体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。和田康彦です。
前回は、なぜ今ファンづくりマーケティングが大切なのかということを学んできました。
新規顧客を獲得することも大切ですが、実際にはコアなファンが何度も商品を購入したりサービスを利用することが企業の売り上げを支えてくれています。私もこれまでの様々な経験を通して、上位20%のお客さんが売り上げの80%を占めるという「パレートの法則」がほとんどの企業や商品に当てはまることを実感してきました。
売り上げが縮小している状況においては、まず上位20%のコアなお客さんをしっかり固めた上で、新規のお客さんにアプローチをすることが大切です。既存のお客さんを維持するコストは、新規顧客を獲得するコストに比べて1/5程度で済むとも言われています。
さらに、コアなファンとより長くおつきあいしていくことで、そのまま売り上げのアップにつながります。すでにファンになってくれているお客さんとの関係性を深めることで、1つ買ってくれていた人が2つ、3つと購入量を増やしてくれたり、より単価の高いものを買ってくれたりして、全体的な売り上げのアップにつながります。
今回は、ファンづくりがあなたの会社にもたらすメリットについてもう少し詳しく学んでいきましょう。ファンづくりとは、まさに既存のお客さんをよりつながりの度合いの高いファンになってもらう取り組みです。
ファンづくりのメリット①リピート購入してくれる
ファンは、あなたの会社やブランド、商品を「好き」になって応援してくれるので、長く商品やお店を使い続けてくれます。
つまり、商品やサービスをリピートして利用する人が増えてくれれば、あなたの会社は、売上の予測が立ちやすく、事業の安定性が増します。また、前回の講義でご説明したように、新規顧客への販売コストは、既存顧客への販売コストより5倍多くかかると言われているので、リピート購入を増やすことは、新規の営業や新商品開発にかかるコストの削減にもつながります。
ファンづくりのメリット②口コミで商品の良さを広めてくれる
最近は新規顧客を獲得するための広告が本当に効かなくなったといわれています。その要因としては現代の人々はSNS等の台頭で、かつてない量の情報に囲まれているからということが言えます。
これだけ情報量が多いと、広告の露出を増やしても砂の一粒になるだけで、基本的に届かないし見てくれません。たまたま見てくれたとしても覚えてもらえず流れてしまう。広告に効果が無いわけではありませんが、昔と比べて打率は非常に低くなっています。。
では、人々はどんな情報なら信頼するのでしょうか。
あなた自身はどうですか。私の場合は、家族や友人から聞いたことが一番信頼できる情報源になっています。
実際にPR会社が日本で調査した結果を見ても、人々が情報源として最も信頼するのは「家族や友人」でした。つまり生活レベルや趣味が近い「価値観が近い人」が愛用する製品やサービスに人々は影響を受けやすいわけです。
このように私たち人間には、同じ属性や価値観を持つ人とつながろうとする傾向や、自分が良いと強く感じたものについて「紹介したい、誰かに話したい」という心理があるわけです。つまりファンがいれば、その人たちが自分に近い家族や友人に熱意を持って広めてくれ、新しいお客さんを増やしてくれるといううれしい結果に結びつくのです。
ファンづくりのメリット③購入単価の向上が期待できる
特定の商品のファンになると、同じブランドの商品や、関連するほかの商品の情報にも関心を持ちやすくなります。それまで手にすることがなかった高単価な商品に注目したり、購入したりする確率が高まるかもしれません。
ファンづくりのメリット④スペック競争、価格競争から脱却できる
その商品を愛好し、応援しているファンは、スペックや価格の多少の変動には左右されにくい傾向があります。そのため、根強いファン層を持つ商品やブランドは、競合との細かいスペック競争やシビアな価格競争に巻き込まれるリスクが比較的低いのです。
このように、あなたの会社がお客さんとの間に良い関係を築いていくことで、深いつながりが生まれ、お客さんのあなたの会社やブランド、商品に対するロイヤリティ、つまり、共感や愛着、信頼といった感情はどんどん高まっていきます。
その結果として、顧客単価の向上や取引期間の長期化が見込めるようになるわけです。
このところ大手メーカーでもファンづくりマーケティングに積極的に取り組んでいます。例えばソニーでは、デジタル一眼レフカメラの購入直後からメールなどでコミュニケーションをスタートし、「αcafe」や体験会など、ユーザー限定のコミュニティを活用してファンを形成しています。
その結果、ある顧客の売り上げをデジタル一眼レフカメラ購入時点で1とした場合、体験会などに招待して絆を深めていくと、売り上げは実に5.34倍に達したそうです。
私が以前勤めていた千趣会でも、ベルメゾンデッセというコミュニティサイトを運営して、会員とのコミュニケーションを深めていました。分析してみると。積極的に参加してくれる会員の年間購入金額は平均よりも高いことがわかりました。
ファンづくりの最大のメリットはLTV(ライフタイムバリュー)の向上にあり
ところであなた、LTV(Life Time Value)という言葉を聞いたことがありますか。LTV(Life Time Value)とは日本語に訳すと「顧客生涯価値」のことなんですが、一人のお客さんがあなたの会社と取引を開始してから終了するまで間に、あなたの会社にどれだけの利益をもたらしてくれるのかという指標です。
つまり、あなたの会社が一人のお客さん、あるいは1社のお客さんから得られる価値の合計を示す指標なんですね。
ファンづくりのマーケティング以前のマーケティングでは、新規顧客をどんどん増やして売り上げを拡大させていくやり方が主流でした。
しかしながら、前回もお伝えしたように、人口減少や高齢化、単身世帯の増加といった社会の変化に加えて、暮らしの成熟化によって消費者はモノを買わなくなり、また情報洪水の中で何を買っていいのかわからなくなってきています。つまり、これからの時代は、新規顧客を増やしていくことがどんどん難しくなっていくわけです。
また、新規顧客を獲得するには、既存顧客を維持する5倍のコストがかかるという1:5の法則や顧客離れを5%改善できれば最低でも25%の利益向上が見込めるという5:25の法則についてもお話しさせていただきました。
そうすると、新規顧客を獲得するよりも、今いるお客さんを大切にして、一生付き合ってもらうことがコストも時間もかからず、本当に重要になってくるわけです。
まさに、LTV(Life Time Value)という指標は、これからの時代の経営の重要な指標であり、LTVの向上は、まさにファンづくりのマーケティングを通してもたらされるのです。
ではここで、LTVの算出方法についてみていきましょう。
LTV(顧客生涯価値)は、(購入単価-費用)×購入頻度×継続利用期間で算出することができます。
例えば、あなたのお店がお好み焼き屋さんだったと仮定します。お客さんのAさんは、毎回ビールとモダン焼きを注文してくれ、1回あたり2000円使ってくれます。あなたのお店の経費率がほぼ50%だとしたら、このAさんは毎回1000円の利益をあなたのお店にもたらしてくれることになります。
そしてAさんが年間10回来てくれて、3年間通い続けてくれたとしたら、AさんのLTVは(2000円-1000円)×10回×3年となり、3万円の利益をあなたのお店にもたらしくれることになります。この3万円こそがAさんがもたらしてくれたライフタイムバリューなのです。
次に経営的視点でLTVをみていきましょう。
経営的なLTVは、「(①顧客数×②平均顧客単価×③平均年間利用回数-④費用)×⑤平均継続利用期間」で算出されます。
つまり、あなたの会社がLTVを向上させていこうとしたら、①顧客数を増やす②購買単価を上げる③年間利用回数を増やす④費用を減らす⑤継続利用期間を伸ばすという5つの取り組みが重要になってくるわけです。
では、ファンづくりのマーケティングがなぜLTVを向上させることに直結するのか、順番に見ていきましょう。
① 顧客数を増やす
顧客数を増やしていくためには、既存客を大切にして流出しないようにつなぎとめることが重要です。ファンづくりのマーケティングは、まさに流出を食い止めてあなたの会社やブランド、商品を好きになってもらうためのマーケティングです。そして、ファンになってもらうことで、そのファンは口コミや紹介によって次々に新規客を生み出してくれるわけです。顧客数を増やしていくためにファンづくりマーケティングがとても有効であることが理解できたと思います。
②顧客単価を上げる
顧客単価を上げるためには、ほかの商品も併せて買ってもらう「クロスセル」とより高額なタイプの商品を購入してもらう「アップセル」を促進する方法があります。ファンづくりマーケテイングで、お客さんとの深い絆が築かれると、お客さんはあなたの会社やブランド、商品に対する信頼度が高まります。その結果、購入点数の増加やよりグレードの高い商品への移行も期待できるのです。
③年間利用回数を増やす
以前、3回来てくれて初めてお馴染みさんという話をしました。ファンづくりマーケティングはまさにこのおなじみさんを維持し増やしていく日々の活動です。適切なタイミングでのメルマガ配信やDM送付、ツイッターやインスタグラムなどのSNSでのつながり、おなじみさん向けのお得なキャンペーン
など。お客さんが知らないうちに去っていく流出率を食い止めて、おなじみさんを増やしていくことで、平均的な年間利用回数は自然と増えていくことになります。
④費用を減らす
新規客を獲得するためには既存顧客を維持する5倍のコストがかかるということも以前にお話ししました。つまり、ファンづくりマーケティングで顧客の流出を少なくすることができれば、おのずとコストを下げることに直結するわけです。またファンが新たなお客さんを連れてきてくれるので新規客獲得コストも削減することができます。
⑤継続利用期間を伸ばす
ファンづくりのマーケティングの目的は、まさに一人のお客さんと長く付き合うことです。私が以前勤めていた千趣会のベルメゾンでも、継続して利用してくれている会員のことを継続会員と呼んでいました。この継続会員を維持し増やしていくことこそがまさにマーケティングの肝といえます。継続会員は新規会員に比べても1回あたりの購入単価が高く、結果として年間購入金額も新規客の1.5倍くらいありました。ファンづくりマーケティングに取り組んで、継続して利用していただけるファンを増やすことがLTVを向上させる重要なポイントになります。
以上、ファンづくりのマーケティングがいかにLTV(Life Time Value)を向上させていくために有効であるかということが理解できたと思います。
最近では、LTVを向上させるための取り組みとしてCRM(Customer Relationship Management)顧客関係管理に取り組む企業も増えています。
CRMは ファンづくりのためのデジタル的手法といえます。顧客の属性や購買履歴などの情報をデジタルで管理することで、一人一人のお客さんにタイムリーかつ適切なアプローチを仕掛けることで、自社に対してのロイヤリティを高める方法です。
特にECの世界では、新しい顧客獲得は年々難しくなっており、一度買ってくれたお客さんをリピータにしていくことが生き残りの生命線になっています。このため、顧客属性や購買履歴、サイトの閲覧履歴などの情報を一元管理し、一人一人の顧客に対してのパーソナルなアプローチをするためのCRMツールを導入する会社も増えています。
いずれにせよ、商品力強化や顧客サービスの向上に腰を据えて取り組み、顧客との長期的なつながりを構築し、あなたの会社やブランド、商品に対する共感、愛着、信頼を醸成していくことが儲かるための必須条件といえるのです。
さぁ、あなたの会社やお店やブランドもファンづくりのマーケティングで儲かる仕組みをつくっていきましょう。
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