体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。和田康彦です。
このところ、幸せ(ウェルビーイング)を経営理念やビジョンに掲げる企業が増えてきました。
社員が幸せであれば創造性や生産性も高いという研究結果も増えてきており、「幸福経営」を目指す企業が増えているのです。
ところであなたは、「VUCA(ブーカ)」という言葉を聞いたことがありますか。
「VUCA(ブーカ)」とは、ビジネス環境や市場、組織、個人などあらゆるものを取り巻く環境が変化し、将来の予測が困難になっている状況を意味する造語のことです。
「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」という、4つの単語の頭文字をとって「VUCA」と名付けられました。
VUCAはもともと、冷戦終了後の複雑化した国際情勢を示す用語として、1990年代ごろから米軍で使われ始めた軍事用語だったんですが、2010年代になるとビジネスシーンでも使われるようになりました。
このような先の見通せないVUCAの時代、いま経営者の間で、古くて新しい価値観が合言葉になっています。それが冒頭でもご紹介した「幸せ(幸福、ウェルビーイング)」なんです。
例えば積水ハウスのグローバルビジョンは「『わが家』を世界一幸せな場所にする」です。同社はお客様に幸せを提供するならまずは従業員が幸せにならないといけない、という考え方のもと、グループ従業員2万7千人に対して幸せの診断を実施して、社員の幸福度を高めることに取り組んでいます。
また、ロート製薬では「Connect for well-being」をビジョンに掲げ、社会のウェルビーイングに貢献することを目指しています。単に健康だけでなく、幸せのために社員が主体的に行動し、そこにやりがいや働きがいを見つけ、社内外の仲間とつながりながら、イノベーションなどを生み出すことが目的です。
さらに世界を代表するトヨタ自動車でも、昨年新しい経営理念として「幸せを量産する」というミッションが発表されています。
●幸せの循環を生み出して、女性客を笑顔にしよう!
このように注目が集まっている「幸福経営」は、まず従業員が幸せになることで、顧客のためにイキイキと仕事ができるようになり、イノベーションが生まれやすくなる。その結果、企業収益に跳ね返り、株主や社会を幸せにし、従業員自身の生活の充実や待遇のアップにもつながる。という考え方です。
つまり、幸福の循環を生み出すことが、すべてのステークホルダーを幸せにするということに結びつくわけです。
日本の幸福学の第一人者、慶応義塾大学大学院の前野隆司教授は、①「やってみよう(自己実現と成長)」②「ありがとう(つながりと感謝)」③「なんとかなる(前向きと楽観)」④「ありのままに(独立と自分らしさ)」の幸せの4つの因子を高めることで幸福になれるという研究成果を発表され、企業の幸福経営を広める活動にも取り組んでいます。
前野先生によると、幸福度の高い社員は創造性が3倍、生産性が1.3倍高いというエビデンスも積みあがっているとのことで、今後はますます幸福経営にシフトする企業が増えていきそうです。
ただ、すぐに成果が出るというものではありませんから、長期的な戦略として幸福経営に取り組んでいくことが重要です。
女性を笑顔にするマーケティング研究会でも、幸福経営に取り組む経営者を増やして、日本中の女性を笑顔にしていきたいと考えています。