体験消費時代のマーケティングヒント

2021-01-17 11:17:00
デジタルとリアルの境界線をなくすことで復活した米ウォルマート。

みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

新型コロナウイルスの感染拡大によって人々の意識や価値観は大きく変わり、それに伴って、生活者の消費行動にも変化が現れています。

 

コロナ禍で店舗に足を運びにくくなるという逆風が吹く中、米ウォルマートの好調ぶりが目立ちます。20208月~10月のネット通販売上は前年同期比79%増と大幅増。その要因としては、米国内4700店舗の半数をネット通販の拠点にするといったDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の成功が大きいといえます。

 

ウォルマートの店舗網は、米国で暮らす人の約9割を半径10マイル以内に捉えています。2020年末には、その半分の2500店超を店頭のオンライン注文の処理や配送管理まで担う複合拠点として運用を開始。注文後2時間以内に商品を宅配する「エクスプレスデリバリー」を実現させました。

 

ウォルマートは、注文後2時間以内に届けるエクスプレスデリバリーを実現させるために、人工知能(AI)、ロボット、自動運転、IoTといった様々なデジタル技術を店舗網と組み合わせることに投資をしています。

 

  人工知能(AI

商品在庫や配送人員、交通や気象に関する情報を組合わせて、最適な配送経路を割り出すことで注文後2時間以内の配達を実現。

  ロボット

小型ロボットで倉庫内の運搬作業を自動化。人間の10倍の速さで商品をピッキング。

  自動運転

無人の自動運転トラックによる商品配達をアーカンソー州で開始。

  IoT

冷凍、冷蔵、低温の3種類の温度帯を管理でき、殺菌機能を備える冷蔵ボックスを自宅玄関に設置できるよう無償で提供。

 

さらに、アマゾン・ドット・コムの有料会員サービス「プライム」を意識し、ウォルマートも209月中旬に定額制の「ウォルマート+(プラス)」を開始。12月には購入額35ドル以上からとしていた無料配送の利用条件を撤廃し、アマゾンよりも返品しやすい仕組みも整えています。

 

以上見てきたように、米ウォルマートは、デジタルとリアルの境界線をなくすことで見事復活しました。これからの時代、生活者にとってリアルもバーチャルも関係ありません。両方を利用できることが一番良いわけです。

 

生活者視点に立って最も便利で役立つサービスを進化させていく。企業の論理ではなく生活者の論理で生活者の幸せを提供していくことがますます重要になってきました。