体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。和田康彦です。
2021年2月3日、ソニーは、2021年3月期の最終的なもうけを示す連結純利益(米国会計基準)が前期比86%増の1兆850億円になりそうだと発表しました。従来予想を2850億円上回り、初めて1兆円を超える見込みです。新型コロナウイルス感染拡大による巣ごもり消費によってゲームやテレビなどの利益が想定を上回るといいます。
ソニーが見込むゲーム事業の営業利益は前期比26%増の3千億円。PS3を発売した07年3月期の2323億円の赤字、PS4の14年3月期の81億円の赤字と比較すると、大幅な改善となっています。この高収益を支えるのが、オンライン対戦などを楽しむための有料会員サービスです。
サブスクリプションともいえる、この継続課金の仕組みは2010年に導入。ゲームの機器売りからの脱却を目指して力を入れ、今では会員数は4600万人にまで拡大。会員は3カ月契約の場合、2150円を支払います。
例えば18年に発売した犬型ロボットの「aibo(アイボ)」も、飼い主は「エサ代」ともいえる費用が必要になります。本体は20万円程度ですが、使うためには通信機能が欠かせず、月2980円(税別)かかります。3年分まとめて払うと約10万円と割安になりますが、それでも本体の半分程度の金額。その対価として、飼い主はクラウドを通じた人工知能(AI)で日々、しぐさや芸を覚えて成長していく姿を見ることができるという仕組みです。
1999年に初代の「AIBO」を発売した際は、本体価格25万円(同)の機器売りだけだったことを考えると、製品そのものだけでなく、ビジネスモデルの進化もみえるわけです。こうした積み重ねにより、ソニーが継続課金型とみるビジネスは売上高全体の半分にまで高まっており、「売って終わり」のビジネスからの移行は着実に進んでいます。
一方、マイクロソフト社も、約100種のゲームが遊び放題になる「ゲームパス」の会員数が1800万人に達したことを明らかにしました。20年4月と比べて800万人、9月からでも300万人の上積みとなり、オンライン対戦ができる「Xboxライブ」の利用者は月1億人に上るといいます。
このように、ゲーム事業がハードやソフトの売り切りで終わる時代は過ぎ去りつつあります。様々な接点を通じて、利用者と継続的な関係を築いていけるか。利用者を維持・拡大していくためにはプレーヤーの要望にきめ細かく対応し続けられるかにかかっています。
売って終わりではなく、売った後もお客さまと永久に付き合っていけるビジネスモデルの創造こそ、これからの時代に成長していくために不可欠といえます。