体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。和田康彦です。
これまでの回で、一度利用したり、買っていただいたお客様を流出させずに、リピータになってもらうことが、儲けていくためにいかに大切なことであるかをわかっていただけたと思います。ここからは、もう少し詳しく、今なぜファンづくりマーケティングが必要になってきているのかという背景についてみていくことにします。
私が、ファンづくりマーケティングがこれからの時代に必然になると考えているのは、まず、ファンは売り上げの大半を支えてくれる大黒柱だからです。次に、新規顧客を増やすことが年々難しくなってきているからです。そして3つ目が、ファンが新たなお客さんを連れてきてくれるから。そして4つ目が、新型コロナでファン大切さが浮き彫りになってきたからです。
①ファンは売り上げの大半を支えてくれる大黒柱だから
私が以前勤めていた千趣会のベルメゾンカタログでは、3割くらいの優良顧客と呼んでいたお客さんが売り上げの7割ほどを生み出してくれていました。
この3割の優良顧客つまりベルメゾンのファンのお客さんは、1年間に買ってくれる回数も1回あたりの購入金額も他のお客さんに比べて多いのが特徴です。つまりファンは売り上げを支えてくれる大黒柱であり、ファンを大切にしてファンであり続けてもらうことこそが収益の安定につながっていくわけです。ファンを増やして維持していくことこそが儲けのしくみづくりといえるわけです。
●パレートの法則にあてはめて分析してみよう
ところでみなさんは、「パレートの法則」とか「20:80の法則」と呼ばれている法則をご存じでしょうか。
パレートの法則は、イタリアの経済学者であるヴィルフレド・パレートが発見し提唱した言葉で、現在では「世の中のあらゆる事象においてそれを構成する “2割の要素” が事象の8割の成果を生み出している」という考え方として認識されています。
このパレートの法則によると、ビジネスの現場では、「全顧客の上位20%が売り上げの80%を生み出している」といったように使われています。それぞれのお店や会社によってもこの割合は異なると思いますが、先ほども言ったように私が勤めていた千趣会のベルメゾンでは、約3割の優良顧客が約7割の売り上げを支えてくれていました。
みなさんもよくご存じのカゴメの代表的な商品、カゴメトマトジュースでは、上位2.5%のコア・ファンが全売り上げの30~40%を占めているそうです。たった2.5%で全売り上げの30~40%もあるって、本当に驚きですね。一日に220円以上、年間にして8万円以上カゴメ商品を購入するコアファン層がカゴメの売り上げを支えているわけです。
ところが、このコアなファン層が少しづつ離れていっていることに気づいたカゴメは、大きな危機感を持ち、そのコアなファンとのつながりをより強くするために「&カゴメ」というコアファン限定のコミュニティサイトをつくりました。このコミュニティサイトは、カゴメのことが大好きで実際に日々購入してくれているファンが集まる場所をつくることを目指しました。つまりコアなファンと濃密に付き合うことによって、彼らの気持ちが離れるのを防ぎ、収益を安定させようと取り組んでいるわけです。
そういえば、私も以前健康診断でコレステロール値が高いといわれ、毎朝コンビニで「ヘルシオ緑茶」を毎朝2本買って通勤していました。1本150円くらいでしたから2本で300円。ウィークデーはほぼ毎日買っていましたから、300円×20日で毎月6000円、12か月で年間約72000円も花王のヘルシア緑茶に投資していたわけです。きっと花王さんにとっては優良顧客だったんでしょうが、購入場所はコンビニだったので、花王さんには私の情報は全く届いていないわけです。これももったいない話ですね。
ここまで説明してきたパレートの法則ですが、少数の顧客が売上の大半を支えているという意味においてほとんどの商品ジャンルにあてはまります。あなたの会社や商品はどうでしょうか。ぜひ、分析してみてください。
●知っておきたい、1:5の法則/5:25の法則
次に1:5の法則や5:25の法則って聞いたことがあるでしょうか。ともに出所が明確でない法則なんですが1:5の法則は、新規顧客に販売するコストは既存顧客に販売するコストの5倍かかるという法則で、
5:25の法則は、顧客離れを5%改善すれば、利益が最低でも25%改善されるという法則です。
パレートの法則は上得意客やファンが売り上げを支えてくれることを私たちに教えてくれ、1:5、5:25の法則は、一人ひとりのお試し客を大切にして、長くおつきあいしていくことこそが儲かる仕組みづくりの核心であることを教えてくれています。
②新規顧客を増やすことが年々難しくなってきているから
ファンづくりマーケティングがますます大切になってきている2つ目の理由が、新規顧客を増やすことが年々難しくなってきていることがあげられます。
日本企業は、経済が伸び商品が売れていた高度経済成長時代の名残もあって、今でも「新規顧客の獲得」に主眼をおいている企業が多いといえます。またテレビCMやキャンペーンによって大量に売れた時代の成功体験を信じている経営者や役員、古参社員がいまだに多いのも現実です。
しかしながら、社会や消費者を取り巻く環境は日々大きく変化しており、新規客を獲得することはどんどん難しくなっているのです。
では、具体的に今起こっている社会や消費者を取り巻く環境変化についてみていきましょう。
●新規顧客を増やすことが難しい背景①日本の人口はどんどん減ってる
あなたもすでにご存じだと思いますが、日本の少子化は年々深刻化していて、計算上は2008年をピークに毎年100万人もの人口が減っているといわれています。これは100万都市と言われる千葉市や仙台市が毎年一つずつなくなっていくペースなんですね。
厚生労働省の人口動態統計速報によると、外国人を含む2020年の出生数は過去最少の87万2600人でした。前年より2万5900人、率にして2.9%の落ち込みとなっています。
出生数が100万人を下回ったのは2016年。それからわずか4年でここまで減ったのは、出産適齢の女性が年々減っている要因が大きいのですが、そこに今回のコロナ禍が重なり、減少ペースがさらに早くなってきています。国立社会保障・人口問題研究所の中位推計によれば、日本の人口は2053年には1億人の大台を割り込みその後も減少の一途を辿る見通しです。
このように、基本的に若い人口が増えないのですから、買ってくれる人数を全体的に増やすとか新規顧客を増やすのはどんどん難しくなっていきます。これまでのように新規客を増やすことに主眼をおくのではなく、今買ってくれている顧客を大事にして、そのお客さんが離れないようにすることがこれからの経営の目標であり、収益安定のためにも重要になってきたわけです。
●新規顧客を増やすことが難しい背景②高齢者がどんどん増えている
人生100年時代と言われています。2020年には女性の半数が50歳を越え2024年には全国民の3人に1人が65歳以上、2030年になると団塊世代の高齢化で東京郊外にもゴーストタウンが続出するといわれています。高齢者は消費を控える傾向にあり、日本の消費市場は縮小化をたどるばかりです。
総務省がまとめた2020年9月15日時点の人口推計によると65歳以上の高齢者人口は前年比30万人増の3617万人。総人口に占める割合は0.3ポイント上昇の28.7%でともに過去最多を更新しました。
また「団塊の世代」と呼ばれる1947~49年生まれを含む70歳以上の人口は78万人増の2791万人となり、後期高齢者医療制度の対象となる75歳以上人口は24万人増の1871万人に上っています。
日本の総人口は前年に比べて29万人減の1億2586万人となる一方、高齢者人口はどんどん増え続けているわけです。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、高齢者の割合は今後も上昇が続く見込みで、第2次ベビーブーム世代(1971~74年生まれ)が65歳以上になる2040年には35.3%になる見込みです。
あなたの周りの高齢者を思い出してください。年齢を重ねると、社会の先行きへの不安や自身の健康への不安、そして老老介護などの出費を考え、お金を貯めこむようになり消費を控え始めます。50代60代の高齢者予備軍も同様です。親の病気や介護、老人ホームなどへの出費、そして自分の年金問題などに備えて、財布のひもを固く締め始めています。このように高齢者が急増する日本社会では、新規顧客を獲得することが年々難しくなり、今買ってくれているお客さんを大切にして長く付き合っていくことが重要になってくるわけです。
●新規顧客を増やすことが難しい背景③未婚者が増えて、家族や世帯需要が減っている
さらに未婚者が急増していることにも目を向けなければいけません。2035年には全人口の48%に当たる、男女合わせて4800万人を未婚者が占めるといわれています。
私たちはこれまで、結婚して新しい生活を始めることで、家具や家電、マイホームやマイカーといった高額なモノにどんどん消費してきました。そして妊娠、子供が生まれると、今度は子供服やベビーカー、おむつやおもちゃなど子供を育てるために必要な消費が生まれてきます。その後、子供の成長に伴って、習い事や教育、通信機器といった新たな需要を生み出してきたわけです。
ところが、未婚者が増えることで結婚や子供の誕生によって生まれる家族需要や世帯需要は年々減少していくことにつながります。
国立社会保障・人口問題研究所が公表した直近の将来推計によれば、2025年の単身世帯(1人暮らし)は、2015年より8.4%増えて1996万世帯になるとみられています。総人口に占める1人暮らしの割合は16%となり、2015年の「7人に1人が1人暮らし(14%)」という状況が、「6人に1人強が1人暮らし」に変わります。
このように、人口急減、超高齢化社会、未婚者の急増といった社会環境の変化により、日本国内の消費市場は年々縮小していくことが予測され、それに伴って新規顧客の獲得もどんどん難しくなっていくことが推測されるのです。つまり、今買ってくれていて、支持してくれているお客さんを生涯大切にしていくことこそが、生き残りのカギになっていくわけです。
●新規顧客を増やすことが難しい背景④モノが溢れ、買いたいものがない成熟社会だから
1980年代に入って日本は成熟市場に入ったといわれています。成熟市場とは、ほとんどの世代で、ほぼモノをそろえた時代のことを言い、多くの商品が高い普及度を示している市場の状態のことです。
ファッションではタンスがいっぱいといわれており、今や断捨離がキーワードになる時代です。また家の中を見渡しても、ほとんどの家には必要な家電製品や家具が揃っており、新規に購入する商品は少なく、買い替えや買い増し需要が中心になってきています。
モノが溢れて、買いたいものがない時代へ。新規客の獲得はますます難しくなり、一人のお客さんを長く付き合っていくことが重要になるのは、当然に流れとなります。
●新規顧客を増やすことが難しい背景⑤情報が溢れ、伝えたいことも伝わらないから
スマートフォンの登場で、私たちを取り囲む情報量は格段に増えて、今や情報洪水の中で生きているようなものです。企業は、商品情報をいくら発信しても消費者には届かず、テレビ番組や映画、音楽でも、どんなに苦労して作ったコンテンツでもほとんどがヒットしてくれない時代になりました。
このような情報過多の時代は、消費者に伝えたいことを伝えることがますます難しくなり、新規客を獲得することは至難の業です。これからは、一度お付き合いしたお客さんを大切にして長く関係を築いていくことが、繁盛のカギになるのです。
③ファンが新たなお客さんを連れてきてくれるから
ファンづくりマーケティングが大切になっている理由の3つ目が、ファンが新たなお客さんを連れてきてくれるからということが言えます。
あなたは、自分だけが知っている美味しい店や満足のいくおもてなしを受けた温泉旅館のことなど、うれしかったことや楽しかったことを誰かに話したくなりませんか。
私の友人に大のアウトドア大好き人間がいます。年に何回もキャンプや釣りに赴き、自然との時間を楽しんでいます。そんな彼は大のアウトドアグッズの収集家でもあります。フェイスブックの投稿を見ると、かなりマニアックなグッズをたびたび買っていることがわかるのですが、主に買っているブランドがスノーピークなんですね。彼に聞いてみると、きっかけはスノーピークファン友達のおすすめで、テントを買ったところ、なんとも快適に過ごすことができて、それ以来スノーピークのファンになってしまったとのことでした。
世の中に商品や情報やエンタメ情報が溢れかえっている今、自分にぴったりの商品や自分のツボにはまるエンタメに出会うことってかなり難しくなってきています。でも、私の友人のように、価値観の合う友達や知人からのおすすめであれば、なんの疑いもなく、すうーっと入ってくるのではないでしょうか。
例えば、パソコンを買う場合なんかも、私はITに強い友達に助けを求めたりします。すると彼は自分が最も信頼しているブランドを教えてくれるわけです。
このように、ファンはまずは中の良い友達やコミュニティを通して、自然とその商品やサービスの良さを伝えてくれる伝道師の役割を果たしてくれてます。そして、SNSを通してもその声はどんどん伝播して、広がっていきます。
このように、あなたの会社や商品を愛してくれている熱いファンは、あなたの会社や商品の広告塔になり、新たなお客さんを生み出してくれるのです。そしてそのお客さんはファンに進化して、また新たなお客さんを連れてきてくれるという好循環が生み出されます。
④新型コロナでファン大切さが浮き彫りになってきたから
飲食店向けの予約・顧客台帳サービス『トレタ』の調査データからは、常連客=ファンの大切さが浮かび上がって来ました。
新型コロナの影響の強かった時期(2020年4~7月)と、過去2年間の同月の予約データ約4000店舗分を比べてみると、コロナ禍において全体の予約数は半減しているものの、全予約数に占めるリピーターの割合は増えていることがわかります。
すなわち、コロナ禍で新規予約の割合は減っても、リピーターが予約を下支えしてくれたと言えます。
背景としては、お客様が飲食店に予約をする際に、「感染対策においても安心できるお店に行きたいから、初めてのお店よりよく知っているあのお店の方が安心」という心理になりやすいこと、また、「馴染みのあのお店を応援したい」といった気持ちで、お店の選択をしているのではないかといったことなどが考えられます。
また、この調査では、リピーター率が平均より低いお店では、予約数が前の年より約1/3に減少した一方、リピーター率が平均より高いお店では、約1/2の減少にとどまっていたことがわかりました。
日頃からリピーターを増やせていたお店が、コロナ禍で受けた打撃を最小限に抑えることができていると言えます。
これらのデータからも、苦境にあるときこそ、なじみの店を支えたくなるという消費者心理が見えてきます。つまり、今後は広告宣伝を投じて新規顧客を開拓するより、つながりを深めて常連さん、ファンになってもらう努力がますます重要になってくるといえるのです。
以上、今回は、今なぜファンづくりのマーケティングが必要なのかという背景について①ファンは売り上げの大半を支えてくれる大黒柱だから ②新規顧客を増やすことが年々難しくなってきているから ③ファンが新たなお客さんを連れてきてくれるから ④新型コロナでファン大切さが浮き彫りになってきたからという4つの観点から見てきました。
さぁ、あなたの会社やお店やブランドもファンづくりのマーケティングで儲かる仕組みをつくっていきましょう。
あなたのマーケティングパートナー和田康彦が全力でサポートします。
無料相談実施中!