体験消費時代のマーケティングヒント

インターブランドジャパンは、日本企業のブランド価値ランキング(2021年版)を発表しました。上位100ブランドの合計評価額は前年より3.9%減少。海外展開の進んだブランドで苦戦が目立つ一方、国内ブランドでは「ワークマン」「ニトリ」が評価を伸ばしました。
2020年に世界を覆ったCOVID-19によるパンデミックは、僅か数ヶ月という期間の中で、世界中の人々のこれまでの行動、考え方、価値観に多大な影響を及ぼし、今もなお、取り巻く社会環境は変化を続けています。
今回の人々の行動や価値観の変化は、企業にとっては、社員の働き方はもちろんのこと、モノづくりや
サービスのあり方の前提を大きく変え、2020年は、そうしたさまざまな足元の変化に対して、ビジネスとしてどのように可及的に対応するかが課題となった一年となりました。
社会の情報化・デジタル化とともに、顧客は自分たちの価値観に照らして「良いもの」を見定める洞察力と、それを他の人々に伝える発信力を持つようになっています。また、ソーシャルメディアを通じて、顧客の間に、大量の情報が高速で飛び交う時代の中で、人々の価値観は急速に変化し、多様化し続けています。
そのような環境下において、今、強いブランドに求められる要件は、力強いリーダーシップ(Leadership)
のもとで、顧客を巻き込むブランド体験(Engagement)を提供し、顧客との持続的な関係性
(Relevance)を併せ持つことだと同社は分析しています
■Leadership:強く対応力のあるブランドを構築する
インターブランド社の分析によると、
「空気で答えを出す会社」Daikin(26位、前年比+18%)、
「アミノ酸のはたらきによって食と健康の課題解決企業になる」 Ajinomoto(43位、前年比+19%)、
「アソビきれない毎日を。」BANDAINAMCO(55位、前年比+19%)、
「循環型社会の実現」Mercari(94位、前年比+19%)
といった明確なパーパスを持つブランドは、コロナ禍においても、社員一人ひとりが何をすべきか方向性が明らかなため、速やかに結束力を持ってアクションすることができ、ブランド価値とビジネス双方を大きく伸長させています。
また、企業目標にブランド価値を設定し「ブランド価値経営」を実践しているKirin(22位、前年比
+11%)、Yamaha(30位、前年比+8%)、Ajinomoto(43位、前年比+19%)は、トップの強いコミットメントのもと、全社活動としてブランディングを推進し、ブランド価値を向上させています。
■Engagement:企業と顧客との相互の関係を形作る
また Nintendo (8位、前年比+31%)は、コロナ禍で人々が不自由な生活を強いられる中、他のプレーヤーと交流しながら村をつくるソフト「あつまれ どうぶつの森」を提供。
WORKMAN(78位、前年比+57%)は、ブランドの熱いファンであり、ブランドの価値を共有しているブロガー達と「製品開発アンバサダー」として契約し、プロダクトを共創することで、顧客視点のユニークな商品を創出し続けているなど、顧客を巻き込み、対話し、共創を実現したブランドが成長していることを明らかにしています。
UNIQLO(6位、前年比+16%)は、コロナ禍において、独自技術のエアリズムでマスクを生産、また、“服を次に生かす”「RE.UNIQLO」を開始するなど、常に独自のブランド体験を創出しています。
■Relevance:顧客との絆を強化しロイヤルティを生み出す
Sony(3位、前年比+14%)は、クリエイティブ・エンターテインメントブランドとして、コロナ禍で最前線の医療に従事する人々、遠隔で学ぶ子供や教師、エンターテインメント業界全体に携わる人々を含む、COVID-19の影響を受けた世界中の人々を支援する1億ドルの救援基金を創設するなど社会貢献活動にも積極的に取り組み、その存在感を増しています。
Fujifilm(38位、前年比+21%)は、新型コロナウィルス感染症に対する効果が期待されている抗インフルエンザウィルス薬「アビガン錠」の増産体制の構築、AI技術を用いた新型コロナウィルス肺炎の診断支援技術開発の開始など、迅速な対応力で、総合ヘルスケアカンパニーとしての信頼感を獲得しています。
Nitori(69位、前年比+39%)は、顧客のニーズに合った商品を迅速に開発することを通して、「低価格」で「機能的」な商品であることを堅持しながら、「お洒落さ」や「楽しさ」を増幅させ、情緒的にも選ばれるブランドに進化しています。
ニューノーマル時代は、ブランド価値といった目には見えない無形資産づくりが企業経営の要になります。あなたの会社でも、徹底した顧客志向のもとで、顧客の生活が豊かになるブランド体験を提供し、持続的な顧客との関係づくりを目指していきましょう。