体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは、顧客創造マーケティングの和田康彦です。
先日、インターブランドジャパンは、顧客体験価値(CX:Customer Experience)のランキング™️ 2023を発表しました。
本ランキングは、顧客視点でのすべての体験を通じたブランドの「顧客体験価値(CX)スコア®️」を算定・分析しており、本年度で5回目となります。
商品やサービスの機能や性能などの機能的価値だけでなく、そのブランドや企業に関わるすべての体験を通じて顧客が経験する、喜びや満足感などの情緒的価値まで含めた総合的な価値を数値化しています。
▪顧客体験価値を高めるために重要な5つの要素
同社によると、これまでグローバルで行ってきた「顧客体験価値(CX)」の分析を通じて、顧客体験価値(CX)を高めるには、
① 「Relevance/ 私向けのものだと思える」
⇒商品に限らず、そのブランドのメッセージや企業の姿勢などが自分の考えや価値観に合っているか?
② 「Ease/ 私にとって意味がある」
⇒たくさんの選択肢の中で、自分がそのブランドを選ぶ意味や価値を示してくれているか?
③ Openness/ オープンで、正直である」
⇒きれいごとでなく、顧客と真摯に向き合い、真に信頼できるブランドか?
④ 「Empathy/ 私の立場で考えてくれる」
⇒自分を理解し、共感してくれているか?
⑤ 「Emotional Rewards/ いい気分にさせてくれる」
⇒自分のことを大切に扱い、気持ちよくさせてくれるか?
の5つの情緒的な要素(5 Emotional Cues)を顧客に感じてもらうことが重要だということが明らかになっています。
そこで、「顧客体験価値(CX)ランキンキング™️」では、顧客が求める体験価値の5つの要素を数値化し、顧客視点でのすべての体験を通じたブランドの現在を可視化することを目的として毎年発表されています。
▪ランキングトップ顧客体験評価 1位:帝国ホテル CXスコア6.53 (前回比:+0.15)
帝国ホテルは、昨年の14位から1位へと大きく躍進。「いい気分にさせてくれる」「私にとって意味がある」の評価が大きく向上しています。
回答者の声からは、“落ち着いていて配慮がいいのと、特に食事の面において損をすることはない。食事の中でもかなり質のいい食事が用意されていて、女性同士で来たりするのも人気になっている”(20代女性、現ユーザー)
や
“帝国ホテルに両親を招待したときに、スイーツを部屋まで運んでくれたし、テーブルセッティングもしてくれた。私のもてなしたい気持ちによりそってくれた” (30代女性、現ユーザー)
など、食事の際のもてなしや目配り・気配りなど、人を通じた「ホスピタリティ」が高く評価されていることがわかります。
帝国ホテルといえば、4年ぶりにインバウンド(訪日外国人)などの旅行宿泊サービスの動きが活発になっており、2023年4~6月の客室稼働率は7割弱にまで回復。コロナ前の8割にまでは届かないものの、戻りつつあります。
中でも注目すべきは、客室単価の上昇です。コロナ前は4万円前後で推移していましたが、ここ最近は5.5~6万円と約5割増となっています。
客室単価の上昇には、長い間の行動制限も解消され、旅行や会食を我慢していた人たちの財布の紐が一気に緩んでいることが背景にあります。
さらに、円安の影響で家族連れの海外旅行客が増え、高単価な部屋を選ぶ人が増えていることも一つの要因です。
また、日本人旅行客は、円安で海外旅行費が高騰しており、非日常の贅沢を国内の高級ホテルで楽しむ人が増加していることも、稼働率や客室単価の上昇に寄与しています。
客数はコロナ前の水準には戻ってはいないものの、付加価値を高めることで顧客単価を上げることに成功。その結果、安定した売上を維持しています。
また、コロナ禍の中でスタートした長期滞在者向けアパートメント事業も、新たな顧客創造に寄与。今後も継続していく予定です。
さらに、コロナ禍で認知が拡大した、ホテルメイド食品を扱う通販事業も、順調に推移。従来顧客だけでなく、若い人などの潜在顧客を生み出すことに成功しています。
一方で、人手不足が最大の課題となっており、サービスの維持していくためには、従業員の処遇改善により士気をあげていくことが欠かせません。
帝国ホテルが今後も顧客創造していくためには、さらにサービスの質を高め、顧客満足度を高めていくことが何より重要になってきます。
どんな商売も事業も、目的は「顧客を創造し続けること」であり、その結果が、売上や利益です。そして、顧客を創造していくのは、従業員に他なりません。
従業員一人ひとりが、もてる力を存分に発揮できる企業風土づくりこそが、顧客を生み出してく源泉になります。
今回ご紹介した顧客体験価値を高めるために重要な5つの要素
①「Relevance/ 私向けのものだと思える」
②「Ease/ 私にとって意味がある」
③Openness/ オープンで、正直である」
④「Empathy/ 私の立場で考えてくれる」
⑤ 「Emotional Rewards/ いい気分にさせてくれる」
も、すべて従業員がお客様とのタッチポイントの中で生み出しているものです。
売上が伸びていない要因は、顧客数の減少、顧客単価の減少、購入頻度の減少のどれかに当てはまります。
あなたの会社でも、改めて顧客に目を向け、顧客創造経営に舵を切っていきましょう。