体験消費時代のマーケティングヒント

2021-09-21 16:28:00

みなさんこんにちは、和田康彦です。

日本経済新聞社が実施した2020年度のコンビニエンスストア調査(国内コンビニの14社を対象に4~6月に実施し、2期比較できる8社からの回答結果)では、セブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの大手3社の合計売上高は5.8%減の10兆3591億円と大幅な減収になりました。新型コロナウイルスの感染拡大で、オフィス街に立地する店舗は在宅勤務が広がった影響を受け、観光地の店舗は旅行客の減少が売上高に響いた結果です。

一方で、2019年2月時点で40店舗だった大手3社の時短店舗数は、2021年2月には2200店舗と大幅に増加。

公取委の20年9月の調査では、対象とした約1万2千店の約7割が時短営業への切り替えや実験を希望するなど、オーナーからの関心は引き続き高く、今後も時短営業店が増える可能性があります。

背景には、人出不足や人件費上昇による経営環境の悪化があり、各社はセルフレジの導入やキャッシュレス決済の対応など、省力化と新型コロナウイルス感染拡大対策としての非対面に向けた取り組みを加速しています。

 

 

◆ファミリーマート、2024年末までに無人コンビニ店舗を1000店舗出店

2018年1月、米アマゾン・ドット・コムがシアトルにオープンしたレジなしコンビニエンスストア「アマゾン・ゴー」のニュースは日本でも大きな話題となったのでまだ記憶に新しいかと思います。

「アマゾン・ゴー」は、店内のカメラやセンサーで来店客と商品の動きを把握し、決済はスマホに事前登録したアプリで済ませる仕組み。現在ではシアトル、サンフランシスコ、ニューヨーク、シカゴに合計26店舗を展開しています。

米国や中国で先行した無人店舗、ようやく国内でも本格的な導入が始まります。ファミリーマートは無人コンビニ店舗を2024年末までに約1000店出店する計画を発表しました。

ファミリーマートは国内に約1万6000店舗を展開し、年間200~500店を出店。今後は、無人店舗を出店の軸にしていく計画です。人口減少で人出不足が深刻化する中、これまで採算がとりづらかった地域への出店も可能になり、買い物難民解消の手段としても期待が高まっています。

利用者は専用ゲートから無人店舗に入り、手に取った商品は天井などに設置したAIカメラや棚の重量センサーで店側のシステムが把握する仕組みです。利用者は決済端末の前に立つと商品名と金額がモニター表示され、電子マネーや現金で支払います。

 

通常店舗同様に約3000品目の扱いが可能であることが強みで、出店コストは従来型の約2割高ですが、荷受けや商品補充以外の人出は不要になり人件費削減に期待がかかります。

 

◆各社で進む無人店の取り組み

ファミリーマート以外の小売店でも、省力化や非対面の実現に向けた無人店舗化の取り組みが加速しています。

ローソンでは、客が自分のスマートフォンで商品のバーコードを読み込むスマホレジを全1万4000店で導入。イオンは、客がスマートフォンでバーコードを読み取り決済する仕組みを傘下のスーパーで21年以降1000店に拡大する計画です。また、ミニストップでも完全キャッシュレスの無人販売所を21年度中に1000カ所に展開。セブン-イレブン・ジャパンでもNECと組み、決済に顔認証技術を使う無人店舗の実験を進めています。

 

 

◆デジタル技術による小売業の効率化は不可欠

2020年6月の厚生労働省の規制緩和により、無人店の衛生管理は担当者による巡回で代替可能に。これにより、人口知能やキャッシュレス決済を活用し、レジ作業を行う従業員のいない無人店舗の展開が日本でも可能になりました。

日本の労働生産性は主要7ヵ国(G7)中最低。経済協力開発機構(OECD)に加盟する37ヵ国中21位と低い水準にとどまっています。特に小売業は労働集約型の産業であり、人出不足が根強く、省人化で生産性を向上させ事業運営を効率化する取り組みは、今後生き残っていく上でも不可欠です。

9月には日本にもようやくデジタル庁が発足しました。今後は官学民が連携してデジタル技術で日本の労働生産性を高めていく取り組みを本格化させなければなりません。