体験消費時代のマーケティングヒント

2021-04-22 11:51:00
ファンづくりのマーケティング「人に伝えたくなる感動を提供しよう!」

みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

京都の西院というところに、1日100食限定の国産牛肉ステーキ専門店「佰食屋(ひゃくしょくや)」というお店があります。

 

創業は2012年、当時専門学校の広報の仕事をしていた中村朱美さんが、夫と二人で始めたお店です。

 

ユニークなのは、1日100食限定で、ランチ営業のみというビジネスモデルです。

 

専門学校に勤めていたころの中村さんは、やりがいはあったものの、毎日夜遅くまでの残業が続き、夫との会話の時間もなかなか持てなかったといいます。

 

そこで、夫婦一緒の時間を持つことを目的に、料理好きの夫と一緒に「佰食屋」を開業しました。収入も生活が潤うくらいの水準であればいい。そこで思いついたのが、仕事も家事も両立するための「100食限定」というコンセプトでした。

 

ただ開業当初は、1日20食くらいしか売れない日が続きましたが、その後口コミやネットニュースで評判が広がり、開店3ヵ月後にはテレビの街ブラ系番組で取り上げられ、一気に人気のお店になりました。

 

その後、インバウンド需要も見込んだお店を次々に出店し4店舗を構えるようになりましたが、昨年のコロナ禍の元、4月には繁華街にあった2店舗をやむなく閉鎖。

 

現在は、西院の「佰食屋(ひゃくしょくや)」と四条大宮にある「佰食屋1/2」の2店舗を経営していますが、コロナ禍の中でも地元のお客様に支持されて、2店舗を閉鎖した翌月から黒字を達成。20208月には過去最高利益率にまで回復させたといいます。

 

コスパが高くて、美味しい料理を提供すれば、お客様が宣伝してくれる

午前11時の開店にもかかわらず、整理券を配り始める朝930分には行列ができ、昼前には整理券の配布も完了してしまうというくらい人気の「佰食屋」。2012年から9年経った今も、常連客の心をつかんで離さない理由はなんなんでしょう。

 

「佰食屋」は、1100食、メニューも3種類に絞り込むことによって、様々なメリットを生み出しています。

 

例えば、仕込みにかける時間をみると、1日に提供する食数やメニューを限定することで、11品の仕込みに十分な時間をかけられるようになります。「佰食屋」では、肉の下処理に4時間、ステーキ丼のワインソースはゼロからの手作りと、美味しさの提供のために時間をかけてこだわりを追求しています。

 

また、100食限定にすることで、仕入れが安定し、フードロスもほぼゼロと無駄のない経営を実現できるようになりました。

 

さらに、従業員の残業もゼロになり、モチベーションが高まることで高い生産性も生み出しています。

 

集客についても「SNS時代は個人の口コミが有効。コスパが高く美味しい料理を提供すれば、お客はかならずついてくる」という信念のもと、広告宣伝には一切お金をかけていません。

 

このように究極のシンプル経営を追求することで無駄を省いてコストを圧縮、通常の飲食店の平均原価率30%を大きく上回る50%の原価率で料理を提供することを実現したのです。

 

この結果、同価格の競合店より高品質の国産牛を提供することが可能となり、「コスパが高くて美味しいお店」という評判が一気に広がりました。

 

1100食限定」と聞くと、普通は誰もがその希少価値から「ぜひ一度行ってみたい」という気持ちになります。ただ、そのモチベーションも一度体験すればすぐに薄れていきます。

 

しかしながら、「佰食屋」の場合は、一度食べると、そのコスパの高さと美味しさから、また行きたくなってしまう。そして、そのコスパの良さと感動の美味しさを誰かに伝えたくて、多くの人がSNSに投稿してくれるという好循環を生み出しています。

 

このように、一度体験してくれたお客様が勝手にSNSや口コミで宣伝してくれて、お客様がお客様を連れてきてくれること、そしてリピートして何度も訪れてくれる常連さんが「佰食屋」の大きな強みです。

 

SNSの時代、「誰かに伝えたくなる感動を提供する」ことが、ファンづくりマーケティングの肝となります。

 

最後に、「佰食屋」さんのホームページから、

★私たちのこだわりと美味しさの秘密★を紹介させていただきます。

 

1.

お肉に合う国産100%の安心・安全なお米を選んでいます。

お米本来の甘みを引き出すため、毎日ガス釜で炊き上げています。

さらに、牛肉に合うよう一工夫。お肉とのコラボレーションに、きっと笑顔になっていただけます。

 

2.牛肉

高級ブランド黒毛和牛を父にもつ上質な国産牛で、味は美味しいのに 価格を抑えることができました。

しかもヘルシーで牛肉本来の美味しさが味わえる部位を使用。黒毛和 牛に負けない濃厚な味をお楽しみください。

 

3.サラダ

ミニサラダはドレッシングに一工夫。野菜を美味しく食べられるよう、 じゃことナッツでコクを出しています。お肉を最後まで味わっていただけるよう、控えめに調味しています。

 

4.味噌汁

京都亀岡の老舗味噌店が伝統的な製法で作った、無添加の美味しい 赤みそを使い、上品に仕上げました。

天然素材でしっかりダシをとり、不必要な調味料は加えていません。

自然なお味噌の香りが広がります。