体験消費時代のマーケティングヒント

2020-12-26 15:58:00
今の消費者の最大の関心ごとは、「時間をいかにワクワク過ごせるか」だ。

みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

今年もあと5日。改めて2020年のヒット商品を振り返っておきましょう。

 

日本経済新聞社がまとめた2020年の日経MJヒット商品番付によると、東の横綱には映画が大ヒットした「鬼滅の刃」、西の横綱に「オンラインツール」を選ばれました。コロナ禍で生活スタイルは一変。巣ごもりが続き、生活のデジタル化を反映した商品・サービスが並んでいます。巣ごもりの反動で話題のモノ・コトに消費が集中する現象も見られました。

 

今年はコロナ禍の影響から、在宅勤務も含めて家の中で過ごす時間が増えました。その象徴として西の横綱は「オンラインツール」が選ばれています。「Zoom」などのビデオ会議システムの利用は一気に増え、パソコンや液晶ディスプレーなどの販売も増えました。

 

感染リスクを避けるため外出を控えざるをえないなか、人々の注目は話題性の高い娯楽に集まりました。人と鬼の戦いを描いた漫画「鬼滅の刃」は、コミックス(電子版含む)の累計発行部数が1億部を突破。10月に公開された映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」には、外出しての楽しみが少なかった消費者が一気に押し寄せ、日本の歴代興行収入第一位の座につくのも確実になりました。

 

西の関脇に入ったのは「アウトドア」。キャンプ、釣り、ゴルフなど密を避ける娯楽の関連消費がコロナ禍のもと伸びました。人混みや密集を避けつつ楽しみを求める人々は屋外のレジャーに向かったといえます。

 

離れた人とオンラインで遊べることも人気の理由となったのが、東の関脇に入った任天堂のゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」。無人島で仲間をつくって街づくりを進めるゲームで、39月に全世界で2604万本、国内で818万本を販売しました。

 

巣ごもり生活は毎日の食事にも影響を及ぼしています。東の大関は「おうち料理」。経済産業省の商業動態統計によるとスーパーの46月の飲食料品の販売額は既存店ベースで前年同期比8%増。79月も同5%増と伸びました。

 

家での料理を楽しもうと、電気調理鍋やホームベーカリーなど調理家電の販売も好調となりました。

 

多くの外食店が力を入れたのが西の大関「フードデリバリー」。「ウーバーイーツ」や「出前館」といったサービスの利用が増えています。

 

こうして2020年のヒット商品を振り返ってみると、ほとんどの商品やサービスが「時間をいかにワクワク過ごせるか」という現代の消費者の欲求に応えたものであることがわかります。

 

コロナ禍のもと、「心の豊かさを求めて自分の人生をよりよいものにしたい」という人間の本能はさらに高まりつつあります。

 

2021年も、人の心を動かす「ワクワクできる体験」をお客さまに提供していきましょう。

出典:日本経済新聞2020年12月2日付朝刊