、リーマンショックのあった 2009 年度を除き、1999 年度から 17 年連続で増収を続けており、2016年3月期の店舗売上高(ネット販売除く)は3255億400万円(前期比1.3%増)と過去最高を達成。また、ハウスカードであるルミネカードの会員数は約 120 万人(2015年9月現在)、20 ~30 代の女性利用率が約80%と若い女性に支持されているショッピングセンターです。
今回は、ルミネがなぜ若い女性客から選ばれているのか、ルミネならではの3つの提供価値に着目します。
①独創的でオリジナリティのある商品を提供する。
ルミネを率いる新井良亮 代表取締役社長は、Fashionsnap.com Insideのトップインタビュー(2015年12月28日)の中で、『今、どこもかしこも安売りで同質化しているのが気がかりです。商品の極論は「新しいか」もしくは「今までと違うものか」のどちらかですから。激しい競争に勝っていくには、今までのやり方と同じでいいはずがありません。』と既成概念を覆すことの重要性を語っています。
また『お客様の本当のニーズを捉えれば、とくに新しいデザインに対してものすごく感度が求められていることがわかります。それを提案できれば購買に結びついていくということ。「価値優先」の取り組みの成果は、売上としても出てきています』とオリジナリティこそが価値になることを力説。これらの発言からも、ルミネは「独創的でオリジナリティのある商品を提供」することで女性客から選ばれていることがわかります。
では、独創的でオリジナリティのある商品を提供するためにどんな取り組みや仕組みづくりをしているのでしょうか。ルミネならではの3つプロジェクトをご紹介します。
◆ルミネ ザ カルチェラ
次世代のファッションビジネスを担うブランドや若手デザイナーの発掘・育成を目的としたインキュベーション企画で2001年にスタート。ルミネにしかないオンリーショップや新進気鋭のクリエイターを紹介しています。2013年8月からはルミネ新宿 ルミネ2に常設店を設置し、毎月異なる複数のデザイナーに販売機会を提供。これまでに正式出店した店舗も10店以上あります。また2013年からは合同展示会、『LUMINE the QUARTIER-LA Exhibition & Market』を毎年1回開催。注目の国内デザイナーが集う新しいカタチの合同展示会として、バイヤー向け「エキシビション」と一般お客さま向け「マーケット」で構成。新進気鋭のブランドたちの世界観を発表する場として注目を集めています。
◆KOKO LUMINE
「産地支援」「地域共生」「復興支援」をテーマとした日本のモノづくりの大切さやその背景を伝え、発信することを目的とした、ルミネ全館共通の事業支援・文化発信プロジェクト。ルミネ全体の取組みとして、物販、食品催事、ワークショップ、イベント、展示等の開催により、日本のモノづくりの技術やクオリティを社会に広め、継承に努めています。
具体的には“日本のいいもの”の販売や、日本 のものづくりにちなんだワークショップを開催するキャンペーン『KOKO LUMINE WEEK』を 2015 年 8 月と 2015 年 12 月 26 日(土)~2016 年 1 月 5 日(火)の期間にルミネ計 12 館とルミネのネット通 販 iLUMINE にて開催したほか、JR 新宿駅直結の新商業施設 「NEWoMan」(ニュウマン)エキナカに、「ココルミネ」プロジェクトがプロデュースする初のフラッグシップ店舗、「ココルミネ ストア」を 2016 年 4 月 15 日(金)に開業。SHINJUKU が世界へつながる中心地のひとつとして、伝統工芸や日常使いできる日本のいいものや、ものづくりの背景と共に贈りたくなる大切な人へのギフトなど、日本の産地・地域の魅力と作り手の想いをつなぐ場として注目を集めています。
◆「LUMINE meets ART AWARD」
ルミネでは、館内に展示するアート作品を広く一般から公募し、若手アーティストの発掘と支援を目指すアートアワード「LUMINE meets ART AWARD」を開催。受賞作品は、ルミネ新宿のエレベーターやウィンドウ、新宿南口やルミネエスト新宿のデジタルサイネージなどルミネ館内に展示し、来店客にいつものルミネでちょっとした感動や非日常を感じてもらえるようなプラスαの価値を提供しています。
独創的でオリジナリティのある商品を提供するためには、独自の仕組み作りが重要です。上記のような長年積み重ねてきたルミネならではの取り組みがあってこそ、成長を持続できているのです。
②商品だけでなく質の高い店舗での買物体験を提供する。
新井社長は前述のインタビューの中で『売場が命なので“売場にはよく足を運ぶ”私たちには“明日来てもらえる”という保証はない』『経営陣は積極的にショップに出向くべきだ。劇的に変化するマーケットにショップが対応できずにいる状況を肌で感じ、早期に問題解決のために正しい方向に舵をきるべきだ』と、ショップへの強いこだわりを語っています。
また『そもそも、なぜ一生懸命作ったものをすぐ安値にして、それをお客さんに買って頂こうとするのでしょうか。妥当に売りましょうよ。特に夏のセールが、梅雨も明けていなくてボーナスも出ていない時期に終わってしまうのはいかがなものか。夏を楽しみに買い物に行く人のことを考えたら、セールは後になるのが適正です。真っ当に売らずして安売りという形で片付けるのは甘い、社会的な貢献ではないと、私は思います。ちゃんと作ったものなら、買っていただく努力をしましょうよ。知恵を働かせることはできるでしょう。』とセールに頼らない本質的な売り上げと利益の追求を目指しています。
では、質の高い店舗はどのように生まれているのでしょうか。
私が着目するのは、春と秋に実施している大掛かりな店舗リニューアルです。
昨年は、2月にルミネ全館にて 143 ショップが新規オープン。また8月には130のショップを新規オープンさせています。秋のリニューアルでは、ファッションとスポーツをミックスさせた全く新しいアクティブライフスタイルを提案するジ ュンと NIKE の新業態ショップ「NERGY」や、“ステキな朝を迎えるためのベッドルーム”がコンセプトの新業態ショップ「Priv. Spoons Club」などライフスタイル提案型の新業態ショップに加え、“BLACK コーヒーが似合う女性”をテーマに、DENIM スタイルをメインとしたカジュアルモードへ一新した「BLACK BY MOUSSY」、多くのセレブリティにも愛用されているアメリカのラグジュアリーブランド「MICHAEL KORS」など最新のブランドや新業態を積極的に導入、トレンドの情報発信を行うとともに、新しいもの・楽しいもの・魅力的なものに高感度な顧客のライフスタイルをリードする売場づくりに取組んでいます。
このような常に同質化から脱し尖った存在を目指す姿勢こそが質の高い売場を実現する原動力となっています。
③顧客満足ではなく顧客感動を提供する。
ルミネが若い女性客から選ばれている3つ目の理由も、新井社長のインタビューから見えてきます。『(店では)決めきれずに家に帰ってからECで買うこともあるでしょう。結局は、お客様がどこで時間を買うか。いずれにしても「顧客満足」のレベルではダメ。いかに「顧客感動」を与えられるかです。お客様が何を求めているのかは直接コミュニケーションをとらない限り得られませんから、やはり売り場がベースにはなります。あくまでもリアルを補填するのがEC事業という考えで、双方の良さを引き出すようにしています。』顧客満足ではダメ、いかに顧客感動を与えれれるか!この言葉の中にこそ、ルミネが女性客から愛される強さの秘密が隠されています。
では顧客感動を与えるためにどんな取り組みを行っているのでしょうか。
私が着目するのは、ショップスタッフのモチベーションを最大限に高める「ルミネスト」の取り組みと女性たちが働きやすい環境づくりを推進する「きらきらルミネ」プロジェクトです。
◆ルミネスト
ルミネでは毎年約3万3千人のショップスタッフの中から「おもてなしのスペシャリスト」を厳正な審査で選ぶ「ルミネスト」を選出。ルミネストに選ばれるためには、接客ロールプレイングの予選会、店大会、決勝大会の3つのステージを進んでいかなければなりません。その中で選ばれた優秀なスタッフだけが、ゴールド(80名)、シルバー(75名)、ブロンズ(300名)の「ルミネスト」の称号を獲得。ホームページ上で紹介されたり認定証が与えられたりと、ショップスタッフの育成やモチベーションアップに大きく結びついています。
新井社長も『まず私は、「販売員」という呼び方自体が違うのではないかと思いますね。お客様からのニーズからすれば、販売することよりも、むしろ接客の会話やコーディネート提案の方が多いはずですから。皆さんは大変な努力を積み重ねているし、その成果を正しい見方で真っ当な評価をするべき。その取り組みのひとつが「ルミネスト」で、人材確保と育成にも良い影響を与えています。』と語っており、ルミネストを中核にしたショップスタッフひとりひとりが顧客感動を生み出すエンジンになっているのです。
◆きらきらルミネ
ルミネの顧客は20~30代の女性が中心。社員も7割が女性でショップ店員もほとんどが女性です。女性社員がイキイキと働くことがショップ店員にも良い影響を及ぼし、売場の雰囲気も当然よくなります。その結果、来店した顧客も気持ちよく買物することができます。「きらきらルミネ」は、どうすれば女性社員がもっと働きやすくなるかを議論するために2013年に女性社員8人のプロジェクトチームとしてスタート。結婚、出産、育児といったライフイベントと仕事のバランスの取り方や多様な働き方を実現する職場環境づくりに率先して取り組みました。その結果、育児や介護、妊娠によって短時間勤務が選べる「選択勤務制度」、1時間単位で年次有給休暇が取得できる「時間単位取得制度」、育児、介護、病気の他妊娠や配偶者の転勤、自己啓発でも休職できる「休職制度」、会社を一旦退職した場合でも一定の要件を満たしていれば再雇用の対象となる「ジョブリターン制度」の4つの新制度が2014年からスタート。女性社員が働きやすい環境づくりをルミネという館が率先することで売場の優秀な人材が集まり、その結果ルミネ好きな若い女性客が集まってくるという好循環につながっているのです。
いかがでしたでしょうか。ルミネが女性客から選ばれて成長を続けている理由を3つの観点からレポートしてきました。どれもが地道な取組ですが長年やり続けている結果が今に結び付いているのだと思います。
「モノではなく価値や文化を売る発想の転換」「従来型の発想と手法からの脱却」「人材の育成こそが産業の発展につながる」など最近ではよく耳にする言葉ですが、要はこのような企業姿勢を顧客に伝えられるか!が最も重要です。これからの時代女性客に選ばれるためには、企業の「本気度」に共感してもらわなければいけません。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
首都圏の主要ターミナル駅を中心に15の商業施設(2016年3月開業の「ニュウマン」を除く)を運営する株式会社ルミネの業績が絶好調です。
ルミネの2016年3月期の店舗売上高(ネット販売除く)は3255億400万円(前期比1.3%増)となり、14年度に続き過去最高額を達成。報道資料によると『新宿店、ルミネエスト、池袋店、有楽町店など都内の主力施設を中心に、「感度と独自性を高める」MDを改装や既存ショップとの連携で強めたほか、積極的な販促やハウスカード顧客拡大策などが実った。』と説明されています。
ルミネのターゲットは、いわゆるF1 層と呼ばれる若い女性。特に仕事帰りの働く女性がメインの顧客です。この層は、可処分所得が高く自分の自由になるお金を最も多く持っている世代といってもよいでしょう。ですからルミネ側も「F1層に向けて高価格帯の衣料を提供するファッションビル」と定義しています。
駅ビルを主体とした売り場はどこも集客力抜群で、顧客の高齢化が進む百貨店とは全く違う賑わいを感じます。
ただこの厳しい消費環境の中で、ルミネがファッション衣料を中心に過去最高の売上を達成している要因はどこにあるのでしょうか。リクナビサイトの「当社の魅力はここ!」に見つけることができます。
以下、ルミネのリクナビ2017から引用させていただきます。
◆企業理念:「お客さまの思いの先をよみ、期待の先をみたす。」
当社は『the Life Value Presenter お客さまの思いの先をよみ、期待の先をみなす。』という企業理念のもと、首都圏の主要ターミナル駅を中心に15の商業施設を運営しています。私たちは、お客さまに単に商品を購入する場を提供するだけでなく、お客さまの自己発見・自己実現をサポートするパートナーとして、お客さまの潜在的な欲求を見抜き、それを満たせるモノ・コトの提案に挑戦しています。お客さまの期待に応えるだけでなく、期待を超える感動を提供することを目的として、不動産賃貸業の事業領域のみに止まらず、新たな文化の創造や情報発信に積極的に取り組んでいます。
◆戦略・ビジョン:ルミネのビジネス
ルミネはこれまでの不動産賃貸業やショッピングセンターとは異なる別のステージでビジネスを行っています。リアルの店舗である「LUMINE」と、バーチャルの店舗である「i LUMINE」という2つの事業領域を持つ強みを活かしながら、上質な都市生活文化の創造を行っています。例えば、常に新鮮な発見のあるフロアをつくるための恒常的なリニューアルや、ショップコンサルテーション、事業パートナーとの積極的な新規ブランド開発、若手クリエイターや産地の「モノづくり」との連携、ファッション性やカルチャー性の高いイベントの実施など、さまざまなビジネスを通じて、上質な都市生活文化の創造を行っています。
◆社風・風土:NEW DEPARTURE
当社は『the Life Value Presenter お客さまの思いの先をよみ、期待の先をみたす。』という企業理念のもと、商業施設『LUMINE』やEコマース事業『i LUMINE』を運営を通じ、お客さまに半歩先、一歩先の新しいライフバリューを提案しています。そして2016年3月に新たなコンセプトで商業施設「NEWoMAN新宿店」の開業や、直営店舗事業への参入など新しいビジネスモデルを立ち上げ新たな価値の創造に挑戦しています。どんな挑戦も、最初は誰かの小さな一歩から始まります。あなたの一歩を、私たちと共に。
☛いかがでしたでしょうか。上記の企業理念、戦略、社風・風土の説明文の中には、成熟化した消費環境の中で女性客に選ばれるためのキーワードが凝縮されているといっても過言ではありません。私が素晴らしい!と思った箇所を抜き出しました。
①商品を購入する場を提供するだけでなく、お客さまの自己発見・自己実現をサポートする。
②お客さまの潜在的な欲求を見抜き、それを満たせるモノ・コトの提案に挑戦する。
③お客さまの期待に応えるだけでなく、期待を超える感動を提供することを目的とする。
④新たな文化の創造や情報発信に積極的に取り組む。
⑤お客さまに半歩先、一歩先の新しいライフバリューを提案していく。
⑥新しいビジネスモデルを立ち上げ新たな価値の創造に挑戦する。
そして、ルミネはこれらの企業哲学を絵に描いた餅に終わらせるのではなく、新井良亮社長を中心に具体的な形で顧客に提供しているところに凄さがあります。後編では、ルミネの成長を牽引している新井社長の考え方や具体的な取組について考察していきたいと思います。