体験消費時代のマーケティングヒント

2023-09-25 17:32:00
運動習慣にない人や女性にターゲットを絞って急成長する、チョコザップの差別化戦略とは。

みなさんこんにちは。顧客創造マーケティングの和田康彦です。

 

RIZAPグループ(東京都/瀬戸健社長)が運営する会員制トレーニングジム「chocoZAP」(チョコザップ)が会員数が80万人を突破したことを発表しました。

 

チョコザップがサービスを開始したのは227月のこと。フィットネスジム業界では異例の急成長を遂げ、23815日時点で会員数は80万人、店舗数は全国32都道府県に880店を突破しています。

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▪運動習慣のない人や女性にターゲットを絞って差別化

すでに世の中に多くのトレーニングジムがあるなかで、チョコザップが大きく差別化できたのは、運動習慣のない人や女性にターゲットを絞った点にあります。

 

そこで、チョコザップは、「初心者でも通いやすいコンビニジム」をコンセプトに、トレッドミル(ルームランナー)やフィットネスバイク(エアロバイク)、トレーニング初心者でも簡単に操作できる筋トレマシンなどを設置しています。

 

一方で、ダンベルやベンチプレスなど、筋トレ上級者向けのマシンは設置していません。これらを設置すると、筋トレ上級者の会員が増え、初心者が通いづらい環境になってしまうからです。

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また、ジムにはトレーナーや受付のスタッフを配置するのが一般的ですが、チョコザップは無人。営業時間は24時間で、会員はチョコザップ専用のスマホアプリからQRコードをかざすと入店できる仕組みです。

 

また、服装自由のためウエアに着替えたり、靴を履き替えたりする必要がないのが特徴となっています。トレーニング以外のサービスが充実している点も強みで、多くの店舗にセルフエステやセルフ脱毛ができる美容機器を、一部店舗にはゴルフの練習ができる設備を設置しています。

 

会費は月額2980円(税抜)で、会員は全国のチョコザップの店舗を利用できます。

 

このように、チョコザップは商品を豊富に揃えるコンビニエンスストアのように、健康課題に向き合いながらさまざまなコンテンツを掛けあわせる「コンビニジム」を目指しています。

 

▪退会率を改善するためのパーソナライゼーション

これまでのトレーニングジム業態の収益面の課題は、退会率の高さにありました。一般的なトレーニングジムでは、入会した会員の半分が1年以内に退会するといいます。

 

それは「筋トレ上級者の設計による、筋トレ上級者のためのジム」になっているため、初心者が気おくれし、「自分はトレーニングに向いていない」と感じ、やがて退会してしまうという悪循環につながっていたためです。

 

そこで、チョコザップでは1週間以上来店のない会員に向けてアプリ上で来店を促す通知を配信しています。

 

また、防犯用AIカメラのデータからマシンが使われている頻度などチョコザップの利用実態も解析しています。データ分析により、会員が何を求めているかを理解し、利用率の低いトレーニングマシンを廃止する一方で、人気のあるマシンを積極的に導入しています。

 

263月期までに全国で2000店舗の出店を計画しているチョコザップ。今後は、アプリ上でRIZAPのトレーナーによるトレーニングプログラムや、適切な食事を提案する機能の追加を検討しているそうです。

 

▪チョコザップの戦略とは

企業戦略の基本は、①差別化が利益を生む ②戦略とは資源は配分である。この2点に尽きます。

 

チョコザップは、これまでの上級者をターゲットにしていたトレーニングジムと一線を画し、初心や女性にターゲットを絞ったことで差別化に成功しました。

 

そして、受付などの人件費には投資せず、徹底的に無駄を省いた運営で効率的な展開を可能にしています。一方で、デジタル投資は積極的に行い、利用者とのつながりや満足度の向上など、デジタルトランスフォーメーションで退会率を抑えることに取り組むなど、これからの企業戦略を考えていく上で学べることがたくさんあります。