体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは、和田康彦です。
1970年2月に日本最初のハンバーガーチェーンとして誕生した「ドムドムハンバーガー」。最盛期には400店舗展開していたものの、その後マクドナルドやモスバーガーといった競合企業に客を奪われ、現在は29店舗まで縮小。倒産の危機に直面してきました。
しかし、独自に開発した「丸ごと!!カニバーガー」や「丸ごと!!カマンベールバーガー」など「丸ごと!!シリーズ」がSNSなどで注目を集め、2021年3月期に続き2022年3月期も2期連続で黒字化を果たしました。
▪ハンバーガー業界は2極化
ハンバーガー業界は、マクドナルド、ロッテリアなどの低価格チェーンとシェイクシャック、ウマミバーガーなどの高価格チェーンの2極化が進んでいます。
ドムドムハンバーガーは、低価格帯チェーンのひとつですが、低価格市場は、マクドナルド、モスバーガー、ケンタッキーフライドチキンの大手3社が市場の8割を占めています。
▪おいしさはお客様との最低限のお約束。その上をいくものをつくる。
ドムドムハンバーガー復活の立役者藤崎忍さんは、入社から9年で社長に抜擢された異色の人物です。夫の急死後、39歳で初めて働き、SHIBUYA109のブティックの店長、居酒屋オーナーを経て2018年にドムドムフードサービスの社長に就任しました。
社長就任後にまず藤崎さんが取り組んだことは、「おいしいものをつくること」と「クレームをなくすこと」。
「おいしさはお客様との最低限のお約束。その上をいくものをつくる。」を信条に、原価率や人件費比率、QSCといった当たり前のことをやりつつ、独自性のある商品を模索してきました。
▪「丸ごと!!シリーズ」が話題に。
独自性を模索するため、ほぼ毎月ひとつは新商品を発売することに注力。そこから生まれたのが、素材を丸ごと挟んだ「丸ごと!!シリーズ」です。
その中のひとつ、2020年9月に復活販売し、2021年1月から期間限定で再販している「丸ごと!!カニバーガー」(単品990円)は、殻の柔らかい大きめのソフトシェルクラブを丸ごと挟み込んだカニバーガーです。
▪あえて非効率な道を選ぶ。
通常は店舗に殻のついた状態の材料が届き、それをただ揚げるだけですが、カニバーガーはおいしさを追求するために、あえてリスクがあり非効率なオペレーションを敢行しました。
店舗に冷凍のカニを送り、流氷解凍するところからスタート。手足がもげないように優しく衣をつけて揚げていきます。
このような手間をかけた調理法が、単品価格990円(税込)という価格を超えた上質な価値を実現。インスタ映えする見た目のインパクトの強さと相まって、SNS上で話題になり、ドムドムハンバーガー復活の牽引役になりました。
▪独自性追求の挑戦は続く。
2022年7月現在も、「ゴーヤチャンプルーバーガー」や「はみ出る!アジフライバーガー」など、独自性追求の挑戦は続いています。
今は、どこに行ってもおいしいものが食べられる時代。お客様もおいしいものには慣れています。だからこそ、さらにその上をいく必要があります。そして、見た目がインスタ映えするインパクトの強さも同時に求められています。
その店やブランドでしか提供できない独自の価値に磨きをかけることが、企業が成長していくための原理原則です。