体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは、顧客創造マーケティングの和田康彦です。
▪開発からわずか3ヶ月でリリースにこぎつけたLINE
今やスマートフォンユーザーのほとんどの人が利用しているLINEの登録者数は、約9500万人(2023年6月末)。私たちの日常生活になくてはならないコミュニケーションアプリに成長しました。
LINEがリリースされたのは、2011年の6月23日です。その年の3月、東日本大震災が発生。被災地では電話回線がつながりにくくなりコミュニケーション手段が途絶えてしまう事態に陥りました。
そこで、NHN Japan傘下のネイバージャパンは、ネット回線を利用したメッセージアプリの開発に着手。震災からわずか3ヶ月でLINEのリリースにこぎつけました。その後10月には無料通話とスタンプ機能をプラス。リリースから半年で1000万ダウンロードを達成しています。
現在のLINEの確固たるポジションを生み出した原点は、当時の顧客ニーズを素早くとらえ、驚くほどのスピード感でリリースできたことに尽きると思います。
▪わずか1年余りで会員数83万人。スピード成長の「chocoZAP」
また、先日も取り上げたRIZAPグループ(東京都/瀬戸健社長)が運営する会員制トレーニングジム「chocoZAP」(チョコザップ)http://womanmarketing.net/info/page/3
は、2022年7月のスタートからわずか1年余りで、会員数83万人、店舗数は1026店(2023年9月末)とスピード成長を遂げています。
インターネットやテクノロジーの進化によって、時代が変化するスピードやモノや情報が広がるスピードは、10年前と比べても桁違いに早くなっています。そのような環境の中で、経営におけるスピードの重要性も年々高まってきています。
▪ピラミッド型組織からフラットな組織へ
日本の企業文化は、縦型のピラミッド型組織が一般的であり、昔から報連相、つまり報告、連絡、相談が重視されてきました。
今でも、報告のために分厚い報告書を作成したり、何枚ものパワーポイントの資料を作成することに時間をかけている企業が多いのではないでしょうか。
日本の企業では、「報告や計画書を作ることが仕事である」と勘違いしている人がまだまだ大勢を占めているような気がします。
もちろん、計画や準備をすることは非常に大切なことですが、実行力がなければ、計画も準備も絵に描いた餅になってしまい、成果を上げることはできません。
このような企業風土を生み出してきた背景には、日本企業の減点主義による人事評価が影響しています。失敗すると減点されてしまうという恐怖心から、社員はチャレンジしなくなり、上司からの指示を待つ「指示待ち人間」を大量に生み出してしまったのです。
つまり、スピード感を重視した経営を実現してくためには、フラットな組織文化を醸成していくことが何より重要になってきます。
▪アイデアや意見の中身を正しく議論し、即断、即決、即実行する
例えば、星野リゾートの星野佳路氏は、経営情報を公開すること、役職で呼ぶことを禁止すること、立派な机など偉い人信号をなくすことを通して、一人一人が自由に意見を出せる環境をつくることに専念してきました。
そして、誰が言ったかではなく、「何を言ったか」を重視することで、アイデアや意見の中身を正しく議論し、即断、即決、即実行することで、国内はもちろん海外でもブランド力の高いリゾート施設を運営する会社に変貌を遂げてきました。
▪スピード経営を実行するためには、まず自律型組織の醸成から
ところで、スピードという言葉には、「他に先んじるはやさ」と「仕事を素早くやる」のふたつの意味があります。
世の中の変化がますます早くなる中、経営者は常に感度の高いアンテナを張り巡らせ、状況の変化を誰よりもはやくつかまえていかなければいけません。
また、従業員がキャッチしたちょっとした変化も、いつでも経営層に届く仕組みづくりの大切です。
経営は変化に時代の変化に対応していくことがとても重要です。そのためには、日ごろからつとめて従業員の声を聞き自由にものを言いやすい空気をつくっておくこと、できるだけ仕事を任せて自主性を活かしていくことなど、自律型組織を醸成していくことが何より重要なポイントになります。
ところで、ユニクロを展開するファーストリテイリング社の社名は、直訳すると「はやい小売業」です。
「お客様の求めているものをいかに素早くキャッチして、いかに早く商品化して、いかに早く提供するか」という行動指針を会社名に表しているそうです。
スピードを重視した経営こそが、グローバルブランド確立の鍵といえそうですね。