体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。和田康彦です。
創業から140年以上積み重ねてきた老舗「セイコー」は、2022年10月からセイコーホールディングスとして、新たな挑戦に立ち向かっています。
これまでの時計、デバイス、ITサービスという事業の枠を超えて、新たに顧客起点でグループ内の連携を促す3つの戦略ドメインを設置しました。
その一つは、セイコーウォッチなど感性価値を訴求するグループが入る「エモーショナルバリューソリューション」。二つ目は、セイコーインスツルなど部品の金属加工が入る「デバイスソリューション」、そして3つ目がネットワーク系が入る「システムソリューション」です。
▪モノを売る会社から社会課題を解決する会社へ
狙いは、モノを売る会社から、社会課題を解決するソリューションを提供する会社に生まれかわることにあります。そのためには、顧客ニーズは何か、社会の課題をどのように解決していくのかという視点が必要になってきます。
今後は、3つの戦略ドメインが連携をはかることで、お客様や社会課題へ対応するスピードを加速し、セイコーファンを全世界に広げていくことを目指しています。
セイコーといえば、日本の精密技術を形にした高級腕時計が頭に思い浮かびます。
今後の戦略としては、「グランドセイコー」を自分自身(顧客)の分身と思ってもらえるロイヤルカスタマーの育成に注力し、ファンを全世界に広げていくことを柱においています
現在グランドセイコーの購入者の交流会には、海外を含めて約4万人の会員が所属。購入者同士の交流を通じて、信頼を深めてブランディングを醸成しています。
また、東京・銀座にあるセイコーハウス銀座では、グランドセイコーのストーリーをCX(カスタマーエクスペリエンス=顧客体験)を通じて伝えています。
▪技術を感性価値で訴求するグランドセイコー
ところで、ブランドには、技術的、感性的、社会的という3つの価値がありますが、セイコーはグランドセイコーのブランド価値を上げるために、同社にとって最も重要な技術を感性価値で訴求していくことに重点を置いています。
2020年には隈研吾氏が設計した『グランドセイコースタジオ 雫石』を岩手県雫石町に設立。自然との共生をうたった木造の工房内で職人がグランドセイコーをつくっています。こうした思いやものづくりの様子は一般公開し、ブランド価値を体感してもらうことで、グランドセイコーファンを増やしていくことにチャレンジしています。
今後は、「グループ各社がお客様の「サクセス=成功」を提供することに挑戦する」と宣言するセイコーホールディングス。再成長を実現するキーワードは顧客起点に基づいた「顧客中心マーケティング」にありそうです。