体験消費時代のマーケティングヒント

みなさんこんにちは。和田康彦です。
今年は新型コロナウイルスの感染拡大で、生活者の心の中は不安や心配に覆われる一年となりました。ただ、そんな状況だからこそ、人々は「心がワクワクする」ことをより一層求めています。
今年若者にヒットした商品を見ていくと、消費者の心をワクワクさせるドラマテイックなネーミングの商品が目立ちました。
通常、商品のネーミングは、固有名詞や、カラー、機能を盛り込んだ名称が一般的ですね。例えば、アパレルなら「デニムジャケット」「ボタンダウンシャツ」、コスメなら「スーパーモイスト化粧水」「アフターグロー リップバーム 1384 シアーピンク&シマー」などです。
一方で、2019年~20年は若者向けブランドを中心に、そうした従来のものとは異なる常識破りのネーミングを採用する商品が続々と登場しました。
例えば、若者に人気のファッションブランド、LEBECCA boutique(レベッカブティック)は、「奴に見せたいワンピース」「何もこわくないワンピース」など、感情に訴えるようなネーミングの商品を展開。あるいは、人気のミニサイズコスメ「SHISEIDO ピコ」(資生堂)では、リップの商品名が「甘い余韻」「路地裏に猫」、ネイルでは「三時の純喫茶」「夜桜の下で」など。ファッションブランドのMaison Margiela(メゾン マルジェラ)が提供する香水の名称は、「Lasy sunday morning」「Coffee Break」といった具合です。いずれも、まるで本のタイトルに使われるような情緒たっぷりの商品名になってます。
圧巻なのは、コスメブランドFujikoのリップ「Mini Watery Rouge(ミニウォータリールージュ)」で、「抱擁せよ」「起動せよ」「演出せよ」など心に刺さるメッセージ性の高い名称でアイテムを展開しています。
目にした瞬間、心を揺さぶられるようなドラマチックなネーミングの新鮮さやかわいさ、ユニークさに加え、「考える」のではなく、直感的に選べる。そんな従来にない商品選択の楽しさが若い女性の間で受け、ヒットにつながっています。
食品で顕著になっているのが、「やり過ぎ」ネーミングです。あおり気味ともいえる表現で若者たちの耳目を引きつけ、「どんな味なんだろう」という期待感から、思わず手に取ってしまいます。
典型的な例が、赤城乳業とセブン-イレブン・ジャパンが共同開発し、ヒットしている「やりすぎ」シリーズのアイスバー。例えば、20年に発売した「以前にも増してさわやかすぎ~。やりすぎチョコミントバー」は、ミント感たっぷりのアイスにミント香料入りのチョコチップをふんだんに混ぜ込んだもの。「どれだけミント感がすごいのか」と、チャレンジする若者が多発しました。他にも、アイスの中にクッキーを驚くほどたくさん混ぜ込んだ「黒くておおすぎ~。やりすぎクッキーダークチョコアイスバー」も人気となっています。
その他、コーンの粒がたっぷりの「つぶつぶつぶつぶコーンポタージュまん」、とにかく商品名が長い「あと5分待ってて。中のアイスがとろっとしてくるから。パイン味のアイスバー」、「この濃さ、最強レベル。」のコピーがパッケージの前面に大きく打ち出されたカルビーポテトチップスの「極濃」シリーズなどが、若者の食指を動かしました。
このように「味」、見た目の「映え度」に加え、「強く関心を引く商品名」が若者世代ヒットに必要な三大要素となっています。
商売とはひと=生活者を相手にしているビジネスです。つまり、ひとの心を動かすことで商売は成り立つわけです。
不安な時代、将来の先行きが見えない時代だからこそ、ひとがワクワクできることを考えましょう。
今回取り上げたネーミングなら、お金をかけずに楽しくチャレンジすることができますね。
出典:日経クロストレンド