体験消費時代のマーケティングヒント

2022-05-02 17:26:00

みなさんこんにちは、マーケティングコンサルタントの和田康彦です。

 

私が提唱する女性客に好きになってもらうマーケティングとは、あなたの会社の一番の魅力でお客様を引き寄せ、離さない、お客様とつながり続ける仕組みづくりです。 

 

今回は、地域に密着した「ありえないサービス」で、お客様から愛されている「でんかのヤマグチ」さんからLTV(ライフタイムバリュー)向上のヒントを学びたいと思います。

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▪御用聞きからスタートした「でんかのヤマグチ」

東京オリンピックの翌年、19655月に東京町田市で創業したでんかのヤマグチは、今年創業57年を迎える老舗電器販売店です。 

 

社長の山口勉氏は、中学卒業後、松下電器産業へ就職。カーラジオやステレオを修理する部門で技術を磨き23歳で起業しました。最初は近くのお客様に喜んでもらえればいいと思い。店舗を持たずにライトバン1台で家電の修理を請け負う「修理訪問」からスタート。そのうち少しずつ注文もいただけるようになったとのことです。

 

その後同店は、パナソニックの系列店として、高齢者世帯に注力した家電製品の販売・アフターサービスを展開。「お客様にとことん尽くす。かゆくなってからではなく、かゆくなる前に駆けつけるサービス」をモットーに、徹底した地域密着戦略と独自の顧客管理手法により、同地区にこぞって進出する大手家電量販店との価格競争に巻き込まれることなく安定した経営を続けています。

 

同社のホームページを開くと「ヤマグチはトンデ行きます」「さらに、地域に愛される店舗へ」「ヤマグチは空気のような存在でいいんです」「電器屋なのに野菜が買える?」といったユニークなメッセージが飛び込んできます。

 

▪現在も外回りサービスが売上の屋台骨

量販店との厳しいコスト競争により生き残れない街の電器店が続出する中、同社が成長を続けている秘訣は、外販が売上の7割を占めるという徹底した外回りサービスがまず挙げられます。

 

電話があれば「電球1個」でも飛んで行き、取り付けはもちろんのこと、あわせて電球まわりの掃除まで行う徹底ぶりで、サービスマンがそのまま食事をご馳走されることもあるほどお客様と密着しています。

 

その他具体的なサービスを上げると、

・録画予約もします。高齢者には難しい録画予約やリモコン操作、今日のドラマの番組予約もトンデ行きます!

・冷蔵庫が壊れたら、修理の前に、クーラーボックスに氷を入れて、エアコンが壊れたら扇風機を持ってトンデ行きます!

・頼まれれば、営業車で駅まで送ります!

・頼まれれば、簡単な水回りの修理もやります!

・頼まれれば、部屋の中の模様替えのタンスの移動もお手伝いします!

・頼まれれば、「ペットの餌やり」、「庭の水まき」、「留守の見回り」もやります!

 

又、両替OK、駐車場の開放、トイレの開放、店内電話利用OK、救急箱、地域の詳細地図観覧サービス、AED設置、店内コーヒーサービス、雨の日の傘貸し、雨の日のささやか券発行(100円の金券)など、店舗でも至れり尽くせりのサービスを行う等、お客様にお役に立てることは全て行うといった徹底ぶりです。

 

さらに、毎月激安野菜を販売したり、、毎週末には誰もが参加できるイベントを開催したりと、「お客様を徹底的に喜ばせる」ことで、常連客と長く深くお付き合いしていくことにとことん取り組んでいます。

 

▪常連客との長く深いつながりづくりがLTV向上の鍵

また同社は蓄積してきた顧客リストから、LTVの高いお客様を抽出。営業マンが手厚く丁寧に対応できる仕組みを構築して、量販店と比べて「かなり高い売値であっても買ってもらう」経営手法に磨きをかけ、常連客の更なるLTVの向上に取り組んでいます。

 

ある男性客が、一人暮らしの母親に30万台のテレビを購入した際、値引きを要求するのではなく、「母のことをよろしくお願いします」といったというエピソードが物語っているように、お客様は購入時点での価格の高低ではなく、生涯価値を想定に入れた買い物を行っていることが分かります。

 

また、「遠くの息子よりも近くのヤマグチ」と地域住民が合言葉にするように、お客様は商品の購入をきっかけに長期的なつながりを求めてヤマグチで買っているともいえます。

 

そして、新たな成長戦略として、オール電化を中心としたリフォーム関連事業に力をいれ始めています。この事業は顧客の住宅タイプによってその対応が全く異なってくることから、店舗に足を運んでもらうことによって商売が成り立つ大手量販店よりも、外回り営業を得意とし地域密着で顧客の顔を見ながら商売をしている同社こそが強みを発揮できる分野です。お客様一人ひとりの顔はもちろん、一軒一軒の間取りやレイアウトまで熟知している同社だからこそ、きめ細かいサービスが可能になります。

 

このような取組みの背景には、「ヤマグチは、地域に密着した取り組みを行い、家電販売の枠にとらわれず、住まいの事はなんでも対応させて頂きます。これからも、さらに地域の皆様に安心出来る店づくりを目指します。地域の皆様おひとりお一人の役に立つサービスへ、少しでも近づくように、これからも進化しつづけます。」という経営理念があります。

 

今回は、地域住民の生活に役立つためには常識ではありえないサービスを展開することで、お客様とつながり続ける仕組みを構築。家電量販店やネット通販等競争が激化する中でも安定した成長を続ける「でんかのヤマグチ」を事例にLTVを高める経営手法を学んできました。

 

重要なポイントとしては、

    お客様を待つのではなく、お客様のところに積極的に出向いていく

    地域に密着して、お客様を喜ばせることに徹底的に取り組む

    LTVの高い常連客との絆を強固にしてさらにLTVを高めていく

    従来の常識を超えたサービスでお客様を引き寄せ、離さない

の4点が挙げられます。

 

さあ、あなたの会社でも他社にはない一番の魅力に磨きをかけ、お客様を引き寄せ、決して離さないファンづくりのマーケティングを実践して、LTVを高めていきましょう。