体験消費時代のマーケティングヒント

2021-09-21 16:39:00

みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

私は仕事柄ビジネス本を購入することが多いのですが、これまではほとんどアマゾンで購入していました。ただ最近は妻の勧めもあって、気になる本があるとまずメルカリをチェックします。先日も「Fashion Business 創造する未来」という本をメルカリで購入したのですが、税込2200円の書籍を850円(送料込み)で手に入れることができました。しかも購入した翌日には手元に届き、ほとんど新品に近い状態だったので大いに満足しています。

 月間利用者1900万人超のメルカリ 

一日の流通総額が20億円を超えるメルカリ。2013年7月にサービスを開始して8年たった現在は、月間利用者1954万人、年間累計の国内流通総額が7854億円の生活インフラに成長しました。(2021年6月期)。とはいえ、2013年7月2日のサービス開始日はわずか16品目で2万円の取扱だったそうです。

 フリマアプリ市場規模は急成長

 経済産業省の調べによると、家庭に眠る不用品の価値は約7.6兆円と推定されています。また、2018年度のフリマアプリの市場規模は6,392億円(前年4,835億円)で、前年比32.2%増に。今後も「不要になったモノは、必要と思っている人に売る」という消費スタイルはますます浸透していくと思われます。

 

新たな価値を生み出すメルカリ

 メルカリのミッションは、『新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る』です。元々、公園などを舞台に個人が売り手となるフリーマーケットは環境への配慮や消費税の増税を追い風に、各地で盛況を呈していました。そこに目をつけたのがメルカリをはじめとしたIT企業です。 

メルカリは2013年7月リリースと若干後発ながら、順調にユーザーを増やしていきました。商品撮影から出品、買い手とのやり取りまでスマートフォンひとつで完結する気軽さと、支払いは事務局を経由する安心感が受けています。 

スマートフォンの登場により、個人間取引は世界的潮流になることを予測したメルカリ。生活費負担が増える中、お店を介するよりお得な個人取引に注目が集まるのは自然の流れになることをいち早く察知しました。さらに「もったいない文化」が根づく日本人のDNAが成長を後押ししたといえます。

  

ユーザービリティを徹底追及

 開発に当たって重要視したのがスムーズな操作性。サクサクと商品を閲覧でき、オークションにように終了時間がないことから、欲しいと思えばすぐ買える。オフラインでいう、ウインドウショッピングと衝動買いの楽しさをスマートフォンで実現しました。また、商品へのコメント機能により、「もう少し安くなりませんか?」と現実のフリーマーケットのような売り手と買い手の交流を自然発生させることにも成功しました。 

買い手が増えることで「こんな物でも売れるんだ!」と売り手もどんどん増加。誰もが手軽な操作で簡単に出品できることにも徹底的にこだわりました。また、発送に関しても、専用BOXの開発やQRコードで簡単に宛名印刷ができる仕組みづくりなど、ユーザービリティにこだわっています。 

 

安心を保証する評価システム

 ただ、C2C(Consumer to Consumer)の個人間取引を利用する際は、お互いに相手のことを信用できるかという不安要素が付きまといます。そんな不安を解消したのが「評価システム」です。評価システムは、取引が成立し、契約が履行された時点でサービスを利用した側と提供した側がそれぞれ相手を評価する仕組みで、利用者の不安解消に役立っています。 

 

メルカリが提供する新たな価値とは

 メルカリは、どんぐりの実やトイレットペーパーやラップの芯、使いかけの限定コスメといった、普通なら捨ててしまうようなものも売買されており、「新たな価値」を生み出しています。不用品がお金に変わるという経済的価値だけでなく、「こんなモノでも誰かが認めてくれて買ってくれた!」という驚きや承認欲求の充足といった情緒的な価値も生み出しています。さらに、捨てるをなくすことで地球環境保全に貢献するという社会的な価値も提供しています。 

2018年にメルカリが利用者1367人に聞いた調査でも、メルカリを利用する理由で最も多かったのが、「賢くお小遣い稼ぎできる」34.2%、次いで「捨てようと思っていたものが売れて、得した気持ちになる」33.2%、「掘り出し物を探すのが楽しい」26.0%、「捨てるという行為がなくなる」25.0%、「あらゆるモノに価値がつく」22.0%という結果で、メルカリが利用者に「新たな価値」を提供していることがわかります。

 メルカリが提供する機能的価値、情緒的価値、社会的価値

 ではここで、メルカリ成功の背景にある3つの提供価値をまとめておきましょう。

 1.機能的価値

 スマホ上で不用品がお金に変わる画期的な仕組み、使い勝手の良さ、ユーザービリティ(出品のしやすさ、発送のしやすさ、購入のしやすさ 安心して取引できる評価システムなど)

 

 2.情緒的価値

 アプリ上での売り手と買い手の交流、コミュニケーションや対話の楽しさ、出品したものが購入者に喜んでもらえて自分の承認欲求が満たされる喜び、欲しかったものが安く買えて得した気持ちになるうれしさ

 

3.社会的価値

 捨てるを減らすことで持続可能な社会の実現に貢献できていること、ひとつのものを大切に世に残していきたいという「サスティナブル=持続可能」な欲求を満たしていること

 

 このように、単に使い勝手が良いフリマアプリという機能的価値はもちろん、売り手と買い手の交流やつながり、売買を通しての承認欲求の充足や得した気分といった情緒的価値、そして、持続社会な社会の実現に貢献しているという社会的価値の創出が、メルカリの成長を支えてきたといえます。また、売り手と買い手と社会のwin win winの関係を生み出した仕組みともいえるのではないでしょうか。

 

 シェアリングエコノミーが消費を変える

 今やモノや場所、時間、経験といった、かつては誰かの所有物だったものを誰かと分かち合うことによって、経済的にも精神的にも豊かになる仕組みが、あちこちで誕生しています。

 つまり、「シェア」といいう考え方そのものが、消費スタイルの変化だけでなく、経済の在り方、社会の在り方、そして私たちの生き方そのもを変えようとしているのです。

  これまでの何かを所有してそれに縛られるよりも、状況に応じて「利用する」ほうが柔軟で合理的という考え方は、ますます広まっていくことが予測されます。