体験消費時代のマーケティングヒント
みなさんこんにちは。和田康彦です。
讃岐うどんチェーン「丸亀製麺」などを展開するトリドールホールディングスの業績が、コロナ禍の中でも好調です。
同社の2021年9月中間決算(国際会計基準)は、丸亀製麺の「うどん弁当」の販売増などを受け、売上高が20、7%増の766億円、純損益は54億円の黒字(前年同期は20億円の赤字)となりました。今年4月発売のうどん弁当はコロナ禍の持ち帰りニーズに合い、約半年間で1300万食を超える好調な売れ行きになっています。
コロナ禍で時短営業を余儀なくされた飲食店の多くが、活路を見いだしたテイクアウト。中でも、丸亀製麺は「うどん弁当」の導入で頭一つ抜けるヒットを飛ばしました。
2021年4月に発売した「丸亀うどん弁当」は、6月までだけで約31億円を売り上げ、半年で1300万食を突破。5月からは持ち帰りの専用窓口も設け、国内の丸亀製麺800店舗強のうち約100店舗に設置しました。その結果、店内での飲食需要の落ち込みを補い、4~9月期の丸亀製麺の既存店売上高は18%増えました。
人気の理由は、手軽さと安さ。お店と全く同じ打ちたて、ゆでたての冷たいぶっかけうどんが、別に入っているだしをかけるだけで自宅で手軽に食べられ、揚げたてのてんぷらが付いて1食390円(税込み)からと、店舗で同じ組み合わせを頼むよりも安いことがテイクアウト需要を掘り起こしました。
「コンビニ弁当はもう飽きた」「デリバリーは便利だが、出費がかさむ」――。長引く巣ごもり生活で、これまでの中食に不満を募らせていた消費者の心をつかんだ結果と言えます。モバイルオーダーの導入や、注文・受け取り専用窓口の設置など、感染リスクを抑える工夫で安心感を演出したことも奏功しました。2021年7~8月には、「丸亀こどもうどん弁当」を販売。ファミリー需要をさらに多く取り込んでいます。
好調の理由をトリドールHD社長 粟田貴也氏は2021年11月25日付日本経済新聞で以下のように語っています。
「飲食店へ足を運ぶ動機づけには、商品にストーリーが必要だ。『丸亀製麺』では店内での手作りや出来たてにこだわり、店舗を製麺所に見立て来店客の前で披露することに意味があると考えている。持ち帰り弁当も単なる物販では選ばれない。消費者の感情に訴えかける接点が重要だ。マネジメント部分はデジタルで限りなく省力化し、接客に人を充てる。需要の掘り起こしには地域に密着した人材登用を通じた『現地化』が大事で、今後は地域を知るパートらを店長にしていきたい」
粟田社長が語っているように、丸亀製麺が好調なのは、消費者の感情、つまり五感に訴求し、お客さんの心を動かすことに成功した結果と言えます。
店舗を製麺所に見立て来店客の前で手作りや出来立てを披露することで、丸亀製麺のこだわりや価値がお客さんに伝わり、その結果心が動いて、購入に結びつく。お客さんに買うという行動を起こしてもらうためには、お客さんの心を動かさなければいけません。