体験消費時代のマーケティングヒント

2020-12-21 10:53:00
エアビーアンドビーの創業者も学んだ「ザッポス・カルチャー」とは?

みなさんこんにちは。和田康彦です。

 

民泊仲介大手の米エアビーアンドビーは、20201210日に上場し、時価総額は円換算で10兆円に膨らむ、米国のスタートアップ企業の新規株式公開(IPO)として有数の規模になりました。

 

同社の始まりは、2007年、米サンフランシスコSoMa地区の一角に立つアパートを借りていた2人の若者がホテルの部屋が足りなくなる時期に旅行者を泊め、「宿代」を家賃の足しにしようと考えたことがきっかけといわれています。それから13年。若者たちのように部屋を貸すホストは世界中に広がり、今では400万人を超えています。

 

成長を牽引してきた創業者のひとりであるジョー・ゲビア氏には忘れられない人物がいるといいます。その人物こそ、靴・衣料品のインターネット販売会社、米ザッポスを長年にわたって率い、11月に不慮の事故で亡くなったトニー・シェイ氏です。

 

1999年創業のザッポスは、2009年アマゾンに約12億ドルで買収された米国トップのオンライン靴小売業であり、アパレルなどファッションも取り扱い、いまも成長を続けています。

 

「顧客にワオ! と言ってもらうサービス」の提供を目指して、例えば顧客からの電話には何時間でも付き合うという、一見非効率ですが、人間的なつながりを重視するザッポスは、ユーザーとのタッチポイントに企業努力をフォーカスしています。

 

自分たちの会社の熱いファンがその体験をソーシャルメディアで発信し、それを見た人が今度は新たな顧客となる、つまり顧客が顧客を生んでいく。そして、ファンになればなるほど顧客のLTV(生涯価値)は高まります。

 

このようにしてザッポスは、他の企業とは異なる見事なビジネスモデルで顧客を開拓し、発展してきました。

 

ザッポスのトニー・シェイ氏は、創業以来「オープンで誠実な人間関係」が重要と考え、顧客に加えて社員や取引先などとの「強い絆を重要視する」するザッポス・カルチャーと呼ばれるザッポスの文化を育んでいました。

 

旅行者を泊めた経験を原点に持つエアビーの創業者ジョー・ゲビア氏は2009年にトニー・シェイ氏に出会い、この「強い絆を重視する」というザッポス・カルチャーに深い感銘を受けたといいます。その後は、ホスト重視をくり返し唱え、18年には宿泊客や地域を含む「あらゆるステークホルダー(利害関係者)に奉仕する」と宣言しています。

 

ちなみにザッポス・カルチャーとは具体的にどんなものなのでしょうか。ザッポスには10個のコア・バリューがあります。それが、こちらです。

 

・サービスを通して「ワオ!」という驚きの体験を届ける

・変化を受け入れ、変化を推進する

・楽しさとちょっと変なものを創造する

・冒険好きで、創造的で、オープン・マインドであれ

・成長と学びを追求する

・コミュニケーションにより、オープンで誠実な人間関係を築く

・ポジティブなチームとファミリー精神を築く

・より少ないものからより多くの成果を

・情熱と強い意志を持て

・謙虚であれ

 

これら10個のコア・バリューはザッポス・カルチャーを反映したもので、社員とともに1年以上の時間をかけてつくり上げたものです。50個以上の候補となったフレーズや要素に推敲を重ねて、この10個のコア・バリューに統合と絞り込みがなされたといいます。

 

今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって、これからは物質や合理主義を重んじる価値観から、人間を中心とする考え方に移っていくと思われます。お客さまはもちろん従業員や取引先、地域の人たちとの絆を深めていく経営がますます重要になっていきます。