体験消費時代のマーケティングヒント

2022-10-01 12:42:00
顧客中心マーケティングの視点。顧客を巻き込んで一緒に楽しむ「記念日」作戦。

みなさんこんにちは。和田康彦です。

顧客中心マーケティングを推進してファンを増やしていくためには、顧客をうまく巻き込んで、一緒に楽しんだり、ものづくりをしたり、地域貢献したりしていくことが有効です。

 

▪記念日をきっかけに、顧客と一緒の共創しよう。

自治体や企業が独自に記念日をつくって、地域住民を巻き込んだイベントを開催。地域の食文化や特産品を身近に感じてもらう取り組みなどはその代表例です。

 

ちなみに今日101日は「日本酒の日」なんですね。私が住んでいる神戸市のお隣の西宮市では今日と明日の二日間、「西宮酒ぐらルネサンスと食フェア」が開かれます。

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同フェアは、平成5年に発生した阪神・淡路大震災からの復興を願い、地元西宮への感謝と西宮の日本酒をアピールするため、平成7年に「西宮酒ぐらルネサンス」として始まり、平成19年の第11回からは「食」にまつわる出店を充実させて「西宮酒ぐらルネサンスと食フェア」となりました。

 

コロナ禍で中止が続き3年ぶりの開催となったこのイベント、西宮のおいしいお酒を味わい名物も食べられるとあって多くの日本酒ファンを楽しませそうです。101日は日本酒の日を記念して全国一斉乾杯も行われます。

 

ところで、一般社団法人・日本記念日協会(長野県)によると、20127月末に745件だった国内の記念日登録数は227月末に2479件と大幅に増加

 

同協会は記念日関連の情報窓口として1991年に発足。希望者の申請を受けて記念日を審査・認定していますが、年間登録数は11年に100件を超え、近年は200件前後あるそうです。

 

▪地方でも広がる記念日登録。

地方では宮崎県発祥で94年に登録された「橋の日」84日)が先駆けの一つだそうで、記念日に郷土の橋で行う清掃活動などは全都道府県に広がりました。

 

都道府県別では東京都(1327件)が突出し、大阪府(183件)、神奈川県(98件)が続きます。企業数が多い都市部が上位を占めますが、10件以上ある自治体は12年の10都府県から30都道府県に増えました。

例えば、「飯田焼肉の日」1129日)もその一つです。飯田市などが行った15年の調査では、人口1万人当たりの焼き肉店舗数が全国の市で最多だったことが判明。この調査を機に官民で盛り上げ気運が高まりました。

焼き肉と音楽ライブを融合したイベントなどを通じて地元住民の関心を高め、みそ製造販売のマルマン(同市)と飯田下伊那食肉組合が20年に共同で登録しました。

21年の記念日では長さ11.29メートルの鉄板で焼き肉を楽しむイベントを企画し、「最も長い鉄板」としてギネス世界記録に認定。今年は飯田の焼き肉文化や歴史を発信する常設の「信州飯田焼肉研究所」を開設する計画です。

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また、JA宮崎経済連では2014年から525日を「みやざきマンゴーの日」に制定。その前後に県内外で即売会やイベントを仕掛けるなどの取り組みを行った結果、52週の「母の日」が終わった後から中元シーズンまでの消費落ち込み期の需要を底上げすることに成功。売上増加に寄与しています。

こんにゃく芋の生産が盛んな群馬県では、「さしみこんにゃくの日」71日)や「こんにゃく麺の日」520日)など、こんにゃく関連の記念日を登録。消費が低迷する市場の活性化を狙いイベントを毎年企画して定着を図っています。

 

記念日を登録したこんにゃく製造大手のヨコオデイリーフーズでは、消費者にこんにゃく製品を身近に感じてもらい、食べるきっかけになってほしい、との願いから「みそおでんの日」105日)がある10月に、田楽みそおでんの食べ比べなどを実施。集客の目玉企画として人気を集めています。

 

他にも埼玉県深谷市では20年、特産品の深谷ねぎをPRするため、勤労感謝の日の1123日を「ねぎらいの日」として登録。当日は大切な人に花束ならぬ「ねぎ束」を贈り、ねぎらいの気持ちを伝える活動を展開しています。

 

食品関連以外にも記念日の登録は広がっています。

 

横浜市が本社のコーエーテクモホールディングスでは、同社の歴史シミュレーションゲーム「信長の野望」の第1作発売日の330日を「信長の野望の日」として発売30周年にあたる13年に制定。毎年キャンペーンを実施してファンと共に盛り上げています。

 

老朽化した下水道管の更新工事を手掛ける東亜グラウト工業(東京)では、118日を「水循環に思いをはせる日」に制定。数字の「8」を下水道管に見立て、21年に登録しました。インフラの重要性を市民に再認識してもらうとともに、安全・安心な水循環システムの構築への決意を新たにするという思いを込めています。

 

社会に浸透しているバレンタインデーやハロウィーンは1000億円規模の市場があるとされますが、小粒でも定着すればファンを増やすことや地域経済への効果も見込めます。

また、自社の商品やサービスの記念日ができることで、従業員のモチベーションが高まったり、愛社精神が育まれたりする効果が期待できます。

さらに記念日の制定が企業や業界のイメージ向上につながれば、人材確保や採用にプラスの影響をもたらす可能性もありそうです。

記念日に参加することでしか得られない体験価値を提供し続けることで、消費者=顧客はSNS(交流サイト)を通した情報発信にも参加してくれます。また、参加者からの意見を聞く場として活用したり、商品を一緒につくっていくなど、記念日は顧客を巻き込む一つの手段として有効です。

記念日は、かつては知名度の高い大企業の登録がほとんどでしたが、近年は中小企業による登録も目立っています。あなたの会社や地域でも、ユニークな記念日を企画し登録してみてはいかがでしょうか。