体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。顧客創造マーケティングの和田康彦です。
2021年4月にアサヒビールから発売された「生ジョッキ缶」、もう何度も飲んだことがあるのではないでしょうか。
私は初めて手の取ったとき、家に居ながら本格的な生ビールを味わうことができる体験に、心から感動したことを覚えています。
「生ジョッキ缶」は、開栓すると泡がシュワっと発生し、飲食店のジョッキで飲む樽生ビールのような味わいが楽しめる商品として発売当初から話題となり、品切れが相次ぎ、供給が追いつかないために一時休売になるなどしていました。
その後供給体制も整い、発売から2年たった今年の6月にはさらにリニューアルして進化させています。
泡をきめ細かくする最適条件に基づき、ビールのろ過条件など、製造工程での精度をより厳しく管理することで、泡の大きさを小さくし、泡密度を増加させているそうです。
また、開栓時に最初に切れ込みが入る箇所の厚さのバラつきを改善することで、開けやすさを向上させています。
▪アサヒビールの最大のこだわりは「鮮度」
アサヒビールといえば「スーパードライ」と、誰もが思い浮かぶほど同社にとっての最大の強みは、「スーパードライ」という日本最大級のブランドを保有していることです。
そして、スーパードライが何年にもわたって顧客から愛されている背景には、さらりとした飲み口、キレ味さえる辛口という味はもとより、鮮度へのこだわりがあります。
ビールは出来立てがいちばん美味しいという信念のもと、製造して一日一秒でも早く出荷することにこだわっていることが、競合との差を生み出し、顧客に支持されているといってよいでしょう。
▪「生ジョッキ缶」誕生の裏にはトップの思想あり
一方で1987年に発売されてから約35年。アサヒビールからはスーパードライを越える、画期的な新商品は生まれてきませんでした。
2018年9月アサヒビール入社し、19年から専務取締役兼専務執行役員 マーケティング本部長。23年4月社長に就任した松山一雄氏は、日経クロストレンドの中で、このように言っています。
「ビール業界や酒類業界は、業界の中のことばかり見ていた節がありました。例えば、競合が何をしたとか、どんな商品を出したといった点です。それに対抗して、自社は何をするかという発想になっていました。ですが、そうした議論の中では、お客さまが抜けているんですよ。やはり、お客さまを中心に置いて、わくわくするような驚きや、感動を提供できる独自価値を追求しなければなりません。」
「見た目の良いパッケージをつくり、商品テストで消費者が納得のいく味にして、価格を他社にそろえ、テレビCMを何GRP(延べ視聴率)放送する、といった具合に前例を踏襲するようなやり方だけでは、お客さまに喜んでもらうのは難しい。」
「私がアサヒビール入社時に、最初の全体朝礼で言ったことと、社長就任で言ったことは、ほぼ一緒です。それは「お客さまにとって世界で一番魅力的で、わくわくするビール会社を目指そう」ということ。目指しているのは単においしいビールを造って提供する会社ではなく、「おいしい、ビールがある、お客さまにとっていい人生をつくる会社」といった具合に、視点を変えて、価値創造をすることを伝えています。それの具体的な答えとして、「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」のような象徴的な商品が出てきます。」
▪独自固有のキラーコンテンツは、お客様の幸せを考えることから生まれる。
松山社長の一言一言は、これからの企業経営にとって参考になることばかりです。
① 業界ばかり見るのではなく、お客さまを中心に置いて、わくわくするような驚きや、感動を提供できる独自価値を追求しなければいけない。
② 前例を踏襲するようなやり方だけでは、お客さまに喜んでもらうのは難しい。
③ 「おいしい、ビールがある、お客さまにとっていい人生をつくる会社」といった具合に、視点を変えて、価値創造をすることが重要。
「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」が生まれた背景には、「おいしいビールを通して、お客さまにとっていい人生をつくりたい」、という松山社長の強い思いがあり、その結果、多くの人が感動した生ジョッキ缶が生まれてきたのだと思います。
そのために松山社長は、組織風土を改革し、前例踏襲型からスーパードライを初めて世に出したときのような、思い切った「攻めるDNA」を根付かせてきました。
トップの強い思いが社員に伝播し、その結果、その想いが商品やサービスという形になり、そしてその商品やサービスをさらに磨き続ける。
顧客への独自固有の価値提供は、トップの熱い思いが出発点になります。
和田マーケティングデザイン研究室では
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