体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。和田康彦です。
▪松下幸之助の「事業は人なり」
パナソニックを創業し、一代で世界的企業へと成長させた松下幸之助氏は、「事業は人なり」が口癖だったといいます。
どんなに素晴らしい技術やノウハウがあっても、どんなに優れた機械や設備があっても、どんなに立派な組織があっても、人が育っていなければ事業は発展しないのだと。この「人づくり大事」の考え方は、松下幸之助の経営に一貫しているものでした。
米調査会社ギャラップが2017年に実施した調査によると、日本は士気が高く熱意あふれる(従業員エンゲージメントの強い)社員の割合は6%で、調査対象139カ国中132位でした。2022年の同調査でも、その割合は5%で、調査対象129カ国中128位と低い結果に終わっています。
一方、GAFAM(IT企業の雄である5社(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)の頭文字を取った呼び名)を生んだ米国の、士気が高く熱意がある従業員エンゲージメントの強い社員の割合は34%と世界の中で突出しています。
この調査結果からも、デジタル時代の競争力の源泉は、工場や店舗といった有形資産ではなく、人が持つアイデアやノウハウ、ブランドなどの人的資産=無形資産に移ってきていることが分かります。
人的資本とは、人間が持つ知識やスキルなどを資本とみなしたものであり、教育や訓練などで蓄積され、生産性の向上やイノベーションの創出につながっていくものです。
つまり、経済のデジタル化やグローバル化の進展で、優秀な人材を確保したり育成できるかが、企業の競争力を大きく左右するようになってきているのです。
中小企業にとっても、これまでのように人をコストとみて人件費を削るのではなく、人に投資して付加価値を伸ばしていくという考え方抜きでは今後成長していくことはできません。
▪従業員エンゲージメントを向上させるメリット?
それでは、従業員エンゲージメントを高めることで、企業にとってどのような利点があるのでしょうか。
まず、士気が高く熱意がある従業員が増えることで、アイデアや創意工夫が生まれやすくなり職場の活性化につながります。その結果、業績への好影響も期待できるでしょう。
次に、従業員エンゲージメントが高いということは、従業員が自分の仕事に対して意義を感じ、こだわりを発揮しやすい状態です。当然ながら、従業員の取り組み方が前向きになれば、提供する商品やサービスの品質も高まりやすくなり、結果として顧客の満足度につながり、企業としての信頼度もより向上させることが可能です。
そして、業員エンゲージメントが高まることで、従業員は自組織への不満が少なくなり、帰属意識や愛社精神が高まります。その結果離職率の低減も期待できます。
▪従業員エンゲージメントを高めるためにやるべきこととは?
従業員エンゲージメントを高めるためには、具体的にどのような取り組みをすればよいのでしょうか。
まず、企業理念・ビジョンを浸透させることが重要です。「顧客や社会に提供できる価値は何か」を明らかにすることで、従業員からの賛同が集めやすくなります。経営者が熱い想いを持って、地道に浸透させていく活動が大切になります。
次に、納得性の高い人事評価制度に改善していくことが有効です。人は正当な評価を得られない職場では、組織に貢献しようというモチベーションが沸きません。評価への納得度を上げることで、従業員の仕事への積極性や意欲を高めることが可能です。
そして、上司が部下の意見をできる限り承認したり、信頼して権限を委譲したりするなど、承認・称賛の文化をつくることも従業員エンゲージメントを高めるポイントです。例えば、社長賞やMVPをはじめ定期的に表彰の場を設けることで、従業員の意欲も高めやすくなります。
さらに、社内コミュニケーションを活発化させ、従業員同士の関係性を深めることも大切です。例えば、定期的なランチミーティングや従業員同士が褒め言葉を紙に書いて贈り合う「褒めカード」などが有効です。
また最近では、従業員の成長を支援できるようなキャリア開発の施策を取り入れる会社も増えてきました。例えば、マイクロソフトでは、従業員18万人の内、月平均10万人が同社の教育プログラムにアクセスしているそうです。中小企業では、従業員にオンラインセミナーを受講させたり、積極的に展示会等に参加させることも効果的です。
その他、従業員が健康的に働けるような環境や制度の見直し、上司のフィードバック能力を高めることも大切です。
顧客中心マーケティングを実践していくのは、まさに従業員一人ひとりです。従業員のやりがいや幸福度を高めていく経営こそが、顧客中心マーケティングの要となります。あなたの会社でも、従業員を大切な資本と考え、従業員の幸福を実現する経営に舵を切っていきましょう。