体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。和田康彦です。
このコラムでもいつも申し上げているように、新型コロナウイルスの感染拡大によって、人々の意識や価値観は大きく変わり、それに伴って生活者の消費行動も大きく変化してきています。
国際的な市場調査会社ユーロモニターインターナショナルは、今年2021年の消費者行動を形作り、企業のビジネス戦略に影響を与えると予測されるトレンドをまとめたレポート、『2021年 世界の消費者トレンドTOP10』を発表しました。本レポートで紹介している10のトレンドはいずれも、新型コロナウイルス(COVID-19)の発生によって新たに作り出されたもの、COVID-19の影響を受けているもの、あるいはCOVID-19によって加速されたものです
◆2021年の消費者像とは?
☛2020年は新型コロナウイルスの感染拡大によって、次々に新たな生活習慣が生まれ、私たちの行動やお金の使い方、消費の仕方も大きく変化した。
☛2021年、コロナ禍の収束が見えない中でも、消費者は自らのため、人類のため、世界をより良い方向にしたいと考えており、不安や混乱の中でもホリスティックで回復力のあるソリューション、より思慮深い消費の仕方を求めている。
☛同レポートでは2021年、世界の消費トレンドの原動力となるのが「回復力」と「適応力」と分析している。
◆2021年世界の消費トレンドトップ10とは
ユーロモニターインターナショナル社が発表した2021年世界の消費トレンドトップ10は以下の通り。
①より良い復興を目指して
②利便性を渇望する消費者たち
③屋外に憩いを求める
④フィジタルリアリティ
⑤時間を上手に使う
⑥せわしない反抗的な消費者たち
⑦安全至上主義
⑧振り回されながらも前に進む
⑨思慮深い倹約家たち
⑩自宅が新たな仕事場
◆①より良い復興を目指して
☛新型コロナウイルスの感染拡大によって、消費者は企業に対して利益を上げること以上に、地球や社会への配慮を求めるようになっている。
☛その結果、消費者は社会的責任を強く持つブランドや企業に共感するようになってきている。
☛消費者はより良い復興に向けて、より清潔で健全な、そしてより回復力があり、公平な世界を目指して行動する企業やブランドを求めている。
☛2021年、消費者は社会問題や環境問題をより真剣に捉えるようになり、パンデミック収束後も「良い目的」のために利益を役立てる企業を支持するようになる。
☛より環境に優しく公平な世界を再構築するために行動する企業やブランドは、競争優位性を得るだけでなく、事業のために必要な社会的認可、つまり社会の信頼を得ることができる。
◆②利便性を渇望する消費者たち
☛コロナ禍の中、デジタル化が一気に加速。デジタルコマースを活用すれば、消費者がこれまで慣れ親しんできた「人との対面でのやり取り」を介することなく、シームレスな顧客体験を提供することが可能になった。
☛例えば、人との関わり合いや関係性を重視するビジネスにとっては、セルフサービス、非接触、無人操作等を試す機会となった。また、QRコード、事前予約、混雑する時間帯または空いている時間帯の通知等、新しい消費者習慣に合わせた様々なサービスを提供することで、企業は時間を節約できるだけでなく、安定した供給力や製品の配送能力を確保できるようになった。
☛一方で、消費者は以前のように、自分の都合に合わせて日々の用事を済ませたり、店舗で買い物をするといった手軽さを求めている。
☛消費者は今後も利便性を求め続けていく。そして、安全性を最優先しつつ、既に確立している自分たちの嗜好や買い物パターンの変更を最小限に抑えることのできる企業やブランドとの取引を希望している。
◆③屋外に憩いを求める
☛COVID-19による健康への脅威、屋内での集まりや移動に対する制限、そしてリモートワークの増加により、消費者はレジャーや気晴らしを求めて屋外の憩いの場に目を向けるようになった。
☛中には人口密度の高い都市部から地方への移住を検討する人も出てきている。
☛企業は今後、都市部に暮らす人々のニーズを満たすために、都会暮らしの中に地方生活の穏やかさを取り入れられるような製品やサービスの開発を考えていく必要がある。
◆④フィジタルリアリティ
☛コロナ禍の中でも、消費者はデジタルツールを使うことで、自宅に居ながら安全に外の世界とつながったり、安心して外出しやすくなった。
☛「フィジタルリアリティ」は、「フィジカル(物理的な現実世界)」と「バーチャル(仮想空間)」を掛け合わせた考え方で、人々が対面とオンラインの両方でシームレスに生活や仕事をし、買い物や娯楽を楽しむことができる世界のことを指す。
☛自宅から外出することに不安を覚える消費者が、安心して外出できるようになるためには、店舗などの物理的な空間にバーチャル(仮想)プロセスを組み入れることが有効。
☛Eコマースの売上を後押しし、消費者データを収集するためにも、自宅に居ながらにしてバーチャルで様々な体験ができるようなサービスの提供が欠かせなくなる。
☛。今後は複数の異なるチャネルやプラットフォームを通し、安全かつ「忘れられない体験」を提供する企業がロイヤルカスタマーを獲得していくと考えられる。フィジタルリアリティの導入はオンラインと実店舗の両方の売上を促進し、データの収集にもつながる。
◆⑤時間を上手に使う
☛今日の消費者は、よりフレキシブルに時間を使えるようになった一方で、日々やるべきことを全てやり遂げるために、よりクリエイティブに時間を使うことを求められている。
☛企業は、「時間を最大限に有効活用したい」という消費者の欲求に応えるべく、自宅やその近所からアクセスできる製品やサービスなど、消費者の生活がよりフレキシブルになるようなソリューションの提供を求められている。
☛消費者は、時間の都合や事情に合わせてより柔軟に生活のスケジュールを組むという新しい生活
様式に適応しようとする中、自分たちの生活を支援すべく「時間を上手に使う」トレンドに合わせた製品やサービスを提供する企業を「パートナー」と見なすようになる。
◆⑥せわしない反抗的な消費者たち
☛リーダーシップに対する人々の不信は常態化し、偏見や誤った情報によって政府に対する信頼は大きく揺らいでいる。人々は政府や政治に対してより冷ややかな見方をするようになり、「せわ
しない反抗的な消費者たち」は増加の一途を辿っている。
☛その結果、これまで他人を優先し、見返りを求めることもなかった人々が、近年の政府に対する不信感などに苦しんだ結果、反感を覚えるようになり、自分たちのニーズや欲求を最優先するようになっている。
☛また、メディアやオンラインコンテンツに対する不信感の広がりは、企業にとってはマーケティング活動を通して誤情報を払拭する機会であると同時に、そうする義務もある。人々は真実を求め、企業やブランドには正しい行動を起こすこと期待している。
◆⑦安全至上主義
☛「安全至上主義」は、心身の健康に関する新たなトレンドである。
☛感染への不安や健康意識の高まりは衛生用品の需要を喚起し、消費者は人との接触を避けるために非接触型ソリューションを選択するようになった。
☛今後、消費者は常に「安全」と「健康」を念頭に置いて行動するようになる。企業は業界を問わず、高まる健康懸念に応えるべく衛生面での取り組みを強化していく必要がある。
☛企業は優れた衛生機能を製品・サービスに取り入れ、それらの利点を上手く伝えることができれば、「安全至上主義」な消費者を惹きつけることができる。
☛企業は安全対策を強化するとともに、消費者の懸念を安心に変えるようなイノベーションを生み出すことが求められている。
◆⑧振り回されながらも前に進む
☛パンデミックは日常生活を大きく変えた。人々はメンタルを試され、行動を制限され、経済危機にも晒されている。
☛消費者はこれまで以上に満たされ、バランスが取れた人生を追求するために、自分自身のあり方や居場所について、新たな考え方を持ち始めている。
☛自己啓発や技術の取得、より良いワークライフバランスの促進や将来的な資産運用を支援する製品やサービス、体験は、パンデミックが収束した後も需要が増加していく。
☛消費者がより多くの時間を自らのために使うようになる中、企業は自社の製品やサービスが、どのように彼らの生活や人生に役立つかを発信していく必要がある。
☛困難な状況を乗り越えようとしている「振り回されながらも前に進む」消費者を手助けし、彼らの信頼を得るためにも、企業には心の健康の回復をサポートするような製品やサービスの提供が求められている。
◆⑨思慮深い倹約家たち
☛コロナ禍のもと、消費者は支出に慎重になり、倹約している。先行き不透明な経済環境によって、
裁量支出は減少傾向にある。
☛そのような中、「思慮深い倹約家たち」にとって優先順位が高くなっているのが、付加価値が高く、健康志向が強い製品・サービス。
☛企業は、コストパフォーマンスの高い価格設定の提案へと方向転換し、品質を下げることなく手頃な価格で製品・サービスを提供していくことが求められている。
☛プレミアム製品については、消費者が共感できる新たなストーリーによってその製品特徴を強化
し、健康ウェルネス、セルフケア、または心の健康といった要素と強い関連性を持たせることが重要になる。
◆⑩自宅が新たな仕事空間
☛「自宅が新たな仕事空間」トレンドは消費者の生活に波及効果をもたらし、衣服のチョイスからテクノロジーへのお金のかけ方、食事習慣にとどまらず、多くのことに影響を及ぼした。
☛人々は自分の時間を管理することに苦戦しており、仕事とそれ以外の時間にメリハリをつける方法を模索している。
☛企業はワークライフバランスを支援し、生産性及びコミュニケーションの向上に努めなければならない。
☛企業がリモートワークのメリットと課題を理解することで、社員はオフィス勤務の良い部分を在宅勤務に取り入れて働くことができるようになる。
☛自宅で過ごす時間が増えた消費者は、よりカジュアルな仕事着やビューティー製品を選ぶようになる一方で、飲食品については自宅でも外食時と同じ体験ができるような、ちょっとした贅沢感や高級感がある製品を求めるようになる。
以上、ユーロモニターインターナショナル社が予測する2021年世界の消費トレンドTOP10を見てきました。企業は、このような生活者の変化を探究し、理解を深めることで、自社製品・サービス開発の改善や、より効果的なマーケティング戦術の採用、顧客ロイヤルティの確保、そして次のステップへの準備に素早く取り掛かることができます。社会の変化に素早く対応することこそが、企業経営にとって最も重要なことです。
今年の消費者行動を牽引する価値観や消費者ニーズについてのより詳しい情報は、『2021年 世界の消費者トレンドTOP10』をご覧ください。日本語版のダウンロードはこちらから。https://bit.ly/3ivEi4F