体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。和田康彦です。
昨年は円安や、燃料、原材料費の高騰などから値上げを余儀なくされる企業が相次ぎました。今年に入っても値上げラッシュの流れは止まらず、最近ではマクドナルドが再度値上げするニュースに、消費者から落胆の声があがっていました。
▪消費の2極化が進行
ニュースを見ていると、相次ぐ値上げに対して「家計のやりくりが大変!」という声を多く聞きますが、実際の消費者行動はどのように変化しているのでしょうか。
ここに興味深いデータがあります。
東京大学エコノミックコンサルティングと日本経済新聞社は、生鮮品を除く加工食品14万弱の商品を対象に、2022年10月の売上データと前年同月のデータを比較する共同調査を行いました。
その結果、55%は平均より安い商品の売上が伸びている一方で、残りの45%は高価格帯の商品へシフトしていることが明らかになりました。
▪顧客にとっての価値を高めることが重要
2022年9月~11月期の小売や外食など消費系企業87社の決算を見ても、機能性を高めて値ごろ感を打ち出した独自商品を通じて客数を維持した企業が増益を達成しています。
増益社数の割合は23%で、値上げラッシュで節約志向がますます高まる消費環境の中でも健闘している企業があることがわかります。
ところでこのような増益企業を分析してみると、そこに共通するのは、単に値上げするだけでなく、顧客にとっての価値を高めていることが見えてきました。
例えば、郊外を中心に衣料品チェーンストアを全国展開するしまむらでは、値上げする中でも客足が伸びたのは、高価格帯の「クロッシープレミアム」というプライベートブランド。洗濯機で洗えるダウンジャケットや保温性に優れた肌着など、機能性の良さを体感できる商品が好調です。
セブン&アイ-ホールディングスでも、高価格帯プライベートブランドの「セブンプレミアム」約1200アイテムを順次刷新。その結果、「金のハンバーグ」など高単価品が好調に推移しています。
また、同社ではハワイなど特定地域に特化したフェアの開催で話題性を高めて集客するなどの販促策も奏功し、既存店への客足も戻ってきました。
このように、消費者が財布の紐を固く閉じている時こそ、お客様の気持ちをワクワクさせるニュースを打ち出すことが大切です。
▪健康志向は顧客の変わらない欲求
牛丼の吉野家ホールディングスでは、値上げすると同時に、野菜が豊富な「牛すき丼」など、女性の健康志向を捉えた商品で新しい顧客を呼び込んでいます。
食用油でも。定番品が売上を落とす中、コレステロールゼロを謳う商品や健康機能を売りにする付加価値の高い商品は売上を伸ばしています。
▪本格的な外食を家庭で手軽に
さらに、「スターバックス コーヒー ハウスブレンド」など、人気ブランドの名前がついている商品も堅調です。消費者は、他のレギュラーコーヒーと比較すると割高ですが、お店で飲むことを考えると決して高くないと判断しているようです。
冷凍食品では、「コチュジャンの風味豊かな具だくさんビビンバ」や「五穀ごはんと野菜を食べるカレー」などニップンの「いまどきごはんシリーズ」が好調です。
このように、外食の本格的な味を家庭で気軽に楽しめることに消費者は価値を認めているのだと思います。
2022年12月の東京都区部の物価上昇率は前年比4%増と、実質賃金が減少する中で顧客の節約志向の流れは一層強まっています。
そのような中で、個人消費は2極化し、お金をかけていいものと節約したいものの選別がより厳しくなってきています。
顧客が求めているものは、価格以上の価値を認めるものです。
企業が何の努力や工夫をせずに値上げするだけでは当然顧客は離れていきます。今こそ大切なことは、値上げ分以上に顧客が感じる価値を高めていくことです。
顧客がお金を払っているのは商品ではなく、使用価値やベネフィットです。そのためには、あなたの会社の商品やサービスを使うことで体験できる機能的な価値と情緒的な価値に磨きをかけていきましょう。