体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは、和田康彦です。
企業の成長に直結するイノベーションには、専門分野で力を発揮する人材や研究開発が欠かせません。特に、データをより高度に分析し、サービス品質を飛躍的に高めるためには、人工知能(AI)などの駆使が必要になります。
しかしながら、雇用の流動性の低い日本では、デジタルの知見を持った人材はIT(情報通信)企業などに偏っており、先端ITに精通した人材は争奪戦となっているのが現状です。
2021年の情報通信白書でも、国内企業の53%がデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める課題として「人材不足」を挙げています。
そんな中、ユニクロを展開するファーストリテイリング社は、中途採用の年収を2022年から最大10億円に引き上げることを発表しました。
柳井正会長兼社長の年収4億円を大きく上回り、日本企業の中途採用の平均年収のなんと200倍。日本の最高経営責任者(CEO)の報酬総額の平均が約1億2000万円ですから、こちらと比べても8倍強となります。
衣料品業界はいま、米アマゾン・ドット・コムなどIT大手との競争が激しくなっています。ファーストリテイリング社は世界からデジタル人材を集めて衣料品の製造・販売が中心の収益構造を変えて、新たな事業モデルを構築したい考えです。
特に、デジタル化や電子商取引(EC)、サプライチェーンに精通した人材を求めていて、柳井氏は「自分より優秀で天才的な人が対象。いい人材がいれば100人でも200人でも採用したい」と言っています。
このところ、米グーグルもネット通販大手と組んでEC分野を強化するなど、異業種がアパレルの産業構造を変えようとしています。経営環境が変わる中、ファーストリテイリング社の将来の競合は「ZARA」や「H&M」などのアパレルではなく、GAFA(グーグル、米アップル、米旧フェイスブック(現メタ)、アマゾン)になっていくと予測しているようです。
新型コロナウィルス下で社会のデジタルトランスフォーメーションが進む中、ファーストリテイリング社にとっても、経営資源の最重要項目である「人」への投資は待ったなしの状況です。
世界中から新たな価値を生んだり、事業を白紙から考えられる人材をいかに確保するか、ファーストリテイリング社の未来は、優秀な人材をいかに確保するかにかかっているといえます。
企業は、ヒト、モノ、カネ、情報、時間、知的財産という6つの経営資源をフル活用することで、自社の強み(優位性)を確立し、市場での強み(優位性)を高めていくことが重要です。
6つの経営資源の中でも、何よりも大切なのが「人」です。デジタル化がどんなに進んでも、すべてのプロジェクトは人が動かしています。人の力により仕事が生まれ、人の力により仕事が収められていきます。
人的資源の不足が懸念される日本企業にとって、人材の確保は大きな課題となっています。中小企業にとっても優秀な人材の確保と育成は大きな課題です。
しかしながら、ファーストリテイリング社のように年収10億円なんてどう考えても絵空事です。では、どうすれば優秀な人材が定着して力を発揮してくれるのでしょうか。
その答えはずばり「共感」です。社長の熱い思いや会社がなぜ存在するのかというパーパスを明確にし、社員といつも共有して、同じ目的地に向かって進む。社員全員が社長の熱い経営情熱に共感する経営こそが、中小企業が優秀な人材を育てて、会社を成長に導く大きなエネルギーになります。