体験消費時代のマーケティングヒント
みなさんこんにちは。和田康彦です。
先日家の近くに駄菓子屋さんがオープンしました。夕方店の前を通ると小学生を中心に嬉しそうに品定めしている光景が昭和の時代とダブってしまいました。
駄菓子屋といえば、私も小さいころお小遣いを握りしめて、毎日のように通っていてことが思い出されます。砂糖にまみれたまあるいカステラを買ったり、くじを引いて賞品をゲットしたり。いま思えば、駄菓子屋は子供にとっての遊び場であり、お小遣いで自分の好きなものをどれだけ買えるかを学べる経済の勉強の場であったり、親や先生以外の人との会話を楽しめる交流の場であったように思います。
▪日本一のだがし売場とは
ところで、岡山駅から車で約40分。岡山県瀬戸内市には年間100万人の子供が訪れるという「日本一のだがし売場」があります。
テニスコート10面、約2500㎡の広大な敷地にある500台分の駐車場も休日には早々に埋まってしまうというから驚きです。
この「日本一のだがし売場」を運営するのは、1952年に創業した菓子の卸売り卸会社 株式会社大町さんです。いまから13年前の2011年、価格競争が激しくなる菓子業界の中で卸業だけでは将来性を見込めないとの思いから、敷地内の倉庫に直営店をオープンさせることにしました。
当初は、「もったいない広場」としてメーカーや問屋の処分品を中心に販売していましたが、平日はお客様もまばらで、もっぱら社長と近所の子供たちの遊び場と化していました。
ただ、子供たちの「あれはないの?」「あのお菓子はどこにいけば売っているの?」といった声に応えていくうちに、品数はどんどん増えて現在は、菓子とおもちゃを合わせて約5000種類の商品が店内を彩るようになりました。
子供たちにもっと喜んでもらいたいとの思いから駄菓子の品揃えを増やしていくと、少し離れた地域からも子供たちが訪れるようになり、年間100万人の子供が集まる「日本一のだがし売場」が誕生したといいます。
100万人もの子供心を惹きつける背景には、単に品揃えが豊富ということだけでなく、子供が笑顔になる工夫を常に積み重ねてきた取り組みがあります。
▪子供目線にこだわった売場づくり
「日本一のだがし売場」では、子供の目線に合わせて陳列台を低くし、子供が選びやすい売場づくりを心がけています。また価格は10円単位ですべて内税方式。10円以外の商品には値札シールを貼って、子供たちがいくら買ったのか計算しやすくしています。支払いは現金のみ、決して安売り競争をしないなど、子供からも信頼を得られる商売を貫いています。
▪ここでしか買えない独自商品の開発でワクワクする売場づくり
株式会社大町には、「本物のおいしさ縁結び業」を目指していきたいというビジョンがあります。日本の心を受け継ぐ中小零細企業や生産者を応援したい。作り手の思いや素材の価値を認めてくれる人々との縁を結び次世代へつなげていきたい。そんな思いから、日本の食文化を継承する中小零細企業の掘り起こしと共存共栄を企業目的の一つに掲げています。
日本一のだがし売場には、数百社から仕入れた菓子やおもちゃが所狭しと並んでいますが、くつしたや文具、エコバッグメーカーと共同で開発した、ここでしか買えないオリジナル商品も発見できます。例えば、地元の酒造会社と開発した酒に合う駄菓子など、宝探しのようにワクワクしながら欲しい商品を見つける楽しみは、子供だけでなく、親世代も満足させることに繋がっています。
▪合言葉は「子供の笑顔と感動を生み出す非効率の追求」
お客様である子供たちを笑顔で喜んでもらうためには、そこで働いている従業員も笑顔で楽しむことが重要です。「日本一のだがし売場」では、スタッフひとり一人が売場の配置や装飾など様々なアイデアを遊び心いっぱいに仕掛けています。決して効率に走るのではなく、あえて非効率と思えることも実践して感動を生み出していく姿が、子供も大人も惹きつけて笑顔を生み出していく背景のあります。
「人のご縁を通して日本の心の原点を求め続けることで、人間としての価値を高め、よりよき家庭、地域、国のために貢献できる企業を目指したい」という企業理念が、駄菓子文化を体験できる仕組みを生み出し、駄菓子の発信拠点となって、年間100万人もの子供を集める「日本一のだがし売場」を成長させています。
子供好きな社長が子供を喜ばせることに全力で取り組む駄菓子屋さん。あなたの会社でも目の前のお客様を喜ばせるために全力で取り組んでいきましょう。