体験消費時代のマーケティングヒント

2022-01-20 17:07:00

みなさんこんにちは、和田康彦です。

 

前回のコラムでは、函館の人気ハンバーガー店「ラッキーピエロ」に学ぶ、地域の繁盛店になるための7つのポイント。http://womanmarketing.net/info/4354010というテーマで、地域で繁盛店になるために重要な7つのポイント

①ロマンがある

②強い独自商品がある

③ワクワクする場所である

④地域に貢献している

⑤従業員を愛している

⑥あえて非効率を選んでいる

⑦お客様とつながっている

について説明してきました。

 

今回のケーススタディは、「おいしい餃子で人々を健康で幸せにしたい」という大きなロマンのもと、埼玉県を中心に101店舗展開する老舗餃子チェーン店が「ぎょうざの満州」です。埼玉が誇るソウルフードは、いまや埼玉県民はもちろん県外のファンも獲得して成長を続けています。

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同社は、1964年に現会長の金子梅吉氏が創業。1998年からは娘さんの池野谷ひろみ氏が代表取締役をつとめ、女性ならではの感性や包容力を武器に躍進してきました。

 

現在は、埼玉県内49、東京西部35、神奈川1、群馬5、大阪9、兵庫2の合計101店舗を運営しており、埼玉県以外にもファンを増やし続けています。

 

今回は、「ぎょうざの満州」をケーススタディにして、地域の繁盛店になるためのポイントをみていきましょう。

 

●ロマンがある。

ぎょうざの満州の基本理念は「体に優しい食事を提供する」ことです。地域の人々の健康を考え、毎日食べてもスープを飲み干しても健康なものを提供したいという考えのもと、他店にはない付加価値の高いメニュー開発に取り組んできました。

 

またメニューだけでなく、働く従業員の健康も第一に考えた経営を重視しています。そのため、離職率が低く、夫婦や兄弟、親子3世代で働く従業員もいることが強みです。

 

そして、創業者から続くポリシーが「3割うまい」です。これは、売上の3割は必ず原材料費に充てるという考え方。売上に対し、3割は原材料費、3割は人件費、3割は光熱費、残りの1割を利益目標に。たとえスケールメリットで原材料費が下がっても野菜や肉の質を上げて必ず原材料費を3割にし、美味しいものを提供する姿勢を守り抜いてきたのです。

 

●強い独自商品がある。

同社の売上トップ3は、焼き餃子、チャーハン、ラーメンです。特に焼き餃子は一度食べるとリピートしてしまう看板商品(6個250円税込)として、同社の成長をけん引してきました。

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創業者の金子氏は、餃子を包むことが苦手だったため早々に機械を導入。その結果、一日の生産量が大幅にアップし、安くておいしい餃子を提供することに成功。多くのお客様を創造する原動力になりました。

 

現在は埼玉県の川越工場、坂戸工場、大阪江坂のセントラルキッチンで製造し、自社配送便で各店に届けています。餃子は製造したその日が賞味期限のため、出店場所も工場から1時間以内で配送できるところにこだわってきました。

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作り立ての生餃子を注文を受けてから焼いて提供することで、もちもちした食感が損なわれず、多くの食通を唸らせています。

 

池野谷氏が社長就任後は、工場から車で10分程度の場所でキャベツ畑を自家栽培。夏以外の季節は東京ドーム2個分の広大な自社農場で栽培したとれたてのキャベツを使用することで、餃子の美味しさにより一層磨きをかけてきました。

 

また2018年からは豚肉の脂身を3割減らし、代わりに赤味を3割増やした餡を採用。お客様アンケートからは、『さっぱりしているので、何個でも食べられる』『今まで6個だったのが、12個食べてしまった』という声が聞かれ、さらに多くのリピーターを増やすことにつながりました。

 

その後も健康を軸にして、次々にメニューを進化させることに取り組んでいます。例えば、ラーメンのスープは、油分の多い豚骨や豚足を使うのをやめ、鶏がら、カツオ、野菜を圧力なべで煮込んでつくる方法に改善。チャーハンは、コクを出すために使っていたラードを植物性油に変更、さらにお米には玄米を半分使うことで、香ばしさや味の濃さを出すことに成功。その結果醤油や塩の量を減らすことにもつながりました。また、餃子定食のごはんにも玄米を取り入れることで、健康を気にするお客様から共感を得ています。

 

ぎょうざの満州の美味しさと健康を同時に追求する姿勢は、独自の商品力に磨きをかけてきました。健康志向が高まる中、「おいしい餃子で人々を健康で幸せにする」という理念に共感するお客様は今後も増え続けていくに違いありません。

 

●従業員を愛している。

ぎょうざの満州では、メニューだけでなく、働く従業員の健康も第一に考えた経営に取り組んでいます。セントラルキッチンでは餃子の自動製造機を導入して従業員の重労働を減らし、時間を要するスープもセントラルキッチンでの製造に切り替えることで早朝の仕込みから解放。従業員の心と体の負担を軽くしています。

 

また、営業時間は朝の11時から21時、2130分と他の飲食店よりも夜の営業を短くすることで、18時間勤務、週休2日制を実現しています。

 

夜の営業を短くしている背景には、健康面はもちろん、できるだけ早く帰って家族と過ごす時間を少しでも多くしてあげたいという、女性社長ならではの思いやりの気持ちがあります。

 

システム化に取り組んでいる。

ぎょうざの満州成長の裏には、早くからシステム化に取り組んできた池野谷社長の手腕が隠れています。同社長は、短大を卒業後4年間OLとして食品を扱う商社に勤務したのち、お父さんが経営するぎょうざの満州に入社しました。

 

前職では、システムの運用を支える仕事をしており、入社後はその経験やスキルを活かして、表計算ソフトや経理ソフトを導入。手書きレシピもグラム単位でマニュアル化するなど、一つ一つをシステム化することで生産性を向上させていきます。

 

さらにPOSレジシステムも率先して導入。その日売れた分と過去の傾向から各店舗で翌日に使う分量を割り出して配送することで、食品廃棄率も劇的に改善。今では自動発注システムを導入しています。

 

テークアウトもいち早く実施しており、現在は店頭に大型の冷凍冷蔵庫を設置。スーパーやコンビニのように手軽に買えるようになっています。

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2016年には、各席にタブレット端末を設置。お客様がタッチパネルでメニューを選ぶセミオーダーシステムを取り入れました。今では座席に貼られたQRコードをスマホで読み込むと、画面上でオーダーできるモバイルオーダーシステムを導入した店舗もあります。

 

このコロナ禍の中でも、店員と非接触でオーダーできることやテイクアウトなど、時代の先を読む経営がリスクの軽減につながり、安定した経営を実現

 

ぎょうざの満州は、「おいしい餃子で人々を健康で幸せにする」ことで地域社会に貢献してきました。今後も地域に根差していくことで、多くのお客様から愛される地域一番店としてさらな、さらなる成長を続けていってほしいと思います。