体験消費時代のマーケティングヒント

みなさまこんにちは。和田康彦です。
東京の松屋銀座では、化粧品の2022年 5 月の売上が前年比 150%とようやく需要が戻りつつあります。
行動制限の解除によって、人と会う機会が増え、「少しおしゃれをして出かけよう」、「久々に会う人との会食でマスクを外すから口紅をきちんと塗ろう」という女性が増え、メイクアップする気持ちが高まっているようです。
とはいえ、「長い間使っていなかった化粧品の劣化がが気になる。トレンドカラーが変わって、今持っているものでは気分が上がらない。とはいえ、捨てるのはもったいないし・・・・・」と思っている女性も多くいるのではないでしょうか。
そこで松屋銀座では、2022年6月30日まで、メイクアイテムの買い替え需要を促すキャンペーンを実施しています。
コロナ禍のマスク生活で暫く使っておらず、今の気分ではないカラーや劣化が気になる化粧品を回収し、
回収した化粧品は、「COSME no IPPO」による、カラーコスメをクレヨンへアップサイクルするプロジェクトに活用するというものです。
▪「捨てると損をするようでもったいない」という女性心理
多く女性は、クローゼットの中の洋服がいっぱいでも、捨てると何か損をするような気がして、着なくなった服でもなかなか捨てられないものです。
化粧品に関しても同じような気持ちを持っている女性はたくさんいると思います。「まだ、少し残っているので捨てるのはもったいない。まだ使えそうなので手元に置いておこう・・・・」
そんな、「損失を回避したい」という気持ちが、女性の買いたいと思う気持ちにブレーキをかけているのです。
例えば、同じ1万円でも、1万円をもらった喜びより、1万円を失った苦痛や不満足の方を、人間は大きく感じてしまいます。
そこで人間は、損失を回避しようと考えて行動するようになるのです。行動経済学では、このような行動を「損失回避性」と呼んでいます。
特に買い物においては、女性は「買い物で失敗したくない」という心理が大きく働いています。ですから、少し遠くても1円でも安いスーパーヘ足を伸ばしてしまうのですね。
松屋銀座の今回のキャンペーンは、「化粧品を買い替えたいけれど、捨てるのはもったいないし・・・」と、買い替えをためらっている女性に対し、「あなたが不要になった化粧品は、アップサイクルして社会のためにも役立ちますよ。」と、SDGsもほのめかして背中を後押しする内容になっています。
先行き不透明で不確実な時代には、女性は今持っているものを失いたくない、損をしたくないという損失回避の心理がより大きくなっています。
モノが溢れ、慌ててモノを買う必要ななくなった今こそ売ることばかり考えるのではなく、どうすれば女性客が買いたくなるのか、というマーケティングの発想が求められています。